澁澤龍彦のレビュー一覧

  • 幻想の画廊から

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    日本にハンス・ベルメールの名を伝え、四谷シモン氏を始めとした、今日まで続く球体関節人形のカルチャーが生まれる契機となった……と言っても過言ではないほどの伝説的エッセイ「女の王国」が収録されています。かく言う私もベルメールを知ったことで、シュルレアリスムや幻想絵画といったジャンルにのめり込んでいったので、ずっと読みたかった本でした。本書ではベルメールの他にも、今ではすっかり有名になったダリやエルンスト、バルテュスやマグリットなどの紹介もしっかりと網羅されていて、読んでいて面白くって面白くって止まらない(笑)。当時の人たちの衝撃はもっと凄かったんだろうなぁ。現代で読んでも劣らない正確な知識で紹介し

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    2022年02月15日
  • 高丘親王航海記 IV

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    ネタバレ

    澁澤の真髄は「少女コレクション序説」だと思うので、遺作を持ち上げる勢に与したくないと思っていた。
    が、この漫画を読んでしまったら、屈せざるを得ない。
    喉に死の真珠。
    そうれ、天竺までとんでゆけ。
    壮年が思い出す、少年期の追憶の、反響、反響、反響、反響で今の壮年期は成っている。
    郷愁が現実認識の土台になるとき、人の認識は一段死に近くなる。
    その遊離具合が本作のステキさ。
    と漫画を読んで気づいた。

    帯取っ払って、カバーをはがして広げてみたら、親王、薬子、少年、飲まんとする真珠、そうれ天竺まで飛んでゆけ、蓮の花、虎、脚、図像的な雲、山。
    ピンクに浸されたシンプルなカバーなのに、精選された情報で満た

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    2021年12月26日
  • 高丘親王航海記

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     天竺を目指す旅の中で親王の体験する夢とも現実とも知れない、まさに夢現の世界が展開する。自分が見る夢といえば何かに追われたり、ひどく焦ったり、ブレーキをいくら踏んでも車が停まらないような寝覚めの悪い夢ばかりで、毎晩のように幻想的な夢を見る親王が羨ましい。男はいくつになっても薬子のような女性に憧憬を抱くものだと思う。私も薬子のような存在に出会っていればバクが喜んでる食べるような夢を見られたのだろうか。
     本作は澁澤龍彦の遺作であり、主人公の親王には、当時癌を患い、闘病しながら書いた作者の姿が多分に反映されている。果たして作者は本人なりの天竺にたどり着くことができたのだろうか。

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    2021年12月12日
  • 高丘親王航海記 IV

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    これにて完結。
    この巻が出たタイミングで再び1巻から通して読んでみたが文句ない傑作。
    2021年度に刊行された漫画のベストであることは揺るがないだろう。
    坂口安吾のコミカライズでも感じたが、読んだ印象が原作小説を読んだそれと変わらない。それ自体が驚異的なことだが、にも関わらず誰がどう読んでも近藤ようこの作品である。近藤ようこ以外、誰にも描きえない作品として成立させていることが信じられない。

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    2021年10月26日
  • 高丘親王航海記

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    読み終わって数年経ちますが、この不思議な世界は、澁澤龍彦の頭の中をのぞいているかのような、軽いめまいをおぼえるほどです。高岳親王航海記を読んだ後に、ウンベルトエーコのバウドリーノを読むのもオススメ。

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    2021年10月09日
  • 美徳の不幸

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    「悪徳の栄え」ジュリエットの妹、ジュスティーヌの物語になっている。
    信心深いのもいいが。見えない何かに縋る意味とは?と、一つ聞いてみたくなりました。
    神を信じて救われるのならば、それも良いだろう。
    ジュスティーヌの場合、どんなに善行を尽くし、神を信じて「きっと神さまが…!」と、全く運命に嫌われているのではないか?という不幸の雨嵐にも、彼女はこれを曲げようとはしなかった。
    行き過ぎた信仰心ではないが、美徳(善行)の意味、また逆に続く不幸の意味を考えると、きっとキリがないのだけれど、割と読みやすくて、まあ、サドだしな…という内容でした。
    「ジェローム神父の物語」も、「悪徳の栄え」寄りで良かったです

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    2021年07月08日
  • 幻想の画廊から

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     ペダントリーに充ち満ちた澁澤龍彦の評論は愉しい。お説ごもっとも、拳拳服膺しながら読んでいる。ただ、引用される図版がモノクロームというのは目に寂しい。
     彼の著書は、将来も読者を獲得することだろう。ハイパーテキスト化し、ワンクリックで当該の絵画が鑑賞できるようになることを願いたい。
     追記:「クレーの魚は、クレーの水を離れた途端に破裂して死ぬだろうし、エルンストの鳥は、エルンストの空気が吸えなくなった途端に窒息して落ちるだろう」。この決めつけこそ澁澤調。

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    2021年04月01日
  • 長靴をはいた猫

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     片山健の鉛筆挿画も含めて☆5つ。
     片山イラストは、メルヒェンに漂う不穏な雰囲気を巧みに表現している。
     「眠れる森の美女」ハッピーエンドの後の展開に意表を突かれる。
     巻末「驢馬の皮」を読んだ後、映画『ロバと王女』の予告編をPCで鑑賞する。主演のカトリーヌ・ドヌーヴは澁澤さんのお気に入り。「驢馬の皮を頭からかぶって、ネグリジェみたいな長い服を着て、森のなかや村の広場をすたすた歩いてゆく、よごれた時のドヌーヴの方が、王女としての盛装したドヌーヴよりも、ずっと可愛らしくて私には好ましかった」。(『スクリーンの夢魔』より)

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    2021年03月23日
  • 高丘親王航海記 2

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    眞如親王と、なんかの御伴との東南アジアの旅が続く。
     薬子がいい感じ。
     獏とかそれに関する蘊蓄がいい感じ。
     官能的な物を書きうる近藤先生のストロークで書き出される、オブジェクションで突き放された、物としての娼婦とか、他がいい感じ。
     さう言へばダンゴムシって外来生物だった。

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    2021年03月19日
  • 高丘親王航海記 1

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    眞如親王のみこが、なんぞエクゾティックなものにせせられて、とりあへず天竺ぅ、ですかねぇヘ行く。
     彼に影響を與へた薬子がいい感じ。
     動物さんがいい感じ。

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    2021年03月19日
  • 秘密結社の手帖

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    この本を読んで、初めて世の中に「秘密結社」があるかも?いや実在するかも?と思った。心のおもむくまま、時間と空間を旅している気分に浸れる。

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    2021年03月14日
  • 悪徳の栄え 上

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    ありとあらゆる犯罪の百科全書のような物語だが、こう言っては不謹慎かもしれないが、不思議な爽快感がある。
    例えば「美徳の不幸」は、善行の見返りに悪逆をもって応えられるような物語で、正直なところ読み進めるのは辛かったため、中途で断念した経験がある。身につまされるからかもしれない。
    思うに、本作では、誤解を恐れずに言えば、女性が一人称で極悪の限りを尽くす様が語られていることにより、特に男性の読者の、酸鼻きわまるような残酷な犯罪の描写を直視することに対する抵抗が、減じられているように思う。男性の視点から言えば、男性は身体的に優位な立場にあり、男性の方が野蛮であり、男性側が女性に対して自ら欲望を行使する

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    2021年02月17日
  • 裸婦の中の裸婦

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     『高丘親王航海記』に並ぶ澁澤龍彦の絶筆。最終3編を畏友 巖谷國士に託している点で、絶筆感がより深い。
     選ばれた裸婦はどの女もこの女もシブサワ好み。オブジェ化したエロスの香気を放っている。
     明らかな間違いを共著者が解説で正してくれたのはグッドジョブ。

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    2021年01月12日
  • 高丘親王航海記 2

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    現在過去未来、性と死、夢うつつがどんどん曖昧になりながら物語がドライブ。自分のような俗物でも仏教の死生観?の本質?に触れた様な気がしてくる。

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    2020年12月26日
  • プリニウスと怪物たち

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     引用主体の『私のプリニウス』に比べ、図版が豊富な本書は楽しく読めた。
     荒俣宏に『理科系の文学誌』という著作があった。澁澤龍彦も、宮沢賢治や稲垣足穂に連なる理科系の文学者であろう。(SF作家とは微妙に違う)。

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    2020年11月23日
  • 快楽主義の哲学

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    最近耽美派にハマってく自分の心理を掴みたくて読んだ。ゲーテって74まで恋してたんだね。しかも19の少女と。w「快楽主義の巨匠たち」の章面白かったな〜哲学や思想史に興味湧いた
    精神の貴族たれ!

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    2020年09月25日
  • 高丘親王航海記 2

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    澁澤龍彦の代表作を近藤ようこが漫画化したもの。誰もが望んだ最も理想の形でのコミカライズだろう。皆やることだろうが、近藤ようこのコミカライズ作品を読むとどうしても原作と読み比べてみたくなる。ご多分にもれず、今回も本棚から原作の文庫を引っ張り出してきたのだけど、奥付をみて原作を読んだのが30年も前であったことに今更ながら驚く。

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    2020年09月21日
  • 快楽主義の哲学

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    人間にはいろんな生き方があるなと思う澁澤氏の生き方と考え方。
    史上の珍な生き様を紹介しながら、いかに自分にとっての生き方が大事かを説く。

    労働と遊びの一致。
    いつでも遊んでいるような存在にならなければ真の意味で社会や文明が進歩したということにならない、と。

    1965年刊行で、
    今もって尚新しい。

    博識知的教養の深さに裏打ちされた澁澤龍彦の思想・発言。
    出過ぎた杭とはこのことだろう。

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    2020年07月27日
  • ドラコニア綺譚集

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    澁澤の筆がエッセイから小説へと向かっていく過渡期の作品集。だが、このエッセイとも創作とも言い切れないバランスは、のちの『ねむり姫』や『うつろ舟』ともまた違い、これはこれで一つの完成形と言える。『思考の紋章学』と対のような感じ。

    「鏡と影について」は、南宋の仙人がドイツロマン派的なドッペルゲンガー譚を語るのでニヤッとさせられる。「スペインの絵について」はバルデス・レアルの絵の依頼主がドンファンのモデルになった騎士だったという、それ自体が面白い逸話にバロック絵画の解釈をめぐる講義が挟まっている。「ラテン詩人と蜜蜂について」では、『思考の紋章学』所収「時間のパラドックスについて」でチラッと触れられ

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    2020年05月09日
  • ドラコニアの夢 アニメカバー版

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    興味から

    昔から本を読むのは大好きなのですが、どうしてもエッセイは苦手で敬遠していました。しかし、近年、文豪の名前や作品を使ったコンテンツが増えてきたため、興味を持ち、まずはこの作品からエッセイに挑戦してみようと思い購入。
    大正解でした。読みやすく、興味深い内容で楽しかったです。

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    2020年04月10日