【感想・ネタバレ】ヒーローインタビューのレビュー

あらすじ

仁藤全。高校で四二本塁打を放ち、阪神タイガースに八位指名で入団。強打者として期待されたものの伸び悩み、十年間で一七一試合に出場、通算打率二割六分七厘の八本塁打に終わる。もとより、ヒーローインタビューを受けたことはない。しかし、ある者たちにとって、彼はまぎれもなく英雄だった――。「さわや書店年間おすすめランキング二〇一三」文藝部門第一位に選ばれるなど、書店員の絶大な支持を得た感動の人間ドラマが、待望の文庫化!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

昔、大阪に住んでいたので、タイガースは身近な存在です。駅で縦縞ユニフォームを着たファンの方々が楽しそうに帰路へつくのを見て、あー今日は阪神勝ったんかなと調べたら負けてたりして。虎キチさんたちは勝敗関係なくいつも楽しそうだなーなんて、チームよりファンのファンだった私です。あとは坂井希久子さんも好きなのでこれは絶対面白いだろう! と手に取った次第。坂井さんが全然野球を知らずにこの物語を書き切ったことにまずはびっくり。

各章、二軍の帝王と呼ばれた打手・仁藤全を取り巻く人々の聞き書きで構成されています。本人が野球オンチって言い切っている仁恵さんの章はほとんど野球の話が出てこないし、スカウトマンや中日のベテラン投手・山村の章はがっつり野球の話。野球ファンもそうじゃない人も楽しめるようバランスよく書かれています(といってもターゲット読者は野球好きの人でしょうが)。

聞き書きってずっと続くと単調になりがちですが、本書は各章で語り手が変わるし、各キャラクター造形が秀逸だし、なんといっても半数以上の人が関西弁を扱う、そのリズムが心地よくて一気に読んでしまいました(私が関西在住歴が長かったからかも。ずっと東住まいの人が、関西弁のセリフは読みにくいといっているのを聞いたこともあるから)。

特に全が場外ホームランを放ったときの、山村の語りがよい。ここで涙がどおっと溢れてきました。

ひとつ個人的に残念だったのは、最終章の「私」。これは蛇足ちゃうか?と思ってしまった。
本書はゆくゆく仁藤全のノンフィクションとして発刊されるという体で書かれているみたいだけど、一般的なノンフィクションものでも著者(スポーツライター)は背後に隠れていることが多い。なぜこの本を書いたか、みたいな動機は読み手は正直興味ない。選手が偉大でその功績を残したい、それが執筆の動機であることがほとんどだし。
最終章まで読んできて、仁藤がどんどん好きになり、各登場人物への思い入れもぐんぐん高まり、ろくでもないオッチャンやなと思ってた秋人さんすら魅力的に感じるようになってたところで、唐突に出てきたタドコロタカアキという人物が自分の職業遍歴とか仁藤との関わりとか語っても、なんというか「しらんがな」と感じてしまった。

じゃあ最終章としてふさわしい語り手は?と考えると、本が発刊された後で皆川さんが読むとか、メジャーリーガーになったイッキ君が読むとか、そんな感じでどうでしょうかね……。
ヒーロー・仁藤本人が一切出てこないのは素晴らしい。様式美として美しいです。

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2024年05月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

仁藤全という阪神タイガース所属のプロ野球選手について、その周囲の人間が語るという趣向。全自身のプロ野球選手としての活躍は突出している訳ではないが、彼の人となりがふとした言動が意図せずに誰かに影響を及ぼしている。その意味で解説にある通り、ヒーローへのインタビューではなく、仁藤全という自分にとってのヒーローを語るという話が的を得ている。こうなると全には何か報われて欲しい、と思うのが読者の心もきっちり掬い上げるくれるのはさすがである。阪神ファンなら一層楽しめる一作。

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2019年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2019/7/15
先に読んだ父が「こんな選手おったっけ?」と聞いてきて大丈夫か?と思ったけど、確かにこんな選手実際におったらええなと思えた本だった。
阪神ファンが心地よく読める本だった。
だって私もあのファンのおっちゃんらと同じやねんもん。
なんやようわからんうちに阪神ファンになってて、すごく諦めよくでももしかしたらこっから全部勝ってまうんちゃうん?って思って生きてきたわ。
これからもたぶんそうして生きていく。
なんや知らん、ありがたいなぁ。

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2019年07月15日

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