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片山健の鉛筆挿画も含めて☆5つ。
片山イラストは、メルヒェンに漂う不穏な雰囲気を巧みに表現している。
「眠れる森の美女」ハッピーエンドの後の展開に意表を突かれる。
巻末「驢馬の皮」を読んだ後、映画『ロバと王女』の予告編をPCで鑑賞する。主演のカトリーヌ・ドヌーヴは澁澤さんのお気に入り。「驢馬の皮を頭からかぶって、ネグリジェみたいな長い服を着て、森のなかや村の広場をすたすた歩いてゆく、よごれた時のドヌーヴの方が、王女としての盛装したドヌーヴよりも、ずっと可愛らしくて私には好ましかった」。(『スクリーンの夢魔』より)
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所有しているのは『大和書房』単行本〔1978年4月10日7刷発行〕。古本で入手。
これって元々『アンアン』に連載されてたのか!
澁澤氏の文章(訳文)も然ることながら、片山健氏のイラストも雰囲気凄い。
本の外観と中身がしっかり一致している。「童話のタイトル付いてるけど、大人向けの本」が一目瞭然。紙媒体の書籍の楽しみって、こういう所にもあるよね!
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ペロー童話といえば、「赤ずきん」や「長靴をはいた猫」、「眠れる森の美女」あたりが有名だろうか。数多くリライトもされ、そうして出版されるものの多くは「子供向け」にアレンジされている。
だが、実は原作はかなり荒削り、ときに残酷、ときにかなり性的だ。それが逆に「味わい」でもあるのだが。
ペローが採話した民間伝承・昔話がベースになり、そこにペローが多少の脚色と「教訓」を加えている。アカデミー・フランセーズの会員であったペローが、文芸サロンで発表したものを徐々に練り上げて形にしていったもので、そのあたりは別の本(『いま読む ペロー「昔話」』)に詳しい。
河出文庫版は澁澤龍彦訳、底本はガルニエ古典叢書1967年版。
収録作は、「猫の親方あるいは長靴をはいた猫」「赤頭巾ちゃん」「仙女たち」「サンドリヨンあるいは小さなガラスの上靴」「捲き毛のリケ」「眠れる森の美女」「青髯」「親指太郎」「驢馬の皮」の8編(こうしてタイトルを書き出してみるだけで、訳語や漢字の選び方に、澁澤のこだわりがそこはかとなく感じられるようにも思う)。
原作にほぼ即しているが、最後の「驢馬の皮」のみは韻文であったものを散文形式に訳している。
初出は創刊時(昭和45年)の雑誌「アンアン」だったそうで、「アンアン」てかなり尖がった雑誌だったのだな、というのも興味深いところである。
グリム童話に比べてプリミティブで荒っぽいのがペローの味わい。
「赤頭巾ちゃん」は狼に食べられっぱなしで終わる(猟師は助けに来てはくれない)し、「眠れる森の美女」は王子様に助けられてめでたしめでたしかと思えば、お姑さんが人食い鬼(!)で危うく子供もろとも食われそうになる。
「えええー」と呆然としているところに、わかったようなわからないような「教訓」が最後に述べられ、「ああ、そう、なんですか・・・?」とさらにぽかんとしてしまう。
「赤頭巾ちゃん」の教訓の一部はこんな風。
狼は食べるのが商売なのだから
食べられたって不思議はないのです。
(中略)
牙をかくし、爪をかくし
御機嫌とりの、甘い言葉をささやきながら
(中略)
この甘ったるい狼ほど、
危険なものはないのです。
・・・赤頭巾ちゃん、可哀そうだったけど、自己責任なの、これ・・・?
澁澤の流麗な訳に、片山健の妖しく美しい絵。どこか四谷シモンの人形なども連想させる、異界のエロス。少女性愛なども匂わせる。
そういう意味で強烈なのは最終話の「驢馬の皮」。これはあまり知られていないお話ではないかと思うが、一種の貴種流離譚である。
強く富もある王様、美しい王妃、一粒種のかわいい姫。何不自由ない一家に不幸が訪れ、お妃が亡くなってしまう。父王は悲しみのあまり、正気を失い、母の面影を宿す姫を恋い慕うようになってしまう。姫は何とか父の気を逸らそうとするがうまくいかず、父との結婚を強いられそうになる。辛くも驢馬の皮をかぶって宮廷を逃れ、とある農家で下女として働くようになる。
最終的には姫は自身の幸せを見つけ、父王も正気を取り戻すのだが、子供に読み聞かせるにはあまり向かないお話かもしれない。
タイトル・表紙絵に「長靴をはいた猫」が採られているのは澁澤の希望による。雑誌連載時も片山の挿絵で、澁澤は特にこの「猫」が気に入っていたのだという。
澁澤は巻末解説で、「ダヤン将軍のように眼帯をしている」と述べているが、ダヤンとはイスラエルの英雄で、第二次大戦時に眼を負傷し、隻眼の将軍として知られた人物である。
現実を離れた味わいが魅力。時には異界に遊ぶのも悪くはない。
でも、狼には気をつけて・・・!
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子供向けじゃない童話という感じで、予想以上に楽しめた。
赤頭巾や眠れる森の美女は有名なんだけど、私の知っている話とちょっと違った。特に眠れる森の美女は途中から「あれ、こんな話だっけ?」と展開に驚いた。私の知っている話は子供向けバージョンだったんだな……。この童話はけっこう残酷なところもある。各話の終わりにある「教訓」も大人がニヤリとできるものが多い。そして挿絵もちょっと官能的で独特な味がある。
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非常に読みやすく、面白かった。
挿絵がとてもいい。えろちっくで、中身のイメージを作ってしまう感じではあったけども、このイメージでいいのかい?赤ずきんとか。
表紙かわいすぎ。
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二十年以上ぶりに紐解く。まだ文庫といえば岩波か新潮くらいしか読むものはなく、だんだん文庫化が多くなった時代のころ。澁澤といえば、中学の頃は、なけなしのお小遣をためて、またあの素敵な装丁をなんだかこそこそ買っていたのを思い出す。
本に何も書かないほうなのに1989の一月の日付をスタンプしている(笑)
引っ越す度にでも古本にだしていないのは、文庫だからかしらん。
挿絵もよく、女の子だった私には馴染みの多いものでしたが、これを読んだときは、教訓が面白かったのを思い出します。 まさか刺繍を再開しはじめてまた手にとるとは思わなかったけれど…。
近々またお墓参り行こうっと。
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装画こみ、翻訳こみの、シャルル・ペロー。「教訓」「もう一つの教訓」なんか、いちいち面白い。「大人も子供もともに楽しめる決定版童話集!」とカヴァーにはあるんだけど、こういうのに通じた子供、というのもちょっと可愛くない、かも、なぁ(自戒をこめて)。
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[ 内容 ]
「赤頭巾ちゃん」にしても「眠れる森の美女」にしても、本来は血なまぐさくて荒々しく、セクシャルで残酷な民話だった。
ペローの童話はその味わいを残しながら、一方では皮肉な人間観察や教訓にみち、童話文学の先駆的作品となった…この残酷で異様なメルヘンの世界を、渋沢龍彦はしなやかな日本語で甦らせた。
独特の魅力あふれる片山健の装画をそえておくる決定版ペロー童話集。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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澁澤龍彦訳、につられて読んでみた。
ざっくりとした塩味加減が麻みたいで素敵な1冊。
教訓がついているのもとてもよかった。
いちばん好きなのは青髯。
好奇心とはつまらぬ快楽で、…そして、いつも高くつくものなのです。
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澁澤龍彦訳なので子供の頃読んだ童話のイメージを覆された。もともと民話はセクシャルで残酷なのだと知り少なからずショックを受けた。民話は何かしらのメッセージでもあるのだから不思議はないのかもしれないけど。メルヘンの裏に隠された教訓は深い。
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完訳ではなく、割愛されている作品もありますが、ペローの童話と言ったらこれ!というエッセンスがもうふんだんに滲み出ています。片山健さんのエロティックな挿絵も素晴らしいです。童話としては『赤頭巾ちゃん』が好きな私ですが、『親指太郎』に登場する人喰い鬼の七人の女の子が首を斬られるあのシーンも海馬にこびりついています。←このシーンの挿絵があったもんで、ちょっと感動したのはべつのおはなし。
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空いた時間で読めるお手軽さに加え、既出の通り片山健氏の挿絵の出現に思わず笑みが零れる。ちょっとした贅沢な時間。多少クセはあるが、時間と気持ちに余裕がある時に広げてしまいそうな一冊。わざわざの教訓がキュート。
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おなじみの昔話の、自分が知っていた内容から少しひねられた作品群。かえって面白い。
挿絵が、金子国義を彷彿させる感じでなかなか魅力的。
澁澤氏が指名しただけあると思う。
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猫! 猫の顔こわい!
原作の持つ、毒や性的モチーフをそのままに、ということでしょうか。
そういえばこの話グリムでしか知らないかも…ってタイトルもありました。
挿絵も、セクシャルだったり、目がうつろだったり、ちょっと薄暗くて大人向け。
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あまり面白いものではなかったが、有名な童話を澁澤訳でおさらいできただけでもよしとしよう。
挿絵は『長靴を履いた猫』のものはよかったが、それ以外、即ち人を描いたものは性的な面を強調しすぎており、その稚拙ともとれる画風もあいまって下品に過ぎるように思った。