あらすじ
結婚を目前にして、最愛の女性・晶に裏切られた正平。それから5年。苦しみながらも、家業である甘味処「博多ぜんざい・ナカムラ」の仕事に打ち込んだ正平は、店舗を増やし、成功を収めていた。そんな中、突然の、晶からの電話。再会で明らかにされる、想像を絶する別離の理由とは…。表題作のほか「20年後の私へ」「たとえ真実を知っても彼は」「ダーウィンの法則」を収録した傑作恋愛短篇集。いずれも、目に見えない“大切なもの”が、読んだあなたの心にのこる傑作。
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Posted by ブクログ
白石一文氏の作品は福岡が舞台であることが多く、とても親近感がわく。この作品も福岡、老舗のぜんざい屋のオーナーが主人公、見知りした地名や場所が次々出てきて情景を想像しやすくたのしめた。
目にしたものが真実ではないことがある。悲しみや辛さを味わった人の思慮深さや優しさ懐の深さを強く感じた作品でした。終わりがとてもほっこり。
Posted by ブクログ
-20年後の私へ-
この作品は白石先生らしい福岡を舞台に社会的に自立した離婚歴のある女性の物語。
40歳を目の前に迎えて、今後このまま独りで人生を送っていくのか、それともある種の妥協の言い訳を自分に言い聞かせながらでも伴侶を得て世間一般的に普通らしい人生を送るのか…そんな分岐点に立って、これまで気づいていなかった愛情に気づく…ほんと白石先生らしい展開の物語でした。100頁程の短い物語なのでそんな感動すると言うほどのものではありません。彼らしさを感じられる作品として受け止めれば良いかと思います。
-たとえ真実を知っても彼は-
これはとても面白かったです!
作家と編集者という戦争を共に戦うような仕事を越えた濃密な関係性を構築する二人と双方の妻…それぞれ夫婦としての評判は高く、一方は親子共に仲睦まじく幸せな家庭だった。作家が急逝して明るみに出た真実、ドラスティックにうねりを上げて崩壊する家族関係とどう向き合い、どう折り合いをつけるのか?そこが読み処でドキドキしながら読ませてもらった。結果、作家の残した言葉通りであったが、それまでのあらましと逡巡…結論までの持っていきかたに白石先生らしさを感じた。
-ダーウィンの法則-
白石先生による夫婦間におけるセックスレスに関する考察が非常に興味深くて、そこへ結婚という夫婦間に横たわる倫理や節操という束縛を絡めて、すでに冷えてしまっている妻や家族との生活を守る人生と結婚後に出会った人であっても息の合う人と一緒の人生と、本当に幸せなのはどちらなのか?
「運命のヒト」…白石一文先生が描く物語には常にそのテーマが潜んでいる。そんな運命のヒトと出逢ってしまった男女が見せる葛藤や苦悩のような感情を通して「今を生きている自分は」一体何をどう感じて生きているのか?諦観や妥協じゃなく自分の自然な欲求に正直に生きるって事がどれほど大事なことかを伝えていると感じます。僕が白石一文先生が好きな理由がそこだと思う。これはとても良い作品でした。
-どれくらいの愛情-
この作品では作者の言いたいことの全てを「先生」が担っていて、他者を愛するという行為、他者を思うという行為とはどういうものであるのか?…それを喝破していたように感じました。二人一緒になりたいだけなのに目の前に立ちはだかる障害の数々を乗り越えて「愛するということの意味」に辿り着く…白石先生の頭の中にうずまく想いを叩きつけたような言葉だった。とてもいい読後感です。あとがきも素晴らしかったです。この本は、おススメです。
Posted by ブクログ
作者あとがきに書かれている、「目に見えないものの確かさ」とは、それぞれの作品で描かれている人間の想いや繋がりではないかと私は考えます。また、世界の流れ、というか、陳腐ですが運命といったものではないかと。それはよく目を凝らせば日常に溢れているのでしょう。
あとがきでは、目に見えないものを見ることが「自分とは何か?」という最も大切な問いに対する答えを出すために必要であると再三述べられています。
自分とは何でしょうか。即答できるような質問ではありませんよね。日常で考える機会もそうそうない質問です。私はまだまだこの答えを出せそうにありません。
ただ、それを考えることで、今まで気づかなかったことに目を向けられるのではないでしょうか。
自分とは何か。目に見えないものの大切さとは何か。そんなことを考えながら、この作品を読むと見える世界が変わるかもしれません。
Posted by ブクログ
表題作を含む4つの短編(中編?)が入っています。
どれもテーマは愛かな?
「20年後の私へ」「ダーウィンの法則」「どれくらいの愛情」の3編は、真実の愛を追究したり、自分の気持ち(愛)に正直に生きようとしたりする人々を描いている。
「20年後の私へ」はもう若くはない、仕事を持つ女性が、本当はキャリアウーマンになりたかったわけじゃないのにだんだんと仕事の責任が重くなり、人がうらやむような素敵な男性にプロポーズされ、そっちに逃げることもできるけど…という展開で、私にはなかなか共感できるものがありました。19歳のときに、20年後の自分宛に書いた手紙の内容はなかなか泣けました。
「どれくらいの愛情」は色んな障害を乗り越えて真実の愛を見つけていく主人公の正平に文字通り惚れました。柄にもなく、“真実の愛ってこういうものかなー”と思ったりしてしまいました。
でもひねくれ者の私の心に一番ぐっっっっと来たのが、やっぱり愛のなんたるかがよく分からなくなってしまう「たとえ真実を知っても彼は」という作品でした。
真実の愛を貫く3つの作品の中にこれが1つ入っているのが効いてると思います。
Posted by ブクログ
4編の短編集で愛がテーマとなる作品。どれも愛を追い求めるが故、たとえ歪んだ情事でも対峙しながら幸せになろうとする。世の中不倫や裏切りなど、がっかりさせられることが多いのだが、この作中の登場人物たちはそれに支払う代価が多いと感じる。器用に生きていそうで実は不器用な部分はもはや同情の気持ちさえ芽生えた。
Posted by ブクログ
上司にお借りした本。先日著者の別タイトルを読んで、
「面白いんやけど、重かった・・・」
と、思ったので(@「私という運命について」)、同時にお借りしていたこの本を読むのはちょっと後回しにしよう、と、別の本を読んでいたのだけど、いい加減返さないとあかん・・・、ちゅうことで、連休に挑戦してみました。
ほしたら、ビックリのイッキ読み。あっ、こっちのほうが面白いわ。
こっちのほうが好きやわ。
こちらのタイトルは「恋愛小説集」らしいねん。こんなビターな恋愛小説集って、ある(笑)?
また、並行してアルファポリスのエタニティブックスを読んでますやん。
向こうと比べると、恋愛色の薄いような、ビターすぎるような、ファンタジー感がゼロのような(笑)!
相変わらず、読むのに体力はいる。
(文章を目で追うのに体力がいるのではなく、読んで感じることが身につまされすぎてしんどくなるという意味で)
実際、この本を読み、「コンビニ人間」を、読んだあとにろくでもない夢を見てゲンナリして夜中に起きたりもした・・・(笑)。
夜中の三時にネガティブの波に飲み込まれるかと思ったよ。危ない危ない。
そのくらいなので、自分という軸をちゃんと持ってる人が読まないと、飲み込まれるんちゃうかなあと思う。
そういうことも含めて、では、感想。付箋の数はものすごいようけある。
著者の本を読んでいると、「心から愛する」ってことが、そんなに重要なん? とは、思ってしまうんだよな・・・。
重要。そこ、重要よね。
でも、安西より野上やろう!? と、思ってしまった。ここまできてプロポーズを断る!?
ちゅうか、お見合いやからしょうがないかもしれへんけど、プロポーズ早くないか(笑)!?
将来安泰、夫は自分に愛情よりも「妻という仕事」を、求めてるわけやん。
それさえクリアしていればかなり自由にさせてくれそうよ~、野上さんは。
今の私なら間違いなく野上さんを選ぶな。結婚は愛情よりもビジネスやと本気で思う。あれは、仕事だ。そう思うほうがよほどうまくいく。
(えー)
(だからあかんねんやん)
ちゅうか、相手の問題よね。私のようなものを求めて結婚する人だって絶対いてるはずだよ。
ビジネスとして重ねていけばいずれ情も移るやろう。せやけど、はなから情だけで成り立つ結婚は、どこで情を切れるんやろう。
あ、切る必要はないんか(笑)?
ほんで、エタニティブックスやったら、ここで野上さんが実は岬のことをめっちゃ好きで、結婚したららぶあま新婚生活が待っている・・・、と、いう展開になるよなー、と、思った。
そうならないのが、この本の「恋愛」の現実感がたっぷりなところやなと妙にニヤニヤした。笑
あとは、安西さんの
「幸せにしてもらおうと思うな、幸せにすると思え」
っていうあの言は、深かったわー。討たれたわー。ほんま、討たれた。私はこの期に及んで「幸せにしてもらおう」って思ってるかもしれへん。
自分を幸せにすることを一番に考えよう。
自分を幸せにするっていうことと、子どもを幸せにするっていうことは、イコールやからね、当たり前。
そして二十年前の岬の手紙は、どうよ、と、思った(笑)。
こんなこと、書けるぅ!? いや、二十歳前後のころってこんなふうに、情熱もあって大人ぶろうとして、世界はみんな自分の味方やと信じていられるころやったかもしれへんなー。
確かに私もそうやったかもしれへんなー。
就職するまでは、狭い世界で生きていられるもんね。ほんで、二十歳間近っていうたら、その「狭い世界」ではベテラン中のベテランになってるもんね・・・。こんなふうに強気でいれるんかもな。
さて二作目の「たとえ真実を知っても彼は」は、とにかくタイトルがいいなーって思った。
ちょっと読み進めたら、なるほど、展開も読めた。けれどこれも面白かった。
突然のカミングアウトと「あなたに対する申し訳なさでいっぱいやから別れてほしい」っていう緋沙子は、エゴの塊やなっていうか、自分可愛さだけか! と、ツッこみたくなったけれど、緋沙子といい、カレンといい、そもそも市川自身がどこに落としどころを持っていくのかな、ちゅうのがこの話の一番のミソやったと思う。
男の嫉妬ってみっともないなーって思いつつ(すいません)、市川は男前やった。
さて表題作は、長いだけあってかなり面白かった。
これはもう一気読みしようと気合を入れて読んだけれど、いったりきたりしながらすごい時間をかけて読んだなー。
家で時間を作って読めてよかった。
(でも、別のタイトルも思わずバスで乗り過ごしそうになった程度には熱中した)
博多弁の応酬もなんだかよかった!
地名はわからなくて苦労するところもあったけど(初出時にはちゃんとルビがついてるのにね)、スピリチュアルな部分も濃くて、ものすごい読みふけったなー・・・。
結構、翻弄された・・・。
どうでもいいけど、短編集って収録の順番もめっちゃ大事やねんね。
最初の「二十年後の私へ」が、思うよりグッときたので読み進めちゃったし、最後の表題作に翻弄されまくったので、つまりこの本は面白かった、と、思えるんやもの・・・。
(収録される)順番が違っていたら、もう少し違う感想になったかも。
愛情かあ。
自分を満たしてくれるもの、かあ。
スキンシップな。確かに子どもとのスキンシップはめっちゃとってる。さすがにもう普段はべたべたしないけれど、ちょっとしゃべってるときに手で触れたりとか、そういうことを当たり前に続けていければいいと思う。
母親に触れていいのだと子どもなりに安心していてほしい。
(自分が、両親とそういう関係ではなかったので)
ほんで、そうすることによって私自身も安心できるんやもの、有難い話やなあ。
心配するほど相手のことを思う気持ちというのは、私はほんまに当たり前のように持ち合わせてるよ。
周囲にはその気持ちをあまり持っていない人もいる。持っているけれど、薄い人もいる。そういう相手には、こちらも薄く接していればいいのだと思っている。
■■■■
■ベーチェット病
再発・寛解を繰り返す原因不明の慢性疾患で、自己免疫疾患の一つ。
■上げ潮
満ちてくる潮。満ち潮。 ↔ 下げ潮 ・ 引き潮
物事の勢いが盛んになること。調子が上向きであること。
■凋落 ちょうらく
①
勢いがおとろえること。おちぶれること。 「 -の一途をたどる」 「かつての栄華は見るかげもなく-する」
②
草木がしぼみ枯れること。 「咲き乱れたる百花の-飛散するに譬へて/福翁百話 諭吉」
③
容色がおとろえること。 「鏡の中には最早(もう)-し尽くした女が映つて居た/家 藤村」
④
おとろえ死ぬこと。 「茶山の友人は次第に-して行くのであつた/伊沢蘭軒 鷗外」
■横溢 おういつ
いっぱいにみなぎること。あふれ流れるほど盛んなこと。
■宮台
■寸毫 すんごう
ほんのわずか。ごく少し。
■宸翰 しんかん
宸筆ともいう。天皇が書いた筆跡。
■カリエス
脊椎を含む骨組織の結核菌による侵食などを指す医学用語
■堅忍不抜 けんにんふばつ
どんなことがあっても心を動かさず、じっと我慢して堪え忍ぶこと。▽「堅忍」は意志がきわめて強く、じっと堪え忍ぶこと。我慢強いこと。「不抜」は固くて抜けない意。意志が強く、何があっても心を動かさないこと。
■ファインブリュー
サントリー株式会社が販売していたノンアルコール飲料。2002年発売。
■徒広い だだっぴろい
ばかに広い。やたらに広い。むやみに広い。
(2017.05.06)
Posted by ブクログ
作者は白石一文です。
とても心に残る、力強いメッセージが伝わる小説でした。
恋愛小説(短編)が3つ入っています。
女性が好きそうな本だと思います。(多分)
この作者の本をはじめて読みましたが、
なんとも色々な人物が描かれていて、作者の幅を感じます。
特に表題作でもある「どれくらいの愛情」はとても良いです。
陳腐な言い方ですが、愛に満ちた話だなと思いました。
Posted by ブクログ
読み応えありました。
4作の恋愛小説集。
はじめの「20年後の私へ」は合いませんでした。
薄っぺらくて、都合がよくて、面白くないなあ〜と思って読み始めたのですが、
2作目から一転。深い深い。
あとがきでも書かれているように目に見えないものの確かさを必死で探していく感じで、
いつもはどんな小説を読んでも、自分の既存の価値観に基づいて小説の言葉を理解していきますが、
この小説を読みながら「わたしはこう思ってあってるのだろうか」と思いながら読みました。
一番好きなのはダーウィンの法則で知佳の思考を物語を通して追えるところです。
恋愛小説というのは感情や偶然みたいな見えないものがそれこそ集まって物語がなしていくんだろうけど、
白石さんはそれを現れているように、しっかりと掴んで物語が進んでいくので読んでいて本当に楽しかったです。
表題作のどのくらいの愛情を読んで思ったことは素直に自分にもこの世の中に片割れがいればいいと思った。
そんなひとと仲良く百歳までうきうき過ごせたら幸せだと思った。
Posted by ブクログ
下記を今朝登録したのだが、時間が経つにつれ、段々印象が上向いてきたので、評価星ひとつ増やす。
『絶望した側が、戦いに勝つことがよくある…』
『辛いときこそ、心のエネルギーを失ってはならない。人間は幼い時からその体に太陽エネルギーをたくさん蓄えてきたのだから、苦しいときこそ、それを放出して、自分の内部や周辺に渦巻いている暗黒のエネルギーを吹き消せばよい。少なくともそうイメージすることで、人間は溌剌となれるのだ…』
今、手元に本がないので、語句、文章は正確ではないが、そのような内容だった。
なぜか、その2点がじわーっと込み上げてきて、思わず修正。
表題作のほか3編。
博多弁が面白い。
表題作の『どれくらいの愛情』以外は何とも心に残らなかったのだが、4編目のこれだけは、しんみり読めた。
宗教的な匂いもするのだが、その言葉は結構印象に残った。
としても…私はなぜこの本を買ったのかしら。
その時はそういう気分だったのかなぁ。
ワカラン。
Posted by ブクログ
大人の愛にはいろいろな形があるけれど、目の前の相手を幸せにしようとしたり、離れていても相手の幸せを願うことが大切。そんな気がする。
4作ともよかったのですが、ラストの表題作「どれくらいの愛情」が一番しっくりきた。導入部分の『解夏』の松村達雄のセリフ(あなたは本当に失明した瞬間に、その失明の恐怖から解放されるのです)が最後まで効いている。
Posted by ブクログ
初期の作品よりも小説の質が上がったな、というのが第一印象。
どの作品も、根源的な心の動きについて、問いかけてくるものが多かった。
特に表題作で、主人公と晶についての関係について先生が言ったことが、心の中に染みた。
喪失の恐怖は、喪失するかもしれない状態で起こるもの。喪失した瞬間に恐怖は消えて、心の中に永遠に残る、といった内容だったと思う。
また、「20年後の君へ」で出てくる安西くんの優しさと強さに心打たれた。読み終わってから和んだ。
Posted by ブクログ
白石氏の作品はこれで二作目。
前回読んだ『僕の中の壊れていない部分』が見事なまでのダメンズ小説!?であったので、今回もきっとスかした女ったらしみたいな主人公がわぁわぁいう小説かなあと勝手なイメージを描いていました。ところが、かなりほっこり系の作品でした。
ちなみに本作、短篇二つと中篇一つの計三篇からなる作品となっております。
・・・
なかでも印象的であったのは表題作の中篇「どれくらいの愛情」です。
内容は言ってしまえば、オクテな甘味店経営者が一度別れたスナック嬢と最終的に結ばれる、という筋。
なんて書くと、女性慣れしていない小金持ちが、手練れの器量よしとなんだかんだでくっつく、みたいな印象かもしれません。まあそれはあながち間違ってはいないものの、一番印象に残ったのは以下の部分。
「彼が仕事以外のことで何かを気にかけたり、心配したり、思い煩ったりできるのは、結局この晶に対してだけだった。そして、彼女と別れてからの五年のあいだ、彼にはそういう対象がいなかったせいで、いかに仕事がうまく進んでいても、心の空虚さを埋めることができなかった。それがここ一週間足らず、この病院に足しげく通うようになっただけで心境は一変してしまった。誰かのことを思いやれることで、こんなにも心が満たされるとは・・・。正平は今更ながら驚くばかりだった。
―――自分のことを心配してくれる存在も大事だが、それと同等かそれ以上に、こうして自分に心配をかけてくれる存在が大切なのだ。」(P.355)
散々振り回されるホステス嬢のことを言っているのですが、ふと自らを振り返ると、思い当たるところが。
私の場合は子どもたち、ですかね。
高校・大学と学費のピークに差し掛かっています。加えて、孤独を貫いた激しい反抗期を過ごした私に似ず(良かった!)、親が金を出すなら旅行はどこでもついてくるという子どもたち。予算繰りをしたうえではあるものの、なんだかんだでお金を出してしまう親の我々。ちなみに進路だってどうなるのか良く分からんし。
お金の心配を家内に話すと「そうやってお金を出せるのだって今のうちだけだよ。あっという間に二人とも社会人よ」とたしなめられるのです。
むう、なんていう分かったような、分からないような返事をすることが多いのですが、上記の引用を読んだときに、すっと腑に落ちた感じです。
面倒を見れるうちがハナだなということですね。
因みに、結末はクサーい(アマーい)セリフでハッピーエンドで終わります笑
物語の舞台が博多で言葉遣いも博多弁。方言が雰囲気を醸し出します。
・・・
それ以外の短篇も良かったです。
「20年後の私へ」は航空会社で働くバツイチ女性の話。四十手前でキャリア?再婚?どちらもそこまで興味ないし…みたいなときに届いた過去の自分からの手紙に、一歩踏み出す勇気をもらう、みたいなお話。
「たとえ真実を
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正直なことを書くと、最初の作品に、少しだけれど女性軽視されてる表現を見つけて戸惑った。
ダーウィンの法則での触れ合いについての持論も、最初は納得行ったけど、父親も子供と触れ合うのだから父と母の関係性が悪くなるのはおかしいような?
でも、目には見えない愛についてのお話は良かったな。
絶望は希望の種。心から相手のことを思う気持ちがあればそれで十分に愛し合えるんだ。
愛って何だろうって、自分の中にある愛のこと、もっと考えたいと思った。
後書きがとても好きでした。
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いろんな形の恋愛があって、そのどれもが平穏なものではなく。
傷つけて傷つけられて、それでも大切なものがあって。
愛ゆえの嘘がたくさん出てきた気がします。
嘘をつくってよくないことではあるけど、相手のためを思った優しい嘘は、きっと二人には必要なものだったんだろうなと。
私は『20年後の私へ』が好きでした。
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あとがきで「世界の完全性」ということに言及している。小説の中ではある意味わかりやすい象徴的な人物が出てきているが、確かに「世界の完全性」なるものはあるのかもしれない。あると信じて、探求していきたいとも思うし。そんなあとがきを読んでいて思い出したのは「一般意思2.0」。いろいろなものが自分の中でつながっていく小説だった。
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『二十年後の私さん。心がくたびれて、なにもしたくなくなったり、誰のことも好きになれないような気がしたら、どうか、この私のことを思い出して下さい。私はいま、あなたのことを心から応援しています。そしてあなたが素敵な人と出会い、幸福な人生をこれからも送っていくことを心から願っています。父や母、いやそれ以上の強い気持ちで、私はあなたの幸せを祈っています。あなたは決して一人ではありません。こうして今も一生懸命に生きている私がいます。これからも一生懸命に生きていく私がいます。そういうたくさんの私が積み重なって、いまのあなたがいるのです。だから、あなたは決して一人ではありません。一人だと思ったときは、二十年前のこの私を、いまから一年後の私を、二年後の私を、三年後の私を…どうか思い出して下さい。そういうたくさんの私を決して忘れないで下さい。そして、そのあなたのそばには、きっとあなたのことを心から愛してくれる人がいるはずです。私はそのことだけは絶対に信じています。そう信じてこれから一生懸命に生きていくつもりです。二年後の私さん。あなたが歩んだこの二十年の人生に、私は精一杯の拍手を送ります。本当にご苦労さま、本当にありがとう!では、二十年後のいつの日にか、あなたに会えるのをいまからとても楽しみにしています。』
『お前が、その人を幸せにする自信があるのなら、俺は身を引く。ただし、お前がその人に幸せにして貰いたいと思っているのなら俺は離婚は絶対に認めない。こんなやり方をしておいて、誰かに幸せにして貰おうだなんて余りに虫がよすぎるからね』
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白石一文らしい穏やかな恋愛小説。
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5年前、結婚を目前に最愛の女性、晶に裏切られた正平は、苦しみの中、家業に打ち込み、思わぬ成功を収めていた。そんな彼に突然、電話が。再開した男と女。明らかにされる別離の理由(表題作)。目に見えるものだけでは分からない「大切なもの」に気づくとき、人は感動に打ち震える。表題作の他3作を収録した傑作恋愛小説集。
Posted by ブクログ
目に見えるものだけでは分からない”大切なもの”かぁ。「なんとなく」深いなぁと思うところはあるのだけど、私にはまだ早いのかもしれない。きちんと理解が出来ていない気がする。歳を取って読んだなら、また違う感想になるのかな。
Posted by ブクログ
さらりと初登場の名前や出来事が出てきて後に補足するような文章の書き方が印象に残った。恋愛小説だが一種人生観や宗教観が強く出ている。どの作品の結末も主人公の前向きな決断が気持ちよい。
Posted by ブクログ
大人の恋の物語、中長編の入った作品集です。
>知佳は子供も別に欲しくはなかった。
>こんな時代に生まれてくるのは、きっと子供にとってもしんどい話だ。
>とはいえ、もし子供ができれば、それは何より尊いことだとは思う。
>大事に育てていく自信はある。
声を大にして言いにくいことかもしれませんが、この考え方を頭ごなしに否定することはできないと思います。
長いこと教育業界に関わってきた私にとっては、正直同意できる部分が多くあります。
Posted by ブクログ
少し前に読んだので忘れてしまったが、自分で引き受ける愛があった。
八月のクリスマス
イルマーレ
インタビュー
ラブストーリー
星願 あなたにもういちど
恋する惑星
グリーン・デスティニー
黄泉がえり
スウィングガール
いま、会いにゆきます
初恋のきた道
山の郵便配達
リービング・ラスベガス
サイダーハウス・ルール
天使のくれた時間
ニューヨークの恋人
ガープの世界
スウィート・ノーベンバー
コールドマウンテン
きみに読む物語
ネバーランド
ターミナル
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白石一文作品を読んだのはこれが1作目。
シンプルな愛ではなく、どこか込み入った愛。大人たちの、様々な紆余曲折を経たひとたちの物語である。
中編集だが、不自由な心ほど心に響く物語がなかったように思う。
Posted by ブクログ
小説、殊にこういったリアリズムに基づく小説というのは、現実の「ままならなさ」に対する別の可能性の提示なのではないか、とも思う。
現実ではこうなるしかなかったけれど、こういう展開もあったのかもしれない。
もしくは、実際の、現実的な結末はこうだったけれど、こういう終わり方だってできたはずだ、という。
世界は矛盾していて不安定だからこそ、生きていくことは苦しくて、こころがぐらぐら揺れてしまう。
白石一文さんの小説は、そういう「違和感」や「揺らぎ」を冷静に捉え、一人の個人としての無力さ、ままならなさをきちっと言葉にして突き付けてくる。だから、読んでいて苦しくなったり、こころがぐらぐら揺れてしまうのだろう。
確かなものの中にある不確かさ、不確かなものが持つ一片の確かさ、ということが、巻末の著者あとがきにもあるように、この4つの小説全体から問いかけられている。
人生について、運命について、愛について、この世界そのものについて。
それらのどうしようもなく「ままならない」物事すべてに対して、作家が示す、4通りの「可能性」。
Posted by ブクログ
妻である自分には、ちょっと苦しさを感じる物語も。夫に言い訳したくなる。そして、離れて暮らす夫に会いたくなる。どの物語も、空気の密度が濃くて、湿度を感じる。愛することと、人生を共にすることは、一筋縄ではいかないな…
Posted by ブクログ
大人の恋愛を描いた中編集。
30~40代が主人公だからか離婚、不倫、過去の傷など、みんな「いわくつき」ばかりで純粋な関係が出てこない。
白石氏の年齢による価値観がこうさせるのか、今や初婚年齢が30代を超える時代なので,つまらない作品とは思わないがちょっと時代に合わない気がする。
Posted by ブクログ
直感冴え渡り。
まさに、今読むべきモノだった。とゆー感じ。
ダーウィンの法則の最後のページでは、うん、そうだよね。と思ったりしないでもなかったかな。。
大切な人の手は離してはいけない。
目に見えるモノがすべてではないよ。
例え離れ離れになっても、出会うべくして出会った人には縁があればまた巡り会えるんじゃないかな。