白石一文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作者の気合が帯に現れていたけれど、ほんとうに面白い。ストーリーも設定もたぶんかなり細かく設定されていて、ふとした伏線が後半にあ、という感じで出てきたりして、もう一度読み返したくなる。
インフルエンザ罹患を感じたある日、主人公鉄平の人生は一変する。
妻、夏代の大きな秘密と、それを自分が20年以上も隠されていたという事実に鉄平は怒り、そしてそれをきっかけに子供たち、会社にも暗雲が立ち込める。芋づる式に明かされる事実に愕然としつつ対処しながら、冷静な自分の一面にも改めて触れ、逃げるように家を出るが…
リアルな描写で主人公の行動や心情に共感しやすくい。登場人物が少しずつダークさや弱さを抱えているのを、削ぎ落とされた文章とエピソードで語られるので、そこも読みどころだと思う。削ぎ落とされすぎていて、掴みづらい部分は他の方のレビューにもあるとおりだが、何度か読み返してもやはり面白いのは、緻密な文章構成の為せる技かなと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとっても不思議な構成の長編小説。
人によって、場合によって”時間は伸びたり縮んだりする”。ということが、読後に「なるほどー!」と腑に落ちる感じです。
一日がすごく長く感じたり、短く感じたり、一瞬で目覚めたと思ったのに「もう朝!?」と思ったり、たっぷり寝たと思ったのに1時間だったり。誰にでも経験があると思う。
「学校」という場所では、どんな子供も学齢に合わせて一律に、同じことを同じようにさせようとするけれど、一人一人「自分の時間」を生きている子供たちにとって、特に発達障害を抱える子供たちにとっては、それは苦痛でしかないし、そもそもついていけないだろう。それは私も実感としてわかる。
小説では、教職とは関係のないキャリアウーマンの「霧子」が小学校の教員の林太郎に出会い、林太郎の特殊な能力に気づき、子供の虐待や発達障害の問題にも興味を抱くようになっていく。しかしそれはあくまでも小説の中の「もう一つの流れ」で、中心はやっぱり「林太郎と霧子の間にあるものは果たして”愛”なのか?」ということが、読者にとっても中心的命題かなーと思った。林太郎はその特殊な能力で、「この女性を見守らないと、不幸な死が迫っている」と感じて結婚したのだ。霧子はそれに気づいたとき、やはり自分たちは愛しあって結婚したといえるのか?と深く思い悩む。
最後にそれが明らかに・・・・なるような、ならないような。
白石一文らしい、「運命」とは何か、人には決まった「運命」があるのか、考えさせられる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表題作を含む、5つの短編が入っています。
表題作「不自由な心」は中編と言ってもいいくらいの長さかな。
どれもこれも、浮気男の話です。
しかも浮気をあんまり悪いことと思っておらず、「まぁ誰でもこの程度のことはやってる」みたいな男たち。
最後の「不自由な心」は、主人公の男が、自分も浮気ばっかりしてるくせに、妹の夫が他の女とデキて、離婚しようとするのを責める。
心が離れているのに、義務感で一緒にいるのが大人の男のすることなのか?
何もかも捨てて、本当に好きな女のもとに行こうと思うのは世間知らずなバカ男なのか?
…っていう話なのかなぁと思ったけど、もうちょっと深い物語のようだ。
主人公の男の妻はかつて、夫の浮気がもとで半狂乱になり(?)自ら命を絶つような行動をとった。
結局死に切れず、重い後遺症を背負うことになる。
人は、自分の死よりも、愛する人を失うことのほうが怖いはずだ。
愛を失うのが怖くて、自分の命を絶つことで相手の中に自分を永遠に生きさせようとする行為は、たとえ自分の浮気が原因でそんなことになったとしても、彼にはどうしても許せない行為に思えた。
愛と死を描く白石一文の他の作品にも通じる、なかなか深いストーリーだと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ白石一文さんにはよくある題材だと思うけど、30代半ばの女性の、恋愛・結婚・妊娠(不妊治療)を中心にすえて、生きる意味を問いかける長編。
妊娠を強く望む主人公の美砂子が、次第に夫とすれちがっていく。
うーん、よくある話…と思ったら、その裏にすごく複雑な人間関係や夫の思惑、死んだ父親の執念(?)みたいなものが絡んでいて、推理小説ぽくなっていく。
途中で推理小説か!?と思うけどもちろん違う。
白石一文さんの小説では、男に利用されようと何をされようと、けっこう女性が力強い存在として描かれることが多いように思うけど、この小説でも美砂子はかなり酷い目に遭いながらも相当にしたたかでたくましい。
そしてその根拠は、やはり女性というものが、「子どもを産むことができる」というところにある。
途中、回想の中で最初の婚約者と別れたり、初めての子どもを流産したりするシーンはかなり泣けた。
そして自分を裏切っていた夫と、最終的にどうなるのかがすごく気になったけど、彼女の「女としての生」は、最後にはもうそんなことを超越してしまう。
これから子どもを産む女性には、ある意味で勇気が持てる小説だと思った。 -
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ネタバレ浮気→離婚→起業→震災で廃業 というなかなか波乱の人生を経て故郷に戻ってきた主人公。
15年ぶりに従妹と過ごしつつ、自分の来し方を振り返る。
白石一文作品を読んだらだいたい思うことだけど、生き方と性とは密接に結びついておきながら、愛と結婚生活と性は結びついていなかったりする。
だからいけないと分かっていながら愛欲に溺れて家庭崩壊させたり…(まぁ普通はしないけど)、ほかならぬ人と出会っておきながら結婚には至らなかったりする。
…で、どうなっていくのか?と思ったら、物語は意外な方向へ。
この平穏な日本の社会が永遠ではないと思えば、誰もが本能に忠実に生きるかも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の浩介が、2人の女性の間で揺れる話。
…と言ってしまえばそれまでだけど、村上春樹の「ノルウェーの森」だって言ってみればそういう話ですね。
ノルウェーの森ではワタナベは最後にみどりを選ぶけど、この小説では最後にどちらを選んでも良いと思いながら読んだ。
超脇役で出てくる「柳原くん」を主人公にしても素晴らしい小説が書けるのではないかと思った。
肉体関係を超えた男女の愛情っていうかつながり(?)の物語なのかなぁ…。「心に龍を散りばめて」でも、最後に結ばれる2人はずっと性を超えた結びつきがあったように思う。
でも肉体の繋がりの深さ、その大切さも描かれている。
あー、深い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごい小説だった。
自分とは何か、何のために生きているのか、世の中の真実はどこにあるのか、何を信じればいいのか。
もっとも繰り返し問われるのは経済格差の問題。
小説の最後に、「胸に深々と突き刺さる矢」の正体が分かる。
でも、もしそうなら、私はその矢を抜くことはできないと思った。
その矢にとらわれることなく、「自分」という存在をあるがままに受け入れるのは難しい。
人は誰でも、過去にとらわれたり未来を想い描いたりするからだ。
そうでないと生きてはいけないと思う。
小説を通して、世界の真実を問うているのか、一人の人間の真実を問うているのか、運命の何たるかを問うているのか、愛の何たるかを問うているのかわからなくなってくるけど、多分すべてを読者に問いかけているのだろう。
内容盛りだくさんで非常に考えさせられるし、ストーリー展開自体も面白くて最後まで引き込まれる小説でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ運命に翻弄された男の、深い深い孤独を描いた物語。
主人公の修一郎は、家族を失って孤独ながらも、人との縁に恵まれ中堅会社の社長にまで上りつめる。しかし彼の心は癒えることはない。社長になったのも自分の意思でもなく、、「運命に縛りつけられている感じ」。小説中、2、3度しか出てこないが「命の支え」というのがかなり大きなキーワードだと思う。彼が孤独なのは「命の支え」が何もないからだ。とりあえず自分に託された「会社」を守るために一生けんめいに努めてきたが、それさえもなくなると…?
少し前に平野啓一郎の作品「空白を満たしなさい」で、人がどんな瞬間に自死を選ぶのか考えさせられたが、それとも通ずるものがあった。「命の支え」がないと、人は簡単に、ちょっとしたきっかけで死んでしまう。反対に、この話の中に出てくる”堀越夫妻”のように、およそ考えつく限りの不幸が重なり、絶望の淵に立たされ、自分(たち)には生きる価値などないとさえ思っても、小さな「命の支え」がそばにあれば、生きることができる。というか、どんなに死のうと思っても自死の扉は開いてくれない。
最後のシーン。彼が振り返ると、「光のない海」が見える。それは現実には海ではないのだが、彼にとってはまったく光の見出せない海ということか。そこからやってくる女性。彼女が「いのちの支え」になるのか?
なんだかとても悲しい小説でした。