澁澤龍彦のレビュー一覧
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さすが円熟期のエッセイ集、です。該博な知識に魅了されていると、小説のような不思議で幻想的なエピソードが織り込まれて、虚実皮膜、綺譚と称すに相応しい澁澤の世界が──まさしく「ドラコニア」なる幻想世界が現れてきます。ここから『高丘親王航海記』等の晩年の小説へと、ドラコニアの世界は広がっていくのです。そのような意味では澁澤龍彦を語る上ではやはり避けては通れない、印象深い一冊でした。個人的にはやっぱり澁澤さんのエッセイが一番好きなので、エッセイであり小説のようでもある本作は好きでした。お気に入りは「飛ぶ頭について」「桃鳩図について」です。「文字食う虫について」もいいなぁ
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澁澤龍彦のエッセイの中では比較的おとなしめで分量もかなり少なく、難解な表現もほぼないと言って良い。あとがきで「女性読者が、何らかの指針なり暗示なりを探り出して頂ければ、筆者としては幸いである」と述べていることからも、かなりフランクで澁澤龍彦初心者向けの1冊になっている。
しかし、一見「そのエピソード、知ってるよ〜」と思いながらページをめくっていると、とんでもない解釈・情報も書かれていたりするので、そこは流石澁澤龍彦だなぁと思いながら、退屈にはならなかった。パッと手にしてザッと読めてしまうのもポイントが高い。忘れそうになったら気になるところだけ読み直すのもアリ。 -
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『ねむり姫』リーダビリティはよい。ポニーで田舎者を馬鹿にするのがなんか
『狐媚記』狐の好物ってさうなのね。(原典読んで「澁澤作品の方が」と言へるレヴェルの筈)
『ぼろんじ』澁澤先生みとこーもんくらゐは見てたってどっかに書いてあった筈
『夢ちがえ』 琵琶湖の畔の話なのね。(田楽を舞ふ異形のなんぞが鎌倉でどうたら話があるさうなのだが先生の地元シリーズに入らない)
『画美人』へそー
『きらら姫』おさるスーツと、欲望に弱いキャラがそれを叶へて「あぁ、俺がナニしたあれが」と言ふのであったと言ふのが、衝撃。しかもタイムトラベルをするではないか。で先生の地元シリーズの壱。 -
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澁澤龍彦の遺作。
高丘(高岳)親王は実在の人物で、平城帝の第三皇子。
平城帝が譲位した後の嵯峨帝の皇太子であったが、「薬子の変」により廃太子され、出家した人物である。
薬子は平城帝の愛妾である。元々は薬子の娘が平城帝(当時は東宮)に召されて宮中に上がることになったが、まだ幼い娘の後見のような形で母の薬子が同行する。ところが東宮は母の方に夢中になって寵愛してしまう。もちろん、薬子には夫がいるのに、である。父・桓武帝は醜聞に怒り、薬子は追放。だが、桓武帝の死に伴って、平城帝は再び(今度は尚侍として)薬子を呼び戻す。
後、嵯峨帝に譲位して上皇となるも、都を平城京に戻して、政権を再び掌握しようとする -
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ペロー童話といえば、「赤ずきん」や「長靴をはいた猫」、「眠れる森の美女」あたりが有名だろうか。数多くリライトもされ、そうして出版されるものの多くは「子供向け」にアレンジされている。
だが、実は原作はかなり荒削り、ときに残酷、ときにかなり性的だ。それが逆に「味わい」でもあるのだが。
ペローが採話した民間伝承・昔話がベースになり、そこにペローが多少の脚色と「教訓」を加えている。アカデミー・フランセーズの会員であったペローが、文芸サロンで発表したものを徐々に練り上げて形にしていったもので、そのあたりは別の本(『いま読む ペロー「昔話」』)に詳しい。
河出文庫版は澁澤龍彦訳、底本はガルニエ古典叢書1 -
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精神の貴族たれ、という時に、都合の良い解釈かもしれないけれど、本書に書かれている姿勢をそのまま実績せよとは言っていないと思うので、
例えば本書でかなりページをさかれているエロティシズムに関しては正直なところ、共感は出来なかったが、要は偏屈だ頑固だと言われても、少なくとも精神の自由を侵されてはならないのだと言う主張だと解した。
巻末で解説者は、次のような趣旨を述べている。
本書での、労働の忌避や、大衆化したレジャー産業に乗せられないようにとの警鐘は既にして時代遅れで、定職につかないような若者、ますます個別多様化する趣向などはもはや当たり前になりつつある、と。
また著者は、当時、それこそ大衆向けの