小林泰三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
■内容(「BOOK」データベースより)
犯罪抑止のために開発された「人工脳髄」。健全な脳内環境を整えられることが証明され、いつしかそれは一般市民にも普及していった。両親、友達、周囲が「人工脳髄」を装着していく中で自由意志にこだわり、装着を拒んできた少年に待ち受ける運命とは?人間に潜む深層を鋭く抉った表題作他、日常から宇宙までを舞台に、ホラー短編の名手が紡ぐ怪異と論理の競演。
■感想
表題の脳髄工場は途中まではものすごく面白かったんだけど、最後がしょぼーんでした。
あとクトゥルフはぜんぜんわからないから、C市のアレはぽかーんとしてしもうた…。
ただややがっかりだったのがこの2作品てだけで、他 -
Posted by ブクログ
「奇憶」「器憶」「キ憶(キは土遍に危)」の3作品を収録。
連作短編小説と銘打ってますが、繋がりはほとんどないのでどこからでも読めます。以下、それぞれの感想↓
『奇憶』
直人のダメ人間描写っぷりが素晴しい。こんな風になる前にちゃんとしよう、と決意させてくれる。
平行世界についての説明が詳しくなされている事により、ただの不思議で怖い体験ではなくなり、論理立てられたこの世の真理として誰もが巻き込まれる可能性のある怖さ、となっている。
「ショゴス」「シュレディンガーの猫」「ブラックホール」などの単語に反応できる人は読むと良いと思う。
『器憶』
「腹話術師」と「腹話術人形」の話。
とくればある程度予 -
Posted by ブクログ
【短評】
早逝の天才・小林泰三によるホラー短編集。
昔々『酔歩する男』という作品に大層感銘を受けたことを良く覚えている。本作を読んでも感じたが、この人の作品には「自己認識」という領域に対する偏執的とも言える関心が垣間見える。
「私とは何か?」「私は本当に正しいのか?」「私に作用するものとは?」
異なるアプローチに基づくスタンドアロンな作品達の根底に、何故だか同じ衝動を感じさせるのは穿ち過ぎというものだろうか。短編集は各話の好き嫌いが発生するため、総合的な点数が伸び悩む傾向にあるが、トリを飾る『本』は図抜けた傑作だと感じた。この一本に出会えただけでも手に取った価値は十二分にあろう。
①人獣細工 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「テセウスの船」は知ってるだろうか。
古代ギリシャの伝説で、英雄テセウスが使った船にまつわる話。
老朽化した船の木材を次々と新しいものに交換していき、長い年月をかけて最終的にすべての木材が新しくなったとする。
このとき、「この船は本当にテセウスが乗っていた船と言えるのか?」という疑問が生じたことに由来する。
さて、これが人に行われたのが本書だ。
とある少女が臓器移植の専門医である父に、長い年月をかけて豚の細胞を移植し続けた。
少女:夕霞は先天性の病気で生まれた時から多くの臓器に血管があり、赤ん坊の頃から臓器移植のを繰り返して生き延びてきたと説明されている。
心臓、腎臓、肝臓から始 -
Posted by ブクログ
【2025年135冊目】
やることなすこと全て上手く行かない男。男を断ち切ろうとした結果、腹話術に妄執する男に囚われる女。記憶障害を抱えながら生きる男。記憶に纏わる三つの連作短編集!
ホラーというよりもSFみが強い物語たち。文体も不思議なものが多く、最初の方はお酒が入った状態で読んでいたので、余計に混乱しながら読んでいました苦笑
どのお話も不思議でしたが、一番最後が一番好きでした。何も解決してないし、わからないまま闇の中って感じでしたが、まさに登場人物と同じ状態に陥っていった感じでした。
現実と虚構の中を彷徨いたいときにおすすめです(?) -
Posted by ブクログ
まだまだ続く、故・小林泰三の角川ホラー作品新装版!本書は、表題作を含む7篇が収録された短篇集となっている。
収録作品は以下のとおり。
『家に棲むもの』
『食性』
『五人目の告白』
『肉』
『森の中の少女』
『魔女の家』
『お祖父ちゃんの絵』
著者お得意の吐き気を催す(誉め言葉)肉々しい(?)筆致と、ラストで「あっ」と言わせ、「ゾワッ」とさせる構成は相変わらず。(「驚愕のラスト7連発!!」の帯キャッチコピーは伊達じゃない!)
とまあ、どの話も楽しめはしたのだが、著者の他の作品と比較すると少々刺激不足で、記憶に刻まれるような作品には出会えなかった。
一番良かったのは、やはり表題作の『家に棲