あらすじ
がんの奇跡的治癒に哲学・文学的に迫り、この世界の「神秘」を描き切った白石文学の集大成。
「あなたがあなたである限り、よくなるのはむずかしいの」。病を癒やす不思議な力を持つ女によって、菊池はこれまでとは全く違う自分へと生まれ変わるよう導かれる。無数の偶然が一本の線となりたどり着いた土地で、菊池は過去に隠さた驚くべき真実を知る。がんの奇跡的治癒に哲学・文学的に迫り、この世界の神秘を描き切った白石文学の集大成。
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Posted by ブクログ
末期の膵臓ガンで、余命1年を告げられた敏腕編集者。昔に電話で話した、病を治すという女性を探して神戸に引っ越す。離婚した元妻との関係に悩み、ガンに悩み、宗教に救いを求め、やがて女性にたどり着くと、元妻との出会いから、離婚の原因になった、少女の死まで、運命の輪の中あった。
偶然もここまで行くと見事。ガン、余命宣告に関する考察が面白い。
白石一文は面白い。長いけど、ほぼ二日で読破。
読書って楽しい。
Posted by ブクログ
余命一年と宣告され、かつて自分が電話で受けた不思議な力を持つ女性を探そうと考えた菊池は、土地勘もない神戸へ住むことにする。自分では偶然だと思っていた事が神秘の力に導かれていたとしたら?最後の方は鳥肌がたった。
Posted by ブクログ
再読本。以前読んだ数年前より
丁寧に読むことが出来た気がする。
前回のレビューでも書いているが
私は不思議な事、神秘的な事を否定しない。
体験をした事がある訳では無いが
きっとこの世界は神秘で溢れている気がする。
そしてそう思いながら生きていると少しワクワクする。
Posted by ブクログ
下巻に入ると、山下やよいさんにぐっと近づいていきます。彼女が結婚式をしたという教会や、阪神大震災の犠牲者名簿などから、少しずつ居場所を手繰り寄せていく、この過程が一番ワクワクしたかも。
その後は、何かがぱあっとひらけていくような展開を期待していたもののそうはならず、一度はテンションが下がってしまったのですが、最後の「あとがきに代えてーー白石一文『神秘』を語る」まで読んだとき、ああ、この本は「がん(病)の治し方」を、「生きたまま生まれ変わる」ことは可能であることを、具体的に示してくれた小説だったのだと納得しました。
すべては必要な展開だったのです。この小説の中には、なにひとつ無駄はなかった。そして、私が、今、この本を読んだことは必然だった。私もきっと何かに導かれて生きているのだろうと感じました。
〈私〉もしくは〈僕〉による、生と死についての考察や深い内観が良かった。私自身も漠然と考えていたことが言葉に表されていて、メモに書きとめたことばや文章がたくさんあります。いのち、生と死、生き方、死に方、これらについて何か思うことがあれば、この小説を開いてみると何かしらのヒントが得られるのではないでしょうか。
ラスト、谷口善道さんの主人公への問いかけの答えは、この小説のタイトルにつながっていくのでしょう。登場人物たち、この人たちにはみんな幸せになってほしいと思いました。
この「神秘」を知った今、もう一度初めから読み返したいという気がしています。なかなかおもしろかったです。
それにしても、JR住吉駅の「新快速飛び降り事件」て、これも本当にあった事件なんですね。びっくりだ。