澁澤龍彦のレビュー一覧
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エロティシズムに関わる論考を中心に集めたエッセイ集。単行本は1967年に現代思潮社から「ホモ・エロティクス」として刊行、再編集、タイトルを変更して文庫化。文庫版タイトルは収録されたエッセイの一篇から。
I.
現代のエロス/セックスと文化/異常性愛論/わたしの処女崇拝/聖母子像について/乳房、たまゆらの幻影/CLITORIS/エロティシズムと女性のプロポーションについて/セックス・アッピール/伊達男とズボン
II.
エロティシズムを生きた女性たち/デカダンスとカトリーヌ・ドヌーヴ/モンロー神話の分析/魔女について/エロティック文学史のための序説/映画におけるエロティック・シンボリズムについて/エロティックの少数派/土着の「薔薇」を探る/怪獣とエロティシズム
III.
幸福は永遠に女だけのものだ/情死とニルヴァーナ原則/科学を超えるもの/現代の悪について/自分の死を自分の手に/もう一つの意見/殺人狂時代/現代犯科帳/貝殻頌/ハート(心臓)の話 -
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タイトルはエッセイの中のルドヴィヒ二世を論じた一篇より。初出の情報なし。あとがきには昭和55年7月とある。単行本は同タイトルで1980年大和書房刊。
I.
知られざる発明家たち/人形雑感/太陽王と月の王/宇宙論について/植物界のイカロス/ホログラフィ頌/北斎漫画について/お化け屋敷の光源氏/化けもの好きの弁/魚の真似をする人類/パイプ礼賛/説話好きの弁/パリの昆虫館/神話と絵画
II.
嘘の真実/冷房とエレベーター/古本屋の話/パイプの話/機関車と青空/空前絶後のこわい映画/読書目録/望遠鏡をさかさまに/ビブリオテカについて/今月の日本(送達の犬/専業について/流行について/ディジタル反対/すべからく/元号について/ワイセツについて/ムクロジの実/神話の復活のために/鎌倉今昔/虎よ、虎よ/手紙を燃やす)/架空対談 *サド/あとがき -
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長年、読んでみたいなあ、と思っていた人の本を、初めて読むのは愉しいものです。
それで、期待に違わず楽しめると、なおのこと。
だんだん歳を取ってくると、「あんまり悠長に先送りにしていられないなあ」と、思うので。
恥ずかしながら読んだことありません、という系統の作家さん、読んでいきたいなあ、と。
どうやら、1976年に新聞に連載された文章のようです。
澁澤龍彦さん、当時48歳くらいのようですね。
それなりに裕福な家庭に生まれ、エリートで、兵隊に行く前に戦争が終わり、東大仏文を経て新聞などへの就職は失敗。
大学院に進んで肺病を病み。就職をあきらめて、翻訳・評論等の文筆業に。
サドの翻訳紹介、ダークサイドな人間性やらセックスの研究や紹介、かと思えば博覧強記な教養を素に、硬派な評論エッセイ、そして晩年は小説まで。
三島由紀夫さんとの交流や、サドやら悪徳の栄え裁判やらで、なんとなくドロドロした印象がありますが、チョット変態さんだったのかもですけど、すごいインテリにして文章家だった。。。
と、まあ。
昔から、本屋さんで、澁澤さんの本は、背表紙とか解説とか、いっぱい見ていたので。上記のようなことは知っていたんですが。
なかなか、なんとなく読む機会が無くて、実は今回が、初・澁澤龍彦さんでした。
もうとにかく、お化けやら妖怪やら超能力やら、そういうことを、楽しそうに紹介するエッセイです。
一つ一つ、そんなに執拗に書き込むわけじゃなくて。
「ポルターガイスト現象っていうと、西洋だとこういう例がありますね。ところで日本だと、こういう書物にこういう記述があって、同じような現象なんですね」
と、いうくらいの感じの短文。それが、49個並んでいる。
割と気軽にすらすらっと楽しめます。
●肉体から魂が出て、また戻る、みたいな現象
●頭が二つある蛇
●鏡の不思議な世界
●人形が人格を帯びるみたいなこと
●屁で音楽を奏でる芸人
●ウブメという妖怪?産む女なのか、鳥なのか
●戦国時代の幻術士・果心居士
●天狗の話
●人造人間の話
●不死の人
●黒ミサ
などなど、と言った物事を、単純に解説したり。
あと、「×世紀の×国ではね、こういう書物にこういうことが書いてあって」
と、いうような、「へ~」っと言うオモシロ話が満載。
それが、タイトル通り、古代から現代までの、日本、中国、朝鮮、欧州、アメリカ、などなどの事例が実に博覧強記。
一方で、「だからなんなのさ」というと、それ以上でも以下でもありません。
ある意味気楽な趣味の本です。
僕は、特段に不可思議現象のマニアではないんですが、最近、水木しげるさんを読んだりしていて、「そういうのも面白いよなあ」と、とっても浅いレベルでの好奇心がちょこっとあったので。
(割とこれまで、基本はリアリズムの理性主義な読書が多かったので。ちょっとこういうのも、面白いですね)
一方で、澁澤龍彦さんの文章っていうのは、なるほど、実にさりげなく上品にして簡潔。日本語使いとしての深い実力は、かいま見れた気がします。
なるほど、小説家っていう訳じゃない文章なんだなあ、と思いました。
何ていったらいいか、自己主張というか、目立とう精神という、書き手の自身のタレント意識性みたいなものが、薄いなあ、っていうか。
小説家さんの小説じゃない文章って、やっぱりそういうものが感じると思うんですけど。
と言って、新聞ジャーナリズム的な文章とも違うんですけど。
やっぱり、平易透明な評論的な文章っていいいますか。
そういう、文章レベルでは奇をてらわない上に、とにかく別段、衒学的じゃなくて、楽しそうに淡々と、アヤシイ雑学を棚から出して、見せてくれます。
そういった、肩の力の抜け具合。これはなかなか、大人の芸ですね。
なんというか。大正昭和モダン建築な喫茶店で、実に美味しいコーヒーをブラックでいただいて。添えてある小さなビスケットも、何だか上質でした、みたいな。
それで、主食になる訳でもないんですけどね。
気負わぬ軽さが漂う、そんなホッとする感じ。
これはこれで読書の快楽、澁澤龍彦さん、今後も楽しめそうです。 -
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東西の不思議譚を集めたもの。野暮なことは言わずに楽しむ。一番不思議なのはこういうことを考えだす人間の想像力かも知れない。タイトルに興味を惹かれた章から読める。
1 鬼神を使う魔法博士のこと
2 肉体から抜け出る魂のこと
3 ポルターガイストのこと
4 頭の二つある蛇のこと
5 銅版画を彫らせた霊のこと
6 光の加減で見える異様な顔のこと
7 未来を占う鏡のこと
8 石の上に現れた顔のこと
9 自己像幻視のこと
10 口をきく人形のこと
11 二人同夢のこと
12 天から降るゴッサマーのこと
13 屁っぴり男のこと
14 ウツボ舟の女のこと
15 天女の接吻のこと
16 幽霊好きのイギリス人のこと
17 古道具のお化けのこと
18 鳥にも化すウブメのこと
19 リモコンの鉢のこと
20 キツネを使う妖術のこと
21 空中浮揚のこと
22 トラツグミ別名ヌエのこと
23 幻術士果心居士のこと
24 天狗と妖霊星のこと
25 悪魔と修道士のこと
26 二度のショックのこと
27 迷信家と邪視のこと
28 女神のいる仙境のこと
29 神話とSF的イメージのこと
30 「栄光の手」のこと
31 骸骨の踊りのこと
32 天狗にさらわれた少年のこと
33 石の中の生き物のこと
34 海の怪のこと
35 隠れ蓑願望のこと
36 破壊された人造人間のこと
37 腹の中の応声虫のこと
38 百鬼夜行のこと
39 アレクサンドロス大王、改訂探検のこと
40 不気味な童謡のこと
41 大が小をを兼ねる芸のこと
42 もう一人の自分のこと
43 ガマが変じて大将となること
44 女護の島のこと
45 不死の人のこと
46 遠方透視のこと
47 黒ミサに必要なパンのこと
48 さまざまな占いのこと
49 百物語ならびに結びのこと -
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人間の想像力は、古来様々な異形の存在を生み出してきた。想像上の怪物や不思議な植物だけでなく、実在の生物も超常的な性質を与えられ、神話や宗教のシンボルとして、人々の生活の隣に息づいてきた。幻想的な生物たちを古今東西の書物に訪ね、その魅力を語る。
スキタイの羊/犀の図/スキヤポデス/クラーケンとタッツェルヴルム/ドードー/蟻の伝説/スフィンクス/象/毛虫と蝶/人魚の進化/大山猫/原初の魚/ゴルゴン/フェニクス/貝/ミノタウロス/火鼠とサラマンドラ/グノーム/海胆とペンタグラムマ/バジリスクス/鳥のいろいろ/虫のいろいろ/ケンタウロス/キマイラ。
「スキタイの羊」に出て来るワクワク島の木がとても気に入っている。表紙を飾るのは、インドに棲むと伝えられた一本足の種族スキヤポデス。一章に一枚掲載される図版も面白いので、もう少したくさん見たいところ。 -
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善いことをすればするほどひどい目にあって、ボロボロになっていく女の人の話し。
しかしよくまぁ次から次にひどい目に合うことか。
それでも現代人のほうがおそらくはるかにもっと残忍で、いやらしい責め苦を思いつくような気がする。当時画期的であったものでもいまや古典的、刺激の足りないものとなっているような…
自然の秩序と称されて、強者による弱者の支配が語られる。作者は逆説的にそれに反発しているようなのだが強者の繁栄、弱者の衰亡が読者の脳に張り付くのではないかと憂慮される。登場人物の一人が語っていたように、人生は善か悪かの二者択一ではなくて、その場その時の身の処し方次第なのだろう。
特に力のないものは曲がりくねった細い細い崖っぷちの道を歩くような注意が必要なんだと思った。ボケ~としてたらヤバイんだろうな。
Mahalo -
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「現実原則」に支配され、規格品のレジャーを供与されることで満足しきって「幸福」を感じている大衆は、今も昔も変わらない。一匹狼として、つくられた流行や価値に反抗し自ら快楽を発見することが肝要であると言った澁澤氏の思考や生活の理想が、大量消費社会や欺瞞に満ちた民主主義の中に生きる私の胸に突き刺さり、決して忘れることができないものとなりました。
しかしながら、現代の同性愛や風俗の乱れ、過剰な自己表現などの抑圧された欲求が解放された社会がスタンダードとなり、澁澤氏の主張が一匹狼的ではなくなった皮肉な情況をみて、単純に良い世の中だとは言えない気持ちになってしまいました。
終局的には、既成の道徳や価値、法律といったものは偏見の集合体であり、偏見を否定することは社会のルールを否定するのと同義であるという撞着の論理の導出から、本書で性感帯の拡大、性のアナーキズムと言われているような一種の「原始的社会」の成立が必要なのかもしれません(文明的退行という意味ではなく)。 -
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ネタバレ「ソドム百二十日」
これは小説じゃない、小説なんかじゃない、カタログだ。
内面も成長もない。
さらにはキャラクターもなく、
作者の分身たる人物数名と、作者の欲望する人物数十名とともに城に閉じ込めて規則を作って、さあどうなるか、という壮大な実験に近い。
しかし私は小説なんかよりも、カタログであってもよい、「過剰なもの」を読みたいのだ。
ぜひとも完訳版を読まなければ。
・澁澤独特の隠語の面白さ。「強蔵」!(「ソドムの市」を再鑑賞するときには、あれが強蔵だ! と笑ってしまいそう。)
・「ソドムの市」が思いのほか原作に忠実な作りだったのだと驚く。
「悲惨物語」
・語り口の面白さ。この悪人を描くことで世の中の人への啓発になるでしょう、という語り口であるにも係らず、その悪人を描く楽しさに作者が耽溺している、というパターン。つまりは胡散臭さぷんぷんの道徳を語る語り手。乱歩に多い例のあれ。
・理想的な娘を作り出す、という源氏物語にも通ずるあれ。
・娘を肉体面だけでなく精神面をも犯すフランヴァルよりも、形式上は犯されたという状況にあるにも関わらず生き生きと父を愛する悪女ユージェニーのほうが、素敵。
・私もこのような娘におかしくされてみたい。
「ゾロエと二人の侍女」
未読。