小林泰三のレビュー一覧
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ネタバレ『 警告!
自分の記憶は数十分しかもたない。 思い出せるのは事故があった時より以前の事だけ。 』
どうやら私は新しい記憶を留めていくことが出来ないらしい。 手元にあるこのノートだけが私の過去を知れる記憶媒体のようだ。
『今、自分は殺人鬼と戦っている。』
自身の記憶が数十分しかもたない主人公と他人の記憶を意のままに改竄できる超能力者、2人の記憶破断者の対決を描くストーリー。
主人公側が絶対的に不利なのだが改竄できる記憶を持ち合わせてないという唯一の武器を手に立ち向かう。 この主人公かなりの切れ者でリセットされる記憶に対しての適応能力が半端ない。 殺人鬼側も傲慢な利己的な部分が表立つが能力を使用した狡猾な策略は抜け目が無い。
特殊設定を用いた知略サスペンスから小林泰三らしいブラックなオチは鮮やか。 -
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ネタバレ故・小林泰三氏の未収録短編集。短編としてはベリーショートで330頁で10個も収められている。SF、ホラーに収まりきらない作者の魅力がつまっている。
「玩具」
えらいことになった。目の前に瀕死の友人がいる。望みを叶えるあの存在、てぃーきーらいらい。
「侵略の時」
朝何気なく始まった日常の崩壊、妻が朝食に出してきたのは生の豚肉だった。見た目は変わらずとも常識のなくなった周りの人々。人類の侵略を「酔歩する男」を彷彿とさせるような独特の価値観で描いたSF。
「食用人」
なんで食用じゃないものをわざわざ食べるのか。食用ではないカエルやイノシシを食べたがる人の神経が信じられない。こんなに美味しい食用の人間がいるのに。食用の人間が認められた世界で初めて訪れた人間の活け造り専門店、生きながら解体されてくその肉片に私は何を想う。
「サロゲート・マザー」
遺伝的に繋がりのない子を産む。産みの親と育ての親、どちらが本当の親で愛情や責任は何処へ行くのか。お金の為の代理出産に悩む夫婦のお話は終盤とんでもない様相を・・・。論理の前に価値観がある。 -
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ネタバレ森に囲まれた施設で何不自由ない生活を送っていた老人サブロウは自分の過去に関する記憶が残っていないことに気付く。周りの老人たちも同じような状況であることを知ったサブロウは偶然にも自身の日記帳に脱出を促す何者かのメッセージを見つける。この施設が監獄である疑いを持ったサブロウは仲間を集め脱出を試みるが森の先にあった光景は想像を絶するものだった・・・。
長編として小林泰三氏の遺作となった作品。車椅子生活を送る老人たちが施設からの脱出を図るスリラー小説だ。そして本作はSF小説である。主人公のサブロウは20世紀生まれで100歳を迎えているのだが記憶の片隅には21世紀の記憶どころか22世紀の残像が残る。タイトルは「未来からの脱出」、本当の戦いは森を抜けた光景を見た後に始まる。 -
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「小林泰三(こばやしやすみ)」のミステリー連作集『大きな森の小さな密室(Muder in Pleistocene and Other-Stories)』を読みました。
「小林泰三」作品は初めて読みますが、元々はホラー系で著名になった作家で、SFも含め、幅広いジャンルの作品を発表されているようですね。
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会社の書類を届けにきただけなのに。
森の奥深くの別荘で「幸子」が巻き込まれたのは密室殺人だった。
閉ざされた扉の奥で無惨に殺された別荘の主人、それぞれ被害者とトラブルを抱えた、一癖も二癖もある六人の客……表題作『大きな森の小さな密室』をはじめ、死亡推定時期は百五十万年前! 抱腹絶倒の『更新世の殺人』など七編を収録。
ミステリお馴染みの"お題"を一筋縄ではいかない探偵たちが解く連作集。
(単行本版タイトル『モザイク事件帳』を文庫化・改題)
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ユーモアたっぷりの、以下の7篇のミステリ作品で構成されています。
■大きな森の小さな密室……犯人当て
■氷橋……倒叙ミステリ
■自らの伝言……安楽椅子探偵
■更新世の殺人……バカミス
■正直者の逆説……??ミステリ
■遺体の代弁者……SFミステリ
■路上に放置されたパン屑の研究……日常の謎
■小林泰三の名探偵たち
■解説 福井健太
表題作の『大きな森の小さな密室』は、密室殺人事件の犯人当てモノ、、、
森の奥深くにある別荘等、現実味のない設定に、別荘に居合わせた6人の男女(容疑者)の不自然な会話、殺人事件発覚(死体発見)時の妙に落ち着いた行動等、リアリティのない展開で感情移入し難かったですが、その分、ゲーム感覚で愉しめる作品でした。
返り血を浴びたことを隠すため、捜査を攪乱させようとしたという密室作り(密室を作ることそのものよりも、扉を押し開けたあとの行動が目的でしたけど… )の動機は面白かったですね。
『氷橋』は、最初に犯人が判明しており、徐々に犯行が暴かれて行く倒叙ミステリモノ、、、
編集者の「乙田三郎太」は、不倫関係にあった作家の「二ノ宮里香美」を氷の板(橋)を使ったトリックで殺害… 完璧なアリバイを作るが、探偵役の弁護士「西条源治」の執拗で巧みな誘導尋問に、ついついトリックのヒントとなることを吐露してしまう。
「西条源治」は、好きになれないキャラですが、犯人を追い詰めるスキルには感心しましたね。
『自らの伝言』は、コンビニでアルバイトとして働いている探偵役の「新藤礼都」が現場を訪れることなく事件を推理する安楽椅子探偵モノ、、、
同じコンビニでアルバイトをしている「睦月早苗」の友人「長柄宮菜穂子」の交際相手が殺害され、「礼都」が事件を解決に導きます。
殺された「秋葉猛士」は、超地球サイエンス研究所に勤め、怪しい研究(水の潜在能力の研究)をしており、研究をするために低温の研究室で実験をしている際に殺され、死亡時刻が特定困難という状況… 第一発見者の「菜穂子」に容疑がかかることを恐れた「早苗」は証拠隠滅を図るが、その行動には不審な点が、、、
「猛士」が、使い捨て携帯電話という不法な商品を扱っているところも真相究明のヒントになっていましたが… それにしても、「菜穂子」の無知で世間知らずな言動は苛立たしいくらいでしたね。
これじゃ、騙されても仕方ないような感じがします。
タイトルは、”水からの伝言”という馬鹿げた研究テーマをパロったようですね。
「礼都」のクールな探偵ぶりが、なかなか良いですね… 『氷橋』に登場した「西条源治」も、チョイ役で登場しています。
『更新世の殺人』は、発掘現場から発見された死亡推定時期が百五十万年前という女性の絞殺死体の謎を解く馬鹿馬鹿しいミステリ(バカミス)モノ、、、
生々しい死体なのに、更新世(百五十万年前)の地層から出土したから、更新世の死体に違いないという論拠… どう考えてもあり得ない状況を信じ、真面目に、そして論理的に謎を解こうとする馬鹿馬鹿しさ、真面目に読んじゃダメですね。
「探偵Σ」の論理的な迷推理と、『自らの伝言』に続いて登場する「礼都」のクールな推理が対照的な作品です。
良く言えば『裸の王様』的な内容… まっ、息抜きできる作品でしたね。
『正直者の逆説』は、雪で閉ざされた山荘で起こった資産家「金盥狆平」殺人事件を、その場に居合わせた自称探偵でマッドサイエンティストの「丸鋸遁吉」、助手の「わたし」、「金盥」の甥「怠司」、姪の「難美」、タクシー運転手の「平平平平(ひらだいらへっぺい)」、召使の「綾小路」、医者の「梅安」の七名が、お互いを疑いながら犯人を特定していく物語、、、
うーーーーん、謎解きのための文章がややこしくて(論理的なのかもしれませんが…)、途中から読む気力を失ってしまい、かなり読み飛ばしてしまいましたね。
繰り返し読まないと理解できない文章はイライラしちゃうんですよねぇ… 好きな人には堪らない作品なのかもしれませんが、マニアック過ぎて面白さがわかりませんでした。
『遺体の代弁者』は、殺人事件の被害者の海馬をスライスしたものを脳に移植することで、被害者の記憶を脳内で再生することができる「スピーカー・フォア・ザ・デッド・システム」が登場するSFミステリモノ、、、
『正直者の逆説』に続きマッドサイエンティストの「丸鋸遁吉」が登場し、「丸鋸」に脳を改造された「田村二吉」が、被害者の記憶を再生しながら真相を究明しようとします… 「スピーカー・フォア・ザ・デッド・システム」の機能を逆手に取り、被害者の海馬が入れ替えられていたりというトリックは、なかなか愉しめました。
でも、自分の頭を改造されて、他人の海馬を接続されるなんて… グロテスクな姿ですよねぇ、、、
映像化したら面白そうな作品ですが、グロテスクな描写をどうするかが課題でしょうね。
『路上に放置されたパン屑の研究』は、殺人事件等の大掛かりな犯罪ではなく、日常の謎(どうでもいいような事象)がテーマとなっているミステリモノ、、、
『遺体の代弁者』に続き「田村二吉」が前向性健忘症という設定で登場し、『大きな森の小さな密室』で探偵役を務めた「岡崎徳三郎(徳さん)」と二人でのやりとりで、物語が終始します。
「徳さん」が、「田村二吉」が前向性健忘症ということを知りながら何度も同じやりとりを繰り返す目的は… ちょっと無邪気だけど、ブラックなオチでしたね。
全体的にはまずまずでしたかね。 -
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数十分しか記憶が持続しない主人公がある殺人鬼から逃れる/対峙する物語。
なかなか現実離れした設定(殺人鬼の特殊能力にしても)ですが、それはそうとしても中々楽しめる一冊。後味の悪い終わり方は著者ならではといったところでしょうか。
著者の記憶喪失をネタにした作品といえば、数年前に読んだ「失われた過去と未来の犯罪」が記憶に深いです。こちらはミステリーというより、思考テストのようで、記憶喪失を題材に人間の在り方にまで深く切り込んだ傑作でした。時系列的には、そちらは本作の後に描かれた作品なので、本作をきっかけに生まれたとすると、なかなか感慨深いところがあります。
大変恥ずかしながら、今更になって小林泰三氏ご逝去の報を知りました。高頻度ではありませんが、それでも長らく愛読しており、無駄の多い無駄のない会話、屁理屈ばかりの展開、スプラッターな描写などなど、とてもユニークな作品が多く、私の読書好きを更に高めて頂いた作家さんです。タイトルをみると、読んだ当時の記憶が鮮やかに蘇ってきます。それこそSF好きにとっては「海を見る人」という傑作があり、そちらはいまだに心に深く残っている作品です。訃報は残念でなりませんが、まだまだ読めていない作品もありますので、泰三氏を偲びつつ引き続き楽しませて頂こうと思います。 -
Posted by ブクログ
1999年から2007年に発表された短編に、2009年のこの文庫刊行時に書き下ろし数編を加えたものと思われる。
巻頭の「透明女」(2009)が、デビュー作『玩具修理者』(1995)と同レベルのグロテスク趣味炸裂のホラーとなっていて、良かった。やはり「突き抜けた」感は痛快なものがある。
他では「攫われて」(2002)が、誘拐された少女たちの苦悶に満ちた閉所での時間が、悪夢的なインパクトだった。
一方「SRP」(2005)は、カプセル怪獣ならぬカプセル妖怪や、科特隊の出来損ないみたいのが出てきて、懐かしくも楽しい。同著者で未読ながら『ウルトラマンF』なる作品があるようだが、それと通じる世界なのだろうか。笑わせて貰った。
他はホラーよりSFに入りそうな作品が多く、あまり良くないものもあったが、全体としては楽しめる作品集だった。