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Posted by ブクログ
ペロー童話といえば、「赤ずきん」や「長靴をはいた猫」、「眠れる森の美女」あたりが有名だろうか。数多くリライトもされ、そうして出版されるものの多くは「子供向け」にアレンジされている。
だが、実は原作はかなり荒削り、ときに残酷、ときにかなり性的だ。それが逆に「味わい」でもあるのだが。
ペローが採話した民間伝承・昔話がベースになり、そこにペローが多少の脚色と「教訓」を加えている。アカデミー・フランセーズの会員であったペローが、文芸サロンで発表したものを徐々に練り上げて形にしていったもので、そのあたりは別の本(『いま読む ペロー「昔話」』)に詳しい。
河出文庫版は澁澤龍彦訳、底本はガルニエ古典叢書1967年版。
収録作は、「猫の親方あるいは長靴をはいた猫」「赤頭巾ちゃん」「仙女たち」「サンドリヨンあるいは小さなガラスの上靴」「捲き毛のリケ」「眠れる森の美女」「青髯」「親指太郎」「驢馬の皮」の8編(こうしてタイトルを書き出してみるだけで、訳語や漢字の選び方に、澁澤のこだわりがそこはかとなく感じられるようにも思う)。
原作にほぼ即しているが、最後の「驢馬の皮」のみは韻文であったものを散文形式に訳している。
初出は創刊時(昭和45年)の雑誌「アンアン」だったそうで、「アンアン」てかなり尖がった雑誌だったのだな、というのも興味深いところである。
グリム童話に比べてプリミティブで荒っぽいのがペローの味わい。
「赤頭巾ちゃん」は狼に食べられっぱなしで終わる(猟師は助けに来てはくれない)し、「眠れる森の美女」は王子様に助けられてめでたしめでたしかと思えば、お姑さんが人食い鬼(!)で危うく子供もろとも食われそうになる。
「えええー」と呆然としているところに、わかったようなわからないような「教訓」が最後に述べられ、「ああ、そう、なんですか・・・?」とさらにぽかんとしてしまう。
「赤頭巾ちゃん」の教訓の一部はこんな風。
狼は食べるのが商売なのだから
食べられたって不思議はないのです。
(中略)
牙をかくし、爪をかくし
御機嫌とりの、甘い言葉をささやきながら
(中略)
この甘ったるい狼ほど、
危険なものはないのです。
・・・赤頭巾ちゃん、可哀そうだったけど、自己責任なの、これ・・・?
澁澤の流麗な訳に、片山健の妖しく美しい絵。どこか四谷シモンの人形なども連想させる、異界のエロス。少女性愛なども匂わせる。
そういう意味で強烈なのは最終話の「驢馬の皮」。これはあまり知られていないお話ではないかと思うが、一種の貴種流離譚である。
強く富もある王様、美しい王妃、一粒種のかわいい姫。何不自由ない一家に不幸が訪れ、お妃が亡くなってしまう。父王は悲しみのあまり、正気を失い、母の面影を宿す姫を恋い慕うようになってしまう。姫は何とか父の気を逸らそうとするがうまくいかず、父との結婚を強いられそうになる。辛くも驢馬の皮をかぶって宮廷を逃れ、とある農家で下女として働くようになる。
最終的には姫は自身の幸せを見つけ、父王も正気を取り戻すのだが、子供に読み聞かせるにはあまり向かないお話かもしれない。
タイトル・表紙絵に「長靴をはいた猫」が採られているのは澁澤の希望による。雑誌連載時も片山の挿絵で、澁澤は特にこの「猫」が気に入っていたのだという。
澁澤は巻末解説で、「ダヤン将軍のように眼帯をしている」と述べているが、ダヤンとはイスラエルの英雄で、第二次大戦時に眼を負傷し、隻眼の将軍として知られた人物である。
現実を離れた味わいが魅力。時には異界に遊ぶのも悪くはない。
でも、狼には気をつけて・・・!
Posted by ブクログ
二十年以上ぶりに紐解く。まだ文庫といえば岩波か新潮くらいしか読むものはなく、だんだん文庫化が多くなった時代のころ。澁澤といえば、中学の頃は、なけなしのお小遣をためて、またあの素敵な装丁をなんだかこそこそ買っていたのを思い出す。
本に何も書かないほうなのに1989の一月の日付をスタンプしている(笑)
引っ越す度にでも古本にだしていないのは、文庫だからかしらん。
挿絵もよく、女の子だった私には馴染みの多いものでしたが、これを読んだときは、教訓が面白かったのを思い出します。 まさか刺繍を再開しはじめてまた手にとるとは思わなかったけれど…。
近々またお墓参り行こうっと。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「赤頭巾ちゃん」にしても「眠れる森の美女」にしても、本来は血なまぐさくて荒々しく、セクシャルで残酷な民話だった。
ペローの童話はその味わいを残しながら、一方では皮肉な人間観察や教訓にみち、童話文学の先駆的作品となった…この残酷で異様なメルヘンの世界を、渋沢龍彦はしなやかな日本語で甦らせた。
独特の魅力あふれる片山健の装画をそえておくる決定版ペロー童話集。
[ 目次 ]
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