あらすじ
仁藤全。高校で四二本塁打を放ち、阪神タイガースに八位指名で入団。強打者として期待されたものの伸び悩み、十年間で一七一試合に出場、通算打率二割六分七厘の八本塁打に終わる。もとより、ヒーローインタビューを受けたことはない。しかし、ある者たちにとって、彼はまぎれもなく英雄だった――。「さわや書店年間おすすめランキング二〇一三」文藝部門第一位に選ばれるなど、書店員の絶大な支持を得た感動の人間ドラマが、待望の文庫化!
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ好きな一冊にまた出会えた!
誰もが認めるヒーローはもちろん素晴らしいけれど、もっと身近なそれぞれのヒーローって素敵だなって思うんだ。
子供時代、かけがえのない身近なヒーローがもっとたくさんいたっけなぁ。
それにしてもたまらんわ、福元(福本)さん (^^;
Posted by ブクログ
てっきり真田広之と鈴木保奈美共演の同名映画の原作だと思い込んでいました。1994年の映画でしたから、かれこれ20年以上前のこと。そちらはヤクルトスワローズの選手という設定でしたが、こちらはまったく別物の阪神タイガースの選手という設定。阪神ファンならまちがいなく笑います泣きます。
主人公は2001年から2010年まで阪神タイガースに野手として在籍していたという仁藤全(アキラ)。一軍で活躍することはほとんどなく、「二軍の帝王」と呼ばれたまま退団。ヒーローインタビューを受けたことなどないけれど、一部の人の心に強烈な印象を残した選手。彼とつきあいのあった人物が彼について語るという形式が取られています。
主人公こそ架空の人物ではありますが、野球関係のほとんどの登場人物が実在し、笑える仮名となっています。真弓は阿弓、桧山は絵山、山本昌は山村昌、岩瀬や岩背というように。2010年のプロ野球シーズンを知っている人なら興奮度倍増。著者はプロ野球にまったく知識も興味もないのに、『泣いたらアカンで通天閣』を書いたのちに会った出版社の社長から「阪神の代打男の話なんてどう?」と無茶ぶりをされたそうです。断れば女がすたると本作を書いたというのですから驚き。
阪神ファンにとっては宝物のような本かと。病院の入院患者がテレビの前に集まってワーワー言いながら試合観戦する様子、みんなが監督で、DNAに「阪神」が組み込まれた阪神ファン。終盤には当時の中継を再現するかのような世界の盗塁王・福本の名(迷)言も出てきます。泣かずにはいられません。
借りた本だったのですが、これは永久保存版にするために購入します。
Posted by ブクログ
高校時代通算42本塁打を放ち、阪神にドラフト8位指名で入団した仁藤全。人のよさが幸いして、一軍半のプロ人生を送る男に起こった史上最大の奇跡を目撃した女性理容師、スカウト、後輩のドラ1投手、中日のベテラン投手、高校時代の同僚たちが語る仁藤全という男の存在は、まさにヒーローだった。
偉大な記録を残した者や、勝負を決める活躍をしたものだけがヒーローではない。その存在を語ることに、幸福感を覚えることが「ヒーロー」の本質ではないだろうか。本書のタイトルの意味は、『私の中のヒーローのことを語るインタビュー』である。
Posted by ブクログ
昔、大阪に住んでいたので、タイガースは身近な存在です。駅で縦縞ユニフォームを着たファンの方々が楽しそうに帰路へつくのを見て、あー今日は阪神勝ったんかなと調べたら負けてたりして。虎キチさんたちは勝敗関係なくいつも楽しそうだなーなんて、チームよりファンのファンだった私です。あとは坂井希久子さんも好きなのでこれは絶対面白いだろう! と手に取った次第。坂井さんが全然野球を知らずにこの物語を書き切ったことにまずはびっくり。
各章、二軍の帝王と呼ばれた打手・仁藤全を取り巻く人々の聞き書きで構成されています。本人が野球オンチって言い切っている仁恵さんの章はほとんど野球の話が出てこないし、スカウトマンや中日のベテラン投手・山村の章はがっつり野球の話。野球ファンもそうじゃない人も楽しめるようバランスよく書かれています(といってもターゲット読者は野球好きの人でしょうが)。
聞き書きってずっと続くと単調になりがちですが、本書は各章で語り手が変わるし、各キャラクター造形が秀逸だし、なんといっても半数以上の人が関西弁を扱う、そのリズムが心地よくて一気に読んでしまいました(私が関西在住歴が長かったからかも。ずっと東住まいの人が、関西弁のセリフは読みにくいといっているのを聞いたこともあるから)。
特に全が場外ホームランを放ったときの、山村の語りがよい。ここで涙がどおっと溢れてきました。
ひとつ個人的に残念だったのは、最終章の「私」。これは蛇足ちゃうか?と思ってしまった。
本書はゆくゆく仁藤全のノンフィクションとして発刊されるという体で書かれているみたいだけど、一般的なノンフィクションものでも著者(スポーツライター)は背後に隠れていることが多い。なぜこの本を書いたか、みたいな動機は読み手は正直興味ない。選手が偉大でその功績を残したい、それが執筆の動機であることがほとんどだし。
最終章まで読んできて、仁藤がどんどん好きになり、各登場人物への思い入れもぐんぐん高まり、ろくでもないオッチャンやなと思ってた秋人さんすら魅力的に感じるようになってたところで、唐突に出てきたタドコロタカアキという人物が自分の職業遍歴とか仁藤との関わりとか語っても、なんというか「しらんがな」と感じてしまった。
じゃあ最終章としてふさわしい語り手は?と考えると、本が発刊された後で皆川さんが読むとか、メジャーリーガーになったイッキ君が読むとか、そんな感じでどうでしょうかね……。
ヒーロー・仁藤本人が一切出てこないのは素晴らしい。様式美として美しいです。
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思っていた内容とは違いましたが虎ファンには懐かしい名前がいっぱいでした。成功して有名になれるのはひと握り。仁藤選手は記録より記憶に残る人でしたね。
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仁藤全という阪神タイガース所属のプロ野球選手について、その周囲の人間が語るという趣向。全自身のプロ野球選手としての活躍は突出している訳ではないが、彼の人となりがふとした言動が意図せずに誰かに影響を及ぼしている。その意味で解説にある通り、ヒーローへのインタビューではなく、仁藤全という自分にとってのヒーローを語るという話が的を得ている。こうなると全には何か報われて欲しい、と思うのが読者の心もきっちり掬い上げるくれるのはさすがである。阪神ファンなら一層楽しめる一作。
Posted by ブクログ
2019/7/15
先に読んだ父が「こんな選手おったっけ?」と聞いてきて大丈夫か?と思ったけど、確かにこんな選手実際におったらええなと思えた本だった。
阪神ファンが心地よく読める本だった。
だって私もあのファンのおっちゃんらと同じやねんもん。
なんやようわからんうちに阪神ファンになってて、すごく諦めよくでももしかしたらこっから全部勝ってまうんちゃうん?って思って生きてきたわ。
これからもたぶんそうして生きていく。
なんや知らん、ありがたいなぁ。
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今年のタイガースは金谷、もとい金本が監督になって変わるかなぁ。。。
関西に住んでいれば、TVはニュースでもバラエティーでも取り上げるのはタイガースばかりなので、自然と親しみも湧こうというもの。
毎年、今の時期は今年こそはの優勝を期待されながら、シーズン終盤にはダメ虎と嘆かれる。関西人の気持ちを弄びながら、そのダメさ故にか愛され続ける稀有な球団、阪神タイガース。
そのタイガースに10年間在籍し、主に二軍で燻り続けた未完の大砲、仁藤全。
彼に関わった人5人(全に惚れられた理髪師の女性、全をタイガースへ引っ張った老スコアラー、同期入団の主力投手、ライバルチームのベテラン投手、高校での野球部仲間)に対するインタビューで彼と彼らの人生を浮き彫りにしたお話。
2010年に本当にあったシーズンの展開に、フィクションを織り交ぜて進む話は確かな臨場感。それぞれの人生が全の存在を仲立ちに交錯し、2010年9月30日の試合に一旦収斂し、また拡散する。
タイガースとそのファンの愛すべきダメダメ振りを十分に描きながら、全だけでなく、語る人たちそれぞれの人生がそれぞれに切ない。
先日、山本昌が1日限りの契約で最後のマウンドに上ったニュースがあったけれど、彼を彷彿とさせるベテラン投手がなかなか良い味。
タイガースの今年の躍進も願い★の数は大甘にて。
Posted by ブクログ
架空の選手、仁藤を取り巻くまるでノンフィクションのようなフィクション。リアリティーが凄く、筆者はこれを書くまで野球を知らなかったとは思えないほど。ヒーローになった人の「ヒーローインタビュー」ではなく、その人にとってのヒーロー」を聞く「インタビュー」。とても温かくて、また読み易く、良かった。
Posted by ブクログ
阪神タイガースの一軍半の選手である仁藤。この選手について様々な人にインタビューをしていくという設定の小説。
仁藤の思い人、担当スカウト、後輩投手、対戦相手のドラゴンズのベテラン左腕、高校時代のチームメイトなどの証言で仁藤という人物の人となりがわかってくる面白いものでした。
設定なども実際のプロ野球のものをよく取り入れており、ドラゴンズのベテラン左腕なんて「山本昌」そのものだし、野球好きにも楽しめる作品でした。
Posted by ブクログ
2016.5.5
読み終わった後あったかい気持ちになる小説やった。阪神タイガースに入団した仁藤全。彼自身が語るのではなく、彼を知る人物たちにある人物がインタビューをしていく形で綴られている。
人にはそれぞれの人生がある、当たり前のことやけど、それをじっくり感じられるストーリーでした。
Posted by ブクログ
無名のプロ野球選手だけれど、仁藤を取り巻く人たちにとっては、ヒーローだった。
取り巻く人たちの視点から、仁藤の人となりが描かれていく。
単行本と文庫版では、最終章の「私」が違うらしいので、機会があれば単行本も読んでみたい。