白石一文のレビュー一覧
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「人は親にならない限りずっと子供。子供を持たない人は、最後までずっと子供でいようとしている人」
刺される。否定できない。少なくとも「子供を持つ努力をしない人」と「子供を持ちたくないと強く思っている人」に限定して当てはまるものだとは思うけど。
そしてさらに「親友のお葬式に出られないことを悔やむ感情もない」。
これは主人公と自分が重なって、冷たい種類の人間であることを痛感した。
でも存実はそれを客観的に気付いているし、珠美の存在によりこれから変わっていくのであろう良い未来が想像できる終わり方でした。※それにしても突然の終わり方で驚く。ページを探して二度見。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ白石一文さん大好きで、たくさん読んできたけど、本作は、主人公が小説家で、福岡の名門公立高校出身であり、父親も作家(しかも”いちろう”の部分が自身の父と一致)という部分など、作者の来し方と重なる部分がいつになく多く、ファンとしてはそそられるものだった。
主人公は妻を亡くしてから記憶が錯綜していて、それを解明していくような物語。”プラスチック化”っていうのがちょっと、SFぽくて文学的じゃないなぁ、なんか、しっくりこないなぁと思いながら読んだけど、なるほど最後まで読むと、なんかつまり、この「世の中」や、「小説というもの」が、無機質な、プラスチックのようなもの…っていう意味が込められているのかな、と思いました。それをただのプラスチックではない、温度のあるものに変えるのは、日々を生きている、私たちの意識…?
作家が小説の中に取り込まれているような妙な感覚が、とても読み応えがありました!
でも非科学的な方法で癌細胞を消したり、病気を念力で治す、みたいなのってあんまり好きじゃないなぁ。他の作品にも余命宣告をされた主人公が西洋医学に頼らず自力で癌を消してしまう、っていうのがあったけど、そういうのって文学的要素よりオカルトっぽさが強調されてしまうので好きになれないな。でも、白石一文作品で私が最も好きな作品の一つである、「私という運命について」だって、オカルトっぽさが充分にあるので、白石一文作品には「科学では説明のつかないもの」って必須なのかも。
いつも、運命というか、人って自分ではどうにもならない何かに生かされているんだなということが感じられて、ドキドキして好きです。
やっぱり「私という運命について」と「ほかならぬ人へ」と「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」が好きだな。 -
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「私はどんなに探してもこの人しかいないという人がいい。あなたはそうだもの。あなたは心に穴のあいている人よ。(略)でもね、あなたは本当に苦しそうに生きてる。どうして愛しているのか私にもわからないけれど、きっと穴のあいたあなたの心を私は見過ごすことができないのよ。」308頁
「私はどんなに探してもこの人しかいないという人がいい。あなたはそうだもの。あなたは心に穴のあいている人よ。(略)でもね、あなたは本当に苦しそうに生きてる。どうして愛しているのか私にもわからないけれど、きっと穴のあいたあなたの心を私は見過ごすことができないのよ。」308頁
「いくら探してもいない人というのは、この私しかその人のことを見つめてあげる人間はいないって思わせる人のことなのよ。この男しかいないってことは、この私しかいないということなのよ。きっとそうなのよ。私はあなたを忘れることができない。」308頁 -
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白石一文さんの小説は、1人の人間の人生を長いスパンで描いているものが多いように思う。小説の始めと終わりでは数ヶ月から数年しか時間が経っていなくても、途中で遠い昔のエピソードが詳しく挟み込まれて、最終的には数十年にわたるその人物の人生が濃密に描かれる。
今現在の状況に多少の影が差している方が、過去のエピソードが深く切なく感じる。それでも最後には未来の光もうっすらと感じる。味わい深い物語が多い。
建材会社社長の高梨修一郎、50歳。先代社長の娘と離婚し、現在はひとり暮らし。取引先の粉飾決算によって経営危機に陥り、事態収拾を図るとともに引退を考え始めていた。
今脳裏に浮かぶのは、怒涛のように過ぎ去った日々の記憶だ。18歳で入社した高梨と、先代の女社長の間には、誰にも言えない秘密があった。
人はそれぞれの物語を生きていて、当然その物語の主人公は自分自身だから、秘密にするべき行動や過去にも自分なりの理由があったり、抗えない運命のようなものに引っ張られてそうなってしまう場合もある。
それぞれに、自分では理解している。だけど、それが他人にも理解されるかどうかはまた別の話だ。それがとても近しい相手だとしても、図り合ったり隠したりして、理解し合えないまま離別の道を選ぶこともある。
大雑把に言うと上記のようなことをこの小説の色んな人間関係に対して思った。
自分の目を通してしか相手を知れないことを、時々現実でもとても寂しく思う。
主人公の高梨は社長という立場上とても孤独で、人との関わりはたくさんあるのに「独り」の雰囲気が終始漂っている。愛した人がいて、助けてくれた人がいて、信頼している人もいる。そして新たに、助けたいと願う人との出逢いもあった。だけど、何だか孤独に見える。
厳しい生い立ちだから人の痛みもわかるし、人柄も優しい。人のために奔走することも厭わない性格にも見える。
その時どきで選択を誤ることもあったかも知れないけれど、高梨の人柄を知るにつけ、物語なのに彼の幸せを願いながら読んでいた。
そして最後に光が見えたので、とても穏やかに読み終えることができた。
短い期間を切り取っただけでは分からない、生きる上での因果が、長いスパンで見ると分かったりすることは現実にもある。
「この人とこの人がこんな風に繋がっていたなんて」とか「あの時のことが不思議な巡り合わせで今に繋がっていた」とか。それは誰の人生にもひとつはあるような気がする。
そういうリアルを感じられる小説だった。色んな人の人生が、一冊にぎゅっと詰まっている。 -
Posted by ブクログ
私たちは手にした幸せより先に死ねれば、それが最高の人生なんでしょうね。
俺たちは他人の心の中に自分という手紙を配って歩く配達人にすぎないのかもしれんなあ。配達人が郵便受けに差し込む手紙の中身を知らないように、俺たちも自分がどんな人間なのかちっとも知らずに、それを丸ごと人に預けてるだけなのかもしれん。
人間は智恵や理性では絶対に行動しないからね。例外なく感情のままに行動する。
僕たちの人生は誰かを不幸にしないためにあるのではないよ。愛する人を幸せにし、自分自身が幸福になるためにあるんだ。
運命の相手とは出会うだけじゃきっと駄目なんだよ。最も大事なことは、この人が運命の相手だと決断することだ。そう決める覚悟を持ったときに、初めてその相手は真実の運命の人になるんだと思う。