白石一文のレビュー一覧

  • 一瞬の光

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    主人公の浩介が、2人の女性の間で揺れる話。
    …と言ってしまえばそれまでだけど、村上春樹の「ノルウェーの森」だって言ってみればそういう話ですね。
    ノルウェーの森ではワタナベは最後にみどりを選ぶけど、この小説では最後にどちらを選んでも良いと思いながら読んだ。
    超脇役で出てくる「柳原くん」を主人公にしても素晴らしい小説が書けるのではないかと思った。

    肉体関係を超えた男女の愛情っていうかつながり(?)の物語なのかなぁ…。「心に龍を散りばめて」でも、最後に結ばれる2人はずっと性を超えた結びつきがあったように思う。
    でも肉体の繋がりの深さ、その大切さも描かれている。
    あー、深い。

    0
    2022年02月08日
  • この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    すごい小説だった。
    自分とは何か、何のために生きているのか、世の中の真実はどこにあるのか、何を信じればいいのか。
    もっとも繰り返し問われるのは経済格差の問題。
    小説の最後に、「胸に深々と突き刺さる矢」の正体が分かる。
    でも、もしそうなら、私はその矢を抜くことはできないと思った。
    その矢にとらわれることなく、「自分」という存在をあるがままに受け入れるのは難しい。
    人は誰でも、過去にとらわれたり未来を想い描いたりするからだ。
    そうでないと生きてはいけないと思う。

    小説を通して、世界の真実を問うているのか、一人の人間の真実を問うているのか、運命の何たるかを問うているのか、愛の何たるかを問うているの

    0
    2021年09月17日
  • 光のない海

    Posted by ブクログ

    登場人物の間の様々な因縁とそれに対する主人公の孤独を強調した作品。
    他人に翻弄されながらの「自分の生」は虚しく、そうであるからこそ他人を心の支えとする。そんな人生の哀愁を綺麗に描き出している。

    0
    2021年08月13日
  • 光のない海

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    運命に翻弄された男の、深い深い孤独を描いた物語。
    主人公の修一郎は、家族を失って孤独ながらも、人との縁に恵まれ中堅会社の社長にまで上りつめる。しかし彼の心は癒えることはない。社長になったのも自分の意思でもなく、、「運命に縛りつけられている感じ」。小説中、2、3度しか出てこないが「命の支え」というのがかなり大きなキーワードだと思う。彼が孤独なのは「命の支え」が何もないからだ。とりあえず自分に託された「会社」を守るために一生けんめいに努めてきたが、それさえもなくなると…?
    少し前に平野啓一郎の作品「空白を満たしなさい」で、人がどんな瞬間に自死を選ぶのか考えさせられたが、それとも通ずるものがあった。

    0
    2021年08月08日
  • 愛なんて嘘(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    あー自分以外をクズだと思うって厨二乙だけどそうでしか心の置き場がないんだよー。ただ、恋人にはその黒さをまざまざと見せつけるっていう。つかれる。

    0
    2021年07月25日
  • 記憶の渚にて

    Posted by ブクログ

    小説を読みながら、まるで映画を見ているかのように情景を思い浮かべることが、楽しいこの頃。その映画をより深層まで表現するために、現実での体験が必要になってくると思う。生活地域での経験や人との関わりでの経験等を重ねれば重ねるほど映画で細かい描写ができる。だから年齢を重ねることで小説の感じ方が変わるのだと思う。

    白石一文さんの作品に少しだが、実家である清瀬市が出てきたことに感動しました。
    没入感が半端ない作品。

    0
    2021年07月05日
  • 僕のなかの壊れていない部分

    Posted by ブクログ

    今までの中で読み返したいと思えるなかなかにない作品だった
    名言的引用も数多く出てきてすごい惹かれるものが多かったと思う
    主人公の病み感が良い
    心取り憑かれるような衝撃的文体と忘れることのできないストーリー

    今のとこマイベスト!No. 1です

    0
    2021年04月12日
  • 私という運命について

    Posted by ブクログ

    亜紀と義理の母親との温泉道中が一番好きな場面ですが、エピソードで印象に残っているのは田中角栄。
    ページレイアウトがベタだけどドラマのように展開するので、初見はドキドキした。2回目以降は主人公2人以外の人生も興味を持ってより深く読める。
    JUJUの春雪を聴きながら年1回は読みたい本。

    0
    2021年02月21日
  • 僕のなかの壊れていない部分

    Posted by ブクログ

    普段生活するうえでは自覚することのないような、人としての根本的な部分を抉りだされて向き合わされるような小説だった。

    主人公は偏屈だけれど、共感できるところもある。

    何度も読み返したくなるような言葉達が詰まった作品。 

    0
    2021年02月18日
  • 一億円のさようなら

    Posted by ブクログ

    NHKBSのドラマでやってましたが見損ねたので、小説のほうで。福岡と金沢、少々土地勘があるので入り込めました。面白かったのは間違いないのですが、最後はもう少しノーマルに、しんみりと元の鞘に戻ってほしかったなって。これ個人的な希望、好みとして。なんか皆さん濃いキャラクター、そして濃い人生ですよね。やっぱ、お金と女性は怖ぁ。両方とも縁がありませんが。

    0
    2021年02月10日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    これから読む方、
    必ず解説まで読んでください。

    喪失を知るすべての人へ捧げるレクイエム
    と書かれていたが、
    私自身がこれまで感じた喪失とは少し違ったものではあった。
    ただ、大事なことを気づかせてくれるようなテーマが盛り込まれていたことは間違いない。
    自分の向いていた方向を考え直すような作品だと感じた。

    本文は終始サクサクと読みやすかったのに
    解説まで読んで、こんなに考えられた内容だったのか、と頭がぐるぐるした。

    0
    2021年01月29日
  • 私という運命について

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    主人公にどっぷりはまって感情移入してしまう私には、ものすごく感動した作品でした。「選ばなかった未来なんかどこにもない」という一説は、「あの時ああしとけば良かった」と思うことが多い自分には、痛かった。
    それにしても最後の最後、本当に悲しかった。

    0
    2021年01月24日
  • 一億円のさようなら

    Posted by ブクログ

    有り得なさそうで有り得そう、でもそれすら有り得なさそうというようないかにも現実味離れたお話だという印象があります。
    1億貰った鉄平さんの使い方に心の広さを感じました。


    PS BSTVで若い頃の鉄平さんを演じたSixTONES 松村北斗くんすごくかっこよかったです( ⸝•ᴗ•⸝)♡

    0
    2020年12月05日
  • 光のない海

    Posted by ブクログ

    またとんでもない白石一文作品に出会ってしまった…

    中堅建材会社社長の高梨修一郎の50年間を辿る。登場人物もりもり群像劇パターンで、とんでもエピソードもりもりパターン。
    不倫はもはやデフォルトで、粉飾決算、猟奇殺人、失踪、焼身自殺、刃傷沙汰、性的虐待まで出てきて収集つかなくなると思いきや現実感は失わない。スピリチュアルな所は置いておいて。
    それは現存する苦しみだから。

    「孤独」を書いた作品だけど、とにかく愛がすごいなと思った。愛というか、縁?運命的なつながり。
    肉親を皆失い、妻に裏切られ息子も失い、社長職も退き、生涯で唯一愛した人をも喪ったことに気づく。
    人が抱え持つ絶対的な孤独は消して埋め

    0
    2020年07月05日
  • 僕のなかの壊れていない部分

    Posted by ブクログ

    りかに買ってもらった本。

    主人公の高慢さと自己中心的な態度に辟易とするが、それが彼における自己なのであり、こちらからの見方は一義的なものでしかないということを気付かされる。死生観や他人との関わり方など、興味深い内容が多く再読したい作品である。

    0
    2020年05月06日
  • 私という運命について

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    とにかく最初から惹き込まれた。
    亜紀と自分が重なる部分もあったりして続きが気になってどんどん読み進めた。
    最後の章を読んでいる時、ずーっとザワザワしてて、、やっぱりって思って、、涙が止まらなかった。
    そうなる気はしてたけど、、そうならないで欲しかった。
    でも好きです。
    人に薦めたくなる本です。

    0
    2020年03月27日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ここは私たちのいない場所
    後書きまで読んで、この物語が分かった気がしました。フッと湧いたように仕事を無くして、それ以後、何か中途で止まったままで何処へ向かうのか?どう決めようか何も思いが浮かんでこなかった。
    これまで仕事が第一優先として生きてきた。ずっと立ち止まらせてきた人生を見つめ直して、自分の為の新しい一歩を何方へ向けて踏み出そうか、ずっと持ち合わせていなかった選択権をどう使おうかと逡巡しているような印象を読んでいてずっと感じていました。
    最愛の者であっても違っても、見知った誰かを喪失したその時、なにか自身を振り返る瞬間があって、それが起因にこれまで観ていた景色の色あいが少しずつ変化して行

    0
    2020年01月13日
  • どれくらいの愛情

    Posted by ブクログ

    -20年後の私へ-
    この作品は白石先生らしい福岡を舞台に社会的に自立した離婚歴のある女性の物語。
    40歳を目の前に迎えて、今後このまま独りで人生を送っていくのか、それともある種の妥協の言い訳を自分に言い聞かせながらでも伴侶を得て世間一般的に普通らしい人生を送るのか…そんな分岐点に立って、これまで気づいていなかった愛情に気づく…ほんと白石先生らしい展開の物語でした。100頁程の短い物語なのでそんな感動すると言うほどのものではありません。彼らしさを感じられる作品として受け止めれば良いかと思います。

    -たとえ真実を知っても彼は-
    これはとても面白かったです!
    作家と編集者という戦争を共に戦うような

    0
    2019年08月30日
  • 愛なんて嘘(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    夜を想う人
    孤独の先の先とはどんな場所なんだろうか…
    一見して分かるようなおかしな所はない。けれど本当は誰にも理解できない寂しさが自分自身を覆っていることを明確に感じ取っている。それは自分だけにしか分からない不治の病みたいなもの。ずっとずっと共生してきた分身…自分はとっくに壊れていることを知っているのに、別れのその時がくるまで自分を騙して生きてきた。でもね、最期は一人でいく…
    二人のプール
    出逢ったその瞬間に全ての運命を理解してしまうような話。白石先生のデビュー作「一瞬の光」に通じるような出逢った刹那、お互いの小指を結ぶ赤い糸が見えてしまったような運命の人。そんな人本当にいるのか?実は僕はいる

    0
    2019年06月13日
  • 彼が通る不思議なコースを私も

    Posted by ブクログ

    白石先生特有のちょっとファンタジーっぽい物語かなって読み進めてたら、295頁で打ちのめされてしまった…
    「人間が生き延びるために一番必要なこと」
    この命題に対する回答に驚きを禁じ得なかった。まさしくその通りだと感じたのだ。そしてそこに白石一史の芯を見たような気がした。ますます白石一文先生が好きになった作品になりました。

    0
    2019年04月24日