井上荒野のレビュー一覧

  • 切羽へ

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    (*01)
    廃墟文学というジャンルはあるのだろうか。病院、映画館、廃坑などのモチーフがあって、離島というからそこでかろうじて生きている船や港や学校やマンションや、いくつかの棲みかまでが、いままさに廃れようとしているようにも感じられる。
    主人公はこの廃墟であるが、プロンプターの様な女の視点や話題がこの廃墟に入ってくる。廃墟を体現した石和(イサワ)というのが廃墟からストレンジャー(*02)として出てくる。
    それだけの物語であるが、絵の夫、性の老婆、痴話の同僚などのすったもんだが、この廃墟の場を回している。

    (*02)
    この道化は、幽霊の様に朧気で飄々でもある。この半存在がいくらかは物語をそれらし

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    2016年10月04日
  • しかたのない水

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    東京のフィットネスクラブにやってくる人々を主人公にした6つの連作短編。ある短編の主人公が次の短編では相手役になったり、背景になったり、緩やかにつながっていく。
    どの短編の登場人物にもやるせないような、虚無感とでもいうものがまとわりついている。
    やっぱり、荒野さんなのだ。この不穏さ、湿度、倦怠感、そしてゾッとする感じはくせになる。

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    2016年09月28日
  • あなたにだけわかること

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    ネタバレ

    *密会を重ねる父母の情事のあいだ、それと知らず共に過ごした幼い駿と夏。以来、思い出したくない記憶を封印するも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いのおろかな恋愛の証言者のように…。男と女の“恋愛よりも深い縁”を描く長篇小説*
    駿と夏、それぞれの数年ごとの人生が交互に書かれているので、飛ばされた数年の経緯を想像する楽しみがあった。”恋愛より深い縁”はあまり感じられなかったけど。薄幸感漂う、つらつらと不思議な作品。

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    2016年09月27日
  • リストランテ アモーレ

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    姉弟でやっているリストランテ アモーレ、彼ら二人と常連客達の物語。

    イケメンで料理の腕もいいけど女関係が緩すぎるシェフと、片思いが客にまでバレている空回りの多い姉。中心の二人に限らず出てくるキャラクターは皆二股かけていたり空気が読めなかったり多数の中の一人に甘んじていたり打算的だったり。皆色々残念な人達。

    Mの登場とその背景が唐突過ぎてラストが今ひとつスッキリしなかったけれど、料理の描写は美味しそうで読んでいるととてもお腹が空く。
    その割にこの手の設定に有りがちな料理が人を癒やす物語ではない所が面白い。

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    2016年09月16日
  • そこへ行くな

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    最後の病院は泣けました。なんだか切なくて中学生の頃のなんとも言葉に出来ない色んな気持ちを思い出しました。
    全体的に面白かったんだけどせっかく面白い話なのにほとんどの物語が12話連続ドラマの
    第一話だけ見せられた感じで物凄くモヤモヤが残るのが残念でした。
    ぜひそれぞれの物語の続きが読みたくなりました。

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    2016年08月31日
  • 切羽へ

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    静かな小説。方言がちょっとなじめなかったけれど、島を舞台にある夫婦と本土から来た石和をめぐる、味わいのある本でした。

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    2016年08月17日
  • だれかの木琴

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    人が道を踏み外す瞬間というのは激情にかられてなどではなく、案外何てことのないふとした一瞬にほんの少し逸れる程度なのだろうと思う。それが気付いた時には引き返せないところまでエスカレートしていくのだけど、自分の中ではそこまでの過程があまりにナチュラル、綺麗なグラデーションでありすぎるがゆえに、自分の異常さを自覚できないのではないか。
    誰しもが本作の主人公になりうる壊さを感じつつ、物語のラストにぞっとした。

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    2016年05月10日
  • ベーコン

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    不倫関係の男女の話が多い短編。
    解説にもあったけどどっちにもとれるラストばかり。
    大人の恋と食べ物が結びついた話。

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    2016年05月08日
  • それを愛とまちがえるから

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    喜劇ではあるが、匡に感情移入して伽耶の面倒臭さにうんざりしてしまい、最後まで読むのがしんどかった。
    誠一郎の視点に立っても面倒臭いと思う。

    伽耶の視点に立てば・・・立てない。
    いつまで経っても女性の気持ちが理解出来ない訳で。

    著者の作品を読んだのは初めてなので、別の作品も読んでみよう。

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    2016年04月11日
  • それを愛とまちがえるから

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    それぞれ恋人のいる夫婦の揉め事を描いたコメディ。
    コメディというほど笑えるわけではないが、夫婦とその恋人たちの本音は共感する人も多いはず。キャンプのシーンはやりすぎな感があるが楽しんで読めた。
    男女の感覚の違いは扱いやすいテーマ。でも、興味がわいてしまうのも事実だ。

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    2016年04月05日
  • つやのよる

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    次から次に男を翻弄する女、艶。彼女が死の淵に立たされたとき、夫は艶と関わった男たちにそれを知らせようとする。男たち目線ではなく、男の周りの女たちの目線で物語がすすんでいったのが印象的。艶目線では一言も物語は語られてないのに、艶にすごい存在感を感じたのは筆者の文章力なのかも。夫、松生の章ではどんな情念が語られるのかと思ったけど本人は至って淡々と忙しい日々に流されるように生きていて、はたから見れば波乱万丈な人生も本人たちからすると意外と淡々と日々が流れていってるのかもと思わされた。

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    2016年03月29日
  • もう二度と食べたくないあまいもの

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    日常の延長にある恋愛をテーマにした掌編小説集。日本語が明瞭で、ちょっと硬い印象だが読みやすかった。

    幽霊
    手紙
    奥さん
    自伝


    朗読会
    オークション
    裸婦
    古本
    収録

    解説/吉田伸子
    カバーデザイン/坂川事務所、カバーイラスト/宮原葉月

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    2016年03月10日
  • しかたのない水

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    だ、ダメなひとがいっぱいだー_| ̄|○

    日常に巣くう、ザラザラした箇所を至るところで見せつけられるため、各話の主人公に何度もげんなり。

    とはいえ、自分にも(認めたくはないけれども)持ちうる恐怖や狂気がわかりやすく描かれているからこそ、げんなりしてしまうんだろうな。

    恥ずかしながら、「フラメンコとべつの名前」のラストの意味が未だにわかりません。
    …それとも、意味なんてないんだろうか。

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    2017年08月28日
  • そこへ行くな

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    どこか奇妙ででもきっと幸せではない展開が予想できるようなそんなはなしでした。最後の「病院」という短編を読んでなんだか救われました。それがなかったら救われなかったです。

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    2016年03月02日
  • しかたのない水

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     フィットネスクラブに通う人たちの連作短編集。全員が心に空虚なものを抱えていて満たされていないがゆえに思考や生活に歪みが生じているのに、物語の起伏が激しすぎないのが怖い。自分の現状に満足はしていないけど誰かを見下さずにはいられない人間の生々しい性を嫌というほどに突き付けられ、読後感は重たいけれど印象的。

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    2015年12月17日
  • ナナイロノコイ

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    韓国映画「愛してる、愛してない」の原作が、
    井上荒野の「帰れない猫」ということで読んでみたくて購入。
    7人の女流作家が集う恋愛アンソロジー。
    どれも読みやすくはあるけれど、
    強烈に印象に残るような話ではなかった。
    電車の中とかでの暇つぶしにはいいかな。

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    2015年10月20日
  • しかたのない水

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    フィットネスクラブの人々の悲喜こもごもを描いた短編連作。終わり方がぼんやりしていて、イマイチ締まりが無い。設定としては、うんうんとうなづけるものばかりなので、個人的好みとしては、完膚なきまで徹底的に書ききって欲しい。

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    2015年09月23日
  • しかたのない水

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    東京近郊のフィットネスクラブに集う人々

    次々と女を変える若い男
    妻に疾走された水泳コーチ
    妄想癖のある受付嬢・・・

    さまざまな「しかたのないひと」たちの「しかたのない恋愛」

    フィットネスクラブは、自分も長く通っていたので
    なんとなく雰囲気わかる(笑)

    うん、こんな面倒くさい世界だったなぁ

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    2015年08月11日
  • 切羽へ

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    これの前に小学生が主人公の本を読んでいたらから、いきなりの大人な内容だな(笑)。
    島の狭い人間関係と切なさがうまく混じりあっていてなんとも言えない雰囲気がある。
    現在、田舎暮らし。
    そういや、田舎暮らしも島ぐらしに近いものがあるように思う。昔から住んでる人とよそ者は区別しているし、周囲で起こったことはあっという間に広まるし。
    近所は皆家族ってな感じ!?
    隠し事なんてできそうもないもん。
    そんな狭い世界で、島外から人がやってくるとか日常と違うことがあったら心がざわざわしそう。
    石和の独特の雰囲気が余計にこちらの心も揺さぶってくるし……。
    よくわからないって気になるものね〜。

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    2015年07月21日
  • 切羽へ

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    繊細な文章から平穏な離島の暮らしが窺えた。
    方言ものんびりとした雰囲気を醸し出しているし、登場する料理もとても美味しそう。
    ヒロインは東京から赴任してきた石和に惹かれるのだけど、正直なところこの石和の良さがさっぱり判らない。
    かえってご主人の陽介さんの方が好みなんだけど、恋に落ちるのに理屈はいらないということなのね……。
    文章が抑え気味なので、どの程度の恋心なのか測りかねますが、精神的には夫を裏切ったわけで、精神的な裏切りと、心を伴わない肉体的な裏切りの場合、どちらの方が罪は重いのかなとふと思った。

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    2015年03月29日