坂井希久子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『おじさん』の会社内での様々な立ち振る舞いにまつわる悲哀さを描いた5話からなる連作短篇集。話ごとに違うおじさんが登場する。前の話に次の話に登場するおじさんがちょこっと登場するバトンリレーのような形式。
それぞれの話は…皆んな雨に関するタイトル。
●人事からセクハラを注意された課長。だが、どの部下が訴えたかわからない。次の日から犯人探しに躍起になるおじさん。(「スコール」)
●元部下の女性社員が役員に昇進し、シニア向けのセミナーに出席させられそろそろ引き際かと考えるおじさん。(「時雨雲」)
●浮気で離婚され、窓際に追いやられ風俗でウサを晴らしていたが、ある日そこで十年ぶりに会った娘と再会するおじさん。(「涙雨」)
●四十代で経理事務の派遣社員として働き、正社員との壁に虚しさを感じ、SNSでは若い女性になりすましているおじさん。(「天気雨」)
●定年退職後、渋谷を歩きながら公共マナーを注意することが生きがいとなり『世直し』をしているおじさん。(「翠雨」)
…5つの話それぞれに『今』を生きてるおじさんがいる。人生って人それぞれだから、何がよくて、何が悪いわけでもなく、正解がどれということもない。ただはっきりしてるのは、皆んな第一線からは退いて、人生を折り返し、ゴールという人生の終焉に向かっているということだ。
『おじさんは傘をさせない』…このタイトルについて本文中には説明が無い。勝手な解釈だが、おじさんってトレンドや空気に鈍感であり無防備すぎるから、雨が降っても(世の中の流れ)傘をさせない(我が身を守る防具が無い)という意味かなあと思った。
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Posted by ブクログ
人生後半に入ってからの転機の物語。
●アンジェがくれたもの
何十年も「自分を喜ばせるために何もできない」なんてどんな気持ちで生きてきたんだろうと思うと、心が締め付けられる思いがしたし、その分、アンジェとの出会いがとても素晴らしいものに感じて、人生どこでどんな転機に恵まれるかは分からないものなんだなと思った。
一寸先が闇のこともあるけど、小さなきっかけで心を取り戻せることもある。そしてそれを何も言わなくとも、一緒に喜んでくれる人がいるってすごく幸せな気持ちになるなと思った。
●友だち追加
主人公は人との繋がりをちょっと億劫そうに語っていたけど、やっぱり人との繋がりって大事だなと思った。
煩わしさもあるけど、こうやって誘ってくれるのも付き合いがあるからだし、その結果自分の幸せを再認識したり、刺激をもらったりしてる。
1人で生きていたらできないことばかりだ。
距離感や自分の心地よさはもちろん大事だけど、繋がることを諦めちゃダメだなと思った。
比べるから自分が見えてくるんだなと感じた。
●リフォーム
円満離婚、離婚式の話。
指輪を送ってくれたお父さんの思い、それを受けた主人公の思いがジーンときた。
●この扉のむこう
動物を飼いたいと思ったことはなかったけれど、動物というよりもっと家族のように親しい存在なんだなということが伝わってきて、ほっこりした気持ちになった。
校長にスパンと言うカッコよさは爽快!
●リセット
夫が亡くなってから他に子どもがいたと知ったら…。
しかも自分に子どもがいなかったら。。
怒り、悲しみがものすごい勢いで押し寄せそう。
「リセットしなくても再構築すればいいんですよね」の言葉は温かくて、励まされるなと思った。
お互い真実を知っているのに、何も言わずに付き合い続けようとする2人の距離感もいいな。こういう風にお互いを必要として引き合う関係もあるんだなと思った。
●セッション
主人公の「習得したいからそこで働く」のスタンスがいいなと思った。目的を持って、立場にこだわりすぎずに働けるっていいな。
真実が分かった時の、ホッとした感覚や心が温まる感覚に、やっぱり人と一緒にいられるって喜びなんだなと思った。 -
Posted by ブクログ
料理にまつわる短編のアンソロジー。
小洒落た創作寿司屋、土鍋ご飯、金平糖、蕗の薹(ふきのとう)、パン…。
どれも美味しそうで、お腹がすいてくる本だ
★5が2本
★4が2本
★3が3本
やはり大好き作家さんのは面白かった!
男たちの下心が渦巻く隠れ家的な高級寿司屋。
男たちが落としたい女性にお寿司のウンチクをスマートに披露している場面に、唐突にのしのしと現れたのは…。
乳児を抱っこ紐で抱え、母乳で汚れたカットソーにスウェットを履いた体格良い中年女性。
ドスンとマザーズバッグを置き、ツウなお料理を野太い声で次々と注文し始める。
お母ちゃんに支配されていく店内の様子が痛快!
このストーリーは柚木麻子さんの。
伊吹有喜さんのは唐突に始まった中年男性と中二男子の同居生活を軸にした素朴でほっとするストーリー。
井上荒野さんの小説家の妻の話はジワジワくる。日常にかすかにサスペンス要素が見え隠れするような…。
時代小説も挟み込まれて、それぞれの作家さんの個性ある短編集で飽きずに楽しめる。
ちょっとした時間つぶしにも適した1冊。
装丁もすき。
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