あらすじ
結婚を目前にして、最愛の女性・晶に裏切られた正平。それから5年。苦しみながらも、家業である甘味処「博多ぜんざい・ナカムラ」の仕事に打ち込んだ正平は、店舗を増やし、成功を収めていた。そんな中、突然の、晶からの電話。再会で明らかにされる、想像を絶する別離の理由とは…。表題作のほか「20年後の私へ」「たとえ真実を知っても彼は」「ダーウィンの法則」を収録した傑作恋愛短篇集。いずれも、目に見えない“大切なもの”が、読んだあなたの心にのこる傑作。
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Posted by ブクログ
表題作を含む4つの短編(中編?)が入っています。
どれもテーマは愛かな?
「20年後の私へ」「ダーウィンの法則」「どれくらいの愛情」の3編は、真実の愛を追究したり、自分の気持ち(愛)に正直に生きようとしたりする人々を描いている。
「20年後の私へ」はもう若くはない、仕事を持つ女性が、本当はキャリアウーマンになりたかったわけじゃないのにだんだんと仕事の責任が重くなり、人がうらやむような素敵な男性にプロポーズされ、そっちに逃げることもできるけど…という展開で、私にはなかなか共感できるものがありました。19歳のときに、20年後の自分宛に書いた手紙の内容はなかなか泣けました。
「どれくらいの愛情」は色んな障害を乗り越えて真実の愛を見つけていく主人公の正平に文字通り惚れました。柄にもなく、“真実の愛ってこういうものかなー”と思ったりしてしまいました。
でもひねくれ者の私の心に一番ぐっっっっと来たのが、やっぱり愛のなんたるかがよく分からなくなってしまう「たとえ真実を知っても彼は」という作品でした。
真実の愛を貫く3つの作品の中にこれが1つ入っているのが効いてると思います。
Posted by ブクログ
白石氏の作品はこれで二作目。
前回読んだ『僕の中の壊れていない部分』が見事なまでのダメンズ小説!?であったので、今回もきっとスかした女ったらしみたいな主人公がわぁわぁいう小説かなあと勝手なイメージを描いていました。ところが、かなりほっこり系の作品でした。
ちなみに本作、短篇二つと中篇一つの計三篇からなる作品となっております。
・・・
なかでも印象的であったのは表題作の中篇「どれくらいの愛情」です。
内容は言ってしまえば、オクテな甘味店経営者が一度別れたスナック嬢と最終的に結ばれる、という筋。
なんて書くと、女性慣れしていない小金持ちが、手練れの器量よしとなんだかんだでくっつく、みたいな印象かもしれません。まあそれはあながち間違ってはいないものの、一番印象に残ったのは以下の部分。
「彼が仕事以外のことで何かを気にかけたり、心配したり、思い煩ったりできるのは、結局この晶に対してだけだった。そして、彼女と別れてからの五年のあいだ、彼にはそういう対象がいなかったせいで、いかに仕事がうまく進んでいても、心の空虚さを埋めることができなかった。それがここ一週間足らず、この病院に足しげく通うようになっただけで心境は一変してしまった。誰かのことを思いやれることで、こんなにも心が満たされるとは・・・。正平は今更ながら驚くばかりだった。
―――自分のことを心配してくれる存在も大事だが、それと同等かそれ以上に、こうして自分に心配をかけてくれる存在が大切なのだ。」(P.355)
散々振り回されるホステス嬢のことを言っているのですが、ふと自らを振り返ると、思い当たるところが。
私の場合は子どもたち、ですかね。
高校・大学と学費のピークに差し掛かっています。加えて、孤独を貫いた激しい反抗期を過ごした私に似ず(良かった!)、親が金を出すなら旅行はどこでもついてくるという子どもたち。予算繰りをしたうえではあるものの、なんだかんだでお金を出してしまう親の我々。ちなみに進路だってどうなるのか良く分からんし。
お金の心配を家内に話すと「そうやってお金を出せるのだって今のうちだけだよ。あっという間に二人とも社会人よ」とたしなめられるのです。
むう、なんていう分かったような、分からないような返事をすることが多いのですが、上記の引用を読んだときに、すっと腑に落ちた感じです。
面倒を見れるうちがハナだなということですね。
因みに、結末はクサーい(アマーい)セリフでハッピーエンドで終わります笑
物語の舞台が博多で言葉遣いも博多弁。方言が雰囲気を醸し出します。
・・・
それ以外の短篇も良かったです。
「20年後の私へ」は航空会社で働くバツイチ女性の話。四十手前でキャリア?再婚?どちらもそこまで興味ないし…みたいなときに届いた過去の自分からの手紙に、一歩踏み出す勇気をもらう、みたいなお話。
「たとえ真実を