白石一文のレビュー一覧
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ネタバレ主人公の浩介が、2人の女性の間で揺れる話。
…と言ってしまえばそれまでだけど、村上春樹の「ノルウェーの森」だって言ってみればそういう話ですね。
ノルウェーの森ではワタナベは最後にみどりを選ぶけど、この小説では最後にどちらを選んでも良いと思いながら読んだ。
超脇役で出てくる「柳原くん」を主人公にしても素晴らしい小説が書けるのではないかと思った。
肉体関係を超えた男女の愛情っていうかつながり(?)の物語なのかなぁ…。「心に龍を散りばめて」でも、最後に結ばれる2人はずっと性を超えた結びつきがあったように思う。
でも肉体の繋がりの深さ、その大切さも描かれている。
あー、深い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごい小説だった。
自分とは何か、何のために生きているのか、世の中の真実はどこにあるのか、何を信じればいいのか。
もっとも繰り返し問われるのは経済格差の問題。
小説の最後に、「胸に深々と突き刺さる矢」の正体が分かる。
でも、もしそうなら、私はその矢を抜くことはできないと思った。
その矢にとらわれることなく、「自分」という存在をあるがままに受け入れるのは難しい。
人は誰でも、過去にとらわれたり未来を想い描いたりするからだ。
そうでないと生きてはいけないと思う。
小説を通して、世界の真実を問うているのか、一人の人間の真実を問うているのか、運命の何たるかを問うているのか、愛の何たるかを問うているの -
Posted by ブクログ
ネタバレ運命に翻弄された男の、深い深い孤独を描いた物語。
主人公の修一郎は、家族を失って孤独ながらも、人との縁に恵まれ中堅会社の社長にまで上りつめる。しかし彼の心は癒えることはない。社長になったのも自分の意思でもなく、、「運命に縛りつけられている感じ」。小説中、2、3度しか出てこないが「命の支え」というのがかなり大きなキーワードだと思う。彼が孤独なのは「命の支え」が何もないからだ。とりあえず自分に託された「会社」を守るために一生けんめいに努めてきたが、それさえもなくなると…?
少し前に平野啓一郎の作品「空白を満たしなさい」で、人がどんな瞬間に自死を選ぶのか考えさせられたが、それとも通ずるものがあった。 -
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またとんでもない白石一文作品に出会ってしまった…
中堅建材会社社長の高梨修一郎の50年間を辿る。登場人物もりもり群像劇パターンで、とんでもエピソードもりもりパターン。
不倫はもはやデフォルトで、粉飾決算、猟奇殺人、失踪、焼身自殺、刃傷沙汰、性的虐待まで出てきて収集つかなくなると思いきや現実感は失わない。スピリチュアルな所は置いておいて。
それは現存する苦しみだから。
「孤独」を書いた作品だけど、とにかく愛がすごいなと思った。愛というか、縁?運命的なつながり。
肉親を皆失い、妻に裏切られ息子も失い、社長職も退き、生涯で唯一愛した人をも喪ったことに気づく。
人が抱え持つ絶対的な孤独は消して埋め -
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ここは私たちのいない場所
後書きまで読んで、この物語が分かった気がしました。フッと湧いたように仕事を無くして、それ以後、何か中途で止まったままで何処へ向かうのか?どう決めようか何も思いが浮かんでこなかった。
これまで仕事が第一優先として生きてきた。ずっと立ち止まらせてきた人生を見つめ直して、自分の為の新しい一歩を何方へ向けて踏み出そうか、ずっと持ち合わせていなかった選択権をどう使おうかと逡巡しているような印象を読んでいてずっと感じていました。
最愛の者であっても違っても、見知った誰かを喪失したその時、なにか自身を振り返る瞬間があって、それが起因にこれまで観ていた景色の色あいが少しずつ変化して行 -
Posted by ブクログ
-20年後の私へ-
この作品は白石先生らしい福岡を舞台に社会的に自立した離婚歴のある女性の物語。
40歳を目の前に迎えて、今後このまま独りで人生を送っていくのか、それともある種の妥協の言い訳を自分に言い聞かせながらでも伴侶を得て世間一般的に普通らしい人生を送るのか…そんな分岐点に立って、これまで気づいていなかった愛情に気づく…ほんと白石先生らしい展開の物語でした。100頁程の短い物語なのでそんな感動すると言うほどのものではありません。彼らしさを感じられる作品として受け止めれば良いかと思います。
-たとえ真実を知っても彼は-
これはとても面白かったです!
作家と編集者という戦争を共に戦うような -
Posted by ブクログ
夜を想う人
孤独の先の先とはどんな場所なんだろうか…
一見して分かるようなおかしな所はない。けれど本当は誰にも理解できない寂しさが自分自身を覆っていることを明確に感じ取っている。それは自分だけにしか分からない不治の病みたいなもの。ずっとずっと共生してきた分身…自分はとっくに壊れていることを知っているのに、別れのその時がくるまで自分を騙して生きてきた。でもね、最期は一人でいく…
二人のプール
出逢ったその瞬間に全ての運命を理解してしまうような話。白石先生のデビュー作「一瞬の光」に通じるような出逢った刹那、お互いの小指を結ぶ赤い糸が見えてしまったような運命の人。そんな人本当にいるのか?実は僕はいる