【感想・ネタバレ】代替伴侶のレビュー

あらすじ

人口が爆発的に増え、「代替伴侶法」が施行された近未来。伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代替伴侶」が貸与されることとなった。それは「あり得た夫婦のかたち」を提示すると同時に、愛の持つ本質的な痛みを炙り出すことともなったのだった――。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

「Timer」が荒唐無稽すぎて、もう白石一文やめようかと思ったけど笑、やっぱり気になってこちらも読みました。
こちらも相当荒唐無稽ではあったけど、面白くて1日で読んでしまいました。
設定はやはり近未来。人間型のアンドロイドを作成して、記憶を複写させ、本人と同じように仕事もし、生活できるという設定はかなり荒唐無稽ではある。
しかし、その設定の中で描きたかったのはやはり「真実の愛とは」というテーマだ。愛し合う夫婦が「子どもがほしい」と望み、それがかなわないときに、真実の愛がどうなるのか、という、複雑なようでシンプルなテーマだ。

代替伴侶であるアンドロイドの「隼人」と「ゆとり」が生活を始めるまでのなりゆきが少々複雑だ。
2人は愛し合って結婚したが、隼人の精子に問題があって子どもができない。ゆとりは焦り、悲しみ、ふとしたはずみで他の男との子どもを身ごもってしまう。未来の社会では、生物学上の親子のつながりがある家族が最優先されるようになっていて、選択の余地なくゆとりは隼人と離婚し、子どもの「本当の父親」と家庭を築くことになる。
残された隼人は委員会に「代替伴侶」を申請し、ゆとりのアンドロイドと暮らし始める。アンドロイドは自分はアンドロイドであると認識できない。そして人間の伴侶を決して裏切らないようにプログラムされている。
ところが、次はその隼人が自分を裏切らないアンドロイドの伴侶「ゆとり」を裏切り、はずみで他の女と子どもをもうけてしまう。そしてその女性との子どもの「本当の父親」として家庭を築く義務を負う。
人間の隼人とゆとりは、どうしても子供が欲しいと思っていたわけだから、望みはかなったことになる。

残されたアンドロイドの「ゆとり」は、自分がアンドロイドであるとは知らずに、隼人に去られたショックから委員会に「代替伴侶」を申請する。

というわけで、互いに自分はアンドロイドだと知らず、相手はアンドロイドであり自分を裏切ることはない、子どもはできないと認識しながら2人で暮らしていくことになる。
お互いに相手を裏切ってしまい、他の相手と子どもをもうけて暮らす人間のふたりにとって、アンドロイドの自分の「ツイン」どうしの暮らしは、「真実の愛」の可視化したものになる・・・!?
っていうなかなかあり得なくて恐ろしい設定だけど、不妊治療に悩む夫婦とか、子どもが生まれたことで何かが変わってしまった(愛がなくなった?)夫婦とか、いくらでもいるよね。逆に、「子どものいない人生」を選んだ夫婦が、本当にずっと仲良く、お互いを大切にしあうっていうのも、よくある話かもしれない。
この物語では、代替伴侶のアンドロイドどうしが、真実の愛にたどり着いて、それをもとの人間のふたりが確認する、みたいになっている。

私は夫を愛しているし、お互いを大事にしあってともに暮らしているけど、やっぱり子どもが生まれてしまったからには、夫より子どもの方が大事だと思ってしまうな(笑)。夫と子どもが同時に危機的な状況に陥っていたら、迷わず子どもを先に助けるだろうし、逆の状況でも夫もそうすると思う。それには何の疑問もない。それに、二人だけで暮らしていたときと、子どもが出来てからでは、互いの優先順位はかなり落ちる笑。でも、子どもを優先する、子どもを大切にすることはやはり、「あなたと私の子だから」っていう大義名分?のもとに成り立っている気がする。

私の好きな、白石一文作品を読んだあとの「真実の愛って何」ってずっと自問する感じを存分に味わえる小説でした。

あと、「決っして自分を裏切らない存在」って、ペットの犬みたいだなと思った。犬って、なんであんなに主人に忠実なんだろう…。

0
2025年05月11日

Posted by ブクログ

久々の感動ストーリーだった。アンドロイドの夫婦だったから新鮮だったのかも知れないしまた何年かして読んだらふるくさって思うかも知れない。でも子どもがいてもいなくても夫婦個体としてパートナーとして互いに必要な存在でなくてはいけないと思う。夫婦の見方が変わったと思うぐらいジーンとくる内容だった。

0
2025年01月06日

Posted by ブクログ

ほぼ全作品、新作が出るたびに読んでいる作家さん。
今回も、21時過ぎまで仕事をして帰ってきた週まだ前半の火曜日、眠る前ちょっとだけ…と思いきや読破してしまった。
白石一文作品にしては短め。
アンドロイドものだけど、ここ最近のバリバリSF感は薄く、ちょっとテイスト変わったかも。
好きなタイプ。

今回もただひたすら、愛とは何かを問い続ける。
どうしてこの人はこんなにいつもまっすぐに愛の本質を追求しているのか・・・・・・



「地球人口爆発宣言」から約半世紀。
世界中のほとんどの国で持てる子どもの数は一人とされ、不妊治療等は認められない。
自然妊娠しか許されなくなった世界において、夫婦の片方に不妊症が認められると、それは決定的な離婚事由となった。
新しい民法下では、「生物学的な夫婦関係」が「戸籍上の婚姻関係」に優越するとされている。
結婚の是非が生殖能力によって判定される世界では、”不倫”という言葉は死後になった。

とはいえ、裏切りは裏切りであり、残された者の精神的苦痛を和らげるため、人権救済委員会は「代替伴侶」の制度を敷いている。
有責配偶者の記憶が複写されたアンドロイドの「代替伴侶」が、10年間貸与される。



子どもをきっかけに離婚した主人公の隼人とゆとり。
紆余曲折を経て岡山で実現していた、かつて思い描いていた”いとおしい生活”。

いい家庭を持つことと、いい夫婦でいることは全然違う。

手放してしまった幸せな日々を生きるパラレルワールドの自分たちを見て、過ちに気づく。
人は間違えるものだ。だからやり直せる道が残されていてほしい。



ねえでもラスト衝撃すぎて3度くらい読み返した 何これ つら

愛する人を慮る愛、愛する人に悲しく辛い思いをさせたくないという愛、
そのためならば、自分は、という愛

この愛が 実は私にはまだよくわからない 実感をもって語れない

0
2024年10月30日

Posted by ブクログ

地球人口爆発宣言により夫婦が持てる子供の数は1人と決まった。
子供ができなかった隼人とゆとり夫婦は妊活を行うが叶わず、ついにゆとりが別の男性との妊娠を成し2人は離婚する事となった。
ゆとりを喪失した代替に隼人は代替伴侶を迎えるのだった。

人間の移ろいやすい愛情に対して、代替伴侶のアンドロイドは純粋に相手を愛し続け、自らの10年という寿命を代替でありながら人間として生きてきた。
アンドロイド(ツイン)の愛情深さに、人間が自らの行いに懐疑的な感情を喚起され、ツインの生き方を受け入れていく。

夫婦、男と女。
愛情という生き方を静かな筆致で綴られた心に染みる小説だった。

0
2024年10月18日

Posted by ブクログ

離婚した時に相手の記憶を持ったアンドロイドを借りれるというお話。子どもが欲しい、子どもを持つ、という人たちが、自分とあまりにも違う世界の住人になってしまうなあと思っていたところに響いた。

0
2025年05月15日

Posted by ブクログ

近未来の夫婦の在り方を問う物語だけれど、抱える問題はいつの世も同じだし、愛情の深さも同じなんだ、と言うことが伝わって来る。もう20年前に読みたかったかも笑

0
2025年01月30日

Posted by ブクログ

滑らかな書き出し。
おしゃれな文体。
丁寧な暮らしをしている夫婦が1組。

あ、苦手かも。
が、最初の感想。

なのに何故か先が気になる。
岩波文庫みたいにみっちり書き込んでるんじゃなくて、どちらかというとスカスカした感じのページから、目が離せない。

川のせせらぎのような、クラシック音楽のようなはたまた優しいテクノのような。

知らぬ間に白石ワールドに引き込まれたようだ。

アンドロイドの代替伴侶。の代替伴侶。
そう遠くない未来の風景かも。


穏やかにフェイドアウトするかと思いきやの
ラスト。

衝撃的過ぎる。
うまい!

0
2024年11月29日

Posted by ブクログ

白石さんの創造力に感服。どっちがアンドロイドかごちゃごちゃしたが、最後は…。10年後に消滅するなら、代替伴侶はいらない。二度も悲しみたくない。小イワシでなくママカリの唐揚げ!御前酒も!懐かしい。小イワシの天ぷらとママカリの酢漬けつまみに一杯やりたくなった。

0
2024年11月26日

Posted by ブクログ

終わりが切なすぎる。悲しい。
夫婦とは何かと言うテーマで読みました。
子供がいない夫婦はお互いにがっつり向き合うしかないから大変そうだけどいいなぁと常々思っていたのでちょっと共感。
子供を育てることで得られるものは果てしないけれど慌ただしさや、事務仕事で立ちどまって見つめ合うことはなかなか難しい。
同じように歩んで話して一緒に育児していけたら最高だけどそううまくはいかないよな、現実。

0
2024年11月25日

Posted by ブクログ

最愛の伴侶を失った者が利用できる代替伴侶法。人口爆発の時代に見つける愛の形とは?
特殊な設定の中での展開になるほどとは思ったものの、そこへの持って行き方が少々不自然な気がしました。
伴侶としてはともかく、このレベルのアンドロイドが実現された世の中がどのような発展をするのか実に興味深いですね。

0
2025年07月12日

Posted by ブクログ


SFだなと思う一方で近い未来、社会で
実際に起こり得ている状況かもしれないと
思える物語。

身勝手さや自分本位さに目を顰めたくけれど、
なぜだかそれと並立する純粋さや愛情深さに
人の感情の妙を見せられた気がします。

複雑に入り組んでいて、どこまでも透き通って
いる、そんな感想。

0
2025年06月23日

Posted by ブクログ

なるほどな、と思った。上手いな。

基本的な設定に色々無理があると感じたのだけど、アイデアを形にするための仕掛けとては、まあ許容出来る。短めの話だし。
そもそもの家族とか夫婦とかいう考え方に著者との違いはあるようなのだがそれはそれとして、話の組み立てに引き込まれた。
無理なく面白く読めたものの、残念ながら、最後の仕掛けには納得出来なかった。最後の最後に必然でないものを持ってきた。

ちょっと読んでて悔しい。

0
2025年06月03日

Posted by ブクログ

設定はすごく面白いと思ったのだが、途中からどっちがどっちなのかがこんがらがってしまい、結末がぼやけてしまった感じだった。
私の読解力がないだけなのかもしれないけれど、それでも結局は自分の愛した人は形が変わっても大切な人なんだろうと言う想いは伝わってきた。

0
2025年03月06日

Posted by ブクログ

人口が爆発的に増え「代替伴侶法」が施行された近未来。浮気したゆとりに子供ができ、離婚することになった隼人は、ゆとりのツインを作ってもらうことになった。これがなかなか複雑な話なんだけど、違和感なく読めるのは、白石さんの筆力だろう。

0
2025年03月01日

Posted by ブクログ

サクッと読めるが、たくさん章で区切られているため少し読みづらさを感じた気もする。内容は可もなく不可もなく。設定はおもしろかったし、心情の描写もリアルだと思った。

0
2025年02月19日

Posted by ブクログ

著者の作品は新刊が出るたびになるべく早く読むようにしている。注目している作家の一人だ。
この「代替伴侶」は、感情移入しにくく、読み通してしまった。我が努力が足りない。

0
2025年02月04日

Posted by ブクログ

夫婦は子どもという存在によって関係が歪められる、というこれまでと逆の発想。子孫を残すという役割を夫婦はどうなるのか?

発想はおもしろいけど、どっちがどうなっているのか、途中からわからなくなってしまった。

0
2024年11月26日

Posted by ブクログ

伴侶を失い精神的に打撃を被った人間に対し、最大10年間という期限つきで、かつての伴侶と同じ記憶や内面を持った「代替伴侶」というアンドロイドが貸与されることとなった。

読み進むにつれて、「代替伴侶」と人間の区別がつかなくなってくる。
そのくらい、アンドロイドは人間の世界に順応し、コミュニティを広げ、親交を深めていく。

人間もアンドロイドも、そこに感情や気持ちがあり、他人に伝えることができるのであれば、そこに能力の差はなく、愛を育むことができるのだと見せつけられた。

夫婦とは何か。人間とは何か。
そんな問いを提示してくれた物語だった。

0
2024年10月09日

「小説」ランキング