小林泰三のレビュー一覧

  • 代表取締役アイドル

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    ネタバレ

    小林泰三の作品は、アリス殺しから
    始まるシリーズ物から知ったが、こ
    のシリーズとは違うジャンルではあ
    る。
    独裁的な創始者が経営する大企業に
    地下アイドルが取締役として、抜擢
    される。
    荒唐無稽なノルマを課せられて、社
    員達はある方法を思いつくが、会社
    は、絶望的な方向へ
    一気に読めて、最後は創始者を含め
    皆、わりかしハッピーな結末だった
    ので、読後感も良かったと思う。

    0
    2023年01月28日
  • 海を見る人

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    SFは読み慣れないところもあって、作中の理論にはほとんどついていけなかった。
    ストーリー自体は小林泰三らしい。個人的には「独裁者の掟」と「キャッシュ」が好きだった。「独裁者の掟」は読み進めて総統の背景が分かってくると途端に無機質な人物だった総統の人間らしさが伝わってくる書き方がうまいなと思った。

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    2023年01月15日
  • わざわざゾンビを殺す人間なんていない。

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    世界的に免疫力の低下により発症されるゾンビウイルス(正確にはタンパク質で構成された感染症の病原体である、と作中で説明されている)が蔓延した物語の舞台で発生した密室殺人事件を八つ頭瑠璃という女性の探偵が解決の為尽力するミステリー小説。
    非現実的な存在に妥当な根拠を与え続けるので説明が冗長になっているのですが、そのくどくどしさが世界観に整合性を見出しており、現実で起こり得るかもしれないという怯懦が作品の魅力を倍増させてくれます。しかしそれ故に登場人物達が合理的で詳細に話を展開していくので情緒というものがあまり感じられませんでした。
    説定フェティシズムの方には是非読んでいただきたい作品です。

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    2023年01月07日
  • 玩具修理者

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    ネタバレ

    ホラー小説大賞短編部門を受賞した「玩具修理者」と独特の視点からタイムトラベラーを描いたSF「酔歩する男」の二編。

    ・玩具修理者
    ある夏、喫茶店にて、男女の会話は幼いころに出遭った「玩具修理者」の思い出に移る。 なんでも直してくれるという事で近所で評判だったその人物にあの夏転落死してしまった弟を預けたというのだが・・・。
     
    ・酔歩する男
    飲み屋で出会った男は、大学の同窓生であり、昔は親友であり、今は無関係だという。 私は目の前の男に何の覚えもない。 それでいて相手は私のことをよく知っている。 大学時代の過去の話とその顛末を聞くうちに私の意識は揺らぎ始める・・・。
     
    独特なSFじみた非現実的

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    2025年05月31日
  • 失われた過去と未来の犯罪

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    ネタバレ

    突如訪れた「大忘却」によって人類は新たな情報の記憶能力を失った。 覚えてられるのはごく最近の出来事である短期記憶と体に染み付いた手続き記憶だけ・・・。 遠くない未来、人間の記憶は体に埋め込む機械型のメモリーに委ねられた。 ここに一つのメモリーがある。 体は事故で失ってもう無い。 生きた人間にこのメモリーを挿し込めれば。 これは未来の犯罪の物語。

     小林泰三氏の「記憶」をテーマにしたSF作品。
    第一部にて人類が記憶能力を失った様子をパニック小説のように描いている。あくまで失ったのは「大忘却」以降の記憶能力で機械の操作などの手続き記憶やそれまでの人生での記憶は保持されていた。実際過去の記憶を完全

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    2025年05月31日
  • 天体の回転について

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    ネタバレ

    ハヤカワ文庫から出てる小林泰三の短編ですね。レーベル通りSF寄りの作品が多めです。
    後に失われた過去と未来の犯罪 や 記憶破断者になるような記憶の扱いが見られファンには嬉しい作品かもしれない。ミステリーとしては、重力が無いのが普遍的な未来の世界で実は重力のある地球が舞台でしたという叙述トリックを成立させたい文学少女の話が面白い。彼女らにとっては血が吹き出たら球体になるし、ジャンプをしたら落ちてくることは無いのだ。

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    2023年01月04日
  • ティンカー・ベル殺し

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    ネタバレ

     いわゆる「メルヘン殺し」シリーズ第4弾。アリス、クララ、ドロシィと続き、今回はティンカーベル。相変わらず、地球とが存在する世界で物語が展開される。
     アーヴァタールが死亡すると地球上で対応する人物が死亡するが、地球上で死亡してもそれは「夢」という形で残り、アーヴァタールが死亡するわけではない。共通する登場人物は、地球上では大学院生の井森建であり、そのアーヴァタールは「不思議の国の喋る蜥蜴」ビル。基本設定はそのままで、様々な世界で犯罪が起こる。 
     今回はピーターパンの世界が舞台。井森は雪山の旅館で開かれる同窓会に参加している。ピーターパンに対応する人物は日田半太郎。同窓会の参加者や旅館の従業

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    2022年12月25日
  • 失われた過去と未来の犯罪

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    ネタバレ

    色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。本物と幻を区別する方法がないのなら、本物と幻は同じものだと考えるしかない…そんなめちゃくちゃな!(でも「阿・吽」で般若三蔵も「目に見えるものも記憶も全ては虚妄」って仰ってた…)
    人とは記憶なのか、魂とは記憶なのか。ある人の記憶を他者に入れたら、その人を定義するのは肉体に依るのか記憶に依るのか…これはだいたい記憶が勝っていました。記憶が永遠に失われないとしたら、人が死ぬことは無くなるのか。
    いやぁもの凄いですね…人類の記憶が10分しか保たなくなるパニックSFかと思いきや、人とは何かをじわじわ考えさせられ始める。数多の人々の記憶を取り込んで輪廻転生に近いもの

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    2022年12月22日
  • ティンカー・ベル殺し

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    ネタバレ

    言葉遊びの相手が、ビル以外にもう一人増えて、今回はビルが多少まともに思えてしまいました(笑)。
    今までのお話も、殺人のハードルが低かったですが、これを読んでしまうと、まだまだだったんだなと思ってしまいます。殺人事件の容疑者を探しているはずなのに、事情徴収がてら殺していくっていう、矛盾を突き進む感が凄いです。息をするように殺しまくるピーターパンが、どこまでも怖い。参考文献の本が読んでみたくなりました。

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    2022年12月20日
  • クララ殺し

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    ネタバレ

    昔読んだ「アリス殺し」の続編。

    タイトルを聞いてモチーフはあの作品かと思ったらまさかの知らない作品ですっかり騙された。ホフマン4作品がモチーフとのことだが、その1作品があの有名な「くるみ割り人形」であるのは知らなかった。

    前作より複雑で、キャラクターを理解するのにちょっと大変だった。
    地球の世界で登場する人物は他作品に登場しているらしいので、他作品も読んでみたくなった。

    次作は「ドロシィ殺し」で恐らくオズがモチーフだろうからどんな話になるか楽しみにしたい。

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    2022年12月10日
  • ドロシイ殺し

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    ネタバレ

    アリス殺し、クララ殺しに続く3作品目。
    前2作より、事件が起こるまで長かったような気がしました。が、その分世界観に慣れてから考察し始められたのかな、とも思います。
    そして、前2作よりもミステリー自体は簡単で、今まで読むのが大変だったような方には、読みやすくなっていると思います。
    ただ私は、今まで通りのどんでん返しを期待していたので、少し物足りない印象でした。
    ラストの部分では、アリス殺しのワンシーンが、主人公ではなかった井森くん目線で描かれていて、面白かったです。

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    2022年12月07日
  • わざわざゾンビを殺す人間なんていない。

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    ネタバレ

    ゾンビウイルスがまん延した世界。
    描写がグロテスクで飛ばし読みしてしまったところもありましたが、遺体活性化現象、活性化遺体とゾンビという言葉を用いず、これ以上うまい表現があるだろうかと変なところに感心してしまいました。

    ゾンビウイルスが世界に与えた影響、経済や特に食料問題などのことも細かく設定としてしっかり描かれており、実際に同じようなことが起こったらこうなるんだろうなあと思いながら読んでいました。

    瑠璃のキャラクターも魅力的でした。
    瑠璃と沙羅の2人が話す内容から、瑠璃は沙羅のもう一つの人格なのではないかと思っていたのですが、彼を家に招いたシーンで彼の肘が瑠璃の顔に触れた的な描写があり、

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    2022年11月26日
  • 百舌鳥魔先生のアトリエ

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     初出1998(平成10)年から2014(平成26)年辺りの作品を収めた短編集。
     この作家の本は3冊目だったろうか。グロ趣味が何となく面白いと思っている。
     今回は、「インターネット時代の文学」という感じが凄くした。もはや言葉の芸としての文学は、この文学には存在しない。言葉なき文学、とも言える。言葉があるのではなく、幾らかの記号が漂っており、吾々がインターネットを漂うのと同じように、この小説ストリーム上を辿る主体は、言葉ではなくむき出しの記号を求めて漂っている。このとき自己自身はむき出しの<欲望>でしかなくなっている。この作家の場合は「グロテスクなもの」への倒錯的な欲望だけが、存在者を存在さ

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    2022年11月24日
  • ティンカー・ベル殺し

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    ネタバレ

     まず小林先生のご冥福をお祈りいたします。

     不思議の国を探し続けて、三千里、相変わらず蜥蜴のビルは彷徨っていた。今回、彼が紛れ込んだのはネヴァーランド。
     
     そこでは殺人鬼さながら、ピーター・パンが海賊や仲間である迷子、赤膚族・陽性を気ままに殺していた。
     殺伐としたその島へ約束を果たすべく戻ってきたウェンディ。

     無邪気な殺意を誰にも向けるピーター・パン。その殺意はティンカ・ベルにも向けられて……。

     シリーズの最後まで読みたかったです。それはかなわない夢となってしまいましたが、この作品も楽しく読ませていただきました。

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    2022年11月06日
  • ティンカー・ベル殺し

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    このシリーズの世界観が好きで、文庫化をずっと楽しみにしていました。途中から違和感はあったのに、気付けなかったことが悔しい。もう一度最初から読みたくなる一冊です。
    小林泰三先生が逝去されたので、惜しくもシリーズ最終巻です。巻末に書かれているティンカー・ベル殺しの後の構想を読んだだけでわくわくしたし、心底最後まで読みたかったと思わされました。
    ここまでのめり込める作品を生み出していただいて、ありがとうございました。

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    2022年11月05日
  • 未来からの脱出

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    最近自分が老人でなくとも、今覚えていることを、これからも覚えていられる根拠がなくて怖くなる。昔より記憶しておくことへの集中力が無くなった気がする。主人公達はおよそ100歳の高齢者なので記憶があやふやでも当然のように思えるが、身体と記憶以外はどこか若々しく違和感を感じた。協力者のメッセージを受け取り、導かれるように施設からの脱出を試みるが、、。2章からの怒涛の展開、世界観の構築がすさまじくて引き込まれたのでもう少し掘り下げて読みたかった。余韻のある終わり方も良かった。俺も洋服溶かし液噴出全身触手人間になりたい。

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    2022年10月27日
  • 代表取締役アイドル

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    地下アイドルの女の子が、ひょんなことからちょっと大きな企業の社外取締役になるお話。創業者一族によるワンマン経営で、社風はとにかくブラック。
    主人公の活躍があまりないのが残念。そう甘くは何だろうけど、一発逆転のお話であってほしかったかな。

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    2022年10月20日
  • 未来からの脱出

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    至れり尽くせりの福祉施設(のような所)からの脱出を目指す老人たちの話。前半は状況が見えずに少しモヤモヤとしますが、主人公が脱出に成功して以降はなかなかに壮大なお話になります。最後ちょっと尻切れ感はあるかも。

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    2022年10月17日
  • わざわざゾンビを殺す人間なんていない。

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    ゾンビウイルスが世界中に蔓延し、死ぬとゾンビになるのが一般化した世界を舞台にしたミステリー。被害者が密室でゾンビ化し、どうも他殺らしいという特殊状況の密室殺人ミステリーです。ちょっと状況説明に凝りすぎなきらいがありますが、ミステリーのロジックはしっかりしています。

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    2022年10月17日
  • 杜子春の失敗~名作万華鏡 芥川龍之介篇~

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    芥川龍之介の小説の登場人物と、主人公たちが様々な手段で交信する、ちょっと奇妙なお話です。なかなか面白い試みだと思います。楽しく読めました。ただし、人食いっぽい描写もあるので、要注意です。

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    2022年10月17日