あらすじ
頭上に地面、足下に星空が広がる世界。人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めない者たちは「空賊(パイレーツ)」となり村々から資源を掠め取るか、空賊の取りこぼしを目当てに彷徨う「落ち穂拾い」になるしかない。世界の果てにもっと人間の暮らしやすい別天地があると確信した、落ち穂拾い四人組のリーダー・カムロギは、多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、楽園をめざす旅を続ける――。傑作短篇の長篇化完全版!天地が逆転した困窮の宇宙空間における生き残りを賭けた戦いと冒険を描く長篇宇宙SF。
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『AΩ』に次ぐ、小林泰三のSF長編第2作。
「天国と地獄」ではなく「天獄と地国」であるのが、設定を語っている。大地は頭上にあり、下は星海。落ちるということは遙か真空の宇宙空間に吸い込まれてしまうわけであり、これが天獄。人々は大地に穴を穿って住み、乏しい資源とエネルギーをやりくりして何とか「村」を維持している。大地の下には独立した岩塊「飛び地」があり、ここには空賊が住み、村を襲っては資源とエネルギーを奪う。破壊された村の生き残りは「落穂拾い」となって、一人乗りのオンボロ宇宙船を駆って、空賊の略奪の残り物を漁る。
という設定からすぐさま、この世界の人々は遠心力によって疑似重力を生み出している人工天体の居住区間の外側に張り付いて生活していると推察される。人工天体が『宇宙のランデヴー』のラーマのような円筒体か、リングワールドのような環か、はたまたダイソン球のような球状物かは当初はわからない。どうやら内側にちゃんとした居住区はあるらしく、そこにはたぶん資源もエネルギーも豊かにあるだろう。そこが地国なのである。
主人公は落穂拾いのチーム・リーダー、カムロギ。彼らはこの世界の最低層なのだが、大地に埋まった人間と昆虫を合わせたような体長数百メートルの巨大人造物を発見し、地国を目指す。この世界には「天使」とも「邪神」とも「ギガント」と呼ばれる、類似の巨大兵器が3つあって、力のバランスを取っていたが、そこにカムロギたちが参入し、スーパーロボット大戦が発生する。ここが中盤の読みどころで、巨大ロボット・アニメへのオマージュだ。しかし小林泰三だから若干ながらスプラッタな味わいが注入されている。カムロギが何だか素朴でいい人なのも味がある。
そして当然のことながら終盤に向けて、物語はこの世界の構造の解明へと進む。
『海を見る人』所収の同名短編の長編化。
読みながら情景をイメージするのだが、大地たる人工天体はたぶん球体で、私は球状に湾曲した大地とその上で戦う巨大ロボット(の如きもの)をイメージする。どうしてもそうイメージしてしまう。違うのである。頭上に広がる超巨大な球状の天体とその下で戦う巨大なロボット、なのである。そのたび頭の中で情景をひっくり返しながら読んだ。何と頭の硬いことよ。
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ーーー頭上に地面、足下に星空が広がる世界。
人々は僅かな資源を分け合い村に暮らしていた。村に住めない者たちは「空賊」となって村から資源を掠めとるか、空賊の取りこぼしをを求めて彷徨う「落穂拾い」になるしかない。
世界の果てにもっと住みやすい世界があると確信したカムロギは、
多くの敵と生き残りを賭けた戦いを繰り返し、
楽園を目指す旅を続ける。
小林泰三の傑作短篇を、完全版として長篇化した作品(・∀・)
同名の短篇は『海を見る人』に収録されています。
非常に完成度の高いハードSFやわ(^p^)
いかに生き残るかに全てを賭ける登場人物とそれを裏付ける精密かつ不自然な
世界。
短篇のときは空賊との絡みがメインになるかと思ってたけど
まさか某汎用人型決戦兵器的な存在を手に入れるとは…。
そしてやはり小林泰三、単なる「驚愕のラスト」では終わらせないところもまたいい!(・∀・)
続編ぜひ刊行してほしいなー(^p^)
Posted by ブクログ
小林泰三の天獄と地国。天地の重力が逆転している世界(天=人間の上方に引力がある)。そこでは細々とわずかな資源をめぐって空賊が跋扈していた。カムロギたちは空賊が略奪した後おこぼれを狙う「落穂拾い」と呼ばれる最底辺の仕事に従事していた。カムロギはある日巨大なロボットを発見しそれに乗り込むと、三か国が所持する巨大ロボット同士の戦いに巻き込まれていく。カムロギ、ナタ、ヨシュアの三人がロボットに乗り込んで巨大ロボットを知恵を振り絞って撃退するロボットアクションがとてもいいし、三人がトリオ漫才のように掛け合いをするのが面白い。亡き作者のあとがきではまだまだこの世界観を続けたい意向があったようだが、残念だ。
Posted by ブクログ
第43回星雲賞受賞(日本長編部門)。
タイトル、ぼーっと見ていると書き間違えるのでご注意。堅い本かと思っていたけれどとんでもない。
明らかに「異世界」を感じさせる世界設定で、物語のつかみはOK。導入で、少し説明的なセリフも多かったりするけど、最初のうちだけなのでまあ許容範囲か。
一旦物語が動き出すと、序盤から、何となく、ちょっと前のロボットアニメを思わせるようなハイペース/ハイテンション(燃える?)で進んでいく。こういった、次々とイベントが起こり飽きさせない展開や、ほぼ全編会話で進む文体(ライトノベル的?)。攻略法を見つける、ゲーム的な展開。イマドキの読者が触れている、小説だけでない、マンガ、アニメ、ゲームなどの作品/世界、つまりは「時代」に合わせた作風に仕上がっており、読みやすく飽きさせない。その中心にはサイエンス・フィクションが強く息づいている。ゼロ年代SFというと、伊藤計劃あたりの「真面目な」作品が脚光を浴びているが、この作品も、一つのゼロ年代SFの象徴とも言えるのではないだろうか。
さらに、ニヤリとさせられたのは、世界観の周辺を固める様々な細かいネタ。特に、すぐにデータ不足を訴えたり、曖昧な指示は問い詰め、人間関係に応じて翻訳の文体を自動で調節するOS。こういうネタは、今の時代ならではか。
最後にちょっとだけ、気になったところ。全編ハイテンションに飽きさせず進むのは良いのだけれど、ちょっと、ストーリー的に緩急に欠けるきらいがあるかも。主人公が頭が良すぎるため、展開が行き詰まることなく早すぎるのか。ユーモア満載、おちゃらけた?雰囲気も、読みやすく良かったのだけれども、ちょっとだけ下ネタっぽい部分もあるのが、他人にお勧めするのにマイナスかな。
Posted by ブクログ
「以前の短編の設定を…」の短編が思い出せなかったのが、読み始めてすぐに思い出しました。リングワールドの外側で生存するとしたら…、興味深い設定です。本編の記述からは、リングワールドとダイソン球の中間をイメージしました。戦闘場面等での力学法則を意識した描写が非常に見事です。最終場面から後は、本編と違う設定もしくは追加の設定を利かせた物語になることが予想されるので、続編があるにしても一旦ここで終了するのは納得がいく展開です。既出の短編の設定を活かしたこの手の長編化をもっと期待しています。
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面白くてあっという間に読んでしまった。
多分世界設定に惹かれるんだろう。
頭上に地面、足元に星空、極端に資源不足な過酷な世界での生き残りのための生活
超兵器同士の戦闘シーンも面白いけど、空に向かって落ちていくシーンが何とも言えずいいなぁ
ラストが少し暗いけど、明るい面が無いわけじゃないのでイイかな
Posted by ブクログ
あーー楽しかった!!!面白かった楽しかった。王道娯楽、宇宙活劇だと思う。
泰三先生お得意のグロは大分なりを潜めている…と思うので、そこが苦手な方にもどんとお勧めの逸品となっております!(あ、ゼロではないんですけどね……グロではなくて、リアルを追求していると理解してます!)
世界設定は、表紙のイラストとタイトルがきっちり示してくれている。天地が逆になっている空間で生活している人間達の物語だ。天にぶらさがってへばりついて暮らし、そこから踏み外すと真っ逆さまに星の海へ落ちていってしまう。泰三先生お得意、ガチっと理屈をこらした上での仰天世界設定。
物語は三章立て。
減少する一方の資源を切り詰めて生活する"村人"、村人から簒奪する"空賊"、そのおこぼれを拾い集める"落ち穂拾い"の生活を描くところから始まり、超兵器の発見までを描く「Ⅰ巨神覚醒」。
超兵器による闘いを描く「Ⅱ神々の闘争」。スーパーロボット大戦に超燃えた!(そして大笑いした。)
地国信仰の先にあるものを目指す「Ⅲアルゴスの目」。すーっと遠くをみつめる目になってしまう、ラスト。
どの章も異なる目玉を持っており、先へ先へとぐいぐい進んでしまう。また、登場人物達のコミカルな会話など、至る所にブラック、シュール、直球様々なユーモアが散りばめられていて本当に楽しい。笑った、笑った。登場人物の一人、ザビタンのあれがなにするところなど、快哉を叫ばざるを得ない。
泰三先生には、是非、このお話の続きを読ませて頂きたいものです!
Posted by ブクログ
タイトルを見た瞬間に、小林作品で1,2を争うほど好きな短編集「海を見る人」のあのぶらさがってる人たちだ! と思って手にとりました。
前半は読んだ瞬間、懐かしくなる4人のかけあい。
頭上の地面にしがみつかなければ、星くずだらけの宇宙に永遠に落ちていく過酷な世界。落穂拾いと呼ばれる彼らの生き方。
結局エレクトラはどうなったのか、カリテイが見た謎の物体の正体は、と気になる続きが硬派に続くのかと思いきや、そんなことはなかった!
物語はスケールの大きな、宇宙ロボットバトルものに。
ザビタンとか出てくるし。
シリアスなのに、場面を想像すると笑えたり。
アマツミカボシのパイロットになってからのカムロギは、その反動かかっこよくなってるし。
ナタがダメ子ちゃんだ。
そして彼らは世界の秘密を知るため、北限への旅に出る。
なまぐささと小賢しさ溢れる小林節も健在ですが、ザビタンのエピソードとかナタと母の話はせつない。
普通ではありえない世界を構築して、計算をして説得力を持たせて、そしてあんなに泣かせる話を書くなんて小林泰三は鬼だとしか思えない。
ロボットバトルもいいけど、アッバースについてももうちょっと読みたかったなあ。
ツヌガアラシトはいいキャラだ。
で肝心のラストがちょっとわかりにくかったなあ。
世界の形は結局、なんだったの?
リングワールドやら球体、だと崖を登る描写がわからない。
巨大なコンタクトレンズみたいな形で、カムロギたちは外側から凹んでる方にきたのかと思ったけど。
そうすると最初の描写と矛盾する?
誰か詳しく解説してほしい……。
大地を踏みしめられる地国には楽園があると信じていたカムロギたちが見たものは、そこでも結局争い合う人類の姿だってことかな。
その世界では「時計の中のレンズ」の族長たちががんばってると思うと胸が熱くなるね。
Posted by ブクログ
久々の長編、やっぱなんかグロい雰囲気。おもしろいんですが、状況(世界背景)がよくイメージできないまま終わってしまった。あと、あのエンディングはなんだ??
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人が乗り込んでくるたびにパイロットが「あーっ!」となる伝説の巨神の話……というのは嘘です(搭乗口の位置はそこだけど)。
序章みたいなところで終わってしまっているのが残念。
きっちりとした設定があるから、きっとまだまだ、いつか続きを読めるものと思います。
レギオンとかザビタン(ハァハァ(*´д`*))とかいろいろな遊びもあります。
Posted by ブクログ
「天獄と地国」小林泰三
異世界SFアドベンチャー。特になし。
「海を見る人」に収録された同名短編の長編化作品。
天と地のひっくり返った球状世界の外表で、繰り広げられる宇宙船・超兵器戦・ハイテクノロジー・終末感・未知への冒険。
世界の設定が相当に物理で。短編の時から好きでしたけど、もっと深くつっこんだストーリーで読み応えありましたね。
グロテスクはないかなーと思ってたら、全くそんなことはありませんでしたね!甘かった(笑)
泰三さんの長編は共通点があると思うんですが、もっと広く浅くストーリーを拡げて収めてすればいいものを、どこに向かって育つか分からない根のように、思いつくままに進んでいくんです。
悪く言えば伏線とその回収なんてもんは全然見えない、良く言えば次から次へと新しいアイデアが出てきて飽きない。ストーリーからの必然よりも設定をいかに活かすかという。
ま、好みだと思います。自分は嫌いじゃない。
結局カムロギ達は世界が球殻状であることに到達するのですが、まだまだ語り尽くされていないので続編が楽しみです。(4)
Posted by ブクログ
タイトルの通り、天と地が逆になった世界を舞台に展開するスペースオペラ。設定はいいし、巨大ロボット(バイオ兵器?)や宇宙艦体の戦闘シーンも迫力があって読み応えあり。なかなかオモロい小説だと思うんだが…
どうも冗長すぎるキライがある。こんだけのページ使ってこの世界の成り立ちすら見えてこない、しかもラストはほったらかし。余韻を残すというレベルじゃなく、次のページ繰らないとアカんレベルのほったらかし。
最初も最後も曖昧模糊ってのは、短編もしくは中編でこそ生きてくる設定だと思う。あとがきで続編云々を述べているが、最初からシリーズ物として展開しているなら、あとがき以前にそう記すべき。
起承転結の承転だけで長編は実験とはいえ、無理があると思うがな。
Posted by ブクログ
過去の短編作品を長編化した作品だが…これは短編のままの方が良かったのでは?
確かに面白いんだけど、途中から話をデカく膨らませ過ぎて、読んでてうまく話しに乗りきれないと言うか、読者置いてきぼりと言うか。
ΑΩの時と同じパターン。
Posted by ブクログ
(1)本筋の中では魅力皆無のナタちゃんの過去を描いたエピソード(約30ページ弱)だけ感動。すばらしい。(2)ザビたんにはドン引き。メタレベルのダジャレをなぜそんなところで使うのか理解不能。(3)こどもとロボットが合体する話は、もう(ry
Posted by ブクログ
天地が逆になっている世界の描写は面白いが、その世界がどのように生じたのか?という謎解きを読みたかった気も。
ラスト1行の解釈がよくわからない。
探していた娘が出てくるのかと思ったがそれも無い。
これで完結でいいのかな?作者はあとがきで物語は語り尽くされておらず、いつか執筆したいような事を書いているが。
Posted by ブクログ
地上が上で宙が下。おもろい世界観だけどリングワールドなんだなと。巨大兵器同士の戦いとかあるんだけど、外観のイメージがまるで固定されなかった。つか、搭乗者がどういう状態で中にいるのかを考えるだけでもうw
終わり方がえーーーーーって感じでどうしよう。と感じながら終わりましたとさ。てか、ザビタンがまさかのザビたんw