【感想・ネタバレ】ドラコニア綺譚集のレビュー

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Posted by ブクログ

澁澤の筆がエッセイから小説へと向かっていく過渡期の作品集。だが、このエッセイとも創作とも言い切れないバランスは、のちの『ねむり姫』や『うつろ舟』ともまた違い、これはこれで一つの完成形と言える。『思考の紋章学』と対のような感じ。

「鏡と影について」は、南宋の仙人がドイツロマン派的なドッペルゲンガー譚を語るのでニヤッとさせられる。「スペインの絵について」はバルデス・レアルの絵の依頼主がドンファンのモデルになった騎士だったという、それ自体が面白い逸話にバロック絵画の解釈をめぐる講義が挟まっている。「ラテン詩人と蜜蜂について」では、『思考の紋章学』所収「時間のパラドックスについて」でチラッと触れられたシルデリク王の墓から発掘された黄金製の三百個の蜜蜂について詳しく語られている。『思考〜』では蜜蜂は「馬具の装飾」としていたが、ここではもう一つ「マントの飾り」とする説も紹介していた。
そして、玉虫の厨子についての導入から魂(タマ)と箱の密接な関係を語り、中学時代の同級生との少し奇妙な思い出話に流れていく「箱の中の虫について」がやっぱり好き。これはネクロフィリアの対象になるということのナルシシズムの話なんだと思う。フランチェスコ一世の別荘からビアンカ・カペッロ、そして『黒死館殺人事件』に繋がる「巨像について」も面白かった。最近『黒死館』読み返してよかったなと思うことが多くて、再読の縁を感じている。

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2020年05月09日

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たとえば「ラテン詩人と蜜蜂について」。カヴァーには「きらびやかなペダントリー」とあるけれど、それでもこれは衒学ではない。せめて読んだ内容を憶えていられれば、私も少しは知的になれるのだろうけれど……嗚呼。

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2011年07月19日

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「ドラコニア」とは龍の王国、すなわち「澁澤龍彦ランド」のことである。この知の領土において、著者は極楽鳥や仮面、童子といった偏愛するテーマをとりあげながら、筆のおもむくまま、自在のスタイルで、興趣つきないエピソードをつむぎ出す。一編ごとにエッセイ風、幻想譚風とおもむきを変え、きらびやかなペダントリーをふりまきながら、軽やかな精神の運動が展開する円熟のエッセイ集。

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2009年10月04日

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部屋にいながら小旅行。時空の壁もおかまいなし。「飛ぶ頭〜」の夜の珍客にかわいい!とはしゃいでみたり、「箱の中〜」にせつなくなったり・・・好きだ、ドラコニア。

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2009年10月04日

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お家芸の軽妙なエッセイと晩年の創作の過渡期とおぼしき一冊。スタイルはまさに中間的で、エッセイ風もあればお伽噺風もある。肩の力を抜いてふわふわしたいときに。

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2009年10月04日

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さすが円熟期のエッセイ集、です。該博な知識に魅了されていると、小説のような不思議で幻想的なエピソードが織り込まれて、虚実皮膜、綺譚と称すに相応しい澁澤の世界が──まさしく「ドラコニア」なる幻想世界が現れてきます。ここから『高丘親王航海記』等の晩年の小説へと、ドラコニアの世界は広がっていくのです。そのような意味では澁澤龍彦を語る上ではやはり避けては通れない、印象深い一冊でした。個人的にはやっぱり澁澤さんのエッセイが一番好きなので、エッセイであり小説のようでもある本作は好きでした。お気に入りは「飛ぶ頭について」「桃鳩図について」です。「文字食う虫について」もいいなぁ

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2022年06月15日

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自分の知識不足のためわからない箇所も多少あったが、作者が非常に楽しそうに書いているのがわかる良エッセイ。

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2013年08月21日

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美術史かぶれだった大学生のころの愛読書を、再び読み返しました。妖しくも魅力ある澁澤ワールド。大人になってからまた読むと、若い頃と異なった感覚を楽しめますね。

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2012年11月29日

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最近、吸血鬼関連の本を読んでいて、
ドラキュラ……ドラクル……ドラコニアという具合に、
この本を思い出したのでレビュー。
ドラコニアとはドラゴンの国、
すなわち(ポオ風に言えば)「澁澤龍彦の地所」。
古今東西の不思議なオブジェ、アイコンについて、
自由気儘に連想の翼を広げて書かれた随筆集。

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2012年04月20日

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[ 内容 ]
「ドラコニア」とは龍の王国、すなわち「渋沢龍彦ランド」のことである。
この知の領土において、著者は極楽鳥や仮面、童子といった偏愛するテーマをとりあげながら、筆のおもむくまま、自在のスタイルで、興趣つきないエピソードをつむぎ出す。
一編ごとにエッセイ風、幻想譚風とおもむきを変え、きらびやかなペダントリーをふりまきながら、軽やかな精神の運動が展開する円熟のエッセイ集。

[ 目次 ]
極楽鳥について
鏡と影について
飛ぶ頭について
かぼちゃについて
文字食う虫について
スペインの絵について
ラテン詩人と蜜蜂について
箱の中の虫について
桃鳩図について
仮面について
童子について
巨像について

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年07月19日

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2008年11月4日~5日。
 この人のエッセイなのか小説なのか、虚実が混淆としている作品は、えも言われぬ面白さがある。
 エッセイだけの作品には、今一つのものもあるが。

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2018年01月06日

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澁澤龍彦らしい、博学なエッセイ。他の本に比べると、固有名詞が非常に多くなっているため、いくつかの章は読みづらい。また、「綺譚集」というだけあって、簡単に説明の付かない不思議体験が織り込んであるのも特色。

澁澤龍彦のなめらかな筆致は非常に好みなのだが、今回は体調もいまいちだったのか、いくつか読み飛ばしてしまった。しかし、一つのテーマに対して「日本書紀では」「中国の故事で」「スペインでは」と色んな話が出てくるところが超然としたところである。それが飛頭蛮(首抜け族)だったり、連続殺人・食人鬼だったりするから、完全に掴まれるわけです。

そこに急に友達の話であり、自分の学生時分の話、正倉院展での話などが、自然に同列にはいってくるところがすごい。また体調が良い時に読み返すと思う。保留ということで星3。

「ドラコニア」はどこかの昔の国かと思っていたが、1本目でわかった。「龍彦」の国のことである。

「何はともあれ 頭は隠さずとも 尻は隠してもらいたい」
おもしろい。

(余談)
河出の著者名が「澁澤」ではなく「渋澤」になってんだけど、名前を勝手に帰るのは失礼ではないか?

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2015年03月20日

Posted by ブクログ

他の渋澤作品と異なり、この著作には彼の体験や創作が多く含まれている。
これまでの作品は、引用やそれに対する考察、感想で構成されていた為に彼の人物像は読み取り辛かったのだが、この作品では大いに彼の人となりに触れる事ができた。
内容に関しては、あまり私の好みに合うものがなかったのが残念。

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2011年03月06日

Posted by ブクログ

エッセイなのか私小説なのか。8割空想世界。
でてくる本や文献を読みたくなるけど、原語ってだけで
無理だぁ。とりあえず、絵画や美術品に関して
書かれているのに写真がないなんて反則。
しっかし、読書量(偏ってるけど)半端ねぇ

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2009年10月07日

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