【感想・ネタバレ】蒼ざめた馬を見よのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年07月20日

 巧妙な物語。1966年。ソ連は、言論統制が敷かれていた。Q新聞外信部記者の鷹野隆介は、新聞論説主幹の森村から、社を辞めてソ連に行き、アレクサンドル・ミハイロフスキイの未発表の長編小説を密かに入手することを命じられた。この命令自体がかなり危ない。それを鷹野は引き受けることに。
 ユダヤ系市民の3代に...続きを読む渡る家族の物語は、ソ連では発表できない。これを持ち出して、西側で発表する。そして、鷹野はミハイロフスキイの家に訪問するが、ミハイロフスキイの妻に拒絶される。
 困っていた。キーロフ劇場に行ってみようとして、劇場でオリガとあった。オリガは強引に席を譲れという。それで譲ったら、劇がおわってから誘われる。そのままいい関係になってしまう。
 オリガはミハイロフスキイの仕事を手伝っている学生だという。とんとん拍子に、ミハイロスキーの本を手に入れた。題名は『蒼ざめた馬を見よ』だった。西側で発行することで、賞賛を浴びる。
 ところが、ミハイロフスキーが逮捕されたというのだが、全く別人だった。その作品は偽物だったのだ。ソ連には自由がないということを見せつけ、言論統制されているということを見せつけるための作品だった。
 鷹野は、戦争の引き上げの時に、朝鮮にいて、死者を焼く日が決められていた。「焼き日ですよ、焼き日ですよ」という声が、耳元で聞こえるのだった。
 当たり前だと思い込んでいたことが、仕組まれていたことを鷹野はしる。さすが、直木賞をとっただけある。言論の自由とは何か?

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Posted by ブクログ 2020年08月23日

第56回(1967年)直木賞受賞作。戦後20年ほどの日本と東欧を舞台とした5編の短編集。
50年近く前の作品だが、先日読んだ『一度は読んでおきたい現代の名短篇』にて表題作が紹介されていたのをキッカケに手にした。
主人公の行動がとにかく熱い。時代背景もあるが、今読んでも濃い。
五木寛之の作品というと、...続きを読む『大河の一滴』の大河物語はまだしも『百寺巡礼』のように静かで心落ち着くイメージが強くいのだが情熱溢れる作品。そしてどれも短篇で終わらせたくないようなプロット。初期はこのような作品を書いていたとは思いもよらなかった。
ハードボイルド小説、ミステリ小説、青春小説、色んな要素をもった作品群だ。
新装版では、解説もまた熱い。まさに、噛まれた!

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Posted by ブクログ 2016年04月09日

戦後20年ばかりに書かれたものであり、戦争の名残が全体的に残っている。残っているというかそれに常に囚われているという方が近いかもしれない。つまり全体に暗く重い印象が付きまとっている。

短編集はあまり好きではなかったが、本短編集はそれぞれの作品に何か共通するようなものを感じたし、多くを語らないこと...続きを読むの効果も感じた。
多くを語らない良さを感じたのは、作家の芸によるものか読み手の心情変化によるものかは分からないが新しい感覚だった。

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Posted by ブクログ 2014年05月02日

直木賞受賞作を含む初期の作品集。どの作品にも影があり、それが奥行きを与えているように思われます。影とは死の予感であったり辛い別れであったり、あるいは暗い過去であったり…。いろんなものを引きずって懸命に生きる人々の物語です。

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Posted by ブクログ 2022年06月11日

読みたい本リストにあげていたところなかなか店頭でみかけなかったが、ロシアがウクライナに侵攻
したことで久々に再販された模様。この作品集に描かれた内容が今のSNSの普及した時代からみると道具立ても世界の思想状況もある意味時代小説になりつつあるように感じられた。とはいえその時代を生きた世代だからこそ書く...続きを読むことができた人間の生き様は今も我々に迫力に満ちてせまってくる。

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Posted by ブクログ 2017年03月05日

戦後のソ連と日本を舞台に5つのストーリー。一つ一つを中編小説で読んでみたくなる設定。結末がどうなったかを読者の想像に委ねる仕上がりに。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

直木賞受賞の表題作を含む全5篇を含む短編集です。それら全てに共通していたのは、最後に重たく悲しい事実を読者に突きつけて終わるという手法でした。青春小説である「青年は荒野をめざす」を読んで以来、一度読んで見たいと思ってた小説だったので、それだけに全体的に暗い印象を受けました。

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