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「どうして自分はあのことを忘れることができないんだろう?」
剥きだしの叫ぶが響く、著者の初期傑作。
美しい恋人・枝里子をサプライズで京都に誘った。
それは、昔の男が住む京都で枝里子の反応を見ようという悪意だった――。
東大卒出版社勤務、驚異的な記憶力を持つ「僕」は、同時に3人の女性と関係を持ちながら、誰とも深いつながりを結ぼうとしない。
その「理屈っぽく嫌味な」言動の奥にあるのは、絶望なのか渇望なのか。
彼の特異な過去を知った枝里子は。
「自分の人生にとって本質的なことからは決して逃れられない」
切実な言葉たちが読む者の胸を貫いてロングセラーとなった傑作が文春文庫に登場。
解説・窪美澄
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Posted by ブクログ
本を読んで、一人の人間をこれほどまでに深く描いて、知るほどにその人としての魅力を感じられる作品はそう多くない思った。物語の中盤までは、周辺人物との関わりの中で主人公のさまざまな側面が点のように描かれるから、相手に合わせて異なる顔を見せる人間の日常のようで、言動や人への向き合い方がチグハグなように感じるけど、物語が進んで主人公が自分自身と深く向き合うフェーズに入るにつれて、読者の主人公に対する解像度が上がって、「点」が次第に「線」となり、「面」となり、最後には一つの「球」になっていくような感覚が味わえてすごく面白かった。
その過程で主人公の人柄を理解していくと、状況に応じた主人公の言動に一本の筋が通っていることに気づかされて、一貫性があるなって納得できる瞬間が何度もあって読み進めるほどに主人公のことが魅力的に感じられた。
個人的に、主人公の周りの人々に対する態度がリアルに描かれていた点が良かった。他の本なら「いいこと言ったな」と共感しそうな登場人物のセリフにも、主人公はどこか鬱陶しさを感じてさらりと受け流すから、そのたびに、読み手としても妙な爽快感を覚えた。主人公の感情がそのまま伝わってくるような清々しい読書体験。
男性的思考を丁寧な心情描写で描いた作品
Posted by ブクログ
悲しい人間。感情を押し殺し、他人の思想や知識で自分を納得させて、人を冷めた目で見て、常に孤独や絶望を感じながらも今を生きている。
それでも無条件に子供に優しく、自分の時間を投資するところもあり、彼なりの愛はどこで境界づいているのだろう、と。
2歳の頃のエピソードも心打たれた。限界まで追い詰められるにはあまりにも小さすぎた、その衝撃ゆえの記憶力、知識量なのだ、といった流れにもすごく納得感があった。
ラストの衝撃もなかなかだが、彼以外の人の絶望さも丁寧に描いていて、とても良かった。
性的描写は突如として出てきて多めなのでそこは覚悟が必要。
110/140
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