井上荒野のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
結婚詐欺師とだまされた女たちの物語。
結婚詐欺師はひとり、女はそれぞれ詐欺師に夢を与えられ、その夢を叶えるために男を援助する。
そして、いつか、おとこはいなくなる。
その繰り返しではあるが、騙した詐欺師にも、騙された女たちにも、その後の生活が続いている。
そして物語も、そのまま続いている。
女たちの共通点はひとつ、同じ男に騙されたということだけ。
その一点をキーに物語は続いていくが、だれがどんな風に騙されて、いま彼女はどんな生活をしているのか?
そして、騙された女の後にも、新しく騙される女の生活が続いていく。
読み進めていくにしたがって、いま誰の話を読んでいるのか、よくわからなくなっていってしまった。
しかし、それが現実に起きることなんだろうな。 -
Posted by ブクログ
「あなたはあなたが連れてきた。嵐の日だった」。そんな一文ではじまります。この文中の「あなた」は「あなた」と思いきや、「あなた」と「あなた」は別のひと。主な登場人物は「あなた」と「あなた」と「私」の3人で、最初から最後まで「私」の一人称で語られるという、この発想の面白さ。
「私」は高校生のときに事故で両親を亡くし、その葬儀の日に「あなた」と出会う。「あなた」は、途方に暮れる通りすがりの「私」を放っておけなかったのか、それとも恋に落ちたのか。高校を卒業後すぐに「私」は「あなた」と結婚。それから数年が経ち、「あなた」は突然自分の双子の弟を連れてくる。それが冒頭のもうひとりの「あなた」。夫である「あなた」は病に冒されている。死期を悟った「あなた」は、音信不通だった自分と瓜二つの弟を探し出し、自分の後釜としてに弟を「私」に当てがおうとしているらしい。世間知らずの「私」が幸せでいられるようにと。しかし、「あなた」と「あなた」は顔が同じでも、性格がまるでちがう。几帳面な「あなた」とガサツ極まりない「あなた」。
凄い話です。解説を除けば200頁に満たない厚さなので、すぐに読めるかと思ったら、「あなた」がどちらの「あなた」なのかにまず頭をめぐらさなければならないから、想定以上に時間がかかる。
「私」は「あなた」しか愛せないと「あなた」は思い込んでいる。顔さえ同じであれば「私」は「あなた」を愛せるにちがいない。「私」の幸せを思ってこそのこととはいえ、なんと傲慢なのか。「あなた」が疎ましくて仕方ない「私」が最後に至る先は。好きな話ではないけれど、心を捉えて離しません。 -
Posted by ブクログ
(*01)
廃墟文学というジャンルはあるのだろうか。病院、映画館、廃坑などのモチーフがあって、離島というからそこでかろうじて生きている船や港や学校やマンションや、いくつかの棲みかまでが、いままさに廃れようとしているようにも感じられる。
主人公はこの廃墟であるが、プロンプターの様な女の視点や話題がこの廃墟に入ってくる。廃墟を体現した石和(イサワ)というのが廃墟からストレンジャー(*02)として出てくる。
それだけの物語であるが、絵の夫、性の老婆、痴話の同僚などのすったもんだが、この廃墟の場を回している。
(*02)
この道化は、幽霊の様に朧気で飄々でもある。この半存在がいくらかは物語をそれらしくしているように思う。