あらすじ
「本来、これはわたしが貰うべき賞だったのだ!」ライバル、水海月博士に研究発表で先を越された時空博士。憤慨した博士は、自ら開発したタイムマシーンを活用して過去の水海月博士を殺害しようと決心した。念のため、自分に鉄壁のアリバイがある日時を犯行時刻に設定したのだが──(「完全・犯罪」)。真帆と嘉穂は、服も、玩具も、名前まで共有する一卵性双生児。自分は本当に「真帆」なのか。成長するに従い、真帆は次第にアイデンティティーを失っていく。思春期を迎え、恋を覚えた姉妹の運命は──(「双生児」)。驚きと恐怖、黒い笑いが詰め込まれた、全5篇のミステリ短篇集。
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隠れ鬼が特に好きな作品。
凄まじい物語の幕開けから、徐々に忘れていた少年時代のことを思い出していくところが怖い!
奇妙でぶっ飛んでいる終わり方も良かった〜
どの話も小林泰三さんらしい独特な読後感。
Posted by ブクログ
SF・ミステリー・ホラーとタイプの違う作品を入れてきた短編集。個人的には歴史改変タイムトラベルものをブラックコメディチックにまとめた表題作とミステリーでお馴染の「双生児」ものがお好み。
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文体は読みやすく、ページ数も多くないので、さらっと読める。
連作短編集で、どれも少しブラックで不思議なお話。
スッキリとした論理や解決が好きな方は、少し物足りないかもしれない。
Posted by ブクログ
短編集。
「双生児」
真帆と嘉穂。
二人は一卵性双生児としてこの世に生まれた。
ある日、駅のホームから二人のうちの一人が転落して電車に轢かれ即死する。
周りで見ていた人たちは皆、身勝手な女の不幸な事故だと思っていた。
でも、本当にそこで起きていたことは・・・?
長い年月をかけて、双子の内の一人は姉妹を抹殺しようと計画してきた。
最期の時を迎えて、ようやくその怖ろしい計画のすべてを知る転落した線路上で気づくもう一人の双子。
事故の瞬間、大勢の人が見ている前で誰にも気づかれずに起きていた不可思議な出来事。
理解できたのは、当事者である二人だけだろう。
読み終えて、もう一度最初に戻って読み直してしまった。
計画はいつから始まっていたのか。
それほどの憎悪をどうやって育ててきたのか。
すべてを知ったうえで読み直すと、怖ろしさは倍増する。
Posted by ブクログ
SF要素あり、ホラー要素ありのミステリ短篇、以下5篇を収録。
・「完全・犯罪」
・「ロイス殺し」
・「双生児」
・「隠れ鬼」
・「ドッキリチューブ」
相変わらず「なんじゃそら!」って感じの小林泰三らしいオチばかりで、とても楽しめましたよ。
本書で特に読み応えがあったのが、「双生児」です。これは、泰三小説のなかでも結構好きな作品に分類。
一卵性双生児の真帆と嘉穂は、物心がつくころに、親や周囲のひとたちから名前を間違えられ、そのうち、真帆は自分が「真帆」なのか「嘉穂」なのか解らなくなっていき…
オチは唐突すぎる感が否めませんが、それでも中盤の盛り上がりは異常です。
「ドッキリチューブ」は、世にも奇妙な物語で放送されましたが、「隠れ鬼」のほうこそが世にも奇妙な物語らしかったです。最後のおいてけぼり感なんて特に。
Posted by ブクログ
小林泰三は好きだけどこれはちょっと微妙だったなあ。最近いろんな本屋ではこれと『大きな森の小さな密室』がプッシュされている。けれど『大きな~』はともかくこっちはそんなに……。物足りないのはあれか、グロが足りないからか!?← どうせなら『海を見る人』をプッシュしてほしい。
以下各作品ごとに一言感想。
「完全・犯罪」
これは他にもっといいタイトルなかったのって感じ。四里川・四ツ谷コンビ?の新作にとっておけばいいのに。オチの脱力感はすさまじい。
「ロイス殺し」
普段の雰囲気とはやや違うが今回では一番おもしろかったかな。
「双生児」
割と通常運転なんだけど、角川ホラー文庫に収録されている作品に比べるとあんまり……
「隠れ鬼」
中盤までは楽しく読めたけどラストでやや肩透かし。
「ドッキリチューブ」
世にもで映像化されてますね。
Posted by ブクログ
5つのミステリ短編集。
表題作『完全・犯罪』読みたさに購入。
タイムマシンを開発した博士が、世界最初のタイムマシン開発者として名乗りを上げた博士をタイムマシンで殺し異にいって自分こそがタイムマシンの第一開発者であると名乗ろうとする話。
早い話がそういう話。
思っていたのとはだいぶ違ったけど、いいコントだった。
なんか、最近似た様なのを別なところで書いた気もするけど(だから気になってた)、全然似て非なるものだったので良かった良かった。
小林泰三氏と言えば、すっかり忘れていたのだけど、『玩具修理社』(角川書店)の方ですね。
結構前に読んだことがあります。
「あの神話」の系譜に連なる作品を物されたということで、記憶しておりました。
実際、この文庫収録の作品にも、やはりあの神話の系譜に連なるものが。
一度魅せられてしまうと、一生離れない魔性の神話。
ホラー畑からミステリに宗旨替えしたのかと思っていたら、とんでもない。
むしろ、ミステリの世界にあの神話を持ち込むという、論理を重んじるジャンルにはあり得ない、しかし見事なまでの意欲作を作っているのですね。
ちょっとした謎と、大いなる不思議の同居する作品。
お楽しみあれ。
Posted by ブクログ
雰囲気的にはショートショート。余分はそぎ落として、必要な要素のみを描いています。シニカルに、そしてブラックに。悪意成分が多いので、万人向けとは言えません。
Posted by ブクログ
SFでもありホラーでもある、ミステリというカテゴリだけに収まらない、奇妙な後味の残る作品五作をおさめた短編集。
自分のお気に入りは、タイムトラベル理論をベースに過去に戻ってライバルの博士の殺害を企てる表題作『完全・犯罪』。多世界解釈の悪ノリみたいな展開と、ラストのオチも好み。タイムパラドクスモノが好みの方向けですな。
『ロイス殺し』は、名前が出てきたとたんにカーの『火刑法廷』関連か?と思ってましたがその通りか。(ただし、登場キャラの名前は覚えてましたがそんな小話があったことは忘れてましたよ) カーの作品を読んでなくても楽しめますし、クトゥルフ小ネタも入れてきてましたね。
『双生児』、『隠れ鬼』、『ドッキリチューブ』 以上3作は、ミステリというよりも「奇妙な後味」の方が強い作品。こういうのも嫌いじゃないから、楽しく読みました。