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カワバタは胃ガンであった。手術の直後から、数年前に死んだ息子が自分をどこかに導こうとする囁きが聞こえ出す。格差社会、DV、売春――思索はどこまでも広がり、深まり、それが死の準備などではなく、新たな生の発見へとつながってゆく。発表されるや各メディアから嵐のような絶賛を浴びた、衝撃の書。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
上巻は時間を掛けて、下巻は一気に読んだ。若くして癌を患って再発の可能性がある中で生きる雑誌編集長の主人公。彼の「生きる」という行為に対する根源的な問いかけに心を揺さぶられる。必然の今を生きることこそが「矢を抜く」ことになるのか。まだ自分の中で消化しきれていない。再読したい。
非常にたくさんのテーマが盛り込まれてるけど、考えていることのすべてをまとめてもらっているかんじ。 まさに、揺さぶられる。 久々の衝撃。 ここから自分の考えを構築していくのが楽しいだろう、きっと。
結局人生に答えなんてない。 ただ一つ分かるのは今の自分の気持ち・考えなのだから、もっと自分に素直に生きよう。そして「今」という時間を大切にしよう。 この本を読み終えてそんなことを思った。
これから自分が搭乗する飛行機が墜落するとわかったとき、 自分だったら、どうするのだろうか。 その行動が意味することがわかっただけでも、 この作品が問いかけてくる内省の言葉はとてつもなく重い。 確かにフィクションではあるけれども、 現実の世相を反映していて、その現実に対する主人公の見識は、 社会批...続きを読む評に十分なっていると思う。
最後の方でミスリードさせて落とす展開は良かったし、救いのあるラストで良かったなという感じ。読み方を深めて再読したいと思わせる内容。満足。
久々に上下巻にも及ぶ大作を読んだ。 でも「長い」というイメージはない。 この本は作者にとっての「哲学」なんだと思った。 編集者という職業柄をうまく使い、 時事問題・歴史問題・政治問題を絡ませながら 最後に「必然」とは何かという哲学に導いている。 主人公のカワバタをこういった哲学の道に引きずり込...続きを読むんだのは 生後3ヵ月でこの世を去ったユキヒコの死に他ならない。 その後の彼にとって過去や未来は存在しないにも等しいし、 結婚関係についても妻に愛人がいるとしっても取り乱すこともなく 第三者的立場から物事を見ているような感じ方だ。 【ココメモポイント】 ・神が宇宙知性であり僕たち一人一人はその微小な部分だとするならば、巨人は 一体何を思惟しているのであろうか?また巨人は一体何を知りたくて思惟しているのであろうか? P.47 ・二度と会うことのない人は、僕たちにとって「もうこの世にいない」との同じだ。 P.102 ・子育てなんて一時的なものです。妻というのは、一緒に年老いていく相手です。 だが、彼女はそういう対象ではまったくないですね。 P.150 ・体験や経験が人生の本体だとすれば、人間はなぜそういう本体の内容はどんどん忘れ、 折々で頭の中に詰め込んだ瑣末な知識はしっかりと憶えていられるのだろうか。 P.171 ・他人のことを幸福だと思うので「あなたは客観的事実として幸福なのですから、 そのこと納得し決して不平不満を述べないようにしてください」と 押し付けてるのと同じだ。その本人の幸福とは何一つ関わりなんてないんだよ。 P.264 ・僕たちは今の中にしか生きられない。歴史の中に僕たちはもうどこにもいないのだ。 過去の中にもこれからの過去の中にも僕たちはどこにもいない。 今、この瞬間の中にしかいない。この瞬間だけが僕たちなのだ。 時間に欺かれてはならない。時間に身を委ねたり、時間を基軸として計画を練ったりしてはならない。 そういう過ちを犯した瞬間、僕たちは未然のものとなり、永遠に自らの必然から遠ざけられてしまう。 P.317
上巻と同じように理屈の捏ね回しは続きつつも、物語も動き出してなかなかに面白い。ただ、突然逃亡犯を捕まえる展開になったり、政治家がスピリチュアルなことを言い出したり、意外な人の結びつきが合ったり、少し強引な雰囲気もあった。小説だからある程度は仕方ないけれど。 良くも悪くも濃厚でてんこ盛りな一種のカオス...続きを読むを恐れない実験的な小説だったと思う。
中村一文が書く人の一生についての話。今個人的にこの小説みたいなことばっかり考えて生きてるので、すごく身につまされる話だった。どこかのコミュニティに属していると、他人の利権争いや、他人の打算ありきで話をもちかけてこられて、すごくやりづらい。でも主人公が言っていた「必然」を意識する生き方は面白いので、俺...続きを読むも見習おうと思った。白石一文の書く主人公は皆、社会的に成功していて、お金にも困っていないけど、ひどく生きづらそうだ。この人の小説を読み終わったら、皆一様に生きづらさは抱えているんだなあと少し安心する。
これぞ白石一文というくらい、人生への考察に満ちた濃厚な小説だった。 過去も未来もない、あるのは現在だけだということ。 必然に従って生きるということ。 でも必然というのは誰がどうやって決めるのだろう。「必然だから仕方ない」という逃げ道になってしまわないだろうか。人生を大切に生きているようでいてどこ...続きを読むか割り切った感じを主人公に覚えた。 それにしてもここまで主人公たちに「思考」させる小説も珍しい。引用の多さには少々辟易とさせられた。 それでもこの小説をクオリティを保っていられるのは白石一文のなせる業だと思う。
真理の追求の果てに心の解放が見えてくる。 難しい引用による読みにくさも有り、一枚一枚の話の積み重ねが、まるで修行のようだったが、この小説の中には、心に残しておきたい一節が沢山あった。誰でもがきっと一生のうちで響く時がくる気がする。自分も、余命がわかった時にもう一度読み返したい。そんな小説だった。とて...続きを読むも良かった。
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