小林泰三のレビュー一覧
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「天獄と地国」小林泰三
異世界SFアドベンチャー。特になし。
「海を見る人」に収録された同名短編の長編化作品。
天と地のひっくり返った球状世界の外表で、繰り広げられる宇宙船・超兵器戦・ハイテクノロジー・終末感・未知への冒険。
世界の設定が相当に物理で。短編の時から好きでしたけど、もっと深くつっこんだストーリーで読み応えありましたね。
グロテスクはないかなーと思ってたら、全くそんなことはありませんでしたね!甘かった(笑)
泰三さんの長編は共通点があると思うんですが、もっと広く浅くストーリーを拡げて収めてすればいいものを、どこに向かって育つか分からない根のように、思いつくままに進んでいくんです。
悪く言えば伏線とその回収なんてもんは全然見えない、良く言えば次から次へと新しいアイデアが出てきて飽きない。ストーリーからの必然よりも設定をいかに活かすかという。
ま、好みだと思います。自分は嫌いじゃない。
結局カムロギ達は世界が球殻状であることに到達するのですが、まだまだ語り尽くされていないので続編が楽しみです。(4) -
Posted by ブクログ
ネタバレ好きな作家の一人。
変態描写人間として、一目置いている先生であります。
泰三。「タイゾウ」ではなく「ヤスミ」と読む辺りにすでに変質性を感じるぜぇ。
「ぁぅぇぇぉぉぉっっヶッッャョュ」
悲鳴ですよ。これ。
こんな、よくわからない人間の表情とリアルな臓物の表情をグチャグチャと混ぜて…うげぇ
ストレートで気持ち悪い表現を、ここまで全力投球できるものか…肩壊すぞ。
ただ、気持ち悪いだけではなく人間の感情というか、ヒューマンドラマ的な要素もしっかり短編で纏めてくるあたりが巧いなぁと思う。きいきい。
また、ホラーとSFの両面を話に巧く織り込んできいきいなので妄想好きの人は、はまり易いんきいきいきいんではないかな。
気持ち悪いけど、後味が悪くない。
だから、おかわりしてしまう。きいきいきい。
今回の作品は他の作品に比べてクオリティがきいきいきいきいなので星三つ。
「臓物大展覧会」という表題を掲げられる環境と地位にきいきい、星一つ。きいきい。
きいきいきいきいきいきいきいきい。 -
Posted by ブクログ
続巻が出ても出なくても通じるような終わり方だった。わざとなんだろうか。
簡潔にいうと、超能力者集団(組織)vs.一般人(主人公)の闘いを描いたハイパークローン戦争…みたいなもの? マンガちっくでラノベっぽいノリで書かれていた。
そんな所は【ネフィリム】に近いのかもしれない、仕組み的には【AΩ】のほうが近い気がするけど…元ネタがありそうな所が。
ラノベ的とはいっても、アプローチの仕方は理系の小林さんらしいかも。
ひとりvs集団の闘い…それも相手はどんなとんでもない超能力を持っているかわからないとくれば、不可能で無謀な事のようだけど、主人公はどんなに相手との力量差があろうとひるまず向かっていく。
いわゆる“英雄”とはそういうものだからだ。彼の存在意義がそこにある。
先天的ではなく後天的に英雄たろうとする主人公というのが新しいと思った。
また、敵を倒すにしても、「倒せた理屈」をちゃんと説明してくれるのが面白い。それが明確で説得力がある。キャラクターはペラペラの紙人形がしゃべっているみたいにリアクションや言葉遣いに個性がないのに、事象の説明や論理的な説明ゼリフには作者の個性があふれている。
むしろ意図的にキャラクターへの感情移入は避けていたのかもしれない、そうすることでより「チープな作品」と思われる恐れがあるにも関わらず。勇者だと思った。
しかしエンタメ小説…ともズレているし、なぜ突然こんな作品を書いたんだろう、という作者に対するもやもやは残る。そして表紙の女は誰なんだか… -
Posted by ブクログ
知り合いが「ハードSF読みたいならこの短編いいよ」と薦めてきた一冊。
様々な舞台や設定を元に生み出された短編集。一つ一つはまったく別物のように見せながら、最終的には一つに収斂していくという、よくあるパターンのひとつです。大好物です。
読み口はあっさりしていますが、分類はかなりのハードSF。実際に各短編に出てくる数値を計算してみると、かなり数式に忠実に世界が構築されていることが分かります。その徹底振りから著者が生粋の変態であることが伺えます。
関数電卓を片手に計算しながら読むと色々わかって面白いと思います。もちろんそこらへんを意識しないでも特に問題なく物語として読んでいけるのが、この本のウリでもあるのでしょうが。そういう意味ではまさしく「一度で二度美味しい」本といえるかもしれません。
個人的に面白かった短編は、「独裁者の掟」と「門」。
どの短編も、広がりすぎず狭まりすぎず、ほどよい後味でした。 -
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奇妙でどこかねじくれた世界。「レイ」を探す女性と探偵。
後味の悪い話って基本的に苦手なのですが、なんかこの話の主人公たちにはそいうものを感じないんだよなあ。
なんでそうなる?! と思うことはあっても、恐怖するというより笑ってしまう。
その独特さも小林泰三の持ち味だと思うんだけど。グロさと共存する可笑しさ。笑えないけど笑える。やっぱり小林さん好きだ。
「ものぐさ」は、読んでてイライラするけどこういう考えって自分でも無意識にしてるなあ、とちょっと反省した。
「自分が行動できないこと」を棚にあげて勝手に誰かに期待して勝手に絶望して、勝手に憤る。
ちょっとせつなくなりました。
あんまり後味が悪くないのは、主人公たちが自分の心の中では納得しているからなんだろうな。
探偵さんのフォローも的確というか屁理屈というか。
一番の衝撃は、ラスト数ページ。
もしかしてこの二人は「密室・殺人」のあの二人なの? それとも似ているだけ?
「密室・殺人」の二人は大好きだから、この結末は切ないなあ。
彼女には元気で幸せでいてほしい。そこだけちょっともやもやが残る話。 -
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「わたしが目を覚まさないように気をつけて」隣室に棲む土気色の肌の女は言った。指の付け根で目を擦りながら――この世界すべてを夢見ているという女の恐怖を描いた表題作、物理的に実行不可能な密室殺人を解明する驚天動地の推理劇「超限探偵?煤v、無数の算盤計算によって構築された仮想世界の陥そう「予め決定されている明日」ほか、冷徹な論理と呪われた奇想が時空間に仕掛ける邪悪な七つの罠。(裏表紙より)
宇宙船クラーク号乗組員・西山下腕彦はドッキングした有人基地A3の内部で頭部を切り離された五人の男女の死体を見つける。その中には喧嘩別れしたままの頭角河子がいたのだ。「脳食い」
空から吹く風の正体に興味を馳せていたオトは、計算の結果、自分の世界の重力が衰退していっていることに気付く。「空からの風が止む時」
日本にエイリアンが現れたというニュースを見た直後、トイレのドアを開けると、そこには等身大の蚊がいた。言葉の通じない“彼女”を蚊子と名付けてみたものの……。「刻印」
古くからの友人・丸鋸遁吉に呼び出され、向かった“わたし”と鰒(あわび)と碇の三人は、丸鋸に発明品を見せられる。その名もターイムマスィーーン。丸鋸は両手で奇妙なポーズをとった。「未公開実験」
・「目を擦る女」
夢と現実が混在する作品は多数見受けられるが、慄然と逆転させているのが新鮮だった。
・「超限探偵?煤v
内容的に前編後編に分かれている。核シェルターの事件で、〇オチを使っておいて、地中の棺の事件では〇想〇実とは。笑かしてくれる。
・「脳食い」
異形コレクション『夢魔』収録作。夢を食うのは獏だが、こちらは脳を食う猿と蛙の中間形である。『ソラリス』を彷彿とさせる、ただのファーストコンタクトあるいは宇宙パニックものではないところが憎いし、怖い。
・「空からの風が止む時」
本作では、浮いた感じのSF作品。ホラーではないが、あっさりとしたラストの反転に出る作者の人の悪さが胸に残る。
・「刻印」
個人的ベスト。
蚊=〇〇鬼のリンクは奇抜ではないが、映画『タイムマシン』の切なさを思わせる純愛が重なれば、仰天せざるを得ない。
・「未公開実験」
ネタは珍しくない。白眉はターイムマスィーーンに尽きる。わたしはポーズを(ry
・「予め決定されている明日」
算盤計算で構築された仮想世界て(笑)
なんとなく藤子不二雄の世界観を想起させた。しかし、ラストは(苦笑)
作者は天才。 -
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■内容(「BOOK」データベースより)
犯罪抑止のために開発された「人工脳髄」。健全な脳内環境を整えられることが証明され、いつしかそれは一般市民にも普及していった。両親、友達、周囲が「人工脳髄」を装着していく中で自由意志にこだわり、装着を拒んできた少年に待ち受ける運命とは?人間に潜む深層を鋭く抉った表題作他、日常から宇宙までを舞台に、ホラー短編の名手が紡ぐ怪異と論理の競演。
■感想
表題の脳髄工場は途中まではものすごく面白かったんだけど、最後がしょぼーんでした。
あとクトゥルフはぜんぜんわからないから、C市のアレはぽかーんとしてしもうた…。
ただややがっかりだったのがこの2作品てだけで、他は楽しめました。
特に面白かったのはドッペルゲンガーの話。
脳髄工場のラストをひきずっていただけに、ドッペル消して終わるのかなーと思っていたら……だったし。
心霊写真も面白かったな。
小林泰三の本は漫画ちっくな感じがする。
内容はホラーなのに、どこかジョークがきいていてコミカルに思う。 -
Posted by ブクログ
「奇憶」「器憶」「キ憶(キは土遍に危)」の3作品を収録。
連作短編小説と銘打ってますが、繋がりはほとんどないのでどこからでも読めます。以下、それぞれの感想↓
『奇憶』
直人のダメ人間描写っぷりが素晴しい。こんな風になる前にちゃんとしよう、と決意させてくれる。
平行世界についての説明が詳しくなされている事により、ただの不思議で怖い体験ではなくなり、論理立てられたこの世の真理として誰もが巻き込まれる可能性のある怖さ、となっている。
「ショゴス」「シュレディンガーの猫」「ブラックホール」などの単語に反応できる人は読むと良いと思う。
『器憶』
「腹話術師」と「腹話術人形」の話。
とくればある程度予想は付くわけで、いわばそれをどう魅せるか、というのが作者の力量となる。
で、小林泰三である。
その一。
発音についてやたら詳しく解説してみせる。マニアックな感じで面白い。
その二。
意識をコンピュータのプロセスに例えて論理的に説明してみせる。なんか思わず納得されかける。
その三。
なんだか妙なところで頭の良い主人公が逆転劇をしようとする。ハラハラ。
その四。
最後はさらっとブラック。このさらっと具合が素晴しい。
というわけで、とても面白い。
『キ憶』
初読時は「え、これで終わり?」と思ったが、読み返すと底が抜けるような恐怖がある。
そもそも、主人公の状態を考えると謎が解決されたところで意味がないのだ。ただの繰り返しである。
後味は一番悪い。