五木寛之のレビュー一覧
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著者が、日本全国にある百の寺を訪れたエッセイ集の第一巻です。
和辻哲郎の『古寺巡礼』(岩波文庫)や、亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』(新潮文庫)などの先蹤はありますが、格調の高いそれらはもちろん、もっと新しい辻井喬の『古寺巡礼』(ハルキ文庫)とくらべても、格段に読みやすい文章で書かれているのが特徴です。
著者は、「寺にも、仏像にも、建築にも、ほとんど無智のまま私は旅に出た。なにかを学ぶためではない、何かを感じるだけでいいのだ、と思ったからである」と語っていますが、著者は親鸞や蓮如について多くの本を刊行しており、けっして仏教にかんする知識をもちあわせていないわけではありません。ただ、著者独自の -
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難しかった。
前提となる知識が足りなさすぎた。読むのが早すぎたか。
もうちょっと色々と読んで知って、また読み直すと色々とわかるようになる気がする。
p200
「聖と俗の、楕円というふたつの中心のダイナミズムがなくなった時に、皆カプセル化されて、狭い範囲のアイデンティティでしか人と交われなくなり、排他的になってゆく面があるんじゃないこと思います。」
今の世界は、まさしくこれで、多様性といいながら、一つの円の中に取り込んでいこうとしているところに違和感を感じる。
ここ何年かでよく聞くようになった「インクルーシブ」も、正直あまり好きではない。
別々の土俵で、お互いにそこにいることだけを許容しあえ -
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ネタバレ五木寛之「眠れぬ夜のために」2018.11発行、1967年から2018年までの五百余の箴言集です。心に響いた言葉は:①この国の爆心地が広島、長崎だけでないことを、私は石牟礼さんの文章で教えられた。②食べていける、寝る場所があるということのありがたさをもう一度思い出したい。③人間が性のいとなみを絶てば、地上から人間は消える。④愛から生まれるもの、それは執着である。⑤生きている限り執着は消えない。モノに執着し、ヒトに執着し、イノチに執着するのが人間である。⑥人間は「おどろく」ことで成長し、やがて「よろこぶ」時代を過ごす。そして「かなしむ」ことの大切さに気づき、しめくくりは「ありがとう」という世界
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著者が、終戦を北朝鮮で迎えた後ソ連の捕虜となり、その後引き揚げたと言う過酷な体験は、想像を絶するもので、理解することは容易ではないが、ここで語られている著者のお考えや信念と言ったものが、その様な体験から裏打ちされたものなのだと思う。
生きていく上で、心に留めておきたい事が色々ありました。
この本が発行されたのは、1999年。当時も痛ましい出来事が次々起こりバブルも崩壊した真っ只中で生きづらい世の中だったのを思い出すが、その後起こった同時多発テロや東日本大震災、コロナ、異常気象、ロシアのウクライナ侵攻。。。などを思うと、著者の言うようにこの世は苦しいことばかりであり、生きているだけで価値があるの -
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ネタバレ五木寛之さん、作家、作詞家、エッセイスト、宗教家、養生家、ダンディ・・・。私にとっては養生に関する先生ですw。「背進の思想」、2022.2発行。間もなく90を迎える著者の思いがエッセイに綴られています。①捨てるべきものはモノではなく、さまざまな事に執着する自分の雑念である。②講演、対話、著述の日々。講演での心がけ3つ。自分はこう思う(エライ人の名前を出さない)、数字をあげて話をしない、黒板や映像を使わない。③国民すべてがマスク。戦後70有余年、これほどの一体感を覚えた時代はなかったのでは。
五木寛之さん、遠くをよく見ていると、ある朝、突然に、老眼鏡なしで新聞が読めたそうです。良かったですね -
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歌手になることをめざす織江は、老作詞家の宇崎秋星にその才を見いだされ、夢へ向かって進みはじめます。他方、東京へもどったものの、虚無感に苛まれていた信介は、故郷の竜五郎がケガをしたことを知り、筑豊へ向かいます。久しぶりに再会した竜五郎には、往年の覇気は見られず、塙組は資金繰りが苦しくなっており、解散の危機に瀕していました。
そんな故郷を目にした信介は、帰郷の途中でいっしょになった山本というライターのことばをヒントに、プロレスを興行するという考えを実行に移します。織江の知人のつてを頼り、無事にプロレスが開催されますが、試合のさなかに竜五郎の容態が急変し、やがて彼はこの世を去ります。のこされた信介 -
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織江の歌が、芸能事務所のプロデューサーの耳にとまり、彼女は東京へ出て歌手をめざすことになります。信介も東京へもどり、大学生として生活を送りますが、緒方たちの影響を受けて、しだいに左翼運動にのめり込んでいきます。こうして、二人の距離はしだいに離れていくことになり、信介はすさんだ心をもてあますようになります。
そんななか、信介の所属する運動家たちのグループの女子学生が、対立するグループのスパイであったことが発覚します。彼女に対する「査問」がおこなわれ、信介は仲間の男たちが一人の女性に暴力をふるうことに違和感をおぼえますが、そんな彼の甘さは仲間たちから糾弾され、さらに信介の監視から逃れた女子学生が -
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信介とカオルがたわむれに身体を寄せあっているすがたを目撃した織江が、二人のもとを去ったあと、北海道へ旅立ったという知らせがもたらされます。おりしも、緒方を中心に演劇を志す学生たちが、北海道で活動をおこなうという計画がもたらされ、信介は彼らにつきしたがって北海道へとわたります。
北海道へたどり着いた信介たちは、アルバイトをしながら共同生活を送ります。彼らの働く職場は関西からやってきた暴力団がとりしきっており、労働者たちが搾取されている実情を目にした緒方は、劇を通じて労働状況の過酷さを訴えようとします。そんな彼らに、かつてアナーキストで現在は食堂を経営している丸谷玉吉や、その娘のトミが、協力を申 -
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竜五郎の庇護のもとを離れて、一人で東京の大学へ通いはじめた信介は、大学の先輩で演劇青年の緒方という男と知りあい、彼と共同生活を送ることになります。緒方の知人で、新宿二丁目の赤線地区で働くカオルという女性や、二人が暮らしている家の大家の娘たちとの交流を通じて、信介の若い心は揺さぶられます。その後、大学の体育の実技の授業を担当している石井という講師にすすめられて、信介は彼からボクシングの指導を受けることになります。
そんななか、故郷の筑豊から織江が東京へやってきます。しかし、東京で大学生として日々を送る信介と、喫茶店のウェイトレスとして働く織江のあいだには感情の齟齬が生まれます。
筑豊編の男ら -
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主人公の伊吹信介は、義母のタエから、死んだ父の伊吹重蔵の思い出をくり返し聞かされてそだちます。重蔵は、鉱山の落盤事故で閉じ込められたひとたちを救うために、みずからの命を犠牲にしたのでした。父の立派な生きざまに恥じることのない、男らしい少年になることを心に誓う信介は、
かつてタエをめぐって重蔵と争った塙竜五郎は、のこされたタエと信介の庇護をすることを重蔵に約束し、信介は彼から大人の男たちが生きる世界をかいま見ることになります。他方で彼は、幼馴染の少女の牧織江や、快活な音楽教師である梓旗江に心を惹かれ、少年らしい性のうずきにとまどいながら成長していきます。
昭和のエンターテインメント小説らしい