小林泰三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表題作「玩具修理者」と「酔歩する男」という二編が収録。いずれも「死」という絶対的な境界線を踏み越えようとする物語であり、死体の再生や蘇生というSF的発想を出発点としながら、その発想が徐々に狂気へと変質していく様が描かれる。狂気のホラー短編集。
「玩具修理者」は、壊れた銃やおもちゃ、さらには死んだ猫までも“修理”してしまう謎の男が登場するホラー作品です。
死体の損壊した部位を銃の部品で補うなど、修理の定義が常軌を逸しており、生き物と無機物の境界が曖昧になっていく過程が濃密に描かれています。短いながらもテンポよく、異様な存在感を放つ“修理者”のキャラクターが魅力的で、ブラックユーモアと不安が共存する印象的な一作でした。
対して『酔歩する男』は、よりSF色が強い作品でありながら、その飛躍した発想と奇妙な論理展開により、むしろホラーとしての側面が色濃く感じられます。「あなたは初対面だが、私はあなたと親友だった」という不可解な一言から始まる物語は、過去と未来、記憶と因果が入り乱れる異常な世界に読者を放り込みます。しかしながら、物語中盤以降の設定説明がやや冗長で、思考実験的な内容に引っ張られすぎて物語の勢いを削いでしまっている部分も否めません。論理性を保ちながらも突飛すぎる展開は、理屈でねじ切られたホラーとも言うべき独特の読後感を生み出しています。
両作に共通するのは、「生と死」「人間と物質」といった境界の揺らぎに対する問いかけです。しかし、それは哲学的な思索に留まらず、極端な状況に置かれた人物たちの狂気を炙り出すための装置として描かれており、結果として読む者の感性をじわじわと侵食してきます。
総じて、『玩具修理者』はホラーと哲学とSFが絶妙に混ざり合った異色の短編集であり、特に「玩具修理者」は短編としての完成度も高く、怪しげでダークな世界観を好む読者には強くおすすめできる一作です。対して「酔歩する男」は、その独特な論理展開に付き合えるかどうかで評価が分かれるところでしょう。読者を選ぶ作品ではありますが、その異様な世界観に触れてみたい方には、ぜひおすすめしたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ角川ホラー文庫ベストセレクションの第二弾。今回も8名の作家の8作品だった。特に印象に残ったのは以下の3作品。
「骨」小松左京
なにかに突き動かされるように庭を掘り続ける主人公の姿が最後に悲しみを誘った。何かを思い出しかけているという描写がよかった。
「或るはぐれ者の死」平山夢明
こんなにも悲しい話だとは思わなかった。自分だけでも死者を埋葬しようとしたその清らかな心は悪意に踏み躙られる。
「人獣細工」小林泰三
この作品が最も衝撃だった。自分と父の秘密を探らずにはいられない、そのはやる気持ちが痛いほど伝わってくる。凄まじいラストだった。 -
Posted by ブクログ
インクレディブル・サーカス所属の手品師・蘭堂は、過去のトラウマを克服して大脱出マジックを成功させるべく練習に励んでいた。
そんなある日、突如サーカス団が吸血鬼たちに襲われる。残忍で圧倒的な身体能力と回復能力を持つ彼らに、団員たちは空中ブランコやアクロバットなどの特技を駆使し、命がけで反撃を試みるが……。
様々な事情から廃業寸前の弱小サーカス団と、吸血鬼の戦いを描いた小説です。
人間離れした身体能力、飛行能力、回復力を持つ残虐な吸血鬼の集団に、ただの人間であるサーカス団員たちがどう立ち向かい、勝利するために何を使いどう動くのかが読みどころ。
サーカス団員たちが、どんなに追い詰められても決して仲間を見捨てないところや、どんなに勝ち目が薄い戦いでも知恵と経験、勇気で状況を打開しようとする姿に、儚くも力強い命の輝きを感じます。
血や内臓などがドロドロに飛び散りまくるので結構グロテスクですが、アクション映画やスプラッタホラー映画のような雰囲気もあり一気に読めてしまいます。
ラストも爽やかさもありながら物悲しい。
インクレディブル・サーカス団、冷静に考えると不運すぎて同情してしまう。何もしていないのにとんでもないとばっちり受けててかわいそうすぎます。