白石一文のレビュー一覧
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部下の自殺がきっかけとなって、ウツ病になり、会社もやめ、妻子とも別れ、ひとりになった男と、ガンになり、死の恐怖の中で、結婚と離婚を繰り返す男、この2人が、生きていく中で、世界のいまが見えてくる。
>私たちの欲望は次々と細切れにされ、その細切れごとに過剰なまでのサービスが用意され、充足させられていく。その一方で、もっと大きくて曖昧で分割のできない大切な欲望、たとえば、のんびり自然と共に生きたいだとか、家族仲良く暮らしたいだとか、本当に困ったとき誰かに助けてもらいたいだとか、病気をしたらゆっくり体を休みたいだとか、ひとりぼっちで死にたくないだとか、必要以上に他人と競いたくないだとか、そういった水や空気のように不可欠な欲望はどんどん満たされなくなっている。
永遠のとなり。「となり」が必要なのだ。誰もが求めているのに、「となり」が何かわからなくなっている。
2008-03-22 / 小川三郎 -
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ネタバレ政治小説であり恋愛小説であり再生を描いた小説でもある。
「愛と名誉のために」的な再生小説を期待して読んだのだけど、主人公の再生への道は相当違うもん。結局小説のゴールはかなり近いとこにたどりつくんだけど、でもこの主人公は小説ラストで見つけた場所に安住しないと思う。
そこが、俺の(今のところの)価値観と違うので、この小説の結末には納得できない。随所随所にエエことは書いてあるし納得できる部分もあるんだけど、やっぱり一度、とてつもない権力ととてつもない地位を目の当たりにしてしまうと、それを知らない価値観には戻れないのだろうな。作者の意図とは違うのかも知れないが、この主人公は作者が与えたハッピーエンドに飽き足らず絶対幸せを壊すだろうな・・・と意地悪なことを考えてしまった。
そして、これもまた作者の意図とは違うのかもしれないが、登場人物の中で一番カッチョ良かったのは、主人公の妻郁子。美貌、財力、知力、家柄、家事スキル、子育てスキル、沈着冷静さ、行動力・・・あらゆるものを備えたほぼパーフェクトなスーパーレディである。主人公や主人公の友人は彼女を貶すが、俺には出来てない人間の嫉妬に思えてしまい、そして俺は主人公や主人公の友人側の人間なんだと自覚して少々ヤサぐれた。 -
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読み応えありました。
4作の恋愛小説集。
はじめの「20年後の私へ」は合いませんでした。
薄っぺらくて、都合がよくて、面白くないなあ〜と思って読み始めたのですが、
2作目から一転。深い深い。
あとがきでも書かれているように目に見えないものの確かさを必死で探していく感じで、
いつもはどんな小説を読んでも、自分の既存の価値観に基づいて小説の言葉を理解していきますが、
この小説を読みながら「わたしはこう思ってあってるのだろうか」と思いながら読みました。
一番好きなのはダーウィンの法則で知佳の思考を物語を通して追えるところです。
恋愛小説というのは感情や偶然みたいな見えないものがそれこそ集まって物語がなしていくんだろうけど、
白石さんはそれを現れているように、しっかりと掴んで物語が進んでいくので読んでいて本当に楽しかったです。
表題作のどのくらいの愛情を読んで思ったことは素直に自分にもこの世の中に片割れがいればいいと思った。
そんなひとと仲良く百歳までうきうき過ごせたら幸せだと思った。 -
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下記を今朝登録したのだが、時間が経つにつれ、段々印象が上向いてきたので、評価星ひとつ増やす。
『絶望した側が、戦いに勝つことがよくある…』
『辛いときこそ、心のエネルギーを失ってはならない。人間は幼い時からその体に太陽エネルギーをたくさん蓄えてきたのだから、苦しいときこそ、それを放出して、自分の内部や周辺に渦巻いている暗黒のエネルギーを吹き消せばよい。少なくともそうイメージすることで、人間は溌剌となれるのだ…』
今、手元に本がないので、語句、文章は正確ではないが、そのような内容だった。
なぜか、その2点がじわーっと込み上げてきて、思わず修正。
表題作のほか3編。
博多弁が面白い。
表題作の『どれくらいの愛情』以外は何とも心に残らなかったのだが、4編目のこれだけは、しんみり読めた。
宗教的な匂いもするのだが、その言葉は結構印象に残った。
としても…私はなぜこの本を買ったのかしら。
その時はそういう気分だったのかなぁ。
ワカラン。 -
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貧困格差なんて絶対に無くならないと薄々分かってはいたが決定づけられた気がした。芸能人が1本百万~千万単位のギャラをもらったり、スポーツ選手の年収が億単位であったり馬鹿げていると言われれば、その通りので読んでいて腹が立ってきた。TVで下らない発言しかしない芸人と朝から晩まで毎日コツコツと仕事をしている人が貰っている給料とが雲泥の差なんてよくよく考えたら可笑しな話だ。そしてお金を沢山稼いでいる人はそうでない人を見下す。極端な話、政治家で消費税が上がって生活が苦しいと私生活で日々の支出を抑えている人がどれだけいるのか?明日食べるものに困って痩せてしまっている政治家なんて見たことないし、みんなでっぷりとした体格をしているではないか。
そういった絶望的な社会を諦めて生きていかなければならないと痛感させられる。
週刊誌編集長のカワバタをはじめ、登場人物の表記がすべてカタカナの為、其々の人物に感情移入することがなく、人間関係よりもカワバタ(著者)の主張が際立っている様に思う。しかしたまに誰が誰だか解らなくなってしまうのが玉に瑕。
下巻の月刊誌への移動とワーキングプアで取材を受けた
”タケダ”の衆議院議員立候補についての展開が気になる。グラビアアイドル”リコ”が無き息子の声の通り「悪い人」なのかどうかも見どころ。 -
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まず、タイトルが良い。
物理的なことではなく、自分以外の人との距離感を言っているように思います。
物語は 政治の話が大半で、読みづらさもありますが、登場人物たちの会話の中での気付きは、白石さんらしいなぁと感じました。
「愛」の反対語は、憎しみではなく「無関心」という マザー・テレサの言葉。物語の中では、政治家の本質について、良し悪しを語られていますが、人は孤独でありながら それでも人によって生かされている ということを考えさせられます。
人は人との合成によって初めて奇跡を生む。人は人とつながることで奇跡となるのだ。一人一人の人生にたとえ一切の意味がなかったとしても、人間の集合には必ず意味がある。その表象こそが政治...だそうですが、これは 会社にも社会にも当てはまることのように思います。
龍彦と結ばれなくても、彼の子供が欲しいと願い、一生を共にできなくても 二人は運命的な時間を共有できたと信じ、出会えて良かったと言う、薫の印象的な言葉。
「幸せは今にしかない。明日や明後日や何ヵ月先や何年先の幸福を願うのは、ずるい人のすることだと思う。」「自分のことを考えすぎると、きっと誰かのことをひどく傷つけてしまう。」
そして、タイトルにつながる龍彦の
「すぐそばにある最も大切なものほど いつも遠い彼方にあるのかもしれず、遠い彼方にある最も大切なものほど本当は すぐそばにあるのかもしれない。」と いう言葉が印象的でした。
ラストは、龍彦の失ったものが ようやく彼を解放し、読み終えて良かったと思いました。 -
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ネタバレ唐突な引用や不意に変わる展開が効果的で面白く、ストーリー運びの上手さと相まって最後まで一気に読ませられました。
ただ主人公の論理には非常に魅力的な部分もあれど、その偏狭さに段々頭痛がしてきます。すべての人の心に矢が突き刺さっているという前提のようで、彼の目を通すと非常に暗いサングラスをかけて世の中を見ている気分になります。他者に対する評価が大変厳しく、彼らに対する想像力や寛容性は殆どありませんが、ご自分には意外に点が甘く、持論には辻褄が合わない箇所も多々あります。結局自分の信条に固執するあまり多様性には狭量のようです。
恐らく議論を広げるため確信犯的に書いているのだろうけどそれにしても今一つ感じの悪い主人公だ、、、と思わせられるところは日本のミシェル・ウエルベック?巧いです。
これほどシニカルな人がどうやったら救われるのだろう、本人もあまり興味がないようだが果たして救われるのか?という興味を持ってラストに向かいましたが、彼の選択は他のと何が違ったのか、今一つ説得力に欠けます。あれが必然性なのでしょうか。ストーリーはともかく、思想的にこれだけの大風呂敷を広げてしまった後では結論が弱い感が否めません。
しかし、著者の今までの本もみなそうでしたが、共感はしないが読み進めてしまう、考えてしまう、という本で、きっとまた次作も手に取ってしまうことでしょう。 -
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ネタバレ後半になるにつれて読む手が止まらず、2日で読んでしまった。読んで思ったことが多すぎるヽ(;▽;)ノ
まず、ラストがよかったです。
そして、この本を読んでいる間ずーっといらいらしてしまった。
このお話、要はメンヘラがなぜモテるかって話。
まぁ、そうなってしまった過程が過程だからメンヘラなんて言ったら失言だし、こういう生い立ちになれば誰もがそうなってしまうと思うけど、それにしても、私はこうやってずぶずぶ病んでる女にハマっていく男がほんとに嫌い。
私の周りはなんだかんだ強い女の子が多いから、瑠衣みたいに安定している子を支持してしまうのだけれど、それにしても!!!
強い女だから俺がいなくても大丈夫なんてどうして思えるの。人間誰しも一人で孤独なのになー。
確かに傷を抱えて心を閉ざしてしまっている子の方が、自分がしてあげられると実感できることが多いもんね。それに、人の痛みが分かるっていうのも同感。人の優しさへの感度も上がるしね。普段優しさを感じられない生活をしている人にとっては、与えた側からしたらささいなことでも、その優しさが、泣きたくなるほどの嬉しさや感動に繋がるもんね。同じ優しさを与えるのなら、そうやって喜んでくれる人に与えた方が自分の満足感も大きくなるよね。
主人公よ、なんでそっちなのー!!とひたすら思っていたにせよ、そういう依存系の子を選ぶ人こそ、どこか心に傷を持ってたり、小さい頃に傷ついてたりするよね。
だから物語の結末に異議を唱えることはしないし、みんな幸せになってほしいと思う。
そして、血は争えないし、育った環境ってほんとに大事なんだなと思った。
以下は心にぐっときた言葉たち。
「成功の夢とそれがもたらす拘束が、彼をがんじがらめにして、身動きひとつ取れなくしてしまっていたのだ。」
「誰かに期待されたり、励まされたりしてじゃなくて、自分が、ありのままの自分だからこそ、立派にやり遂げられることなの。だから、ほんとに頑張らなきゃいけないことなの。頑張ればきっと報われるの。頑張りがいがあることなの」
「自分を愛さない限り、人を愛することはできない。しかし、誰かを自分以上に愛したとき、人は初めて、ほんとうに自分を愛することができるようになるのだ」 -
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今年早々に祥伝社から『ほかならぬ人へ』の文庫版が出た時には、その巻末に収録された「解説」のかなりイッちゃってるっぷりが局地的な話題になった。新潮社の編集部員が祥伝社の文庫の巻末で、肝心の小説の話はそこそこに、作家との思い出を過剰な熱量と垂れ流しの自意識とむしろオナニズム一歩手前の自己陶酔に乗せて語りまくるという、まるで違う男のところに嫁いでしまった昔の恋人に宛てた未練がましいラブレターのような、有り体に言えば新潮社作品ではなく祥伝社作品で直木賞を獲った著者に対する祝福しきれない屈折した感情の発露とでもいうような、ちょっとパンクな内容だった。当の小説の魅力もさることながら、あの「解説」だけでも一読の価値がある。
さて、それから3か月、2013年の白石作品の二つめとして新潮社から刊行されたこの文庫だが、巻末解説はなんと、祥伝社の編集部員によって書かれている。つまりこれは、巻末解説という形を取った祥伝社から新潮社への返礼であり、同時に果たし状なのだ。
白石一文をより深く愛しているのはあなたではなくて私の方なのよ、私こそが彼の寵愛を受けるに相応しいのよ、という、文庫巻末という場所を借りた一人の作家をめぐる出版社の愛憎劇が、ここに繰り広げられている。
つまりそれだけ、白石一文という人は素晴らしい作家であり、それ以上に一人の人間として魅力的な人だということなのでしょう。