白石一文のレビュー一覧
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またとんでもない白石一文作品に出会ってしまった…
中堅建材会社社長の高梨修一郎の50年間を辿る。登場人物もりもり群像劇パターンで、とんでもエピソードもりもりパターン。
不倫はもはやデフォルトで、粉飾決算、猟奇殺人、失踪、焼身自殺、刃傷沙汰、性的虐待まで出てきて収集つかなくなると思いきや現実感は失わない。スピリチュアルな所は置いておいて。
それは現存する苦しみだから。
「孤独」を書いた作品だけど、とにかく愛がすごいなと思った。愛というか、縁?運命的なつながり。
肉親を皆失い、妻に裏切られ息子も失い、社長職も退き、生涯で唯一愛した人をも喪ったことに気づく。
人が抱え持つ絶対的な孤独は消して埋められない。だからこそ支え合うし、だとしてもひとりひとりはバラバラに過ぎない。
いわゆる男女の愛情だけじゃなくて、あらゆる事や物を通じた縁で、ゆるやかに繋がっていく。
あと白石作品によく出てくるバーのママ的な人出てきた。受付統括の島田富士子。
孤独な経営者のことを公私共に知り尽くしていて適切なアドバイスができる女性。突然バブル期経済小説みたいになるけど、言ってることはすき。
時系列や場面がくるくる入れ替わって少しずつ過去が紐解かれて繋がりあっていく。集中力を途切れさせない書き方は流石だなと思う。結構分厚いのにいつも一気読みしてしまう。 -
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ここは私たちのいない場所
後書きまで読んで、この物語が分かった気がしました。フッと湧いたように仕事を無くして、それ以後、何か中途で止まったままで何処へ向かうのか?どう決めようか何も思いが浮かんでこなかった。
これまで仕事が第一優先として生きてきた。ずっと立ち止まらせてきた人生を見つめ直して、自分の為の新しい一歩を何方へ向けて踏み出そうか、ずっと持ち合わせていなかった選択権をどう使おうかと逡巡しているような印象を読んでいてずっと感じていました。
最愛の者であっても違っても、見知った誰かを喪失したその時、なにか自身を振り返る瞬間があって、それが起因にこれまで観ていた景色の色あいが少しずつ変化して行くような…その変化を感じていた。
ちょっとした気まぐれから起こった気持ちの変化は、それまで自分を縛り付けてきたロープが自然と緩み解けてしまっていた。まだ自分では理解出来ていないかもしれないが、心の傷の再生が始まっている…そんな気持ちにさせる優しい物語だった。 -
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-20年後の私へ-
この作品は白石先生らしい福岡を舞台に社会的に自立した離婚歴のある女性の物語。
40歳を目の前に迎えて、今後このまま独りで人生を送っていくのか、それともある種の妥協の言い訳を自分に言い聞かせながらでも伴侶を得て世間一般的に普通らしい人生を送るのか…そんな分岐点に立って、これまで気づいていなかった愛情に気づく…ほんと白石先生らしい展開の物語でした。100頁程の短い物語なのでそんな感動すると言うほどのものではありません。彼らしさを感じられる作品として受け止めれば良いかと思います。
-たとえ真実を知っても彼は-
これはとても面白かったです!
作家と編集者という戦争を共に戦うような仕事を越えた濃密な関係性を構築する二人と双方の妻…それぞれ夫婦としての評判は高く、一方は親子共に仲睦まじく幸せな家庭だった。作家が急逝して明るみに出た真実、ドラスティックにうねりを上げて崩壊する家族関係とどう向き合い、どう折り合いをつけるのか?そこが読み処でドキドキしながら読ませてもらった。結果、作家の残した言葉通りであったが、それまでのあらましと逡巡…結論までの持っていきかたに白石先生らしさを感じた。
-ダーウィンの法則-
白石先生による夫婦間におけるセックスレスに関する考察が非常に興味深くて、そこへ結婚という夫婦間に横たわる倫理や節操という束縛を絡めて、すでに冷えてしまっている妻や家族との生活を守る人生と結婚後に出会った人であっても息の合う人と一緒の人生と、本当に幸せなのはどちらなのか?
「運命のヒト」…白石一文先生が描く物語には常にそのテーマが潜んでいる。そんな運命のヒトと出逢ってしまった男女が見せる葛藤や苦悩のような感情を通して「今を生きている自分は」一体何をどう感じて生きているのか?諦観や妥協じゃなく自分の自然な欲求に正直に生きるって事がどれほど大事なことかを伝えていると感じます。僕が白石一文先生が好きな理由がそこだと思う。これはとても良い作品でした。
-どれくらいの愛情-
この作品では作者の言いたいことの全てを「先生」が担っていて、他者を愛するという行為、他者を思うという行為とはどういうものであるのか?…それを喝破していたように感じました。二人一緒になりたいだけなのに目の前に立ちはだかる障害の数々を乗り越えて「愛するということの意味」に辿り着く…白石先生の頭の中にうずまく想いを叩きつけたような言葉だった。とてもいい読後感です。あとがきも素晴らしかったです。この本は、おススメです。
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夜を想う人
孤独の先の先とはどんな場所なんだろうか…
一見して分かるようなおかしな所はない。けれど本当は誰にも理解できない寂しさが自分自身を覆っていることを明確に感じ取っている。それは自分だけにしか分からない不治の病みたいなもの。ずっとずっと共生してきた分身…自分はとっくに壊れていることを知っているのに、別れのその時がくるまで自分を騙して生きてきた。でもね、最期は一人でいく…
二人のプール
出逢ったその瞬間に全ての運命を理解してしまうような話。白石先生のデビュー作「一瞬の光」に通じるような出逢った刹那、お互いの小指を結ぶ赤い糸が見えてしまったような運命の人。そんな人本当にいるのか?実は僕はいると思っている…と言うか僕にもいる。
でも作中の二人のように自分と相手の他は何故か誰も愛せないし興味もない…そんな風に何かが壊れている訳ではないですよ(笑)
五年の結婚生活を経て離婚、そして十数年間に及ぶ何不自由ない別の家族との暮らし…家族にも環境にも恵まれていて、本当はそのまま一生を過ごしても良かった筈なのにね。
興味がない…満足出来ない…愛せない…
この人だけが全てを与えてくれる…不思議な話だけど、羨ましいと感じる。そんなにも大事に思える相手がいて、そんなにも愛せる人に出逢っている事が羨ましい…
川底の二人
日常に支障を来すような特異な性格ではないが、何事からも一歩引いて生きている。夢中になれるようなモノが見つからないと言うか興味が無い…そんな彼女が唯一見つけた居場所は、他者に心を許し切ることのできない自分に似た男だった。唐突に捨てられてから幾数年、普通の人のように生きて暮らしてきた。一見幸せなゴール間近まで辿り着いたが心の奥底に蟠り渦を巻く醒めた思い…
邂逅…再び出会った二人。強い感情を交わすわけではない、二人とも深い深い川の底。光も無いそこで揺ら揺らとたゆたうようにそっと生きていける。この物語は、この人じゃなきゃならない運命の人…それが白石文学…
私のリッチ
白石先生の作品では異色の短編かも…まぁここでも男女の切れそうできれない因縁みたいな話だから短くても白石先生らしいテイストは存分に発揮しているんだけど、ショートショートだからなんか軽さがある。新鮮な印象を受けた。
傷痕
突然の申し入れ…青天の霹靂と言っていいと思う。今この瞬間、平凡でまだ何も持っていない私の目の前に魔法使いが現れて、新しい世界への扉を開いてくれたら、貴方はどうしますか?このプロットは先生の他の作品にも見られますね。何の接点もなかった相手から「今から貴方をお姫様にしてあげる」みたいな誘惑の言葉を嘘偽りない真摯な姿勢で面と向かって提示されたら自分はどうするだろうな?そこに運命的な何かを感じるだろうか?僕は男だから、そんな嘘のようなホントの話を女性がどう感じ、どう考えるのかまるでわからない。ただ運命に身を任せる…それが魅惑的である事は分かる。でも作中の男性はこれまでの人生で幸せを感じた事がなかったのかも知れない。死に体のまま流れに身を任せてきたのかも知れない。それでもまだ生まれ変われると信じて行動に出た。生への執着が残っている事は救いがあって良かった。不安だが彼らの前途を応援したい気になった。
星と泥棒
お互い一目で運命の人だと分かったはずなのに添い遂げることの叶わぬ立ち位置、胸の内を隠したまま過ごして来て、やがてお互い誰かと結婚し子を成している。ある日突然に彼の親友であり、彼女の夫である男が急逝…そこから引き寄せあうように接近した二人。そんな二人の間に肉体関係はなく、あくまでも運命の人であるから収まるべき形に収まったような流れ…もしかして彼を追いやってしまったのではないかと二人には蟠る気持ちもあるが、これからの未来を想う心の方が強い。
大事な誰かと離れてしまった事で自分の気持ちに気付いたり、そして再び出会う事で再認識したり、その相手との相性とか、ノリや間とかがしっくりくるような、ピタリと隙間なく合致するような、そんな存在がもたらす安心や平穏こそが生まれてからずっと探していた運命の人…見つけることも大変だけれど、そんな人と寄り添って生きて行ける環境を手に入れることはもっと大変…後先を考えるよりも二人が一緒にいる事こそが重要なんだろうって思う。白石先生の本はいつも、どの作品もそんなことを考えさせる。だから好きなんだろうと想う。
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著者は、早稲田大学卒業、文芸春秋入社。藤沢周平などの編集者として活躍。父親は直木賞作家の白石一郎。幼い時から本に囲まれ、本を読みまくっていたようだ。小2でドストエフスキー『罪と罰』を呼んだという逸話も。2000年に『一瞬の光』でデビューし、2010年に『ほかならぬ人へ』で直木賞受賞。本作品は24作品目。文芸春秋は結婚直後のパニック障害と、九州にいた父親の癌で退職している。影響を受けた本はカミュの『異邦人』という。村上龍や司馬遼太郎の作品もほとんど読んでいる。村上というと春樹より個人的には、村上龍の作品という。父親は韓国の釜山生まれで著者の祖父は金持ちだったようだ。弟も双子(白石文郎)で作家。巻末解説で下山進は、「白石一文は、エリート編集者で文芸春秋時代は社長候補だった」と書いている。
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思いがけず泣いてしまった・・・
一流企業でバリバリ働く里江子は、体調を崩し、クリニックへ。
そこで、10年ぶりに医師、岳志と再開する。
彼は里江子の友人・聖子の夫であるが、
10年前、聖子の彼氏として紹介された翌日に、
彼は、里江子に「結婚して欲しい」と言ってきた。
あまりにも突拍子もない話に、とまどいつつも、
その場は何とか切り抜けたが、
再開した時、彼は10年前と同じく
「妻と別れるから結婚して欲しい」と言う。
そこまで真剣になるわけは。。。?
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最初に彼が登場した時、
いったい、この岳志という男は、どうゆう人物なのだろう?と、
不審に思ったのだが、
読み進めるうちに、彼の一途さが伝わってくる。
白石一文さんは、大好きな作家で、
今回もまた、私の心を満たしてくれました。
おススメしたい一冊です。 -
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いつもながら、白石作品の中に入り込んでしまった。
人は誰でも知らないまま生きてきたことを持っていると思う。もし、その時に知っていたら生き方は変わっていたのか?と考えてもどうしようもない。だからこそ、主人公は思わず湖に向かって歩いて行ってしまったのか…?
家族が家族として生活する意味や、不幸にして別れ別れになってしまった家族を思う気持ちなど、作品を通じて疑似体験した。
興味深かったのは、犯罪加害者の家族が描かれていたこと。自分ではなく家族が加害者になった時、人は何を考えどう生きるのか…つらく、苦しい気持ちの持って行き場はどこにあるのか?白石さんの思いが堀越夫妻の生き方に現れていて、感動した。 -
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【あらすじ】
東京の半導体メーカーに勤める田宮里江子は、ひょんな事がきっかけで、大学時代の親友の夫・長谷川岳志と10年ぶりに遭遇する。岳志は、親友の恋人でありながら、初対面でいきなりプロポーズしてきた男であった……。直木賞作家のTwitter連載小説として、新聞各紙(讀賣新聞、日本経済新聞)で取り上げられ話題となった恋愛小説。何度も読んで、何度も涙するという読者が続出した。鉄筆文庫の創刊第一作であり、直木賞作家・白石一文の文庫最新作。
【感想】
読み終えてまず思ったのが、主人公にあなたは悪くないよと言ってあげたいと思ったことだった。あなたは岳志を救い切れなかったよ。もう少し早くいろんなことに気付いていればよかったね、と言いたいと思った。この本に出てくる登場人物はいろんな人がいて本当にいろんな生き方をしている。特にわたしの印象に残ったのは、やはり長谷川岳志だ。岳志の生き方、考え方は普通ではない。普通になりたかった。そう本人は言っていた。でも、岳志はわたしと似ているところがある。わたしはそう思った。誰のことも信じられないし、誰のことも心から赦すことができない人間なんだ。というところとか、最も大事なことは、この人が運命の人だと決断することだ。そう決める覚悟を持ったときに、初めてその相手は真実の運命の人になるんだと思う。たった一人、この人とだけ真実の喜びを分かち合うんだ、と決める。そしてそれを万難を排してやり遂げようとする。お互いがそういう覚悟を持ち続けている限り、人生というのは果てしなく豊かになっていくんだと僕は信じている。というところとか、すごく共感できた。だからそう思うと、わたしも普通ではないのかなと思った。でも、ここだけの話、わたしも自分を普通じゃないと感じたことがある。岳志のように普通になりたいと思ったことがある。岳志の心はきっとずっと不自由だったのだ。何かに縛られていたように感じていたのかもしれない。だから、主人公に死んだらどうなるか聞いたのだろう。自分が死んだら、この縛りから解放されるのだろうか。自分自身が死んでもこの縛りからは解放されないのだろうか。岳志はそれが知りたかったのかもしれない。たとえ自分自身が死んでも、自分のことを記憶している人間がいる限り完全に死んだことにはならないんなら、逆に、自分が生きていても、その自分のことを知っている人間が死んでしまえば、自分の一部が死んだことになる。そういうことだろ。これは城山の言葉だけどこの言葉にわたしは思わずギクリとした。岳志はどこかでこの言葉を聞き、自殺を覚悟していたのではないかとわたしは思う。岳志の心に翼があればよかった。岳志の心に、もう少し早く、主人公が翼を付けてあげればよかった。そうしたら自由に羽ばたけたのに。悔やんでも仕方ないけれど、そう思えてならない。学ぶことは多かったけれど、悲しい物語だったなと思った。
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読みやすい文章の中に、生きるとは何か、愛とは何か、という示唆が散りばめられていて、素敵な小説だった。
自分を愛していないと人を愛することはできないが、人を自分以上に愛して初めて本当に自分を愛することができる
というメッセージは心に刺さった。
自分も死にたいと思った時に必ず顔が浮かぶ人がいる。その人のことを思うと、自分の死後その人はどれだけ悲しむだろうかと思うと死ぬことなどできないと思わされる。
もし自分が1人だけだったら自殺など簡単にできてしまう気がするが、私はその人を自分以上に大切にしたいと思えるから自分のことも大切にしようと思うのだ、と本書を読み終えて言語化できた。
『僕のなかの壊れていない部分』も良かったが、哲学書のようで、小説という観点だと個人的に本書の方が好みだ。 -
Posted by ブクログ
一気読みをした。
どんどん展開する状況に必死でついていきながら、最後の最後ではっ?と、予想外の結末。
でも、非常に興味深かった。
心に残る箇所はいくつかあったが、読み終えた時に2か所マーキングしていた。
記録のために残そう。
「大勢の人の命を救うために大事故の現場に駆けつけようとしてて、途中で溺れかけている人を見つけたとしたら、やっぱりその溺れている人を救うしかないからね。大のために小を犠牲にするという間違った考えがいまの教育をめちゃくちゃにしているのは確かなんだからさ。」
「…本当はね、みんなが同じ時期に同じ内容の授業を受けたり、同じ年齢で、同じ試験を受けて選別されたりする必要なんて全然ないんだよ。」
自分を大切に思うことやありのままを愛される経験など、昔読んだ育児書にもあったなあと思い、これはいつの時代でも共通なんだと安心しつつ、もう少し早くこの本を読んでいたらと、この年になってもまだ子育てに後悔の気持ちを持っている。でも、今がもし夢なら、そして実は30年以上前に戻るのだとしたらどうやり直す?と途方もない時間をさかのぼろうとしてみた。そして、しっかりあきらめがついた。 -
Posted by ブクログ
これまでのどの白石作品よりも
ストーリーが流れて心情の描写が豊かで
素敵な作品だった。
特殊能力を持つ主人公の話はあまり得意なのではないのだが、主人公の椿林太郎が持っているとされる未来の予言能力は、特殊なのではなく、
彼なりの理屈が積み重なって創り上げられた力であるような気がした。
普通という括りからはみ出された人に
特別な目ではなく、見捨てることなく
世の中の普通の流れに返してあげるような人間が持つ強さが救えるのは、ほんの一握りなのかもしれないが、多くの人が歩みを止めずに通り過ぎる問題にも解決の道しるべを示してくれる人は必ずいるのだという勇気をもらった。