あらすじ
「浜から来た少女に恋したわたしは、一年後の再会という儚い約束を交わしました。なぜなら浜の一年は、こちらの百年にあたるのですから」──時間進行が異なる世界での哀しい恋を描いた表題作、円筒形世界を旅する少年の成長物語「時計の中のレンズ」ほか、冷徹な論理と奔放な想像力が生みだす驚愕の異世界七景。
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彼にも駄作はあるが、これはお得意の謎サイエンス(謎の論理で納得させられてしまう)とホラーの融合が高いレベルで集まった大満足な作品集。
表題作の叙情性には悔しさを覚えるばかり。
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SFは割と好きだけども、面倒な難しい話はぶっちゃけ素通りなので、いわゆるSFファンというわけではなく。SFって2001年宇宙の旅みたいな、微妙な空気感があるような。そういう雰囲気が好きなわけで。でもってこの話はすっかり切なすぎな話に、時々いやそうなんか、どうなんだ、さっぱり分からんけどそこまで自信満々に話すならきっとそうなんやね、という難解な話のが交互にやってきて、これがいわゆるギャップ萌えってやつか。
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専門的なことはよくわからないが、独立した話がまとまって最終的に一つにまとまる(珍しく?希望がある)のは見事としか言えない。勉強になるファンタジー作品。何作か読み終わったが、自分は小林氏の表現する会話のテンポが好きなんだな、と気付いた。
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独裁者の掟はどう終わるのか予想出来ていなかったのでオチにびっくり。こういう系は読んだことあったのに。
天獄と地国は天と地の扱いが逆様の世界で暮らす人類の話。気になる終わり方だった!
海を見る人はなかなか救いのない終わりで、門はなんとなくわかってしまった…けど、話と話の間で会話してる二人の正体には気づけなかった。
SFだけど、切ない話が多かったように思う。よかった。
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―――場所によって時間の進行が異なる世界での哀しくも奇妙な恋を描いた表題作
円筒形世界における少年の成長物語「時計の中のレンズ」など
冷徹な論理と奔放な想像力が生みだす驚異の異世界を描いた7篇を収録したSF短篇集。
小林泰三(グロくない!笑”)
持てる想像力をフルに活用して楽しむタイプのハードSF
「世界がこういう形だったら」
「この場所にこんな力が働いていたら」
という前提から、ひたすら展開させていってるのはすごい
主に地学と量子力学の難しい概念も出てくるけど
解説にあるみたいに「充分に発達した科学技術は魔法と区別がつかない」から
もちろんファンタジーとして楽しむことも可能
『天獄と地国』『海を見る人』が面白かったなぁ
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「母と子と渦を旋る冒険」が一番よかった。宇宙探査機の近親相姦とは新しすぎる。へ、変態だー!
時間や空間がねじ曲がった世界、タイムパラドックス、宇宙の謎系ストーリーが好きな人におすすめ。とびきりの非日常が楽しめます。
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時間の流れが違う場所に暮らすふたりの恋。
時間という隔たりに嘆いて、事象の地平面である海面に飛込んでしまうことで、女の子の姿は広がり続ける。
それによって主人公や残された人たちの主観の中では、少女の恋をした時間は永遠に思えるような年月のなかで引き伸ばされつづける。ありえない恋をしたふたりのお話「海を見る人」。とても味わい深いお話でした。
他にもとても広がりのある世界観のお話がたくさん収められた短編集。
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短編集。
「海を見る人」「門」を再読。
いくつもある箱庭的な世界観の中で、やはりこの2作品は素晴らしい。
「海を見る人」は、場所によって時間の流れが異なる世界でのひと組の男女を巡る物語。悲劇的な内容なのだけど、恐ろしいほど綺麗な結末に身震いする。
原因は結果となり、結果は原因となる。
そんな作品「門」は、壮大な世界観の片鱗を示しつつも実はとても純粋なラブストーリー。もしくは宿命の物語。
ハードSFと称されるとおり、その科学的描写の大部分を理解することはできない。でも、奇抜な設定は読者の想像力を刺激するに足るものだし、卓越した結末は読者の心を見事に射止めるものがある。
解りづらいから好みの分かれる作品だけれど、噛み締めるほどにその良さを味わえる作品です。
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物理学の知識が少しだけあれば大変楽しめる短編集
表題作は見事なSF恋愛物語
時間の流れの違いから生まれる切ない物語はたくさん例があるけれど短さも相まってわかりやすく心に刺さるし描かれる映像もSFならでは
時間ってよく恋愛ネタにされるけれどある程度パターン化していると思うのでいかに場面映像が良いかに掛かっている気も
他の短編も粒揃いなお買い得本でした
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SFは読み慣れないところもあって、作中の理論にはほとんどついていけなかった。
ストーリー自体は小林泰三らしい。個人的には「独裁者の掟」と「キャッシュ」が好きだった。「独裁者の掟」は読み進めて総統の背景が分かってくると途端に無機質な人物だった総統の人間らしさが伝わってくる書き方がうまいなと思った。
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小林泰三さんの小説はアクが強い、というのが自分の中のイメージ。独自のユーモアやブラックジョーク、ナンセンス、詳細なロジック、特異なキャラクターに文体、そしてグロ描写と、合わない作品はどうにも合わないのですが、ハマるときはハマる、そんな不思議な作家さん。
この『海を見る人』に関して言うと、文章や独自のユーモアやといった小林さんのアクの部分は大分抑えめな印象。一方で精緻なSFの論理と世界観のこだわりであったり、通常の概念を揺さぶるような物語のテーマは健在。「綺麗な小林泰三さん」というべき短編集かも。(他の作品のイメージが、どんなんなんや……と思われそうだけど)
収録作品は全6編。そしてそれぞれの短編を繋ぐ、幕間の短い会話で構成されています。短編が語られた後にある、二人の人物の会話の部分が本全体の雰囲気を醸し出しているように思います。異なる論理が支配する世界での人々の考え方や生き方。それを読者はどう受け入れるか。その道標の一つにとして考えさせられます。
最初に収録されている「時計の中のレンズ」は難しかった……。どんな光景が広がっているか。世界観はどういったものなのか。ハードSFの論理は正直ちんぷんかんぷんだったものの、世界観の壮大さだけはかろうじて分かりました。
宇宙を舞台に遊牧民族の旅と、少年の淡い恋とほろ苦い成長を描いた短編です。
「独裁者の掟」は異なる二つの宇宙国家の戦争と、強国の統帥の独裁。そしてそれに翻弄される人々を描いた短編。
戦争の中奔走し、自分の使命を果たそうとする人々の生き様と、無慈悲な統帥の政治の様子の対比が印象的。そして意外な展開が待ち受けると共に、善と悪の概念が揺さぶられました。
「天国と地国」も壮大だったなあ。
侵略者に襲われ、壮大な宇宙空間を旅する四人の男女。ある日彼らは、うち捨てられた様子の拠点となりそうな星を見つけるが……
神話と思われていた星が存在するかも、そしてその星の正体は、というのがなんだか途方もなくワクワクする話でした。この短編を長編版にしたものもあるらしくて、そちらで物語のその後が語られるのかも、気になります。
「キャッシュ」は仮想空間と現実空間が交差する探偵もの。
この世界観と設定ゆえの捜査や推理であったり、そして犯人の正体であったり、結末であったり、そしてSFならではの哲学的な面もある、とても好みの短編でした。
「母と子と渦を巡る冒険」はこれが一番小林泰三さんらしい作品かもしれないなあ。
お母さんのためボロボロになりながらも宇宙空間をめぐり、情報を集める子ども。明るくユーモラスに(?)描かれるグロ描写ととぼけた雰囲気。そして結末のブラックさと、小林さんらしさにある意味満足しました(笑)
表題作の「海を見る人」は時間の経過が異なる二つの世界の少年と少女を描いた恋愛もの。
最後に老人が海を見続けている意味が分かると、切なさの中に一種の狂気的な部分も垣間見える、これも独特の短編だなあ。老人が見続けているものを想像するにつけ、残酷なようでいて、ある意味甘美なようにも思えて、気持ちがざわざわします。
「門」は量子テレポートとそれを守ろうとする人と、破壊しようとする人々を描いた話。
小さな宇宙船に艦隊が攻めてくるという、派手な書き出しから、艦長と語り手のいじらしい関係性に結末とこちらも面白かったです。
世界観を全て理解しようとすると、相当ハードルは高い気がしますが、ぼんやりとでも雰囲気さえ掴めていれば、どの短編もその世界観ならではのドラマに、読み手を引っ張っていってくれる、そんな短編集だったと思います。
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自分はハードSF好きだと言ってきたけど、これを読んで反省した。
ごめんなさい。
これからはミーハーハードSF好きと言います。
それくらいきっちりと計算されていたり、科学理論が描写の背景にある。
何と言っても作者が「ばりばりのハードSFファンの方々には、できれば電卓を片手に読んでもらいたい」と挑発的なことを言っているのだ。
「がっつり計算してますよ、お前らもやってみろ。ハードSF好きなら当然できるよな!」ということだ。
そしてこれを受けて解説で向井さんが「天獄と地国」の計算をしている。
これはもう計算なんか全然できない自分は到底ハードSF好きなんて口幅ったくて言えやしない。
とは言え、作者が言うように計算ができなくても十分楽しめる。
まぁ多少理屈や計算を見せたいがためにこの話作ったよね、というところが見える話もあるけど、全体的には悪くない。
一番好きなのは「門」。
時間関係好きなんだよね。
面白かったです。
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最初の「時計の中のレンズ」が唐突すぎて何回読んでも世界観がイメージできなかったので、長らく放置してあった。久々に読み直し、脳内チューニングが合ってくるにつれて生き生きと読めるようになった。
こんなによく計算されて、一般人にも理解できる程度のSF観、全部短編だけじゃもったいない!もっと詳しく説明して傍流のエピソードも膨らませて、一冊の本にすればいいのに!と思う話ばかり。
キャッシュ・海を見る人、が楽しかった。
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数学的に図形を使って誰か解説してくれ
こんなにネットが発達した時代になぜそんなサイトが、うごのたけのこのように存在しないのか
そんな日は永遠にやって来ないのか
SNSの発達のせいで良質な評論サイトが減っている
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次の年、カムロミは夏祭りに来ませんでした。
わたしはさらに一年を耐え忍びました。
その次の年もカムロミは現れませんでした。
わたしは待つことをやめました。
わたし、先生に約束するわ。
次に出会うことがあったら、その時は…
今度はわたしが苺ミルフィーユを奢ってあげる。
(時計の中のレンズ/独裁者の掟/天獄と地国/キャッシュ/母と子と渦を旋る冒険/海を見る人/門)
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知り合いが「ハードSF読みたいならこの短編いいよ」と薦めてきた一冊。
様々な舞台や設定を元に生み出された短編集。一つ一つはまったく別物のように見せながら、最終的には一つに収斂していくという、よくあるパターンのひとつです。大好物です。
読み口はあっさりしていますが、分類はかなりのハードSF。実際に各短編に出てくる数値を計算してみると、かなり数式に忠実に世界が構築されていることが分かります。その徹底振りから著者が生粋の変態であることが伺えます。
関数電卓を片手に計算しながら読むと色々わかって面白いと思います。もちろんそこらへんを意識しないでも特に問題なく物語として読んでいけるのが、この本のウリでもあるのでしょうが。そういう意味ではまさしく「一度で二度美味しい」本といえるかもしれません。
個人的に面白かった短編は、「独裁者の掟」と「門」。
どの短編も、広がりすぎず狭まりすぎず、ほどよい後味でした。
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細かい理論はわからないのでその部分は流し読みしてしまいました。
理系とセンチメンタルが同居していて不思議な世界。
「独裁者の掟」「キャッシュ」「門」が好みです。門はなんとなく、大姉そうだろうなとは思いました。
独裁者にはびっくりしましたが、固定観念持ってた!というのに気付かされてそれにもびっくりしました。今まで独裁者に居なかっただけで、確かにこんなケースもこの先出てこないことはないと思われます。。
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表紙は「海を見る人」のワンシーン。
こうやって見れば、感傷にとらわれたせつない印象的な恋情場面なんですが。
このきれいだけど、せつない場面は、限られた期間だけの話ですよね。
老人の時間間隔では、おそらくきれいなままで見るだけでしょうけど。老人の死後、どうなっていくのかを考えたときに、ちょっとホラーなんじゃないかな?と思ってしまって、現実に引き戻されました。
なんか、そう思った自分が哀しい。
彼女が、引き伸ばされていくのって、そこまで観賞に耐えれるものですか?
舞台設定を理解するのに、体力使う物語が多かった。入り込むまでに、時間かかりました。
なので、入り込めたと思ったときは、たまらんね。
でも、短編集なので、入り込めている時間が短いんです。
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初の本格SF。完全に文系の私には少し難しかった。
ただストーリーだけを見ても面白く、理系の恋愛小説ってこんな感じなのかなと思った。理系の知識があれば、宇宙の途方もない距離や大きさを実感できて、もっと面白かったかもしれない。
門の話だけはオチが読めていたけど、それでも面白かった。不思議で少し怖い。
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7つの短篇を収めた短篇集です。個人的には「独裁者の掟」が良かったです。善悪は捉え方によってどうとでも変わるというのがよく分かります。「門」の最後のオチもニコッとさせられる爽やかなオチで良かったです。ハードSFということで専門用語も沢山でてきますが、判らないところはすっ飛ばして読むってことでも問題なく読めると思います。ただ私には判らないことが多すぎて少々消化不良ではありますが。
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SFはほとんど読まないので時間の歪みとか難しかった。膨大な宇宙では一度離れてしまうと同じように進んでいる人に会うのは困難であるのね。「キャッシュ」「海を見る人」「門」の切なさが好き。
Posted by ブクログ
「重力が小さい世界」「場所によって時間の流れが変わる世界」などの話を集めた短編集。
これらの設定は「そういうもの」としてファンタジーで描かれることが多いですが、本書ではそれらの現象全てに科学的な解説がなされています。
解説については難しく理解できない部分も多かったのですが、元々ファンタジーとして描かれる題材なので話自体はとても楽しめました。
しかし解説部分の多さはちょっと気になるところ。
Posted by ブクログ
科学的な説明がゴリゴリのところは、よくわからなかったので、眠くなることが多かったが、話の筋としてはどの作品も面白かった。よく言葉の定義もわからずに使ってみるが、僕の実感として、これはまさしくハードSFだった。
Posted by ブクログ
短編集。SF的知識はサッパリなのであとがきにも書かれていたようにファンタジーとして読んだ。何かスッキリしない話が多い。独裁者の掟、キャッシュ、門あたりの話が好き。表題作は期待しすぎたせいでイマイチだった。