白石一文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ほぼ全作品、新作が出るたびに読んでいる作家さん。
今回も、21時過ぎまで仕事をして帰ってきた週まだ前半の火曜日、眠る前ちょっとだけ…と思いきや読破してしまった。
白石一文作品にしては短め。
アンドロイドものだけど、ここ最近のバリバリSF感は薄く、ちょっとテイスト変わったかも。
好きなタイプ。
今回もただひたすら、愛とは何かを問い続ける。
どうしてこの人はこんなにいつもまっすぐに愛の本質を追求しているのか・・・・・・
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「地球人口爆発宣言」から約半世紀。
世界中のほとんどの国で持てる子どもの数は一人とされ、不妊治療等は認められない。
自然妊娠しか許されなくなった世界において、夫婦の片方に不妊症が認められると、それは決定的な離婚事由となった。
新しい民法下では、「生物学的な夫婦関係」が「戸籍上の婚姻関係」に優越するとされている。
結婚の是非が生殖能力によって判定される世界では、”不倫”という言葉は死後になった。
とはいえ、裏切りは裏切りであり、残された者の精神的苦痛を和らげるため、人権救済委員会は「代替伴侶」の制度を敷いている。
有責配偶者の記憶が複写されたアンドロイドの「代替伴侶」が、10年間貸与される。
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子どもをきっかけに離婚した主人公の隼人とゆとり。
紆余曲折を経て岡山で実現していた、かつて思い描いていた”いとおしい生活”。
いい家庭を持つことと、いい夫婦でいることは全然違う。
手放してしまった幸せな日々を生きるパラレルワールドの自分たちを見て、過ちに気づく。
人は間違えるものだ。だからやり直せる道が残されていてほしい。
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ねえでもラスト衝撃すぎて3度くらい読み返した 何これ つら
愛する人を慮る愛、愛する人に悲しく辛い思いをさせたくないという愛、
そのためならば、自分は、という愛
この愛が 実は私にはまだよくわからない 実感をもって語れない -
Posted by ブクログ
地球人口爆発宣言により夫婦が持てる子供の数は1人と決まった。
子供ができなかった隼人とゆとり夫婦は妊活を行うが叶わず、ついにゆとりが別の男性との妊娠を成し2人は離婚する事となった。
ゆとりを喪失した代替に隼人は代替伴侶を迎えるのだった。
人間の移ろいやすい愛情に対して、代替伴侶のアンドロイドは純粋に相手を愛し続け、自らの10年という寿命を代替でありながら人間として生きてきた。
アンドロイド(ツイン)の愛情深さに、人間が自らの行いに懐疑的な感情を喚起され、ツインの生き方を受け入れていく。
夫婦、男と女。
愛情という生き方を静かな筆致で綴られた心に染みる小説だった。
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Posted by ブクログ
『ほかならぬ人へ』
華麗なる一族の中で「生まれそこなった」と思っている、宇津木明生。先祖は巨大財閥で、父は大学教授、母は大病院の創業家の長女、伯父は宇津木製薬グループの社長である。長兄も次兄も成績優秀で大学の研究者。
ところが、明生だけが、小学校時代から成績が振るわなかったが、先祖が日大の前身の学校の創立者であったという縁で、日大の附属中学から日大へ進み、大手スポーツ用品メーカー、YAMATOに就職した。側から見れば「大企業に就職した」と言えるのだが、普通のサラリーマンになったのは宇津木家では初めてだった。
明生は兄達のように優秀でなくてもおおらかな家族に包まれ、優しく何不自由なく、育ったのだが、彼自身にとっては華麗なる一族である実家での暮らしは劣等感と悔しさと無念さに苛まされた暗黒時代であった。
「普通に暮らしたい」ということが夢であった明生が結婚相手に選んだのは池袋のキャバクラで出会った「ブクロのミキティ」と呼ばれた元キャバクラ嬢のなずなだった。いくら、華麗なる一族が重かったとしても、客観的に見れば、そんな結婚は上手くいかないことが一目瞭然。案の定、なずなには二年で裏切られた。それでも、納得出来ず、なずなと、話し合おう、やり直そう、とする明生。ストレスでげっそり痩せて。本当にお坊ちゃんだなあ…。けれど、人を信じて真っ直ぐな所は本当に育ちの良さが感じられて、そういう真っ直ぐなところは案外偉大な先祖から受け継いだ魅力なのかもと思った。
そんな時、明生の相談に乗ってくれたのが、会社の上司である東海さん。相当なブスらしいが、仕事はバリバリ出来る人。なずなとの離婚で打ちひしがれている明生に適度な距離を保ちながらも親身になってくれ、突き放しながらも甘えさせてくれた。なぜ、東海さんがそんな人であったかというと、離婚、自身の癌、中絶、前の夫の死などを経験し、「自分なんか死ねば良かった」と一度は考えた人であったから。
誰からもブサイクと言われた東海さんだったが、明生は東海さんのことをブスだと思ったことはなかった。その理由は東海さんの放つ匂いだった。
明生が一年間の中国研修に行っている間に東海さんは癌が再発し、入院した。そして「退院したら一緒に暮らしませんか」と明生はプロポーズした。退院後、二人は結婚し、それから東海さんは仕事も家事も全力投球で生き、二年後、癌が再再発して、亡くなった。
付箋を付けた箇所はいくつかあるのだが、いちばん響いたのは次の箇所
「やがてこの部屋にしみついた彼女の匂いも少しずつ薄れ、いずれは完全に消えてしまうに違いない。 自分はもう二度とあの匂いを嗅ぐことはできないのだ…」
『かけがえのない人へ』
みはるは聖司との結婚を控えているが、会社の元上司の黒木と浮気を続けている。
みはるは電線や通信ケーブルを製造する会社の創業者の孫で、現在は社長の娘。小児科医の母に似て頭が良いがあまり美人ではない。会社員としてバリバリ仕事をし、結婚は一つのキャリアとしか考えていない。会社の幹部であり、みはるの家とも釣り合いのとれた婚約者である、聖司のことは嫌いではないが、心の底では「あんな男どうでも良い」と思っている。経済的には恵まれていたが不仲であった両親を見て育ったので、結婚に夢を抱いていなかった。
一方、浮気相手の黒木は、施設で育ち、大学も中退したが、バイト中に正社員に抜擢され、会社の中で目覚ましい業績を上げてきた雑草のような男。「自分はまっとうに生きられない」と信じている黒木にみはるは訳も分からず手繰り寄せられる。
みはるの父が愛人の家で心臓発作を起こし、母親の病院に担ぎこまれた日はみはるの誕生日だった。婚約者の聖司を会った後、どうしても黒木と会いたくなり、突然黒木のマンションを訪ねた。前もって行くと連絡していなかったのに、誕生日には婚約者と過ごすことが分かっていただろうに、黒木の部屋の冷蔵庫からは「Happy Birthday Miharu」と書かれたケーキが出てきた。「どうして用意してくれてたの?」と聞くと「習慣だから」と。毎年、もしかして誕生日にみはるが来るかもしれないと思い用意してくれていたのだった。荒々しくオスの匂い放つ男だが、そういうところに愛を感じてしまう。
結婚式前日にもこっそり黒木に会いにいく、みはる。そんなみはるに気付いていない聖司にみはるはいらついている。そして、知っているのに知らないふりをしているのだったらサイテーだと思っている。だけど、黒木のマンションはもぬけの殻だった。
作者の白石一文さんの考えの根底には「(お金や才能や恵まれた境遇を)持っている人が幸せとは限らない」というのがあるらしい。「持っている」といえば、白石氏自身もある意味「持っている人」で、お父様も直木賞作家。双子の弟さんも作家で、白石氏は文芸春秋の天才編集者だったらしい。
さすがだなと思った。最近はやりのほっこりするする小説や多様性小説、元気の出る小説………。これを読んだ後ではもの足りなく感じられると思う。大人の小説。 -
Posted by ブクログ
『不自由な心』白石一文
5作品の短編?中編?作品集。
どうして私は白石一文の作品にこんなに吸い込まれてしまうのだろうといつも思う。
本作は特に。
「家族を蔑ろにし、不倫を繰り返す、仕事のできる男」たちの物語。
言ってしまえばただそれだけ。
不倫男がうだうだと言い訳を繰り返しながら周りを振りまわし傷つけるだけのお話。にも見えてしまうのに。
共感でもないし同情でもないし、なんだろうな少しだけ共感性羞恥のような。
もちろん不倫が美化されているわけでもない。
主人公が全員頭が良いので、ロジカルに自分の行動を分析できていて、不倫もデキる男の嗜み、くらいに思っていたはずなのに、突然「真実の愛」のようなものに目覚めてしまい、ぐるぐる論理破綻していく。
それを認められない様が一周回って可愛く見えてくる。
理性的なはずだったのに、欲望に囚われてだんだん身動きが取れなくなっていく。
とにかく読み進める手が止まらない。
人間はエゴの塊です。
でもやっぱり主人公の不倫男全員自分勝手すぎて子どもすぎてムカつく。叫び出したくなる。
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■天気雨
これは流石に胸糞悪かった。
ストーリーとしてはちょうどいい、ハッピーエンドというかハッピーな未来を予感させる感じで終わってるけどしんどすぎるよね何これ舐めとんのか
「自分の心に真っ正直になる」ことを守り通す覚悟、それはわかる。ぜひそうしてほしい。
「どうしても恵理を失うわけには行かなかった。」それもわかる。
でもこの物語に描かれていない未来で、野島はきっと今までみたいに奥さんと恵理とどっちつかずでうだうだするんだろうなと思う。
野島の言うこともわかるよ。とてもよくわかる。
でも恵理に感情移入してしまうとしんどい。
■卵の夢
これはなんかちょっと切なかった。
所詮、一人きり平凡に生きていくだけ。
■夢の空
「私、ずっと待ってるから。ずっとずっと待ってるから」
墜落しそうな飛行機の中から、昔の不倫相手に電話をかける話。
死の間際に云々、というのはある意味身勝手だなと思ったりした。
■水の年輪
余命を宣告されて、仕事も家族も捨てて、昔好きだった人に会いに行くお話。
結局会えないのだけれど。
自分に酔いすぎな感じもしたけれど、ラストは嫌いじゃない。
しかし絵に描いたようなお金持ちホテル暮らしで笑う。白石一文あるある
■不自由な心
最後の娘婿、啓介を叱責するシーン痛々しかったな。
啓介は啓介ですごかったけど。
「どうして愛し合ってもいないのに一緒に暮らさなきゃいけないんだよ。どうしてそんな相手と子供作らなきゃいけないんだよ。」
「人間はもっと自由だよ。真から惚れた人のためなら何だって捨てられるんだよ。」
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Posted by ブクログ
この方の小説は、心情をダイナミックに表現する文体が好きで、ほかにも色々と読んでいます。本作は文庫で660ページ以上。心地よい厚さと持ち重りで、こういうのが電子書籍では味わえないですね。
いろいろと状況設定がかなり突飛で、登場人物とくに主人公のキャラクター設定もかなり目まぐるしく変わります。あれ、こんな人だったの? とか。他の登場人物への態度や心情もコロコロ変わるし。でも、考えてみれば実際の生活ってこんな感じなのかもしれない。自分の生活を考えてみても、気持ちなんか、どんどん変わっていくし。
メインの舞台である福岡と金沢のきめ細かい描写が秀逸。旅に出たくなりました。 -
Posted by ブクログ
随分前に読んだ本でした。三菱重工のような一流企業ではありませんが、最初にこの本を読んだ当時は私も某企業でトップの側近の一人としてとても忙しく働いていました。単なる権力闘争だけではなく、同じように幹部社員の首吊り事件や国からの圧力によるトップ交替などドロドロした世界でしばらく過ごしましたが、主人公とは少し違う理由で今はその会社から去りました。避けているわけでもないのに、残念ながら(?)女性の出入りは全くこの本の人たちとは異なり極めて地味でしたが、橋田氏のような甲斐性や覚悟もない身なので、このような出会いがあったとして見て見ぬふりをするのがせいぜいだっただろうと思います。いまだに自分にとって何が最も大切なのか試行錯誤する日々を送っていますが、恋愛部分以外は十数年前の自分を思い出しながらしみじみと再読させてもらいました。良い本でした。
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Posted by ブクログ
主人公「私」は青野精一郎が語り部となっています。
小説の舞台は福岡市で地元の高校から、現役で早稲田大学の政経学部に進学し、卒業後業界五番手の損害保険会社に就職しました。四十三歳で企画部門の部長に抜擢され、仕事に手応えを感じ始めていた矢先、会社が業界最大手の会社と合併してしまったところから彼の転落人生になります。
主人公は、かつて部下だった女性と不倫関係に陥ったことがあります。そのことが、後年になって深いダメージを受け、うつ病を発症し、退社とともに離婚もしました。
小説が書かれている時期は、その後ちょうど一年を経過したところから物語が始まります。主人公は、故郷の福岡に帰り、一人暮らしをしていたのです。
主人公の親友は、津田敦という人物で、本書では、「あっちゃん」と呼ばれ、同い年の幼なじみです。彼は主人公と同じ高校を出て一橋大学に進み、卒業後は都市銀行に就職、母子家庭で努力家です。
二十代で独立し、東京・銀座で経営コンサルタント事務所を開業していました。銀行勤務時代に親孝行をしようと思って母親を東京に呼び寄せていたところ、母親は死んでしまいます。そして煙草も吸わないのに肺がんになり、つらい治療に耐えているのです。この世の不合理に怒りさえ抱いてしまう。
主人公とあっちゃんは、時に対話しながらそれぞれの考えを深めて、再生するという過程が、この物語の特徴ではないかと思います。
著者の作品を読むのは初めてですが、読みにくい小説ではなく、著者とは世代が同じくらいで、所々含蓄があり腑に落ちて、思索をしていました。
※本書より抜粋
『いつでもどんなことがあっても自分だけは、いまの自分というものを根本的に愛し、認め、許すようにしようと言い聞かせつづけてきた。結局、そうした他愛のない子供じみた自覚だけが、自らの病気を徐々に癒してくれる』
お薦め作品です
読書は楽しい。 -
Posted by ブクログ
泣きました。
解説にもある通り、読み終わった今の心境は
「広大な砂漠の真ん中で、途方に暮れてしまったような気持ち」です。
それは恐らく、29歳から始まり、40歳まで描かれた亜紀の人生・運命がこの先どうなるのかが分からないから。
この小説は自分の人生と同様に、生きていて、どのような結末を迎えるのかまだ分からないから、読み終えても、読み終えた感覚が得られにくいように思います。
物語の大半を占める、30代の亜紀とちょうど同年代の女性である自分には手厳しいというか、目を逸らしている現実も描写されており、時々、自身と重ねては焦燥感に駆られる心境にもなりましたが、とにかく丁寧に描き上げられた作品だという事がひしひしと伝わってきました。
「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなる」
という文章が強く印象に残っています。
果たして私は必死で守り通そうとしただろうかと、省みる気持ちになりました。
白石氏の作品を読むのはこれで3作目ですが、勝手ながらこの方の持つ愛情や、死に対する感覚や、出来事への考え方・受け止め方が私の持つそれらと酷似しているように思います。
善し悪しは別として。
私とは20歳以上離れていますが、何だかあと20年後の自分から、言い聞かせられているような感覚で読み進めていった一冊です。 -
Posted by ブクログ
ミステリーかと思って読み始めたら違いました。約700ページもある大作ですが、最後まで読めました。
印象に残ったところ。夏代との夫婦関係は、二人の子供を育て上げた時点で役割を果たし切っていた。子育てを終えた夫婦が死別のときまで共に暮らす理由には、もちろん慣れ親しんだ繋がりを失いたくないという願いも強く作用されるだろうが、片方で、経済的な事情や敢えて別れるまでもないという〝面倒くささ 〟も大いに関与していると思われる。
自分たち夫婦の場合は、夫の側に新天地で始めた順調な事業があり、妻の側には娘や息子との深い絆と莫大な財産がある。
そうとなれば「子どもたちの独立」という明確な区切りをもって互いが別々の人生へと乗り出していくのは、考えてみるに決して不自然でも不合理でもないのではなかろうか?
フィナーレが映画の1シーンのようでした。