澁澤龍彦のレビュー一覧

  • ねむり姫

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     現実から、ひょいっとはみ出してとける。不思議と現実のはざまを語る。そんな短篇集だと思う。上るのではなく潜るのに近いけれど、手引きがあるので溺れずに済む。ただ、その手引きがどんなもので、どこへぼくたちを連れて行くのかを考えはじめるとすこし怖くなる。グロテスクが道中にあるような、白骨を横目に潜っていくような、感覚。初期短篇選や唐草物語より、語り口が軽妙な気が、なんとなく。
    2017.8.不明.

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    2017年10月07日
  • 太陽王と月の王

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    ノイシュヴァンシュタイン城を建てたルドヴィッヒ二世が創建したもうひとつの城、ヘレンキムーゼーの城についてのエッセイが表題作。
    ワーグナーおたくだったんだね、この王さま。人がにぎやかに集まることもなく、ただ王の妄想を実現するためだけの城だったと。

    なんかもっと凝った、読みにくい文章なのかと思っていたらとてもするすると読みやすく、おもしろかった。

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    2017年06月23日
  • 幻想の肖像

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    まず、自分の持っているのは第14刷1995年版で、表紙絵はピエロ・ディ・コシモの『シモネッタ・ヴェスプッチの肖像』である。登録されている表紙絵は別のものに代わっているが、その表紙絵は本書に収録されていない絵だと思われる(『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』の中のパトモス島のヨハネ)。あるいは、現在は増補されたか、もしくは収録された絵の一部分を拡大したものなのであろうか?

    あとがきによれば、本書は澁澤龍彦が3年の間『婦人公論』の巻頭口絵のために書いたエッセイをまとめたものとのことである。澁澤がこれと選んだ絵画を、一画家につき一枚の割合で書いている。あとがきの澁澤の言の通り、澁澤が好むものをセレク

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    2016年05月03日
  • 毒薬の手帖

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    作者が言うように「毒」は不思議な魅力を持っていると感じる本。
    こうして読んでいると西洋の歴史には、こんなにも毒殺や毒についての研究が古くから行われていたことに驚きました。
    また、有名な毒殺事件も紹介されていて、興味深いです。
    ただ、生活では役に立ちません。

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    2015年08月16日
  • 東西不思議物語

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    古今東に数多ある不思議の物語を紹介する本。元々新聞に連載されていたものなので、軽い読み物として書かれていますが、背後に膨大な知識が広がっていることをうかがわせます。また、出展となる書物も紹介されているので、ただ単なる雑学書と違う趣きがあります。そして読んでみたい本が連綿と広がり増えていくのです。
    ここで紹介されている事項は、ポルターガイストや幻術、栄光の手や天狗、百鬼夜行などなどお馴染みのものも多く、ひとつの種から様々な花が咲くものだと思い知らされます。
    澁澤龍彦の本は興味もちつつ余り手を出していませんでしたが、これを機にどんどん読んでいきましょうかね。

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    2015年05月03日
  • 夢の宇宙誌

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    かくも衒学的な娯楽エッセイ。宗教とエロス。ユートピアとディストピア。そしてそれらを飄々と語る澁澤の王子っぷり。素晴らしい!

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    2015年04月09日
  • 私の戦後追想

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    澁澤龍彦のいわゆる普通のエッセイぽいのは何か違うなと思って読まず嫌いしていたが、古本屋で見つけて気まぐれに読んでみると、しっかり澁澤龍彦で、あらためてこの人の文章自体の面白さ、サービス精神を感じられた。いい読書だった。

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    2015年01月30日
  • 秘密結社の手帖

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    秘密結社の定義から、世界中の秘密結社について紹介されていて面白かった。
    著者あとがきにもあったように日本の秘密結社についてもっと記載があればよかった。

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    2015年01月03日
  • 幸福は永遠に女だけのものだ

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    澁澤龍彥のエロスに関連するエッセイをまとめた作品集です。女性的原理について論じた表題作をはじめ、ホモ・セクシャリズムやフェティシズム、オナニズムを語る"異常性愛論"、有名女優をめぐる考察"モンロー神話の分析"等、29編も収録されています。どの作品を読んでも感じるのですが、博識ぶり、先見の明にはいつも驚かされます。とても敷居の高い作家のように思われますが、軽妙な書きぶり、茶目っ気のある文章にあっという間に読めてしまいます。ここに記されていることを100%理解するには、読み手側ももっと努力しないと。

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    2014年12月06日
  • 幸福は永遠に女だけのものだ

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    エロティシズムに関わる論考を中心に集めたエッセイ集。単行本は1967年に現代思潮社から「ホモ・エロティクス」として刊行、再編集、タイトルを変更して文庫化。文庫版タイトルは収録されたエッセイの一篇から。

    I.
    現代のエロス/セックスと文化/異常性愛論/わたしの処女崇拝/聖母子像について/乳房、たまゆらの幻影/CLITORIS/エロティシズムと女性のプロポーションについて/セックス・アッピール/伊達男とズボン
    II.
    エロティシズムを生きた女性たち/デカダンスとカトリーヌ・ドヌーヴ/モンロー神話の分析/魔女について/エロティック文学史のための序説/映画におけるエロティック・シンボリズムについて/

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    2014年10月15日
  • 太陽王と月の王

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    タイトルはエッセイの中のルドヴィヒ二世を論じた一篇より。初出の情報なし。あとがきには昭和55年7月とある。単行本は同タイトルで1980年大和書房刊。

    I.
    知られざる発明家たち/人形雑感/太陽王と月の王/宇宙論について/植物界のイカロス/ホログラフィ頌/北斎漫画について/お化け屋敷の光源氏/化けもの好きの弁/魚の真似をする人類/パイプ礼賛/説話好きの弁/パリの昆虫館/神話と絵画
    II.
    嘘の真実/冷房とエレベーター/古本屋の話/パイプの話/機関車と青空/空前絶後のこわい映画/読書目録/望遠鏡をさかさまに/ビブリオテカについて/今月の日本(送達の犬/専業について/流行について/ディジタル反対

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    2014年10月14日
  • 長靴をはいた猫

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    非常に読みやすく、面白かった。
    挿絵がとてもいい。えろちっくで、中身のイメージを作ってしまう感じではあったけども、このイメージでいいのかい?赤ずきんとか。
    表紙かわいすぎ。

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    2015年11月17日
  • 東西不思議物語

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    長年、読んでみたいなあ、と思っていた人の本を、初めて読むのは愉しいものです。
    それで、期待に違わず楽しめると、なおのこと。
    だんだん歳を取ってくると、「あんまり悠長に先送りにしていられないなあ」と、思うので。
    恥ずかしながら読んだことありません、という系統の作家さん、読んでいきたいなあ、と。

    どうやら、1976年に新聞に連載された文章のようです。
    澁澤龍彦さん、当時48歳くらいのようですね。

    それなりに裕福な家庭に生まれ、エリートで、兵隊に行く前に戦争が終わり、東大仏文を経て新聞などへの就職は失敗。
    大学院に進んで肺病を病み。就職をあきらめて、翻訳・評論等の文筆業に。
    サドの翻訳紹介、ダー

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    2014年08月18日
  • 東西不思議物語

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    東西の不思議譚を集めたもの。野暮なことは言わずに楽しむ。一番不思議なのはこういうことを考えだす人間の想像力かも知れない。タイトルに興味を惹かれた章から読める。

    1 鬼神を使う魔法博士のこと
    2 肉体から抜け出る魂のこと
    3 ポルターガイストのこと
    4 頭の二つある蛇のこと
    5 銅版画を彫らせた霊のこと
    6 光の加減で見える異様な顔のこと
    7 未来を占う鏡のこと
    8 石の上に現れた顔のこと
    9 自己像幻視のこと
    10 口をきく人形のこと
    11 二人同夢のこと
    12 天から降るゴッサマーのこと
    13 屁っぴり男のこと
    14 ウツボ舟の女のこと
    15 天女の接吻のこと
    16 幽霊好きのイギリス人

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    2014年07月03日
  • 幻想博物誌

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    人間の想像力は、古来様々な異形の存在を生み出してきた。想像上の怪物や不思議な植物だけでなく、実在の生物も超常的な性質を与えられ、神話や宗教のシンボルとして、人々の生活の隣に息づいてきた。幻想的な生物たちを古今東西の書物に訪ね、その魅力を語る。

    スキタイの羊/犀の図/スキヤポデス/クラーケンとタッツェルヴルム/ドードー/蟻の伝説/スフィンクス/象/毛虫と蝶/人魚の進化/大山猫/原初の魚/ゴルゴン/フェニクス/貝/ミノタウロス/火鼠とサラマンドラ/グノーム/海胆とペンタグラムマ/バジリスクス/鳥のいろいろ/虫のいろいろ/ケンタウロス/キマイラ。

    「スキタイの羊」に出て来るワクワク島の木がとても

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    2014年05月28日
  • 快楽主義の哲学

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    ・人生には、目的なんかない
    ・幸福とは、まことにとりとめのない、ふわふわした主観的なものであって、その当事者の感受性や、人生観や、教養などによってどうにでも変わりうるものだ
    ・快楽には確固とした客観的な基準があり、ぎゅっと手でつかめるような、新鮮な肌ざわり、重量感があります
    ・「汝の隣人を愛せ」は空虚な理想
    ・夢の中に出てくるネクタイはペニスの象徴

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    2014年03月31日
  • O嬢の物語

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    Pauline Réageが1954年にジャン=ジャック・ポーヴェール書店より刊行した小説。1975年に映画化され、ポルノだと思っている人が多いと思いますが、原作小説についてだけいえば、官能小説ではありません。サディスティックな描写、マゾヒスティックな描写、ホモセクシャルな描写やレズビアンな描写などもありますが、主人公Oの心理描写が大半を占めており、そういう部分を期待して読むとがっかりします。この心理描写が、とても細かいのでもの凄く生々しく、感覚を刺激してきます。澁澤龍彦の訳はさすがだと思いました。

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    2014年03月25日
  • 悪徳の栄え 下

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    後半は冒険活劇の体を帯び、陰惨な場面描写に耐えれば荒唐無稽な話の展開やら、宗教批判やら、専制主義の批判やらでなかなかおもしろかった。
    18世紀末から19世紀にかけて新たな思想が芽生える時期だったのかな〜という気もした。
    まぁ、ただの気のせいかもしれないが…

    Mahalo

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    2013年12月19日
  • 美徳の不幸

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    善いことをすればするほどひどい目にあって、ボロボロになっていく女の人の話し。

    しかしよくまぁ次から次にひどい目に合うことか。
    それでも現代人のほうがおそらくはるかにもっと残忍で、いやらしい責め苦を思いつくような気がする。当時画期的であったものでもいまや古典的、刺激の足りないものとなっているような…

    自然の秩序と称されて、強者による弱者の支配が語られる。作者は逆説的にそれに反発しているようなのだが強者の繁栄、弱者の衰亡が読者の脳に張り付くのではないかと憂慮される。登場人物の一人が語っていたように、人生は善か悪かの二者択一ではなくて、その場その時の身の処し方次第なのだろう。

    特に力のないもの

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    2013年12月12日
  • 快楽主義の哲学

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    「現実原則」に支配され、規格品のレジャーを供与されることで満足しきって「幸福」を感じている大衆は、今も昔も変わらない。一匹狼として、つくられた流行や価値に反抗し自ら快楽を発見することが肝要であると言った澁澤氏の思考や生活の理想が、大量消費社会や欺瞞に満ちた民主主義の中に生きる私の胸に突き刺さり、決して忘れることができないものとなりました。
    しかしながら、現代の同性愛や風俗の乱れ、過剰な自己表現などの抑圧された欲求が解放された社会がスタンダードとなり、澁澤氏の主張が一匹狼的ではなくなった皮肉な情況をみて、単純に良い世の中だとは言えない気持ちになってしまいました。
    終局的には、既成の道徳や価値、法

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    2013年09月24日