澁澤龍彦のレビュー一覧
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しばしのインターバルを経てTasso再読祭再開。
様々な典籍に材を取った幻想時代劇、全6編。
何度読んでも味わい深く、しみじみ面白い。
眠りに落ちたまま年を取らなくなった珠名姫と
異母兄つむじ丸の物語「ねむり姫」や、
望楼に幽閉された万奈子姫の悲恋「夢ちがえ」が
殊の外、切ないが、
もう一人の姫こと「きらら姫」が
遂に正体不詳で終わるところにニヤリとさせられる。
以下、多少の余談なぞ。
「ぼろんじ」(虚無僧の意)において、
主人公の兄を振武軍に導き入れたとされる
澁澤成一郎(1838-1912)は
明治以降、幼名に復して澁沢喜作と名乗った実業家で、
日本資本主義の父と呼ばれる澁澤栄一の従 -
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ウエルベックの「服従」の流れで読んでみた。
1884年の小説だけど、とにかく暗い。
いくらお金があっても、病気になるとネガティヴになる感じがリアルに書かれている。
そしてとにかく性格が悪い。金持ってるやつが性格悪いと最悪だっていうw
好きなのは
主人公のデ・ゼッサントが、歯医者が怖くてたまらないけど、引き下がれなくなって歯を抜く場面。(こわい!)
あと芸術作品をコレクションしているけど、その割に「最近の芸術は全部ダメ」とか思っているところ。「わかる、わかるよ!」と思った。
あとはまあ、この時代にベルエポックを準備してるわけだから、そこまで悲観的にならないで!って未来から -
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ネタバレ幸福と快楽の違いを知っていますか?
幸福は「苦痛を回避しようという傾向」そして「主観的なもの」
快楽は「進んで快楽を獲得しようとする傾向」そして「客観的なもの」
貧乏だろうが、自分が幸せだと思っている人もいる。
回復不能の病気であっても、ひたすらに神を信じていて、自分は天国にいけると思い込んでいる人は幸せかもしれないし。
昔の人が不便で、汚くて、不幸だったと考えるのも間違っている。
著者は幸福なんて存在しないという。
そんなものに憧れて、ため息をついているのなら、
まず実際に行動してみること。を説いている。
赤ん坊が笑う時、幸福だから笑うのではない。笑うから幸福なのだ。
哲学者アリスト -
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あとがき、ことに、引用されたボードレールのことば、「あらゆる模様のうちでアラベスクはもっとも観念的なものだ」という一節が、テーマにも似て十二篇の物語を貫いているように思う。しかし、どの物語も、性行為との縁・無縁はおいて非常にエロティックであるように、私には感じられた。また、『遠隔操作』では、自分との類似をすこしだけ感じてふふっと笑ってしまったけれど、いかにも博学な澁澤龍彦らしい物語群であるだろう。あらゆる文章が知識によって裏付けられ、本来の意味での換骨奪胎とを成し遂げており、幻想文学たる条件を自ら示している。ふわっふわの現代小説に疲れたときに、とくに読み返したい。
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■ランプの廻転
三島が「遠野物語」を引いて、「物理的に物が動くことで幻覚・幻聴がリアルになる」と言ってるらしい。先日別の話で同じことを私も思ったのだけど、澁澤は更にもう一歩、「そりゃ話中の”現実”と読者の”現実”を混同してる」と突っ込んでて。はあ、おっしゃる通り。私も三島も(←同列においている)甘いわあ。
■夢について
秋成の奥さんは瑚璉さんというそう。
「論語」で孔子が子貢のことを「お前は瑚璉だよ」と言うシーンがとても印象に残っていたので、男性の名前だと思っていました。響きも字面も綺麗な名前ですよね。
■時間のパラドックスについて
露伴の「新浦島」とトマス・ブラウン「壺葬論」”を比較 -
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やっぱマルキ・ド・サドはすごい過激だね。
神を否定し、悪徳を奨励し、殺人をも肯定する。
普通の人が読んだらまず嫌悪感を示すと思われるが、そもそもそういう人はこの本を手に取ることなど、人生のうちでないだろう。
もっと物理的に性的な行為が行われるのかと思ったが、抽象的な過激な思想について書かれた本だった。かなり過激な内容に思えたが、同意するわけじゃないけど、サドの深い考え方に感銘を受けた。
これだけ過激な考え方をしてたら、そりゃバスティーユ牢獄やら精神病院に入れられるわ(笑)
この本読んでると、若い人たちがあいつビッチだなんだ言ってたり、ヤることしか考えてねぇのかよみたいな発言が非常に陳腐に思えて -
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澁澤龍彦の書くエッセイは文章が軽やかですんなりと心に入っていくように思える。とくに旅のエッセイが私は好きである。「滞欧日記」は何度も読み返しては自分が旅に行くときに鞄につめる一冊である。そして、今回「旅のモザイク」を読んで日記とはまた違ったよみやすさと豊富につめこまれた知性を感じることができたように思える。本人は無精者で旅に出るまでは空港にも行きたくないと言っているが、彼とする旅はとても面白いだろうと思うのだ。そして何より旅を楽しんでいる様子が文章から伝わってくる。私は乗り物が得意ではないから正直海外旅行は御免こうむりたいところなのであるが、それでも彼の過ごした時間を感じていると外国の風に吹か