白石一文のレビュー一覧
-
ネタバレ
他人の権利から自分を守る
小説最終盤で書かれる主人公の独白が、作者の一番言いたいことではないかと思った。この小説がコロナ禍の中で書かれたことも注目ポイントである。
コロナ禍では、「マスクをしない権利」と「感染されたくない権利」がぶつかった。
本作でも、主人公夫の「人生の最期は好きな人と過ごしたい権利」が、主人公の存在意義を揺るがす。
さて、最後まで主人公は「決断」していない。それを快く思わぬ読者の声も多数見受けられる。自分もまた、主人公をグズグズした女と見る向きもある。
しかしそれもまた、作者の狙いなのではないかとも思う。コロナ禍では多くの人が「コロナに感染したくないのでマスクをする」ことを守り抜いたように。主人公が様 -
Posted by ブクログ
面白かったのだけれど、これってSF?
つくみは、昔遼平を助けてくれた猫「シロ」の生まれ変わり?
出会うべくして出会ったと思った遼平はつくみに惹かれ、結婚。
遼平の仕事でつきあいのある会社の社長が愛した同性の美容師も、遡っていくと遼平の母のルーツと関わっていた。
弟耕平の友人タケルの恋人は、小さな時にその美容師に命を救われていた。
婚約者同然だったのに、あっという間につくみと結婚した遼平に傷つけられた友莉が働く高級コールガール組織の社長も「つくみ」という土地に関係があるのかもしれない。
突然失踪したつくみを探す手がかりを得るため、母の実家「六波羅家」を訪れ、誤って古井戸に落ちてしまいその後の行方 -
Posted by ブクログ
直木賞。
かけがえのない人へ
「足元の地面が固まれば固まるほど、その硬い地面をほじくり返したい衝動に駆られるのはなぜだろう?」
恋愛において、自分と違うタイプの人に惹かれるのはとても分かる。
でも、自分と似ているタイプの人といるのが自然なような、決められたことであるような気がして逆らえない。
どっちと一緒にいても自分を肯定しなきゃいけないから、自分の中で、言い訳を並べて
自分を騙して、これは正しいことなんだと思い込んで。
地面は固くなればなるほどほじくり返したくなるよね〜それってすごく自然なこと。
悪なんだけど、悪ではない!って正当化してあげたい。
正当化してあげたいのに、最後アンハッピー -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんだったが、個人的には大当たりだつた。
莫大な遺産の存在を隠していた妻、恋愛問題について隠していた子どもたち、そして会社で受けた不当な扱い。
そんな人生が何もかも嫌になり、主人公は人生をリセットすべく新天地で事業を始める。
長く生きていると人生ではいろいろなことがある。
人間関係とは煩わしいモノであり、人の気持ちを思うように操ることはできない。
度々登場する逆境の中で、主人公はあらがうでもなく、従うでもなく、まさに現代のガンジー如く孤独に、しかし強く自分の道を切り開いていく。
一本筋が通ったその生き方と、場所場所でのリアルな情景描写が相まって、物語は最後まで鮮明な解像 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「Timer」が荒唐無稽すぎて、もう白石一文やめようかと思ったけど笑、やっぱり気になってこちらも読みました。
こちらも相当荒唐無稽ではあったけど、面白くて1日で読んでしまいました。
設定はやはり近未来。人間型のアンドロイドを作成して、記憶を複写させ、本人と同じように仕事もし、生活できるという設定はかなり荒唐無稽ではある。
しかし、その設定の中で描きたかったのはやはり「真実の愛とは」というテーマだ。愛し合う夫婦が「子どもがほしい」と望み、それがかなわないときに、真実の愛がどうなるのか、という、複雑なようでシンプルなテーマだ。
代替伴侶であるアンドロイドの「隼人」と「ゆとり」が生活を始めるまでの -
Posted by ブクログ
ほぼ全作品、新作が出るたびに読んでいる作家さん。
今回も、21時過ぎまで仕事をして帰ってきた週まだ前半の火曜日、眠る前ちょっとだけ…と思いきや読破してしまった。
白石一文作品にしては短め。
アンドロイドものだけど、ここ最近のバリバリSF感は薄く、ちょっとテイスト変わったかも。
好きなタイプ。
今回もただひたすら、愛とは何かを問い続ける。
どうしてこの人はこんなにいつもまっすぐに愛の本質を追求しているのか・・・・・・
*
「地球人口爆発宣言」から約半世紀。
世界中のほとんどの国で持てる子どもの数は一人とされ、不妊治療等は認められない。
自然妊娠しか許されなくなった世界において、夫婦の片方に -
Posted by ブクログ
地球人口爆発宣言により夫婦が持てる子供の数は1人と決まった。
子供ができなかった隼人とゆとり夫婦は妊活を行うが叶わず、ついにゆとりが別の男性との妊娠を成し2人は離婚する事となった。
ゆとりを喪失した代替に隼人は代替伴侶を迎えるのだった。
人間の移ろいやすい愛情に対して、代替伴侶のアンドロイドは純粋に相手を愛し続け、自らの10年という寿命を代替でありながら人間として生きてきた。
アンドロイド(ツイン)の愛情深さに、人間が自らの行いに懐疑的な感情を喚起され、ツインの生き方を受け入れていく。
夫婦、男と女。
愛情という生き方を静かな筆致で綴られた心に染みる小説だった。
-
Posted by ブクログ
『ほかならぬ人へ』
華麗なる一族の中で「生まれそこなった」と思っている、宇津木明生。先祖は巨大財閥で、父は大学教授、母は大病院の創業家の長女、伯父は宇津木製薬グループの社長である。長兄も次兄も成績優秀で大学の研究者。
ところが、明生だけが、小学校時代から成績が振るわなかったが、先祖が日大の前身の学校の創立者であったという縁で、日大の附属中学から日大へ進み、大手スポーツ用品メーカー、YAMATOに就職した。側から見れば「大企業に就職した」と言えるのだが、普通のサラリーマンになったのは宇津木家では初めてだった。
明生は兄達のように優秀でなくてもおおらかな家族に包まれ、優しく何不自由なく、育っ -
Posted by ブクログ
『不自由な心』白石一文
5作品の短編?中編?作品集。
どうして私は白石一文の作品にこんなに吸い込まれてしまうのだろうといつも思う。
本作は特に。
「家族を蔑ろにし、不倫を繰り返す、仕事のできる男」たちの物語。
言ってしまえばただそれだけ。
不倫男がうだうだと言い訳を繰り返しながら周りを振りまわし傷つけるだけのお話。にも見えてしまうのに。
共感でもないし同情でもないし、なんだろうな少しだけ共感性羞恥のような。
もちろん不倫が美化されているわけでもない。
主人公が全員頭が良いので、ロジカルに自分の行動を分析できていて、不倫もデキる男の嗜み、くらいに思っていたはずなのに、突然「真実の愛」