小林泰三のレビュー一覧
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色々なタイプの事件の短編ミステリー集です。
・大きな森の小さな密室(犯人当て)
・氷橋(倒叙ミステリ)
・自らの伝言(安楽椅子探偵)
・更新世の殺人(バカミス)
・正直者の逆説(??ミステリ)
・遺体の代弁者(SFミステリ)
・路上に放置されたパン屑の研究(日常の謎)
「殺人鬼にまつわる備忘録」の謎をすっきりさせたくて読みましたが、直接関係はなさそうです。
「備忘録」にも出てきた岡崎徳三郎(徳さん)が「路上に放置されたパン屑の研究」にも登場します。田村二吉との普段からのやり取りがそのまま伺えます。
この短編を読んでから「備忘録」を読んだ方が、ほんの少しですが、ひっかかりがなくて良いかもしれません。
そして「進藤礼都」が出てきてとても興奮しました。
「クララ殺し」は後の作品なので、こっちが先ですが、年齢がかなり上でした。
性格はそのまま。何が気になるかはここには書けませんが、気になるっ。
「密室・殺人」にもこの2人は出ているようで、読んでみたいと思いました。
小林泰三という人の頭の中を覗いてみたい。
読むたびに想像つかない世界に招いてくれるので、読後、何だか開放された気分になります。 -
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やすみんのシン・ゴジラのようなウルトラマンのような特撮モノのような。最終バトルは好き放題に京都を壊していて面白かった。
会話のテンポがリズムよくてめちゃくちゃ気持ち良いし笑えるしで最高。会話を重ねることで本質を探ろうとしてていいし、そこまで突き詰めずにそうかもね程度に濁らせているのが、落ち着く感じ。
5行説の属性相性関係については最後まで結局覚えきれなかったので、そこだけ図は欲しかったなあと思った。棟梁毎の能力バトルや能力者vs非能力者のバトルも良かった。
京都についてある程度地図の把握をしていたので、地名が出る度にあそこか~となって楽しい。でもやっぱこれも地図欲しいな。
あと表紙イラストは砂と麒麟なんだろうか?本文中には黄色い装束を羽織ってるとあるので、おそらくだと思うけど。
紅蜥蜴は新藤礼津みたいなキャラで面白かった。キャップもいい。
続編あるなら読みたい。
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これは読む人によってラストの解釈が違ってしまう話という認識で良いのだろうか。
前向性健忘症で、数十分しか記憶がもたないという二吉。
備忘録をノートにメモしているのですが、ある日、記憶を改竄できる超能力を持った殺人鬼、雲英光男(きらみつお)に出会います。
この殺人鬼の能力と、二吉の健忘症との相性が悪く、殺人鬼にとって二吉は邪魔な存在になります。
なくなる記憶と、重要な殺人鬼に纏わるメモ、記憶を改竄しまくる殺人鬼との戦いには目が離せなくなります。
記憶に関するお話しは「失われた過去と未来の犯罪」と似たような印象がありましたが、数十分しか記憶が持たない点以外は全く趣旨が違うものでした。
小林泰三の小説は、分かりやすい文体とテンポの良さで、あっという間に読み終えてしまいます。
ラストですが「夏生」がキーワードのような解釈で終えて良いのか。
そうであった場合、全てが「改竄」されている=超能力と変わらないではないか。怖い。
疑心暗鬼になり、誰も信用できなくなってしまいます。
真相がわかるか不明ですが、解説に載っていた「大きな森の小さな密室」も、読んでみようと思います。
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ネタバレ他の本と併読しようという腹づもりで読んでいたのだが、どの篇も多彩な表現やロジックで魅了してくるためそれどころではなかった。
まず、すぐに世界観を把握させるのが上手いと思う。ああ、そういうことねとその篇の世界のルールを頭から諒解させられるので、物語がすっと頭に入ってくる。
実際に話す時もそうだが物語においても掴みは肝心なのだ。
しかもその時点で重要な伏線を張っていることがあるので以前読んだ『玩具修理者』同様油断ならない。
個人的に大好きなのは「未公開実験」、
それから「忘却の侵略」「囚人の両刀論法」、「目を擦る女」
おや大体好きだな。
「未公開実験」は当人たちが真面目なのにも関わらずやりとりがユーモラスなところが面白い。
"ターイムマスィーーン(ポーズ)"はもうやめろ!と思うくらいしつこく繰り返されるが真面目に呼称がポーズ込みなので何回でも繰り返されてその度に笑ってしまうし、
丸鋸がやってみた歴史改変も渋いところを攻めているのも面白い。魏志倭人伝って。
頭がいいのか間抜けなのかわからなくなるくらいのエンタテイメント性を感じて難しい考え抜きにおもしろかった。
「忘却の侵略」は観測すること、しないことを巧みに選択し利用することで侵略者との攻防戦を展開させる。
相手が記憶に残らない、つまり観測の痕跡を残さないことを逆手に取り量子力学を戦いに応用するアイデアが非常に独創的で面白いと感じた。
本篇では古典力学的な考え方と量子力学的な考え方が分けてわかりやすく説明されており、自分は文系で理系分野にはとんと疎いのだが、それらの考え方それぞれに興味をひかれた。自分のこれまでの考え方にない考え方だったからだ。
この作品にだけ言えることではないが、もっと勉強すればもっと楽しんで読むことができるかもしれない…知識を蓄えてまた挑みたい。
「囚人の両刀論法」は規模が大きく、それだけでドキドキするテーマだ。
幸福の追求は地球とそれ以外の文明にも共通するイデオロギーだった。
やがてそれぞれの文明はその追求の手段としてまずその文明の及ぶ範囲内、つまり対内的には協調戦略をとるようになる。
ここまでは主人公の理想とする世界だったが、それぞれの文明がぶつかり合う—対外的に協調戦略をとらぬ相手と接触したとき、文明の幸福は脅かされる。利己的な文明に相対した時には文明を守るため、幸福のため、それによって蓄えられた潤沢な資源を利用して迎撃する他なくなる。利己的にならざるを得なくなる。
「囚人の両刀論法」を克服したかに思われた文明のどちらも、そのような結果に帰結してしまう。
問題の克服がさらなる問題を生み出すことについて、よく考えさせられた。
「目を擦る女」は純粋にホラー作品として面白かった。
描写としては八美の笑顔が、八美の言動そのものが不気味で恐ろしいし、舞台設定も悪夢のようだ。
これは個人的に感じることだが、自分以外の不可思議な存在が世界存続の命運を握っていることはなんとも不愉快だ。クトゥルフ神話的にいうとこれはアザトースの夢だな。
ただ、人はそれぞれ主観的にできている。これが他人の夢の世界だろうが仮想現実だろうがそれがその人の現実だ。八美は八美の夢の中の操子の現実を脅かした。だから殺された。
結果的に操子はこの夢の世界を引き継ぐ。だが夢は個々人の主観的なものであるはずなので、それを引き継ぐということはありえない。
それがありえるなら、彼女たちは同じ夢と同じ現実を共有しているということになる。この物語上ではもしかすると、二つの世界が現実として存在しているのではないだろうか。引き継ぎが可能であるということから、胡蝶の夢という言葉を強力に突きつけられたように感じる。
最後の操子の行動原理が私にはどうしてもうまく解釈できない。
どちらも現実だから、操子は八美を殺してしまったことに報いる必要を感じたのだろうか。それは、夢として語られる現実を強制的に終わらせることでしかできないことだったのだろうか?これについてはまた読み直して再考してみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
小林泰三さんの小説はアクが強い、というのが自分の中のイメージ。独自のユーモアやブラックジョーク、ナンセンス、詳細なロジック、特異なキャラクターに文体、そしてグロ描写と、合わない作品はどうにも合わないのですが、ハマるときはハマる、そんな不思議な作家さん。
この『海を見る人』に関して言うと、文章や独自のユーモアやといった小林さんのアクの部分は大分抑えめな印象。一方で精緻なSFの論理と世界観のこだわりであったり、通常の概念を揺さぶるような物語のテーマは健在。「綺麗な小林泰三さん」というべき短編集かも。(他の作品のイメージが、どんなんなんや……と思われそうだけど)
収録作品は全6編。そしてそれぞれの短編を繋ぐ、幕間の短い会話で構成されています。短編が語られた後にある、二人の人物の会話の部分が本全体の雰囲気を醸し出しているように思います。異なる論理が支配する世界での人々の考え方や生き方。それを読者はどう受け入れるか。その道標の一つにとして考えさせられます。
最初に収録されている「時計の中のレンズ」は難しかった……。どんな光景が広がっているか。世界観はどういったものなのか。ハードSFの論理は正直ちんぷんかんぷんだったものの、世界観の壮大さだけはかろうじて分かりました。
宇宙を舞台に遊牧民族の旅と、少年の淡い恋とほろ苦い成長を描いた短編です。
「独裁者の掟」は異なる二つの宇宙国家の戦争と、強国の統帥の独裁。そしてそれに翻弄される人々を描いた短編。
戦争の中奔走し、自分の使命を果たそうとする人々の生き様と、無慈悲な統帥の政治の様子の対比が印象的。そして意外な展開が待ち受けると共に、善と悪の概念が揺さぶられました。
「天国と地国」も壮大だったなあ。
侵略者に襲われ、壮大な宇宙空間を旅する四人の男女。ある日彼らは、うち捨てられた様子の拠点となりそうな星を見つけるが……
神話と思われていた星が存在するかも、そしてその星の正体は、というのがなんだか途方もなくワクワクする話でした。この短編を長編版にしたものもあるらしくて、そちらで物語のその後が語られるのかも、気になります。
「キャッシュ」は仮想空間と現実空間が交差する探偵もの。
この世界観と設定ゆえの捜査や推理であったり、そして犯人の正体であったり、結末であったり、そしてSFならではの哲学的な面もある、とても好みの短編でした。
「母と子と渦を巡る冒険」はこれが一番小林泰三さんらしい作品かもしれないなあ。
お母さんのためボロボロになりながらも宇宙空間をめぐり、情報を集める子ども。明るくユーモラスに(?)描かれるグロ描写ととぼけた雰囲気。そして結末のブラックさと、小林さんらしさにある意味満足しました(笑)
表題作の「海を見る人」は時間の経過が異なる二つの世界の少年と少女を描いた恋愛もの。
最後に老人が海を見続けている意味が分かると、切なさの中に一種の狂気的な部分も垣間見える、これも独特の短編だなあ。老人が見続けているものを想像するにつけ、残酷なようでいて、ある意味甘美なようにも思えて、気持ちがざわざわします。
「門」は量子テレポートとそれを守ろうとする人と、破壊しようとする人々を描いた話。
小さな宇宙船に艦隊が攻めてくるという、派手な書き出しから、艦長と語り手のいじらしい関係性に結末とこちらも面白かったです。
世界観を全て理解しようとすると、相当ハードルは高い気がしますが、ぼんやりとでも雰囲気さえ掴めていれば、どの短編もその世界観ならではのドラマに、読み手を引っ張っていってくれる、そんな短編集だったと思います。 -
Posted by ブクログ
これは発想がおもしろいなぁ。
本書は2部構成。突如として記憶が短時間で消えてしまう「大忘却」が発生した世界を舞台に、第1部では大忘却発生から事態の把握とトラブルの回避に努める人々を描きます。一方、第2部では時を進め、人々が記憶を外部記憶装置に頼ることになった時代、そして大忘却後に生まれた人々が繰り広げるドラマを通じ、人間の本質や世界の姿を考察するところまで至ります。
第1部はドタバタ劇と泰三流ロジカルを楽しめましたが、第2部の最初のドラマを読んで、ああ1部は序章に過ぎなかったのだな、とてもおもしろいテーマを扱ったな、と痛感しました。最初のドラマとはちょっとした事故で他人の外部記憶装置を間違ってはめてしまうというもの。その結果、記憶は自分だが、体は他人という事態が発生。これは、自分とは肉体ではなく記憶なのか、自分の定義とは一体何なのか、という問いに結びつきます。第2部ではこういった肉体と記憶が切り離せるようになった世界で、アイデンティティーを問うようなドラマが展開。ついには外部記憶装置により、死者を蘇らせることすら可能になります。
テクノロジーの進化がアイデンティティーの所在を問う物語はもちろんこの作品に限りませんが、ちょっとユニークな事象をキックに思考を推し進めるところが著者らしさでしょうか。
泰三流のイかれた掛け合いこそ弱めな印象ですが、時折垣間見える登場人物のクレイジーさにニヤニヤしたりと、人におすすめしたくなる作品でした。 -
Posted by ブクログ
小林泰三のミステリ短編集です。
7篇収録されていて、それぞれが特定のテーマに沿って構成されています。
犯人当て、倒叙ミステリ、安楽椅子探偵、バカミス、??ミステリ、SFミステリ、日常の謎という7つのテーマになっています。
出てくる登場人物が、ほぼ変人なので、シリアス展開はほぼ無くコメディ展開になっています。
巻末には登場人物紹介なんてもついてたりしますが、超限探偵Σだけ説明がめんどくさいので作品見ろになってたりとか。
結構な箇所でニヤリとしたりクスリと来たりするところがあります。
1本1本は短いので読むのもお手軽ですね。
面白かったのはSFミステリですね。このまま展開して終わるのかと思ったらもう一段階あるとか、マトリョーシカかこれはという感じで。
ホラーのイメージしか無かったのですが、ミステリもなかなかおもしろいです。