【感想・ネタバレ】ほろびぬ姫のレビュー

あらすじ

両親を事故で失くしたみさきは19歳で美術教師の夫と結婚した。それから4年。あなたはあなたが連れてきた――嵐の晩、彼女の前にふたりの「あなた」があらわれる。夫が、長い間音信不通だった双子の弟を探してきたのだ。混乱するみさきに、僕はもうすぐ死ぬんだ、と告げる夫。衰弱していく兄になりかわるように、その存在感を徐々に増していく弟。眩惑的な文体で綴る愛のサスペンス。

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Posted by ブクログ

あなたがいっぱい。死生観、恋愛、夫婦、親子、兄弟、食事、…盛り込み要素もいっぱい。わたしには少し重い読後感。

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2022年08月26日

Posted by ブクログ

「あなたはあなたが連れてきた。嵐の日だった」。そんな一文ではじまります。この文中の「あなた」は「あなた」と思いきや、「あなた」と「あなた」は別のひと。主な登場人物は「あなた」と「あなた」と「私」の3人で、最初から最後まで「私」の一人称で語られるという、この発想の面白さ。

「私」は高校生のときに事故で両親を亡くし、その葬儀の日に「あなた」と出会う。「あなた」は、途方に暮れる通りすがりの「私」を放っておけなかったのか、それとも恋に落ちたのか。高校を卒業後すぐに「私」は「あなた」と結婚。それから数年が経ち、「あなた」は突然自分の双子の弟を連れてくる。それが冒頭のもうひとりの「あなた」。夫である「あなた」は病に冒されている。死期を悟った「あなた」は、音信不通だった自分と瓜二つの弟を探し出し、自分の後釜としてに弟を「私」に当てがおうとしているらしい。世間知らずの「私」が幸せでいられるようにと。しかし、「あなた」と「あなた」は顔が同じでも、性格がまるでちがう。几帳面な「あなた」とガサツ極まりない「あなた」。

凄い話です。解説を除けば200頁に満たない厚さなので、すぐに読めるかと思ったら、「あなた」がどちらの「あなた」なのかにまず頭をめぐらさなければならないから、想定以上に時間がかかる。

「私」は「あなた」しか愛せないと「あなた」は思い込んでいる。顔さえ同じであれば「私」は「あなた」を愛せるにちがいない。「私」の幸せを思ってこそのこととはいえ、なんと傲慢なのか。「あなた」が疎ましくて仕方ない「私」が最後に至る先は。好きな話ではないけれど、心を捉えて離しません。

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2017年05月15日

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