五木寛之のレビュー一覧
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第七巻では、東北の寺がとりあげられています。
巻頭の序文で著者は、「仏教は縄文的な東北には、きわだって異相の侵入者である。そして、その異文化の受容と根付きの過程に、私たち日本人の心象風景が象徴的に透視できるような気がする」と述べています。こうした著者のまなざしは、日本が単一国家として統合されていく動きの裏面に、複数の文化が併存していたという考えかたが述べられているところにはっきりと現われています。著者は、奥州に一大勢力をきずいた藤原氏を「平泉幕府」とみたて、これにならって源頼朝が鎌倉を「第二の平泉」として形成したのではないかと論じています。
慈覚大師円仁の名前が、東北の地に大きな存在感をもっていることや、最澄との論戦で知られる徳一の人物について書かれていることなども、興味深く読みました。 -
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第六巻では、和歌山・大阪・兵庫など関西の寺がとりあげられています。
高野山をおとずれた著者は、空海がこの地に道場を開く前から、山岳信仰の聖地であったことに注目し、仏教が在来の神と融和し、それをとり込みながら信仰のかたちがつくられてきたことに触れています。これまでも著者がさまざまな機会に語ってきた、日本の仏教に見られる「寛容」さですが、空海という人物には、たしかにさまざまな信仰のありかたを包み込んで総合するような広さを感じます。
また融通念仏宗の総本山である大念仏寺では、開祖である了忍の像を、すばらしい美声で声明をとなえるシンガーにたとえるなど、著者らしい表現が見られて、おもしろく読みました。 -
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第三巻では、京都の寺がとりあげられています。
金閣寺(鹿苑寺)と銀閣寺(慈照寺)では、ともに室町幕府の将軍でありながら、まったく異なる個性をもつ足利義満と義政の二人の人物像についての考察を展開しつつ、両者がそれぞれどのような考えにもとづいて、これらの建物をつくることになったのかということが論じられています。
また、東本願寺および西本願寺をあつかった章では、東西分裂にいたった経緯を語りつつ、ともに親鸞の教えをいまに伝えていることが説かれています。
清水寺の章では、宗派にこだわらずにお参りできることに著者は注目しており、それを「多神教的」ないし「神仏習合的」と呼んで、宗教の対立が激化する現代の世界情勢を変える可能性を見ようとしています。多神教が宗教的寛容にを結びつき、一神教は非寛容的であるという議論は、梅原猛などがさかんに主張していましたが、著者の議論もその影響を受けたものでしょうか。図式的にすぎる印象はいなめませんが、ともあれ清水寺における信仰のかたちを紹介する文章として読むことは可能だと思います。 -
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著者が、日本全国にある百の寺を訪れたエッセイ集の第一巻です。
和辻哲郎の『古寺巡礼』(岩波文庫)や、亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』(新潮文庫)などの先蹤はありますが、格調の高いそれらはもちろん、もっと新しい辻井喬の『古寺巡礼』(ハルキ文庫)とくらべても、格段に読みやすい文章で書かれているのが特徴です。
著者は、「寺にも、仏像にも、建築にも、ほとんど無智のまま私は旅に出た。なにかを学ぶためではない、何かを感じるだけでいいのだ、と思ったからである」と語っていますが、著者は親鸞や蓮如について多くの本を刊行しており、けっして仏教にかんする知識をもちあわせていないわけではありません。ただ、著者独自のフィルターを通した「他力」の解釈に見られるように、いかめしい仏教の教理の角がとれて、だれにも親しむことのできるような内容に昇華させているところに、著者の仏教にかんするエッセイの特徴があるように思います。本書でも、そうした著者の強みが生かされており、肩の力を抜いて読むことのできるエッセイになっています。 -
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難しかった。
前提となる知識が足りなさすぎた。読むのが早すぎたか。
もうちょっと色々と読んで知って、また読み直すと色々とわかるようになる気がする。
p200
「聖と俗の、楕円というふたつの中心のダイナミズムがなくなった時に、皆カプセル化されて、狭い範囲のアイデンティティでしか人と交われなくなり、排他的になってゆく面があるんじゃないこと思います。」
今の世界は、まさしくこれで、多様性といいながら、一つの円の中に取り込んでいこうとしているところに違和感を感じる。
ここ何年かでよく聞くようになった「インクルーシブ」も、正直あまり好きではない。
別々の土俵で、お互いにそこにいることだけを許容しあえばいいのに、無理やり相手を自分の土俵に引き摺り込もうとしている感じがして、全然優しくない世界だなと思っている。
この本が言っていることとは違うのかもしれないが、多様性って円がいっぱいあって、ぶつかることもあるけど、そこには何かしらの反応が生まれ、エネルギーが生まれ、何かを生み出すきっかけになる可能性があるってことなのかなと思った。 -
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ネタバレ五木寛之「眠れぬ夜のために」2018.11発行、1967年から2018年までの五百余の箴言集です。心に響いた言葉は:①この国の爆心地が広島、長崎だけでないことを、私は石牟礼さんの文章で教えられた。②食べていける、寝る場所があるということのありがたさをもう一度思い出したい。③人間が性のいとなみを絶てば、地上から人間は消える。④愛から生まれるもの、それは執着である。⑤生きている限り執着は消えない。モノに執着し、ヒトに執着し、イノチに執着するのが人間である。⑥人間は「おどろく」ことで成長し、やがて「よろこぶ」時代を過ごす。そして「かなしむ」ことの大切さに気づき、しめくくりは「ありがとう」という世界。
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ネタバレ五木寛之さん、作家、作詞家、エッセイスト、宗教家、養生家、ダンディ・・・。私にとっては養生に関する先生ですw。「背進の思想」、2022.2発行。間もなく90を迎える著者の思いがエッセイに綴られています。①捨てるべきものはモノではなく、さまざまな事に執着する自分の雑念である。②講演、対話、著述の日々。講演での心がけ3つ。自分はこう思う(エライ人の名前を出さない)、数字をあげて話をしない、黒板や映像を使わない。③国民すべてがマスク。戦後70有余年、これほどの一体感を覚えた時代はなかったのでは。
五木寛之さん、遠くをよく見ていると、ある朝、突然に、老眼鏡なしで新聞が読めたそうです。良かったですね。私は、昨日からどうやら飛蚊症のようです。慣れるしかないのかなと思っていますが~~~。五木寛之「背信の思想」、2022.2発行。混迷と不安の時代、後ろを向きながら前へ進む。