澁澤龍彦のレビュー一覧

  • ねむり姫

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    しばしのインターバルを経てTasso再読祭再開。
    様々な典籍に材を取った幻想時代劇、全6編。
    何度読んでも味わい深く、しみじみ面白い。

    眠りに落ちたまま年を取らなくなった珠名姫と
    異母兄つむじ丸の物語「ねむり姫」や、
    望楼に幽閉された万奈子姫の悲恋「夢ちがえ」が
    殊の外、切ないが、
    もう一人の姫こと「きらら姫」が
    遂に正体不詳で終わるところにニヤリとさせられる。

    以下、多少の余談なぞ。

    「ぼろんじ」(虚無僧の意)において、
    主人公の兄を振武軍に導き入れたとされる
    澁澤成一郎(1838-1912)は
    明治以降、幼名に復して澁沢喜作と名乗った実業家で、
    日本資本主義の父と呼ばれる澁澤栄一の従

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    2017年11月24日
  • さかしま

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    ウエルベックの「服従」の流れで読んでみた。
    1884年の小説だけど、とにかく暗い。
    いくらお金があっても、病気になるとネガティヴになる感じがリアルに書かれている。
    そしてとにかく性格が悪い。金持ってるやつが性格悪いと最悪だっていうw

    好きなのは
    主人公のデ・ゼッサントが、歯医者が怖くてたまらないけど、引き下がれなくなって歯を抜く場面。(こわい!)
    あと芸術作品をコレクションしているけど、その割に「最近の芸術は全部ダメ」とか思っているところ。「わかる、わかるよ!」と思った。

    あとはまあ、この時代にベルエポックを準備してるわけだから、そこまで悲観的にならないで!って未来から

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    2017年07月19日
  • 快楽主義の哲学

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    ネタバレ

    幸福と快楽の違いを知っていますか?

    幸福は「苦痛を回避しようという傾向」そして「主観的なもの」
    快楽は「進んで快楽を獲得しようとする傾向」そして「客観的なもの」

    貧乏だろうが、自分が幸せだと思っている人もいる。
    回復不能の病気であっても、ひたすらに神を信じていて、自分は天国にいけると思い込んでいる人は幸せかもしれないし。
    昔の人が不便で、汚くて、不幸だったと考えるのも間違っている。

    著者は幸福なんて存在しないという。
    そんなものに憧れて、ため息をついているのなら、
    まず実際に行動してみること。を説いている。

    赤ん坊が笑う時、幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ。
    哲学者アリスト

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    2017年06月28日
  • 唐草物語

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    あとがき、ことに、引用されたボードレールのことば、「あらゆる模様のうちでアラベスクはもっとも観念的なものだ」という一節が、テーマにも似て十二篇の物語を貫いているように思う。しかし、どの物語も、性行為との縁・無縁はおいて非常にエロティックであるように、私には感じられた。また、『遠隔操作』では、自分との類似をすこしだけ感じてふふっと笑ってしまったけれど、いかにも博学な澁澤龍彦らしい物語群であるだろう。あらゆる文章が知識によって裏付けられ、本来の意味での換骨奪胎とを成し遂げており、幻想文学たる条件を自ら示している。ふわっふわの現代小説に疲れたときに、とくに読み返したい。

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    2017年05月07日
  • 世界悪女物語

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    べっきーなんてかわいいもんだなこりゃ。これを読んでぞくぞくしてしまう自分をかえりみると、人の本性はこっちだと思ってしまう。

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    2016年01月21日
  • 思考の紋章学

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    ■ランプの廻転
    三島が「遠野物語」を引いて、「物理的に物が動くことで幻覚・幻聴がリアルになる」と言ってるらしい。先日別の話で同じことを私も思ったのだけど、澁澤は更にもう一歩、「そりゃ話中の”現実”と読者の”現実”を混同してる」と突っ込んでて。はあ、おっしゃる通り。私も三島も(←同列においている)甘いわあ。

    ■夢について 
    秋成の奥さんは瑚璉さんというそう。
    「論語」で孔子が子貢のことを「お前は瑚璉だよ」と言うシーンがとても印象に残っていたので、男性の名前だと思っていました。響きも字面も綺麗な名前ですよね。

    ■時間のパラドックスについて 
    露伴の「新浦島」とトマス・ブラウン「壺葬論」”を比較

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    2014年10月01日
  • 閨房哲学

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    やっぱマルキ・ド・サドはすごい過激だね。
    神を否定し、悪徳を奨励し、殺人をも肯定する。
    普通の人が読んだらまず嫌悪感を示すと思われるが、そもそもそういう人はこの本を手に取ることなど、人生のうちでないだろう。
    もっと物理的に性的な行為が行われるのかと思ったが、抽象的な過激な思想について書かれた本だった。かなり過激な内容に思えたが、同意するわけじゃないけど、サドの深い考え方に感銘を受けた。
    これだけ過激な考え方をしてたら、そりゃバスティーユ牢獄やら精神病院に入れられるわ(笑)
    この本読んでると、若い人たちがあいつビッチだなんだ言ってたり、ヤることしか考えてねぇのかよみたいな発言が非常に陳腐に思えて

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    2014年09月13日
  • O嬢の物語

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    最高の恋愛小説じゃないですか。
    O嬢の物語でO嬢の告白視点のはずなんだけど、極力O嬢の感情は排していて、虐待を加えられるシーンなんかは肩すかしするぐらいシンプル。
    O嬢がそこまでする(される)動機を「愛してるわ」以外で語らないのが素晴らしいと思います。
    しかし最後がなぁ。
    なんとなくみんなに軽蔑されている風に終わっていたけれど、もっとなんていうか物になってほしかった。
    軽蔑の対象は人間だけでしょう?
    Oを是非軽蔑の対象にすらならない状態にしてほしかったです。

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    2014年02月15日
  • 幻想の彼方へ

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    ネタバレ

    レオノール・フィニ、ベルメール、ギュスターヴ・モロー、ルドン、ゴヤが目的。ポール・デルヴォー、ロメーン・ブルックスとの新しい出会いもあった。

    文章中に出てくる作品全てを載せて欲しい……無理かもしれないけれども。まだまだ勉強中の画家ばかりだったので、いまいちイメージしにくかった。まぁ、画集を捜せば良い話なんですけれども。

    デルヴォーの『樹木の女』のように、体の一部が植物と化している絵画ってありませんかね……

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    2014年01月18日
  • 快楽主義の哲学

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    古き時代の名著。快楽主義という言葉は一見すると欲望のまま遊びほうけて暮らせばいいというイメージがあるが、そうではなく、外部に作られた欲望をを消費しようとするのではなく、内に秘めた欲望に素直になるためにはというとても硬派な内容。出会えてよかったと思える一冊。

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    2014年01月10日
  • 澁澤龍彦 初期小説集

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    収録された九編が九編ともあまりに幻想的であり、雨の日に静かに読むに適していた
    ただし、解説は言いたいことは理解できるものの、本書の最後に持ってくるには少し不足な感じが否めなかった

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    2013年07月28日
  • 美徳の不幸

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    この作品に、もっと早く出会いたかった。
    悪徳と美徳の境界を突き詰めた文学の歴史が、
    その輪郭がようやく一つの線で繋がり始めた。
    サド、バルザック、ドストエフスキー、ゾラ、
    フォークナー、ガルシアマルケス、大江健三郎。

    2012-05-13 06:01:00 Twitterより

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    2013年06月15日
  • 旅のモザイク

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    澁澤龍彦の書くエッセイは文章が軽やかですんなりと心に入っていくように思える。とくに旅のエッセイが私は好きである。「滞欧日記」は何度も読み返しては自分が旅に行くときに鞄につめる一冊である。そして、今回「旅のモザイク」を読んで日記とはまた違ったよみやすさと豊富につめこまれた知性を感じることができたように思える。本人は無精者で旅に出るまでは空港にも行きたくないと言っているが、彼とする旅はとても面白いだろうと思うのだ。そして何より旅を楽しんでいる様子が文章から伝わってくる。私は乗り物が得意ではないから正直海外旅行は御免こうむりたいところなのであるが、それでも彼の過ごした時間を感じていると外国の風に吹か

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    2012年10月07日
  • 毒薬の手帖

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    毒薬についての
    色々なお話が書かれたエッセイです。

    やっぱり澁澤はすごい。こんな物知りさんになりたいよ。

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    2012年09月02日
  • 夢の宇宙誌

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    澁澤龍彦のエッセーは何でこんなに面白いんだろう。「しばらく、この夢想をして気ままに遊ばしめよ!(p.238)」

    「玩具について」、「天使について」、「アンドロギュヌスについて」、「世界の終りについて」の四編。

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    2012年08月26日
  • 悪徳の栄え 上

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    あまりに残酷な描写の連続に気持ち悪くなってきたので、上巻を読んだあと少し時間をおいて下巻を読みました。。(^_^;)自然が要求するところに従うという悪徳の哲学は一面では賛成だが、自然の悪い面しか見ていないように思います。自然は実り豊かな面や美しい姿もわれわれにあらわしてくれるからです。
    人間が動物と異なり、悪徳だけではないことは、人間が他人を守るために死ぬことができることにより証明されると思う。

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    2012年02月12日
  • 東西不思議物語

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    東西の怪談や神話の共通点や科学的考察からの比較。豆知識的小噺が満載で、原著に当たりたくなること請け合い。新聞への掲載ということで、シブタツの本領は押さえ気味だが、一部の官能的表現は醍醐味であります。

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    2012年02月05日
  • 長靴をはいた猫

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    ネタバレ

    童話から学ぶ教訓。
    話の中に、込められた意味。

    怖い話、恐ろしい話の中に、現実との対応を考える。
    童話の原点ともいう作品群。

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    2011年12月23日
  • 悪徳の栄え 下

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    神様なんてくそったれだぜと絶縁状を叩き付ける物語。
    しかし、解説でも書かれているように
    これは成長譚でもある。
    悪意の成長。
    反神の一滴

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    2011年12月21日
  • 世界悪女物語

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    ネタバレ

    私は性悪説派の人間なので、誰しもが悪女になる素質を持っていると考えている。どれだけ純真無垢な心を持った人でも、誰かのちょっとした言動や何かしらの経験がキッカケとなり、とんでもない極悪人になり得ることはあるだろう。そう思うと人ごととは思えない、ちょっと怖い一冊。

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    2011年11月16日