白石一文のレビュー一覧
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深い深い、愛のお話。
男女間のそれに限らない、深い愛。
つまる所、死を以て、もしくは死を念頭に置いてしか、本当の愛は分からないのかもしれません。
だからこの作品を読んで尚、私には本当の愛は分かりません。
けれど、常識や世間体や平均といった先入観にまみれた私でも、心がじんわりと暖かくなるような、いやいや、そんなわけないでしょ、これはフィクションだからと、冷静になるような。
一つ言えるのは、羨ましいということ。主人公の夫婦は、深い愛で繋がっていると思いました。
途中、かつて読んだことのある表現に再会できたのも、この作品を読んだ、意外な収穫。
「忘れなくても、決して思い出さない」
この後 -
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2019年、再読。
読み終わってから以前読んでいたことを知って驚愕。
全然思い出せなかった…。
5年経って私の考え方、感じ方が変わったのか以前のような感想は抱けませんでした。心が安定したからだと信じたい。
2019年の今の評価は★2つ。
2019年4冊目。
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「人に大切にされることが、自分を大切にすること」
というフレーズが、非常に心に残った一冊。
切ないくらい、様々な種類の愛情に溢れた作品です。
タイトルの「一瞬の光」を求め、一瞬一瞬を生きていくという道を主人公は選びます。
もちろん、誰 -
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作者あとがきに書かれている、「目に見えないものの確かさ」とは、それぞれの作品で描かれている人間の想いや繋がりではないかと私は考えます。また、世界の流れ、というか、陳腐ですが運命といったものではないかと。それはよく目を凝らせば日常に溢れているのでしょう。
あとがきでは、目に見えないものを見ることが「自分とは何か?」という最も大切な問いに対する答えを出すために必要であると再三述べられています。
自分とは何でしょうか。即答できるような質問ではありませんよね。日常で考える機会もそうそうない質問です。私はまだまだこの答えを出せそうにありません。
ただ、それを考えることで、今まで気づかなかったことに目を向 -
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以前聞いた、出版社の編集者の話によると
少年マンガの主人公は「こんなヤツになりたい!」
読者が見上げるような立ち位置のキャラが多かったそうだ
青年マンガの主人公は「こいつは、俺だ」
読者に共感を覚えさせるような親近感のあるキャラ
その喩えでいうと、この小説の主人公は
「中年男性の憧れと親近感を一手に引き受けるキャラ」に設定されてる気がする
ブースターや燃料タンクを切り離して成層圏を飛び出した宇宙ロケットみたいに、家族や仕事から離脱出来たらどんな人生が開けるのだろうか
という、ある種のファンタジーを満足させるような、そんなお話
あと個人的な感想として、食べ物の描写がやたら美味そうな小説でし -
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久々に上下巻にも及ぶ大作を読んだ。
でも「長い」というイメージはない。
この本は作者にとっての「哲学」なんだと思った。
編集者という職業柄をうまく使い、
時事問題・歴史問題・政治問題を絡ませながら
最後に「必然」とは何かという哲学に導いている。
主人公のカワバタをこういった哲学の道に引きずり込んだのは
生後3ヵ月でこの世を去ったユキヒコの死に他ならない。
その後の彼にとって過去や未来は存在しないにも等しいし、
結婚関係についても妻に愛人がいるとしっても取り乱すこともなく
第三者的立場から物事を見ているような感じ方だ。
【ココメモポイント】
・神が宇宙知性であり僕たち一人一人はその微小 -
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ドリフのコントに『もしも…◯◯な××があったなら…』のコントがあった。これを本書に置き換えれば、『もしも長年連れ添った妻が莫大な隠し資産を持ってたなら…』になる。
常に現実的な小説を紡ぐ白石一文が描く〈大金が転がり込んでくるユーモア小説〉?…と勘繰るも、ですよね…、んな訳なく、やはりいたって現実的な状況下に起こる起伏激しいスリリングな展開ゆえ、先の予測が見えないままに600ページ超を一気読み。
◉さわり…
主人公 加能鉄平(53歳)は福岡市にある祖父が創業した化学製品メーカーの営業本部長。本部長とはいえ、名ばかりの閑職。同族企業にありがちな親族に疎まれ、役員になり損ね閑職に。最初に務めた会 -
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ネタバレ表題作を含む4つの短編(中編?)が入っています。
どれもテーマは愛かな?
「20年後の私へ」「ダーウィンの法則」「どれくらいの愛情」の3編は、真実の愛を追究したり、自分の気持ち(愛)に正直に生きようとしたりする人々を描いている。
「20年後の私へ」はもう若くはない、仕事を持つ女性が、本当はキャリアウーマンになりたかったわけじゃないのにだんだんと仕事の責任が重くなり、人がうらやむような素敵な男性にプロポーズされ、そっちに逃げることもできるけど…という展開で、私にはなかなか共感できるものがありました。19歳のときに、20年後の自分宛に書いた手紙の内容はなかなか泣けました。
「どれくらいの愛情」は色 -
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人生でここまで色々なことが起こると、一つ一つの出来事を後から解釈したり、そこから運命を考えてみたりできそう。自分はここまで考えたことはないし、そんな起伏の多い人生は送れないだろうから考えないだろう。
運命を受け入れるというか、一つ一つの出来事を解釈して受け止める、納得するような姿勢というのは生きていく上で大事だと思った。結婚や出産、病気、女性活用など色々な現実を解釈する、選択しなかった運命はなく、選択したことを納得する。運命って言葉には何か受け身でどうしようもないニュアンスがあるが、それをポジティブに解釈することが、後に続いていくのだろう。
逆に、後に東電に入る若者の彼は、人生や社会を舐めすぎ -
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ネタバレ読み終わったあと、「ここは私たちのいない場所」というタイトルの意味について深く考えた。白石一文作品って、タイトルが素敵だけど、これもタイトルがずっと心に残って、ずっと考えさせられる感じ。
主人公の存実は幼いころに妹を亡くし、自身は妻も子供も持たないと決めている、大手企業の重役。ひょんなことから会社を辞めざるをえなくなるところから物語が始まる。そもそも簡単に会社を辞めてしまえるのも、妻子がいないから。彼はあくまでも家庭なんて持たない方が良い、という姿勢を貫いている。会社を辞めて日々何もすることがなくなっても、独り身がさみしいという感じはない。
しかし、大学時代の友人ががんで急逝したり、会社を辞め -
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これは・・・。
また一気に読み切ってしまう白石一文作品。
こんなに長くて重くて登場人物がたくさん出てきて意味がわからないのに、一晩二晩で読み切ってしまうのは何故なんだろう。
白石一文読んでる〜〜〜〜〜ってワクワクしながらもうページすっ飛ばす勢いで読んだ。ただ今回のラストはなんだか完全に煙に巻かれたよね。
残りページ数少ないけど終わる気配ないよなと思ってはいたけれど。
まとめ・・・なかった!って感じ。堂々とまとめなかったな。
ちょっと笑ってしまうくらい突拍子ないSF描写が多めで、白石一文にしては珍しいかなという印象。
突然体の一部がプラスチック化する、主人公で作家の姫野信昌。数年前に「死んだ