白石一文のレビュー一覧
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この方の本を読むのは初めて。
近所のちょっとおしゃれな本屋でおすすめされていて、手に取った。
女性という性別を神聖視・特別視しすぎでは?としらけつつ、起承転結に富んだドラマを毎週それなりに楽しみに見るような気持ちで読み終えた。
たしかに私も妊娠出産を通じて、「いのちとは、ただただ連綿と紡いでいくものなのだ。私も、私の先祖たちが連なる長い長い人間の営みの歴史を構成する1人に過ぎないのだ。」と、雄大な時間に思いを馳せたりした。
ただ、本作の描かれ方はちょっと綺麗事すぎる感じで、当事者の女性としては、もっともっと生々しくて苦しくてどうにも割り切れないどろどろした部分だってあるんだけど、男性からはそう見えるでしょうね、としらけてしまった。
(これは単に私の好みの問題だとはわかっている。)
選ばなかった未来などない、というフレーズは印象的だった。 -
Posted by ブクログ
永遠のとなり。
それは友情であったり、故郷であったり、病であったりだけれど、永遠にとなりにあって決して混じることはないんだろうと思いました。
個々、という感じ。並び立つと言ってもいいかもしれません。
それは苦しみでも寂しさでもなく、救いなんだろうな。
冒頭からせいちゃんとあっちゃんの待ち合わせ場所が香椎浜イオンモールだったのでたいへん動揺し、実家が東区込みのエリアなので(福岡市内ではない)なにもかも土地勘バリバリある中読み進めるという珍しい読書体験でした。
菓子折り文化もちゃんとある。
このレベルの流暢な博多弁、喋らない地域の方には読み難いんじゃなかろうかと思ってしまった。語尾同じだけど意味が違うのもいっぱいあるし。
でもこれやったら音読できる……
「要するに、わしらは毎日生まれて毎日死によるんよ。明日生まれんのが死ぬていうことやろ」…あっちゃんのこれには、「なるほどですね〜」(方言)と思いました。
幸福とは、人それぞれの小さな世界との折り合い。ちょっとだけ心が軽くなった、良いお話でした。 -
Posted by ブクログ
これ映画化したとき「男女がただヤッてるだけの映画」って評してる人いたけど、小説も平たく言うならそんな感じ。
結婚を10日後に控えた直子と、昔関係を持っていたいとこの賢治が再会し、肉欲に溺れる。言うなればそれだけの物語。
白石一文さんの著作なので、そこに哲学はあるというか(私が掴みきれているかは謎だが)人間の原始的な部分に迫った作品だと思う。あと男女のセックス観の違いとか。すれ違い、理解しあえないことも多々あるので。
背景に「富士山噴火」「大震災」があるから、どうせそうなるのであれば背徳的な関係に突っ走るとか享楽に溺れるみたいなこともあるだろうとは思える。
普通ではない状況のとき人間はどうなるのか。そういう意味で、原始的な部分に迫った作品。
崇高な「生きる意味」とか言ってたって、結局欲望の前にはひれ伏すしかないでしょ、みたいな。
映画観てないけどぐぐってみたら関連ワードで「本当にしてる」とか出てくるから、たぶんリアルを追求しているのだろう。
でもこの小説の世界観を映像で表現するなら、そう見えるくらいで挑まなきゃ難しいかも、と思った。純粋なのに俗的というか、相反するものの凄みを感じるので。
そう考えると俳優さんってすごいな。
でもこういうふたりって、結婚などをするとあっさり別れちゃったりするのかも。背徳感だとか身体の記憶だけで結ばれる関係というのも、あると思うので。 -
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鉄平は、妻の夏代が二十歳くらいの頃、伯母から遺産を相続しており、相続財産は総額四十八億円程度となっているという秘密を偶然知ってしまいます。
夏代はなぜ結婚前からの遺産の存在を隠し続け、一切手をつけなかったのか。なのに、どうして突然カナダのバイオベンチャーに二億円を出資したのか。
遺産をずっと秘密にされてきた鉄平は、妻のこと、家族のことを何も信じられなくなってしまいます。
妻を信じられなくなった鉄平の気持ちも、夫に遺産を隠し続けてきた夏代の気持ちも、どちらもわかるような気がします。家族や結婚生活について、自分だったらどう思うか、考えてしまいます。 -
Posted by ブクログ
下巻に入ると、山下やよいさんにぐっと近づいていきます。彼女が結婚式をしたという教会や、阪神大震災の犠牲者名簿などから、少しずつ居場所を手繰り寄せていく、この過程が一番ワクワクしたかも。
その後は、何かがぱあっとひらけていくような展開を期待していたもののそうはならず、一度はテンションが下がってしまったのですが、最後の「あとがきに代えてーー白石一文『神秘』を語る」まで読んだとき、ああ、この本は「がん(病)の治し方」を、「生きたまま生まれ変わる」ことは可能であることを、具体的に示してくれた小説だったのだと納得しました。
すべては必要な展開だったのです。この小説の中には、なにひとつ無駄はなかった。そして、私が、今、この本を読んだことは必然だった。私もきっと何かに導かれて生きているのだろうと感じました。
〈私〉もしくは〈僕〉による、生と死についての考察や深い内観が良かった。私自身も漠然と考えていたことが言葉に表されていて、メモに書きとめたことばや文章がたくさんあります。いのち、生と死、生き方、死に方、これらについて何か思うことがあれば、この小説を開いてみると何かしらのヒントが得られるのではないでしょうか。
ラスト、谷口善道さんの主人公への問いかけの答えは、この小説のタイトルにつながっていくのでしょう。登場人物たち、この人たちにはみんな幸せになってほしいと思いました。
この「神秘」を知った今、もう一度初めから読み返したいという気がしています。なかなかおもしろかったです。
それにしても、JR住吉駅の「新快速飛び降り事件」て、これも本当にあった事件なんですね。びっくりだ。