あらすじ
ソ連の老作家が書いた痛烈な体制批判の小説。原稿の入手を命じられた
外信部記者の鷹野は、新聞社を離れ、身分を偽ってソ連に潜入する。
運よく手に入った小説は全世界でベストセラーとなり、ソ連は窮地に立つ。
ところが、その裏には驚くべき陰謀があった! ――「蒼ざめた馬を見よ」
東京で神経をすり減らした男は、休暇をとり、友人を頼ってモスクワへ飛んだ。
そこで出会ったウクライナ出身の美女の過去とは。――「赤い広場の女」
バカンスのためブルガリアの首都ソフィアを訪れた商社のパリ駐在員は、
妙な雰囲気を漂わせる日本人夫妻と知り合う。その妻に手を出した男が
寝物語で聞いた二人の関係。――「バルカンの星の下に」
愛する妻、良縁の決まった娘、大学進学を控えた息子に囲まれ、幸せな
生活を送る地方大学の助教授、慎吾。教授昇進も目前に控えていた、
ある日、不気味な電話がかかってきた。
「エラブカから何を持って帰ってきた?」
記憶の深部にきざまれた二十年前の約束がよみがえる。――「夜の斧」
Q商業高校山岳部のパーティー6人は北陸二県の県境で墜落事故を
目撃する。その直後、吹雪で立往生したため、顧問の黒木は救助を求めて
一人、近くの集落を目指すが・・・。――「天使の墓場」
直木賞受賞作の表題作をはじめ、いまなお魅力を失わない初期の5編を
おさめた代表的作品集。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
50年も前に書かれてたなんて!
今読んでも時代をいい意味で感じない文章だった。
そして、今生きている世界の見え方が変わるような。
50年後の現代もさほど変わらない、もしかしたらもっと酷くなってるかもと。
Posted by ブクログ
今更ながらに五木寛之を読む。青春の門以来か。冷戦期の東は、今では考えられないかもしれない。と思いきやロシアや北などはまだ残ってるか。1人による強権だと、行き着く先は同じか。ある種のディストピィア小説だが、短すぎて更なる恐怖も感じる。
ヒュブリス症候群。人は少人数でしかまとまらないのか。
Posted by ブクログ
巧妙な物語。1966年。ソ連は、言論統制が敷かれていた。Q新聞外信部記者の鷹野隆介は、新聞論説主幹の森村から、社を辞めてソ連に行き、アレクサンドル・ミハイロフスキイの未発表の長編小説を密かに入手することを命じられた。この命令自体がかなり危ない。それを鷹野は引き受けることに。
ユダヤ系市民の3代に渡る家族の物語は、ソ連では発表できない。これを持ち出して、西側で発表する。そして、鷹野はミハイロフスキイの家に訪問するが、ミハイロフスキイの妻に拒絶される。
困っていた。キーロフ劇場に行ってみようとして、劇場でオリガとあった。オリガは強引に席を譲れという。それで譲ったら、劇がおわってから誘われる。そのままいい関係になってしまう。
オリガはミハイロフスキイの仕事を手伝っている学生だという。とんとん拍子に、ミハイロスキーの本を手に入れた。題名は『蒼ざめた馬を見よ』だった。西側で発行することで、賞賛を浴びる。
ところが、ミハイロフスキーが逮捕されたというのだが、全く別人だった。その作品は偽物だったのだ。ソ連には自由がないということを見せつけ、言論統制されているということを見せつけるための作品だった。
鷹野は、戦争の引き上げの時に、朝鮮にいて、死者を焼く日が決められていた。「焼き日ですよ、焼き日ですよ」という声が、耳元で聞こえるのだった。
当たり前だと思い込んでいたことが、仕組まれていたことを鷹野はしる。さすが、直木賞をとっただけある。言論の自由とは何か?
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第56回(1967年)直木賞受賞作。戦後20年ほどの日本と東欧を舞台とした5編の短編集。
50年近く前の作品だが、先日読んだ『一度は読んでおきたい現代の名短篇』にて表題作が紹介されていたのをキッカケに手にした。
主人公の行動がとにかく熱い。時代背景もあるが、今読んでも濃い。
五木寛之の作品というと、『大河の一滴』の大河物語はまだしも『百寺巡礼』のように静かで心落ち着くイメージが強くいのだが情熱溢れる作品。そしてどれも短篇で終わらせたくないようなプロット。初期はこのような作品を書いていたとは思いもよらなかった。
ハードボイルド小説、ミステリ小説、青春小説、色んな要素をもった作品群だ。
新装版では、解説もまた熱い。まさに、噛まれた!
Posted by ブクログ
戦後20年ばかりに書かれたものであり、戦争の名残が全体的に残っている。残っているというかそれに常に囚われているという方が近いかもしれない。つまり全体に暗く重い印象が付きまとっている。
短編集はあまり好きではなかったが、本短編集はそれぞれの作品に何か共通するようなものを感じたし、多くを語らないことの効果も感じた。
多くを語らない良さを感じたのは、作家の芸によるものか読み手の心情変化によるものかは分からないが新しい感覚だった。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作を含む初期の作品集。どの作品にも影があり、それが奥行きを与えているように思われます。影とは死の予感であったり辛い別れであったり、あるいは暗い過去であったり…。いろんなものを引きずって懸命に生きる人々の物語です。
Posted by ブクログ
読みたい本リストにあげていたところなかなか店頭でみかけなかったが、ロシアがウクライナに侵攻
したことで久々に再販された模様。この作品集に描かれた内容が今のSNSの普及した時代からみると道具立ても世界の思想状況もある意味時代小説になりつつあるように感じられた。とはいえその時代を生きた世代だからこそ書くことができた人間の生き様は今も我々に迫力に満ちてせまってくる。