白石一文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
以前聞いた、出版社の編集者の話によると
少年マンガの主人公は「こんなヤツになりたい!」
読者が見上げるような立ち位置のキャラが多かったそうだ
青年マンガの主人公は「こいつは、俺だ」
読者に共感を覚えさせるような親近感のあるキャラ
その喩えでいうと、この小説の主人公は
「中年男性の憧れと親近感を一手に引き受けるキャラ」に設定されてる気がする
ブースターや燃料タンクを切り離して成層圏を飛び出した宇宙ロケットみたいに、家族や仕事から離脱出来たらどんな人生が開けるのだろうか
という、ある種のファンタジーを満足させるような、そんなお話
あと個人的な感想として、食べ物の描写がやたら美味そうな小説でした。石川県行ってみたくなります。
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Posted by ブクログ
久々に上下巻にも及ぶ大作を読んだ。
でも「長い」というイメージはない。
この本は作者にとっての「哲学」なんだと思った。
編集者という職業柄をうまく使い、
時事問題・歴史問題・政治問題を絡ませながら
最後に「必然」とは何かという哲学に導いている。
主人公のカワバタをこういった哲学の道に引きずり込んだのは
生後3ヵ月でこの世を去ったユキヒコの死に他ならない。
その後の彼にとって過去や未来は存在しないにも等しいし、
結婚関係についても妻に愛人がいるとしっても取り乱すこともなく
第三者的立場から物事を見ているような感じ方だ。
【ココメモポイント】
・神が宇宙知性であり僕たち一人一人はその微小な部分だとするならば、巨人は
一体何を思惟しているのであろうか?また巨人は一体何を知りたくて思惟しているのであろうか?
P.47
・二度と会うことのない人は、僕たちにとって「もうこの世にいない」との同じだ。
P.102
・子育てなんて一時的なものです。妻というのは、一緒に年老いていく相手です。
だが、彼女はそういう対象ではまったくないですね。
P.150
・体験や経験が人生の本体だとすれば、人間はなぜそういう本体の内容はどんどん忘れ、
折々で頭の中に詰め込んだ瑣末な知識はしっかりと憶えていられるのだろうか。
P.171
・他人のことを幸福だと思うので「あなたは客観的事実として幸福なのですから、
そのこと納得し決して不平不満を述べないようにしてください」と
押し付けてるのと同じだ。その本人の幸福とは何一つ関わりなんてないんだよ。
P.264
・僕たちは今の中にしか生きられない。歴史の中に僕たちはもうどこにもいないのだ。
過去の中にもこれからの過去の中にも僕たちはどこにもいない。
今、この瞬間の中にしかいない。この瞬間だけが僕たちなのだ。
時間に欺かれてはならない。時間に身を委ねたり、時間を基軸として計画を練ったりしてはならない。
そういう過ちを犯した瞬間、僕たちは未然のものとなり、永遠に自らの必然から遠ざけられてしまう。
P.317 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表題作を含む4つの短編(中編?)が入っています。
どれもテーマは愛かな?
「20年後の私へ」「ダーウィンの法則」「どれくらいの愛情」の3編は、真実の愛を追究したり、自分の気持ち(愛)に正直に生きようとしたりする人々を描いている。
「20年後の私へ」はもう若くはない、仕事を持つ女性が、本当はキャリアウーマンになりたかったわけじゃないのにだんだんと仕事の責任が重くなり、人がうらやむような素敵な男性にプロポーズされ、そっちに逃げることもできるけど…という展開で、私にはなかなか共感できるものがありました。19歳のときに、20年後の自分宛に書いた手紙の内容はなかなか泣けました。
「どれくらいの愛情」は色んな障害を乗り越えて真実の愛を見つけていく主人公の正平に文字通り惚れました。柄にもなく、“真実の愛ってこういうものかなー”と思ったりしてしまいました。
でもひねくれ者の私の心に一番ぐっっっっと来たのが、やっぱり愛のなんたるかがよく分からなくなってしまう「たとえ真実を知っても彼は」という作品でした。
真実の愛を貫く3つの作品の中にこれが1つ入っているのが効いてると思います。 -
Posted by ブクログ
人生でここまで色々なことが起こると、一つ一つの出来事を後から解釈したり、そこから運命を考えてみたりできそう。自分はここまで考えたことはないし、そんな起伏の多い人生は送れないだろうから考えないだろう。
運命を受け入れるというか、一つ一つの出来事を解釈して受け止める、納得するような姿勢というのは生きていく上で大事だと思った。結婚や出産、病気、女性活用など色々な現実を解釈する、選択しなかった運命はなく、選択したことを納得する。運命って言葉には何か受け身でどうしようもないニュアンスがあるが、それをポジティブに解釈することが、後に続いていくのだろう。
逆に、後に東電に入る若者の彼は、人生や社会を舐めすぎだと思うし、視野が狭すぎ?この子は運命に囚われすぎ、依存しすぎで納得しすぎ。結婚する女の子も、これは流石に不安に思わない?運命をネガティブに、パッシブに捉えすぎでしょう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わったあと、「ここは私たちのいない場所」というタイトルの意味について深く考えた。白石一文作品って、タイトルが素敵だけど、これもタイトルがずっと心に残って、ずっと考えさせられる感じ。
主人公の存実は幼いころに妹を亡くし、自身は妻も子供も持たないと決めている、大手企業の重役。ひょんなことから会社を辞めざるをえなくなるところから物語が始まる。そもそも簡単に会社を辞めてしまえるのも、妻子がいないから。彼はあくまでも家庭なんて持たない方が良い、という姿勢を貫いている。会社を辞めて日々何もすることがなくなっても、独り身がさみしいという感じはない。
しかし、大学時代の友人ががんで急逝したり、会社を辞める原因を作った元部下と、浮気相手の女性との関係を目の当たりにしたり、出張先の海外で大きな事故に遭った友人の話を聞いたりするうちに、彼の価値観が変わっていく・・・というのが普通の小説なんだろうけど、この主人公の場合、まったく変わらない。不思議なのが、主人公の価値観は小説中では変わっていないはずなのに、読者の方の価値観が揺さぶられ、彼の価値観は変わっていないみたいだけど、果たして本当にそうなの?みたいな気分になってくることだ。
彼はまったく変わっていないように見えて、いくつかの体験を通してやっぱり変わっているのではないか、この経験をする前と後では、違う人間になっているのではないか…。ここは私たちのいない場所?
それから、「子供のいる世界」と「子供のいない世界」という区切りも出てきて、とても興味深く考えた。私は今「子供のいる世界」にどっぷりと漬かって生きている。子供を生まなければ、「子供のいない世界」で朝から晩まで働いて、平日の昼間に公園の滑り台の上から青空を見上げたり、飛行機雲を見つけて喜ぶこともなかった。確かに自分にも子供だった時代があるのに、それをすっかり忘れて。
私たちは皆、同じ世界に生きているのに、そこかしこに「私のいない場所」「私とはまったく無縁の場所」がいくつも存在している。いないからそのことに気づきもしないのだけれど。 -
Posted by ブクログ
これは・・・。
また一気に読み切ってしまう白石一文作品。
こんなに長くて重くて登場人物がたくさん出てきて意味がわからないのに、一晩二晩で読み切ってしまうのは何故なんだろう。
白石一文読んでる〜〜〜〜〜ってワクワクしながらもうページすっ飛ばす勢いで読んだ。ただ今回のラストはなんだか完全に煙に巻かれたよね。
残りページ数少ないけど終わる気配ないよなと思ってはいたけれど。
まとめ・・・なかった!って感じ。堂々とまとめなかったな。
ちょっと笑ってしまうくらい突拍子ないSF描写が多めで、白石一文にしては珍しいかなという印象。
突然体の一部がプラスチック化する、主人公で作家の姫野信昌。数年前に「死んだ」妻の小雪。
いくつかの不思議な出来事をきっかけに、彼は自分の記憶の不確かさに気づき、本当の記憶を求めて旅をする。
やや謎解きミステリの様相。
記憶を捻じ曲げて自らのアイデンティティを揺るがしてまで、彼が忘れなければならなかったこと。とは。
彼にとっての「小説家」とは。
記憶と、事実。
”たとえ一つの”不動の真実”が、その場その瞬間に存在したとしても、それを眺めている人々の記憶は、事実が起きた直後から各者各様に観察され理解されて一人ひとりの”憶えたいように”憶えられていく。”
過去はそれぞれの記憶の中にしか存在しない。それぞれの記憶の中に、普遍的な事実など存在しない。
語られない歴史が存在しないことと同じかな少しフェーズが違うかな。
自分が事実だと思っている過去が揺らぐと、こんなにアイデンティティが揺さぶられるのだなと考えさせられた。
自らのアイデンティティとは。自分とは。世界とは。真実とは。記憶とは。
それにしても、白石一文の小説によく出てくる、主人公の男性に付き従って色々と面倒を見てくれるのに、けっして男女の関係にはならない女性たち、なんなんだろう。
現実感なさすぎてそこがいいのだけど。男性の夢かしら。
私の中のフェミニストの部分はたまに氏の小説に対して強い嫌悪感を抱くことがあるのだけど、それでも私はなぜだか氏の小説がとても好きなんだなあ。
・はいはいバブリーバブリー。
・ローカルというか地域ネタがくどいくらい細かくて好きです。やたらと日本全国に住むよね。旅するよね。私は白石一文氏と同じく福岡出身なので、福岡ネタ好き。あとは東京の今住んでるとこの近くも出てきてなんか変に親近感。
・近親相姦ネタ本当に好きですよね。私も好きです。
・作家ネタ編集者ネタも好きですよね。私も好きです。
・突然無理やりマジで唐突に反原発論ねじ込みますよね。好きです。 -
Posted by ブクログ
生々しい虐待や社内政治を通じた孤独と愛の関係性について語っている。
恵まれた明るい環境で育ち豊富な愛を与える瑠衣と、凄惨極まりなくぎりぎりを生ていても微かな愛を与えてくれる香折、どちらが上かなんてことは決められようがない。
愛は交換理論では語りきれない。
自分を愛さない限り人を愛することはできない。しかし誰かを自分以上に愛した時、人は初めて、本当に自分を愛することができる。
本当に愛し合っていればセックスは一瞬一瞬の死の様であり、心中して嫌なことを全て無にして毎回光り輝く新たな自分に生まれ変わることができる。
肉体関係を持たず良き理解者として接してきた浩介が最後に香折に対し、兄弟や親を超えた愛情を認識した。
夢にて暗闇の中で香折を見つけ出し、過去を象徴する小脇の布団を燃やすことにより、生まれ変わったことを示唆することで、
人生を捧げた仕事を失い自身の存在価値への疑い、孤独を感じる中、浩介も香折を通じて本当の自分を愛したいと考える様になったのだろう。