井上荒野のレビュー一覧

  • 猫が見ていた

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    ネタバレ

    2月22日は猫の日ということで読んでみた。これまでアンソロジーはあまり手に取ることはなかったけれど、普段読まない作家さんの作品に触れることができてよかった。
    1作品あたりのページ数も少なく、隙間時間で読むことができる。

    【最も好きな作品】
    柚月裕子さん「泣く猫」
    17年会っていない母が猫に自分と同じ名前をつけていたことを知ったときの真紀の気持ちを想うとともに、母はどのような想いでマキと呼んでいたのだろうかと思う。
    マキの登場が真紀の感情を引き出し、自覚させるきっかけになったのではないか。

    【最も印象に残ったフレーズ】
    北村薫さん「『100万回生きたねこ』は絶望の書か」
    「本の読み方にひとつの正解はない。『100万回生きたねこ』を読んで素直に感動するのは正しい。……しかし《絶望の書》だと感じてしまう者を、ただ、ひねくれてるとはいえないんじゃないかな」

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    2021年02月23日
  • あなたならどうする

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    ネタバレ

    題材となった昭和歌謡を聴いてから読むとより話に入り込める。
    一話一話が短く、読みやすい。
    男性の9割がクズ。こんな男いるか?と思うくらい清々しいほどのクズ。「サルビアの花」の方だけは幸せになって欲しい。

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    2021年02月15日
  • 綴られる愛人

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    ネタバレ

    *夫に支配される人気作家・柚。先が見えない三流大学三回生の航大。二人はひょんなことから「綴り人の会」というサイトを介して、文通をはじめる。柚は「夫にDVを受けている専業主婦」を装い、航大は「エリート商社マン」だと偽って―。便箋の上に書かれた偽りが、いつしか真実を孕んで、二人をくるわせていく。掻き立てられた情動が、やがて越えてはならない一線を踏み越えさせて…。緊迫の恋愛サスペンス! *

    うわー、捻じれてるな・・・!全員、いい感じに捻じれてる。手紙を小道具に使ってのその描写が、とにかく巧い。
    いつこの嘘がバレるんだろう?どうやって収拾がつくんだろう?とドキドキハラハラしっぱなしでした。

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    2021年02月15日
  • 悪い恋人

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    土地開発業者として現れた中学時代の同級生 阿守勲(あもりいさお)とためらう事もなく関係を持ってしまう平凡な人妻 沙知(さち)

    物語は淡々と倦怠感さえ漂わせながら進んで行きますがその中には人間の微妙な心理が織り込まれていて引き込まれます。

    そして深く考えず自然な流れに身を任せて行く沙知の姿はどこかリアリティーを醸し出しています。

    結末は予想していた通りでしたがまるで夢を見ていたかの様な不思議な錯覚に陥る様な作品となっています。

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    2021年01月31日
  • その話は今日はやめておきましょう

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    井上荒野さん、すっごく丁寧に描かれる方で読んでると気持ちがほっこりする。
    今回は、大楠老夫婦がなんだか影のある?アウトロー的な雰囲気の青年とのやりとりでちょっとハラハラするストーリー。
    真実から目を逸らすというか、無かったことにしたいズルさとか、偽善とか、あまり直視したくない人間の嫌な部分を描かれていて座り心地が悪いムズムズする本でした。
    でもラストは、人生の年長者、先輩はやはり一枚上手だしみくびってはいけないとビシッとカッコいい作品でした。

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    2020年12月31日
  • 綴られる愛人

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    簡単に届くメールやLINEと違って手紙の良さがある。待ちわびる時間もまた素敵なもの。文通をやっているからよく分かる。

    まさかこんな展開になっていくとは!相手の顔が見えないからの良さが、逆に恐ろしいことに利用されるなんて!

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    2020年11月06日
  • その話は今日はやめておきましょう

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    なかなか面白く、すぐに読んでしまった。
    大楠夫婦が一樹に騙されず、果敢に立ち向かっていくところがよかった。ゆり子さん凛々しい。
    それにしても一樹の言動が嫌。根っからの悪人ではないとしても普通の人は誰かを殴りたいなんて思わないよ、、

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    2020年10月21日
  • 結婚

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    なんの予備知識もなく読み始めたので、次の章でもまた次の章でも被害者の話っていうのに笑ってしまった。(連作であることにそこではじめて気づいた。)
    でも最後はどうなるのかわからず、古海が最後に出かけた先は、やっぱり「客」のもとなのだろうか。
    脳内キャストは玉木宏だったけど、ディーンフジオカで映画化されたんだね。
    原作よりかっこいい(っていうか、原作では小柄という設定だけど、小柄な結婚詐欺師ってピンとこない)。

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    2020年09月07日
  • 綴られる愛人

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    東京在住35歳の人気女性作家は、夫の暴力に怯える28歳の専業主婦『凛子』に、
    富山に住む21歳の三流大学に通う学生は、貿易関係の会社に勤める35歳のエリートサラリーマン『クモオ』に。
    お互いの素性を偽り「綴り人の会」という文通コミュニティを通して、手紙のやり取りをする。
    手紙は月に2回、綴りの会を介し、それぞれの自宅へ送られる。
    こちらから出した手紙はすぐには届かないし、相手からの返事もすぐには来ない。すぐに来ないどころか、返事をくれるのかさえ分からない。
    待っている間に想いが募り、相手の返事を待たずにこちらからまた出してしまう。そうやって、手紙の上での恋愛は、待ってる時間にどんどん狂おしくなっていく。

    初めて読んだ作家だが、とても面白いなと思った。
    クモオの人としての浅さの描写がリアルで秀逸だった。21歳ってこんなに馬鹿なんだろうか。わたしもその頃はこんなに愚かだったのだろうかと考える。

    凛子はクモオに、自分との愛を成就させるためにDV夫を殺してくれと頼む。夫が生きている限り、わたしはあなたと会うことすらできない。
    ここから更にクモオの浅はかさが加速する。呆れながらも、彼から目が離せない自分がいる。

    肉体が伴わない恋は美しい。言葉だけが作り上げる愛の形は、ほぼ完ぺきな形状をしている。問題は寿命が短いということ。
    実体がなければそこに悦びはない。
    霞を食べて生きていけるのは仙人だけだ。


    これをよんで、文通っていいなと思ったのは、わたしだけじゃないはずだ。綴り人の会のようなそんなコミュニティが存在するのかと、ネットっで検索した人もおそらくいるだろう。
    そんな気持ちにさせる話だった。

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    2020年08月19日
  • 赤へ

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    10作品の短編集。
    病気や自死に関した内容が多かった。 
    バーのカウンターで顔見知りになった男女と、バイトのゲイの男性との「ドア」が良かった。
    彼らの中ではサムがこれかも行き続けていくのだろう。

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    2020年07月30日
  • あなたならどうする

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    井上先生の書く性の描写はなんとも柔らかくてぐじゅっとしてる。
    それもドロドロとしたスープというより、とろりとしたたるハチミツのドリンクみたい。
    嫌悪感もなくなんかわかる気がする。

    実際の歌謡曲からインスパイアされた作品たちは現代を描いているはずなのに、どこか遠い国の話のように感じた。
    歌謡曲好きなので、うだる暑い夏によく似合う小説だとおもいました。

    江國さんも仰るとおりかなしみがそこここにあります。

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    2020年07月30日
  • 切羽へ

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    井上荒野さん初読。
    なんだか不思議な小説だった。大人の小説。自分にはまだ早かったらしく「?」という感じで終わってしまった。
    「トンネルを掘っていくいちばん先を切羽という。トンネルが繋がってしまえば切羽はなくなってしまうが、掘り続けている間はいつもいちばん先が切羽」

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    2020年07月29日
  • 静子の日常

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    初・井上荒野。

    75歳の静子さん。
    軽やかな振る舞いで、なんでもお見通しのカッコいいおばあちゃん。

    そんな静子さんにも、かつて「怒らなければならない理由」(=悪い猿みたいなもの)があった。
    彼女は長年その猿と折り合いをつけ、あるいは猿なんかいない、と自分に思わせて生きてきた。
    つまりは、とても見事な良妻賢母を、彼女は演じてきた。

    夫の死とともに、夫の妻であることをやめ、自由を手にした静子さん。
    スポーツクラブでスイミングを習い、
    息子夫婦の危機を未然に防ぎ、
    孫の彼氏とも友達に。
    若くはない、と自覚しながら、でも
    「新しい歌を知ることはできるんだわ」と呟く。

    「自由であるためには、心強くあらねばならない」と分かっているからこその、軽やかさ。
    いつか自分も手に入れたい。
    そして過去を懐かしく愛しく
    振り返りたい。

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    2020年07月14日
  • 切羽へ

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    閉鎖的な島で夫と暮らす「私」と、
    島へ移住してきた男との心の揺れを
    描く物語。

    設定はいかにもだけど、
    荒野さんの丁寧で緻密な文体と、
    生命力溢れる島言葉が美しい。
    そして何より、
    「切羽」という場所に惹かれて読んだ。

    タイトルを見て、切羽詰まる、の「せっぱ」かと思ったら違った。
    「トンネルを掘っていくいちばん先」のことで「きりは」と読む。
    「トンネルが繋がってしまえば、切羽はなくなってしまう」
    「掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」。

    有って無いような場所。
    先へ先へと求め続けるけれど、
    いつかは無くなってしまう場所。
    それ以上先へは進めない場所。
    それとも、未来へ続く扉にもなる?

    その切羽まで、「どんどん歩いて行くとたい」と夫に言い放った主人公の母親。その覚悟。
    夫か、別の男か、どちらが切羽へ進む道なのだろう?

    139回直木賞受賞作。

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    2020年07月14日
  • 結婚

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    題材は結婚詐欺だけれど、井上さんらしい苦さのある作品です。騙している方があぶく銭を稼いで楽しくやっていて、騙された被害者だけが悲しいとかそういう単純な話ではないです。
    登場人物全員が決して幸せには見えない、つまりは生きるとはこういう事だと感じる。
    結婚詐欺師である古海の章や相棒の千石るり子の章で作品に深みがわく。
    本当はどうしたいのかわからないままに流されてしまうのが人間なのかもしれない。

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    2020年06月01日
  • だれかの木琴

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    営業メールからストーカーに変ってゆく。一歩道を踏み外せば、だれもなりうるかもしれない。小夜子の執着は、寂しさの現れか。映画では、平凡な主婦は常盤貴子で(綺麗すぎる)、もし、もっと地味な女優さんだったらどう違ってくるか。。

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    2020年05月31日
  • 結婚

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    結婚詐欺している男全員には言えないけれど、
    この男はこの男で消耗しているのかな、と感じた。
    あとは、若さを失った女の人たちの孤独。
    現状を今以上のものに変えたいと思っていて、なんなら誰かに変えて欲しいと思っていて、その脆さ。

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    2020年05月22日
  • 結婚

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    ネタバレ

    詐欺師をめぐる人間模様。
    最後まで詐欺師に騙された女性が出てくるのかと思ってたら、そんなことはなく、途中で詐欺師のパートナーが出てきたりして、少し話の流れが変わっていきます。
    ただ、それほどドラマチックになるわけでもなく、粘着性が高いわけでもなく、普通な感じで普通に終わりました。もう少し何か引き込まれるものが欲しいかも。

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    2020年05月16日
  • 100万分の1回のねこ

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    13人の作家による、
    佐野洋子の絵本「100万回生きたねこ」へのオマージュ

    どの作品も、原作への愛に満ちている
    ひとつだけねこ関係ないのがあったけど(笑)
    あれはあれで面白かったし。

    原作をもういちど読みかえしたくなった。

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    2020年05月02日
  • 100万分の1回のねこ

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    角田光代、広瀬弦のが素晴らしい。
    元々の絵本を読んでいなくても中々に味わい深いものがたくさん。
    町田康だけ独自路線だったな。
    あと山田詠美は苦手。

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    2020年03月09日