坂井希久子のレビュー一覧
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「花暦 居酒屋ぜんや」シリーズ第3弾。
お妙と只次郎の養い子であるお花はぜんや周辺の人々に愛されようとし、料理の面白さも知り始めた。そんな矢先熊吉が奉公している俵屋に押し込み騒動が起こる。大店の旦那衆も警戒する中、お花の前には産みの親のお槇が現れて……
お花が相変わらず捨てられないようにとぜんやで頑張ってしまう姿は現代の虐待を受けた子供に通づるところがあり悲しく心苦しくなってしまう。第2弾まではお花や熊吉の成長の中で起きる問題がほとんどだったが今作からは何やら怪しい事件が次々と起きてしまい、まだまだ純粋なお花が責任を感じてしまわないか心配だ。この事件の関係者に出奔した長吉が関わっていないといいなぁと思う。
お料理の描写や季節感の出る食材、お花の鋭い嗅覚も活かされる新たなアイディアのある数々のお料理は相変わらず美味しそう。 -
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42歳の明日美は、10年前に息子を亡くし離婚して今はコールセンターで働いている。
母が誰なのか記憶になく、飢えることはなかったが常に女がいた父とは没交渉のまま10年が過ぎていた…父が脳出血では倒れたと連絡がくるまでは。
医師からは、麻痺が残ると言われ働くのは難しいだろうと「まねき猫」を閉めるつもりで飲み屋に行ったところ…。
知らない女が店内に…
店の常連が運転資金として300万を「まねき猫」を続ける条件で貸していると聞き、借金を返すまでは続けるしかない状態になり…。
三食を満足に食べられない子どもたちを受け入れていることもわかり…。
そんななかで父の介護は…となる。
明日美は息子を亡くしてから人と深く関わらずに孤独の中で必要最低限の暮らしをしてきたが、父の傍にはいつも誰かがいて、助けたり助けられたりしていたことを知る。
人との縁を大切にしていた場所が「まねき猫」だと気づき、知らない間に馴染んでしまっていた明日美。
大きな問題を抱え込んでしまった…と思っていたが、気づいたら誰かが手を差し伸べてくれて面倒なことも相談できる人がいる。
慌ただしくも出会いがある限りやっていけるということは嬉しいことなのだろう。
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ネタバレ裏表紙に書かれている(表4)内容紹介文の冒頭に、
「おじさん」はなぜ不適切な言動をしてしまうのか!?
とある。
まず、原因
・そのおじさんの全盛期には、男尊女卑が当たり前だった。
・そのおじさんの全盛期には、そのやり方は不適切ではなかった。
・おじさんのやっていた仕事は、今ではやる必要のないものになっている。
原因に対する感情
・当たり前のことを言っているのに責められて理不尽、自分は悪くない。
・相手にされなくて寂しい。
・自分の存在(価値)を全否定されていることへの怒り。
そこからの行動
・極端に気にしすぎ、何も話せなくなってしまう。
・自分の生活を改める。
・「女性or妻」に勝たなくてはいけないという考えを改める。
・怒りのエネルギーを趣味に向ける。
なんだかハウツー本の見出しみたいになってきました。
ただ、バブル期にブイブイ言わせていたおじさんたちは、今でこそ迷惑な不適切行動製造機になってしまいましたが、彼らの心の中には、思う存分仕事をしてきた、自分は輝いていた時があった、という栄光の思い出があるわけです。
一人、違うなあと思ってしまったのは、43歳でずっと非正規雇用、独身でワンルーム暮らし、一番安い炭水化物の食事をかき込むしかない、という境遇の男性です。彼には一度も栄光が巡ってきたことがない。可哀想すぎる。これからの人生が気になります。
それと、これから先、大変な目に遭うだろうと予想されるのは、営業成績ナンバーワンで爽やかな外見、既婚者なのに男にも女にもモテる、門前将門(もんぜん まさかど)36歳であろう。双子ちゃんが生まれたばかり。
「だからだよ。あんまり早く帰ったら手伝わされるじゃん」
この営業所は、所長の方針で基本定時上がりなのだ。だから飲みに行こう、と取り巻きたちを誘う。
今年読んだ本の中で一番、衝撃なセリフかも。後頭部をバチン!とひっぱたいてやりたい。 -
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社労士事務所を経営しバリバリ働く麻衣子と専業主夫の耀太。
耀太は、5歳と2歳の子どもの育児も担い、家事もするということを納得していたが…
日々の仕事に追われながらも邁進していく麻衣子とただただ家事、育児で社会から離れていく不安や周りの目もあり、妻との会話も減っていく耀太との間にある決定的な出来事が起こり、とうとう二人は離婚することに。
普通とはなにかということを感じてしまう。
夫は稼いで妻は家事・育児が当たり前のことなのか…と。
今の時代は、共働きがほとんどで、それでも家事・育児を分担しているか⁉︎というと、そうではない。
夫は、手伝ってるよと言うが、手伝うじゃないだろうと。そこからして家事・育児は本当は妻がして当然と思っている節がある。
この小説は、まるッと逆なわけだが、立場が変わると見えてくるものも違って、離婚後に気づくこともある。
何が理想で完璧にできるか…はわからない。
だが失敗してからの気づきもある。
しかしながら子育てはしんどいよね。
孫は、可愛いいがずっとは体力もたない。
「私もさすがに、しんどいわ。いつまでも頼れるとは思わんといてほしい」
と言う麻衣子の母の言葉にそうなのだと共感した。
娘の手助けはしたいし、孫に不憫な思いはさせたくないが、ずっとは無理である。
しかし娘に辛い、しんどい思いはさせたくないのである。
そんなことを思いながら一気に読んでいた。
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百貨店のバイヤーとして働く主人公が、百貨店の呉服売り場の催事で京都から来ていた、老舗織屋の若旦那(一人息子)と恋仲になるところから物語が始まります。結婚を認めてもらうため二人で京都での生活を始めますが、老舗呉服店の嫁に相応しい素養が無いと決めつける若旦那の両親や幼馴染の舞妓の嫌がらせや、直ぐに広まる主人公の噂話で奇異な目で見られながらも若旦那の包容力と主人公のバイタリティで将来を切り拓いていきます。私の感想として、面と向かって婉曲な物言いをする京都弁での台詞は、相手に気づきを与えるという側面はあると思いますが、この物語では主人公が関東の出身なので厭味の意味合いが色濃く出ている感じがしました。また西陣織の職人たちの実情、呉服店の経営と体質等が読み進めて少しわかった気がしました。
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核家族が普通になり、地域の繋がりも希薄になった現代。家庭や家族を維持するのは夫婦2人の双肩にかかっている。そのために夫婦はどうあるべきなのか。
あるひと組の夫婦のライフスタイルを通して、夫婦のあり方を問うヒューマンドラマ。
◇
岩瀬麻衣子は今、深山工業株式会社の応接室にいる。深山工業は麻衣子が社会保険労務士として顧問を務める会社だ。
向かい合ってソファに座るのは、育休を終え保育園に子どもを通わせたばかりの袴田という女性社員と労務を担当する管理部長。袴田からマタハラの訴えがあったため、麻衣子は話し合いの席に立ち合っているのだった。
遅刻はやむを得ないが連絡は必ず朝のうちに入れるよう要望する管理部長に対し、袴田は次第に感情をあらわにしだした。
熱を出した子どもを病院に連れて行ったりしているときに連絡する余裕はないと言い立てる袴田。社員としての責任があるのだから連絡は何とかして入れるべきだと言う管理部長。
「岩瀬先生にもお子さんが2人いらっしゃるんでしょう? 私の気持ちわかりますよね。」
袴田が麻衣子に訴えかける。麻衣子は、小さい子どもがいると大変なのはよくわかりますと受け止めておいて、こう切り出した。
「ところでご主人は、家事育児をどの程度負担なさっていますか?」( 第1章 ) ※全5章。
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夫婦の役割分担。
半世紀前までは「男が外で働き女は家庭を守る」というのが一般的なパターンでした。
けれど時代の変化とともに共働き世帯が増えてくると、いろいろな問題が見えてきました。
その部分をテーマにした小説が多いことから、それが社会問題として捉えられていることがよくわかります。
本作は、妻が家事育児の大半を担うという家庭が圧倒的に多く、夫は時間のある時にお手伝い程度しか関わりを持たないという現状を、端的に切り取ったシーンで始まります。
麻衣子は会社側の要望を是とし、袴田の大変さを認めつつ家事育児における夫の分担を増やすようアドバイスします。2人の幼子を持つ麻衣子の意見は重く、袴田も強く言い返せません。
ここまでなら、垣谷美雨さんをはじめ多くの作家が問題視する「男は家事育児には役に立たない」ストーリーかと思いますが、テーマは別のところにありました。
未だ世間に残る「男は仕事。女は家庭」という観念。その封建的な社会通念は女性を苦しめるものと考えられがちですが、はたしてそうなのでしょうか。
本作の主人公は麻衣子と、その夫である耀太です。
麻衣子は個人事務所を構え精力的に仕事をこなす、やり手の社会保険労務士です。収入は少なくありませんが、その毎日は多忙を極め、帰宅が深夜になることもよくあります。
幼子も2人いるのに、いかにして家庭生活を回しているのか。実は夫の耀太が専業主夫として家事育児一切を担っているのでした。
岩瀬家の1日を簡単に紹介しておきます。
耀太は早朝に起き、朝食の用意をしたあと子どもたちを起こし、食事の世話や登園の準備をさせながら身支度をします。
途中で起きてきた麻衣子は耀太の作る朝食を食べ、支度をして出勤。麻衣子が担当する家事はたまのゴミ出しのみと、まさに親父パターンです。
麻衣子を見送った耀太は、長男の陸人を幼稚園に連れていきます。もちろん下の子の萌香を伴ってです。
帰宅後は萌香を遊ばせつつ、長男お迎えの時間までに掃除や洗濯を済ませ、必要に応じて買い物にも出かけます。
萌香の昼食の世話のほか、陸人を連れ帰ったあとは夕食の用意をして子どもたちに食べさせ、さらに入浴と歯磨きをさせて寝かしつけと、息つく暇がありません。
麻衣子はというと、子どもたちが寝たあと帰宅。食事と入浴をしてあとは眠るだけ。残りの家事も耀太任せ。何よりその間、耀太に対する感謝や労いはありません。 ( 仕事のことをずっと考えています )
「家事育児は立派な労働」だと認めてもらえないのは女性だけではないようで、若い頃から家事一般が得意な耀太と言えど、このワンオペ状態はキツいのひとことです。
さらに耀太を苦しめるのは孤独感でした。
子どもを公園に連れて行ってもママ友グループの中には入れず、話し相手はいません。妻の帰りは遅く、夫婦の会話すらままならない毎日です。
そのうえ、日中に買い物に出かければ奇異な目を向けられ、ぐずって大泣きする萌香を引きずるようにして帰宅を急げば不審者扱いで警官に呼び止められる。孤立無援の状態と言えます。
1人前の男が勤めに出ないでいることに対して、世間の目はなかなか厳しい。男が家庭に入ると、専業主夫に対する偏見が加わって社会から孤立しているように感じてしまう。この苦しみは専業主婦以上だと思います。
本作を読んでわかったこと。
世間でよく言われるように、「男性は家事育児の大変さやしんどさがわからない」というのは誤りです。麻衣子にもわからなかったのです。
耀太の家事能力の高さは麻衣子をはるかに上回り、事務処理や交渉等ビジネスに必要な能力は麻衣子が優れているということは、結婚前から2人にはわかっていました。そのことが今回の完全分業に繋がったのは確かでしょう。
けれど、完全分業には相手の苦労に目を向けなくなるというリスクがあることまでは、2人とも考えが及びませんでした。
最初の場面で、麻衣子が袴田さんにした助言は正論です。
夫と相談して家事育児の分担をきちんと決める。子どもの急な発熱などのアクシデントへの対応も夫に協力してもらえるよう話し合っておく。理想でしょう。
けれどワンオペ状態で生活をスタートさせてしまった袴田さんには、夫にSOSを出して話し合うだけの時間的精神的余裕が今のところないというのが実情であることに、麻衣子は気づかないのでした。
男女関係なく、「家事育児をしたことがない人」には、その苦労がわからない。ならばどうしたらいいか。
そんなことを、ヒントも提示しながら考えさせてくれる作品でした。
※ 麻衣子と耀太の完全分業は破綻して夫婦の危機を迎えます。それを2人はどのようにして乗り越えたのかについては、ぜひ本編をお読みください。 -
Posted by ブクログ
色々と考えさせられる話だなぁ…。遺す側も、遺される側も辛いよな…。死後の墓守の問題も遺された側のその後の生活もあるし、死と向き合うって大事だけど辛い。
生活力ゼロの廉太郎がちょっとずつでも家事に慣れてご近所との付き合いも出来て、少しでも杏子は安心できただろうか。無事に咲いたバラをどんな気持ちで眺めただろうか。ちょっとうるっとしてしまった。そして、最後の懺悔も…おいおいそりゃないよ。「謝られたら許さないといけなくなる」っていうのは確かにと思った。そこも含めて、杏子は強い妻であり母だったな。
でも墓守問題はリアルにあるよなぁ…私も子1人女の子だし夫の実家の墓は遠方だし、子に墓守背負わせるのってきつい。あくまで私一人だったら永代供養で合同墓でいいけど、夫と一緒の墓に入れないのは寂しいし嫌だなぁ…。作中にあるような夫婦墓が近所にあるならそれが理想。自分が死と向き合う時、しっかり調べないとだな。 -
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『居酒屋ぜんや』の子世代シリーズも、もう六作目。
今回は凶悪な事件は一応収まり、若い人たちの成長に筆が割かれる。
年齢や事情が少しずつ異なるものの、思春期を抜けて青年期に差し掛かる微妙な心理が描かれている。
女子たちの間では、お梅が一番しっかりしているかなあ。そのうち、熊吉の雇い主の奥様になるのである。どんな関係性になるのかな。
只次郎の姪のお栄は、幼い頃からたいそう聡明に描かれていて、先が楽しみだなあ、どんな人生を歩むのかしら、と思っていた。大奥に勤めることになった時は、んんんんん・・・?と思ったのだけれど、そこには様々な仕事があると知り、一応は納得、しかし将軍からお声がかかるという、望まない方向に行ってしまった。
やはり、女である限り避けて通れないのは、まだまだこの時代、誰かに嫁ぐこと。
お栄は決断をして・・・そして夢を遥か遠くへと先送る。
熊吉だが・・・相変わらず、自分の力ではどうにもならない事に心血を注いでしまう。何もしてやれないのなら、その優しさは残酷でしかない。なのに本当に、本当に一生懸命なのだ。この辺りが非常に危ない感じがする。
そして、今回は若者たちを描くために表舞台への登場を抑えられた大人たちだけれど、その中で、「成長」していると感じるのは、升川屋のお志乃。上方から嫁いできて、江戸に馴染めず食ものどを通らなかったという新婚時代から見てきて、ずいぶん立派な女将になったものである。しかし・・・立派になり過ぎてモンスター化していかないか、いささか心配。
そして、その息子・千寿の将来がどうなるのか・・・
個人的に、おかやは嫌。ふさわしい人が突然登場しないだろうか。気が揉める。
ちなみに、タイトルの『月草糖』あおいろが美しいつゆ草は、染まりやすい。
『月草に衣は摺らむ朝露に濡れてののちはうつろひぬとも』は、女郎のお万の気持ちでもあるのかなと思うと少し切ない。
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