五木寛之のレビュー一覧
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著者は、浄土真宗の他力の思想に深く共感しながらも、しかし同時に自力をも否定しない。それどころか、どちらか一方を採用する二分法的な考え方自体を改めなければならないとする。そして花田清輝の「楕円の思想」(真円の中心点は1つであるのに対し、楕円は2つの中心点を持つ)を引き合いに出して、自力と他力という2つの力点間を自在に往復し、どちらにも偏らない(力まない)生き方=「無力(むりき)」を提案する。
「本来、人間は時に右へ、時に左へと揺れ動いていくものなのに、その認識を欠いたまま、どちらに落ち着きたがっているような気がしてなりません」(p.65)
少なくとも現代社会において、このようなどちらにも落ち -
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著者によれば、現在の日本は下山の時を迎えているという。
敗戦後、先進国を目指し世界第二位の経済大国に上り詰めた。
ここまでが登山である。
バブルで頂上を迎え、今は下山の時であるという論旨である。
登山でも実際に下山時の方が遭難が多いと聞く。
いかに上手く下山するかは大事であることに同意する。
たしかに欧州の先進国がそうであったように、今後の日本は経済的に大きな発展は見込めず、ある意味で国家として成熟していく時期だと思う。
そういう成熟していく下山であれば良いが、後半で書かれているノスタルジーのすすめは馴染めない。
同意できる部分もあるが、価値観が合わない部分も多く、いまひとつすっきりしな -
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上り坂、下り坂、栄枯盛衰、そして人生において、社会でも、国家にも当てはまるだろう。改めて、下山と名をつけ、語られる内容には、大きな意味があるのか?大戦後、日本は発展を遂げ、世界でも屈指の経済大国になった。バブル、経済低迷、近隣諸国の台頭、中国の発展。今からは、緩やかに下山もよいではないか?
同様のことは過去の歴史の中で繰り返されてきたことだと思う。先哲の意見を参考にしたいと考えるものである。
疑問
・現代では60歳(定年)が下山を始める歳か?
・下山は、あきらめや放棄ではなく新しい物差しで人生を成熟させるものである。ゆっくりと振り返りながら、到着点では安心。善悪という二者択一の決め方は当て -
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自分は思っているほど完璧ではない。むしろ、瑕だらけである。にもかかわらず、多くの人はそれに気付いていないか、あるいはそれに気付かないふりをしている。だから「自分は大丈夫」「自分に限って……」というような思考に陥ろうとするのである。
本書は五木さん流の「覚悟のススメ」。どうせ完璧ということには、なりっこない。だったら、それを「覚悟」し、そのうえでの行動を考えるべきではないか。
日本は所詮小国。今後、世界を引っ張るほどの力は復活しないのではないか。
心に「愁い」があるのは当たり前。「鬱」には誰もがなる。
「悪」はみんなの心に等しく存在する。
などなど。つい、根拠もなく期待してしまっ -
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相変わらず浄土真宗開祖の話とは思えない冒険活劇。どったんばったん。
前作は子供から大人への成長譚だったのですが、本作「激動編」の親鸞は初めから結構いい大人。
さすがに貫禄も出たろうと思ってたんだけど、どっこい持ち前の草食男子っぷりは健在で。
もう、なにしろ全然自分で決められない。いろんな事を。
見た感じお坊さんなもんだからまわりにいろいろ聞かれるんだけど、
んー、え、ちょっと、分かんないです。逆にどう思います?という相変わらずの調子。
しっかり親鸞!ちゃんとして!
それでも実直な言動で次第にまわりに味方が集まってきます。
というか、誰かが守ってあげないと、このひとまるで生きて行けないもんだか -
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人間の運命は変えられるのか?「宿業」についての考えが書かれた本。五木さんの終戦時の強烈な体験から考察されている。
確かに変えられない運命を背負って人は生きていると思う。でもその中で少しでも良く生きたいと思ってもがいているのではないだろうか?だから本も読む。
ただ誰かが「よく生きる」影にほかの誰かの犠牲があるというのは、これまで考えたこともなかった。確かにそうかもしれない。
社会のある一定割合が落ちこぼれたり、イジメがなくならないことの根源はそういうことなのかもしれない。
何を書いても軽い気がする…。頭の良い人って、みんなこんなこと考えているのかな?凡人で幸せなのかもしれない。 -
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本当に久しぶりに五木寛之でも読もうかな、と。まったく穏やかで明快な語り口調の中に様々な自分の考えを詰め込むということの達人の文章で、素直に受け入れることができる。いわゆる「人生論」的な本は胡散臭いものばかりでまったく信用していないけれど、この人の言葉なら信用できる、そういう感じがする。色々な角度から「ヒント」を少しだけ与えてくれる本ですが、私が印象に残っているのは、「歓ぶ」、「惑う」、「喋る」かなあ。どれも、あまり自分が考えたことのない視点を与えてくれると思います。ちなみに、私は五木寛之が生きるということを苦しく険しい道のりであるということを根本条件にしているのを今回初めて知った。読んだのが昔