小林泰三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ根幹を成すネタバレになるけど、これピノコの話だ。彼女の存在意識して読むと、すべての感動がネタバレになってしまうので言いたくはないけど、ピノコの話だ。
ゾンビの存在が認知されている社会。その認知が食料として浸透している社会。食人という倫理観が崩れていく過程が淡々語られている部分に、静かな恐怖感じます。あぁ、人間ってどんなタブーでも理屈さえつければ、それがマジョリティになってしまえば、順応していくんだなあ、という怖さ。
自分たちとは違った倫理観の社会の中でも、さらにきわどい感覚を持つゾンビイーター。ただ、そんな感覚の持ち主でも殺人犯に対しては持つ恐怖感は変わらないというのに、殺人を犯すということの重さ感じました。
踊り食いの残酷さ、パーシャルゾンビ食らいの凄惨さ。その二つを通じて倫理観を超越しているように見えただけに、余計にね。
身内という言葉に対して強い反感を示す場面。これもピノコということを鑑みて読むと、なるほどと頷けます。覚悟がない、というのもね。
でも、最後はちゃんと身内になれてよかったのではないのでしょうか。
なれたというか、ここからがスタートなんだけども。
ま、お幸せに。 -
Posted by ブクログ
自分はハードSF好きだと言ってきたけど、これを読んで反省した。
ごめんなさい。
これからはミーハーハードSF好きと言います。
それくらいきっちりと計算されていたり、科学理論が描写の背景にある。
何と言っても作者が「ばりばりのハードSFファンの方々には、できれば電卓を片手に読んでもらいたい」と挑発的なことを言っているのだ。
「がっつり計算してますよ、お前らもやってみろ。ハードSF好きなら当然できるよな!」ということだ。
そしてこれを受けて解説で向井さんが「天獄と地国」の計算をしている。
これはもう計算なんか全然できない自分は到底ハードSF好きなんて口幅ったくて言えやしない。
とは言え、作者が言うように計算ができなくても十分楽しめる。
まぁ多少理屈や計算を見せたいがためにこの話作ったよね、というところが見える話もあるけど、全体的には悪くない。
一番好きなのは「門」。
時間関係好きなんだよね。
面白かったです。 -
Posted by ブクログ
最初の三編『ショグゴス』『首なし』『兆』がすごくよかったです。
『ショグゴス』寓話的で皮肉の効いたSF短編。南極に現れた謎の海百合型生物と不定形生物。二種の偏った依存関係を否定しながらロボットの人類への奉仕を当たり前とする人類の矛盾。人類側指揮官の倫理感により話が予想外の方向に向かっていくのがすごく面白い。クトゥルフかじってればさらに楽しい。
『首なし』あごから上を失っても生きている男。その世話をしながら愛を注ぐ女性の狂気に美しさすら感じる。
『兆』自殺したはずのクラスメートに付きまとわれる女子中学生。自殺の理由を探るうちに深みにはまっていくフリーライター。日常から異界へと足を踏み外していく怖さを丹念に描く正統派ホラー。複雑な構成が上手いし何より怖い。
『朱雀の池』は、何かのアンソロジーで既読。どうなるんだろうと展開に惹きつけられるものはあるが唐突で後味は悪い。『密やかな趣味』は、目の付け所は面白いけれどグロさ全開で悪趣味すぎてちょっと。『試作品三号』は、SFバトルもの。軽いノリで楽しい。『百舌鳥魔先生のアトリエ』は、これも悪趣味なんですけれど、主人公の驚きと気持ちの変化に同調できる丁寧さがある。当たり前が壊れていく怖さ。