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死の恐怖を抱きながら日々を生きることは難しい。だから私たちはそれを忘れる。あるいは見ないですますという知恵をはたらかせてやりすごす。そのために見るべきものを見ず、感じるべきものを感じないで、大きな欠落を抱えたまま日々生き続けているのかもしれない……。五木寛之が、やがて迎える死というものに真正面から向き合い、赤裸々に綴った衝撃の死生観。語られなかった人生の真実が、いま明らかに!
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Posted by ブクログ
人の無力さ、この世の理不尽さ、そういうものを受容しながら生きていくしかない。 読んでいるうちに、隆慶一郎の小説を思い出した。 あの、物悲しさを呼び起こしながら、憧れと敬意と静謐さを感じずにいられなかった物語に、どこか相通ずるものがある気がした。 p68 「親鸞が言っている悪人というのは、悪人であ...続きを読むることの悲しみをこころのなかにたたえた人のことなのです。」
…五木寛之、彼自身の死生観を形成する“実体験”が 大きくその生き方を方向付けている。 死と向き合い己をよく知ることこそ、生きるということなのだ。 戦後の朝鮮よりの引き揚げに際し、 想像を絶するような苦難に満ちた経験を積み重ねる。 母親に関する想いの強さゆえ、時代の中で混迷し 叩きつけられ...続きを読むたかのように、悲劇という光景が 原体験として刻み込まれてしまった… 僕らの時代、今を生きる僕らには、想像すらできないであろう 時代の凄まじさは、人を強くもし弱くもする。 その境目は、やはり人としての真理…死生観を持つに至るかどうか… 死生観は、とても大きな大きな思想の一つだと思う。 人は自らの体験の中で死について感じ、想い、 生を見つめていく。この過程が深ければ深いほど、 豊かさを理解し受容する心が育まれる。 僕は、死に関する本をかなり読んできたけれど、 また宗教の意味を考えてきたけれど、 そして坊さんと話し、座禅も実践してきた、けれど、 まだまだ自らの中に融合することができない。 この書を読むと、自分等は本当に生きているのだろうかと 感じてしまうくらいに、“生きる素晴らしさ”に感銘を覚える。 見るべきものを見ない、考えるべきことを考えない… それは楽な道のりではあるが、真の満足感、幸福感へと いざなってくれるものでは、決してありえない。 死生観…死を感じ生と向き合う。 いかに持つかによって、人生は変わってくるのだろうと、 ぼくは強く思った。
一番印象に強く残った個所は: 終戦後の朝鮮半島からの引き揚げ時に、どんな人が生き延び、どんな人が先に亡くなったか。それははっきりしている。優しい人が先に死んだ。強引で力の強い人が生き延びた。ずるく悪いものが生き延びた。 五木寛之「天命」、2005.9刊行、2008.9文庫。なお、表紙の絵は、著者の...続きを読む奥様、五木玲子さん(医者&画家)の作です。
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