白石一文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読むのがしんどかったっけど、
作者がいう壊れていない部分がどこなのかを知りたくて読んだ。
生き方をずっとぐるぐる考えていて、自己嫌悪にすぐ陥ったり、人のぬくもりを結局求めてしまって見苦しい言葉をつらつら言ってしまう主人公の、欠落した人間性で作品の8割ほどが占拠されてる。
その欠落した人格の中、まだ自分の居場所を見つけられる希望そのものを微かに持っていて、
それがおそらく壊れていない部分なのだと思う。
えりこがキーパーソンとして考えられる。
この人の向き合い方が主人公のダメさを表出している。
キリがない。
キリがないこの絶望の中で、探す可能性に縋って生きていくしかない。これが正義か悪かはわからな -
Posted by ブクログ
67歳の櫻子は、娘が中学生になる頃に離婚してからずっと独りでいた。
彼女のことを気にかけてくれていた兄も亡くなって17年が経つ。
義姉の智子は、兄の元を突然去り同級生と再婚してからは、櫻子とも会うことはなかったのだが…。
2人が語るそれぞれの想いとは…。
仲の良い兄妹なのだろうが、ここまで心情を打ち明けるほどとは…と少し異常に思えるのだが。
夫婦の関係も智子にとっては快適よりも重荷になっていたのだろうが、新たにスタートされた2人の生活は穏やかなのだろうと察せられた。
最後の櫻子の爆弾発言は何を意味するのか…。
愛情が相手の重荷になるほどだと、愛とは言えないのではないか、それは執着になる -
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ネタバレ表題「ほかならぬ人へ」と、「かけがえのない人へ」の、二編の小説。
「ほかならぬ人へ」
最初は、明生の妻なずなが酷い女のように感じたが、そうとも言いきれない。
仕方がないこと。人を好きになるのは、理屈じゃないから。
自分にとってベストだと思っていた相手は、実はそうではなかった。勘違いだった。
ただそれだけのこと。
匂いが好きだと思う人とは相性が良いと言うけれど、それは間違いないと思う。
「かけがえのない人へ」
みはるが黒木から離れられないのも、わかる。
黒木は結婚してくれそうもないから、みはるは真っ当なエリートと婚約したわけだけど、黒木といる時の自分の方が自分らしくいられたんだろうな、き -
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松谷遼平は、幼馴染の友莉という恋人がいたが、会社のアルバイトで入ってきた8歳下の隠善つくみと会ってから奇妙な感覚に襲われ、ずっと以前からの身内のような気持ちになる。
すぐにつくみと結婚した遼平だったが、その後友莉の失踪で捜索を進めるうちに関係者たちの出自や記憶が、遼平の母の実家・瓜生村と繋がっていることに気づく。
そして、つくみが突然いなくなった後、彼女も瓜生村に行ったのではと…。
遼平がそこで体験したのは…。
異常とも思える人と人の奇縁にあり得ないと思ってしまう。
だが土地の記憶が関係ある人を結びつけているのだと思うとこのような魔訶不思議さもあるのでは…とも感じる。
登場人物がみんな -
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本著は小説家としての孤独や葛藤、繋がりと喜びを説く本である。
創作活動全般、知的活動、表現全般の人にとっても通じ、そうでない仕事をしている人においても、「自分一人では生きていない。周囲に支えられて繋がって生きている」と人間であれば、業種業界分野問わず、共同体の中で生きていることを改めて知るきっかけとなるだろう。
本著で述べている通り、小説家は孤独と葛藤と繋がりと喜びが混じり合う業種であり、その寂しさとも繋がりの中で生まれる温もりの両方を知ることができる。
「君」とは「繋がる全ての人」であり、私たちがふと忘れてしまいがちな日常の営みのありがたみを思い出させてくれる。人は一人では生きてはいけない。 -
Posted by ブクログ
352ページという長めの小説でしたが、とても読みやすく、また単なる恋愛小説ではないところに引き込まれてしまいました。
長年付き合っていた幼なじみの友莉がいたにも関わらず、職場のアルバイトの女の子「つくみ」を「この人は俺に会いに来たんじゃないかな?」なんて思い、友莉を捨ててつくみと結婚してしまう遼平。
読んで行くとつくみという女性が本当に遼平に会う為に来た女性なのでは?と思わずにはいられなくなりました。
ファンタジーというより、日本の昔話のような世界観。最後まで種明かしはされないので読者の思うように解釈して欲しいということなのでしょうか?