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レビュアー
  • 金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(1)

    犯人達への拍手と挽歌と苦笑い

    まず、「犯人達の事件簿」は読者が原作を既読であることが前提である。
    原作特有の幻惑さと不気味さを10代で体験した身であるが、それから20年余り。「犯人達の事件簿」のユーモアが40代になった今の自分にじわりじわり来る。
    全ての犯人に言えるのが「その努力を健全な方向へ使え」。やり方によっては手を汚すこともなく復讐を完遂できたはず。特に「MR.レッドラム」は。
    本作品のラスボスである金田一少年に目をつけられる環境を自ら作成し、トリックの完成まで汗と涙にまみれて努力し、トリックをやりきったことに陶酔し、金田一にトリックを公衆の中で暴かれるという辱しめを受ける。
    この作品はそんな犯人達への拍手と挽歌であ...続きを読む

    #シュール #癒やされる #笑える

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  • 超合本 妖怪アパートの幽雅な日常

    中年になるとかえってキツい

    構成はテンポ良い。主人公も努力家で困難に立ち向かう。性格も社交的。登場人物(妖怪)も多彩。小説として申し分無いはず…。
    でも、私には合わなかった。
    主人公とアパート仲間と親友には救いがあるけど、それ以外の人間はバッサリ切り捨てられてる感がある。
    作者が市井の人物を睨めつけているような、そんな薄ら寒いおぞましさを感じてしまう。
    この世界では妖怪に親和性のある人間はスポットライトが当たるが、そうでない人間は「単なる嫌みな奴」で背景同然に埋もれていく。
    そうやって埋没していく人間を主人公は考察という名のレクイエムを綴る。
    「ライトノベルのモブにいちいち感情移入してはキリが無い」と反論されそうだが。
    ...続きを読む

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  • 悪の華道を行きましょう: 2 悪の華道を追いましょう

    意外とスカッと

    枯れ専ヒロインとハゲデブの夫。デコボコ夫婦が織り成す不思議な疾走感。
    何も考えずにスカッとした読後感を楽しむのなら、うってつけの作品。

    #笑える #アガる #ハッピー

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  • 小さなお茶会 完全版 第1集

    祝電子版刊行

    やっと電子版が刊行されて嬉しい。

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  • すもうねこ サケと泪と男とちゃんこ

    待望の電子書籍化

    紙媒体出版から2年と3か月、ようやくbookliveで読めるようになった。

    連載時点が2012年の角界を反映しているためか、辛辣な内容も。
    角界を一歩離れた目線で見ることになった元力士の肉森さんの意見がなかなか重い。
    ただし、肉森さんの助言が効いたのか(?)Twitter利用などの内部改革が進み、また遠藤などの人気力士が登場して現在の隆盛に至るのは言うまでもない。

    単に重い内容だけでなく、風刺だったりコミカルな内容も盛りだくさん。新弟子、和田サンの経歴は際どい内角攻め。

    ねこ関もとんとん拍子で出世とはいかなかったし、土俵に悲喜こもごもが凝縮されているんだなあ・・・と。

    評価を満点にしな...続きを読む

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  • すもうねこ もふり寄り

    買い直し

    作品自体は星5ですが、リブレ版が突如削除されたので、クロフネ版を買い直ししました。手間とお金がかかったので、星マイナス1。

    次回作はクロフネ社のみの出版なので、リブレ版の突然の消去は次回作リリースの前触れでしょうか。数ある電子書籍の一冊なので、予告無しの差し止めは仕方ないのかもしれません。電子書籍ユーザーは「電子書籍を読む権利」を購入しているに過ぎないので。

    肝心の内容は、星5です。相撲界の慣習や決して甘くない現実をユーモア交えて表現されています。ユーモア漫画、猫漫画、相撲漫画、各要素が調和した名作です。

    追記:2017年6月23日
    リブレ版は再ダウンロード可能でした(クロ...続きを読む

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  • パタリロ! 5巻

    パタリロ一人でも結構行ける

    パタリロ自ら難事件を推理したり狂言廻しとして問題解決する。推理モノという面が強い。ハッピーエンドが多い(パタリロ自身にとっては微妙なオチもあるけど)ので比較的安心して読める巻。パタリロ一人で活躍しちゃうので、バンコランやマライヒの出番が控え気味(バンコランはパタリロに振り回されずに済んだのかもしれない)。

    それにしても、パタリロの遠縁であるパタモドキ館長が哀れ。ラシャーヌにもパタリロにもひどい目に遭わされている。
    「都会人はスモッグの匂いを嗅がないと気が済まない」といった意味合いのセリフは妙に共感してしまう。

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  • 落第忍者乱太郎 1巻

    とある漫画の影響を受けている?

    作者は「ある漫画家の紹介で子供朝日新聞に連載することになった」と8巻の単行本巻末で述懐している。その漫画家とは「パタリロ!」でお馴染みの魔夜峰生氏ではないかと推測している。
    ・主人公三人組の輪郭(しもぶくれ風)がパタリロに似ている
    ・揚げ足を取るようなやり取りが落乱でも「パタリロ!」でも散見される
    などの共通項があるから。
    「パタリロ!」が「がきデカ」の影響を受けていると指摘されたように、落乱もまた別の作品の影響を受けているのかもしれない(あくまで推測だが)。

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  • パタリロ! 1巻

    そして少年国王が誕生した

    パタリロを始め、彼を取り巻く(?)バンコラン、マライヒ、エトランジュなどのレギュラーキャラが位置付けされた作品集。
    パタリロが主人公だから当然かもしれないが父王ヒギンズ三世の描写があっさりとはしている。詳しい肖像も僅か二度しかないそうだ。それと比例して、パタリロとヒギンズの関係も淡泊である。
    パタリロが父王を「女好き」と評したり、ヒギンズ自身が晩婚だったことから、ヒギンズ三世も息子に劣らないトラブルメーカーだったのではなかろうか。されば、一作目のような展開になるのも頷ける。
    だが、パタリロは父王の振る舞いに内心辟易していた一方で、どこかで慕っているのでもなかろうか。国主という特殊な立場が...続きを読む

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  • パタリロ! 2巻

    パタリロ色に染まるマライヒ

    最初は冷徹な殺し屋だったマライヒも、すっかりパタリロのおちょくり相手に。でも、だからマライヒは生き残れたのかもしれない。どんな美少年でも最後まで悪に留まった者は儚く散るのがこの漫画。マライヒは素晴らしいツッコミスキルがあった故にレギュラーキャラまで登り詰めたのだ(?)。

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  • 母なるもの

    再評価されるべき逸材、遠藤周作

    遠藤周作は自身の信仰に疑問を持っていた。作家活動は自己肯定感を得るための試行錯誤である。その活動の一里塚たる作品が「母なるもの」ではなかろうか。隠れキリシタンの信仰は、本家バチカンから見たらはるかに程遠いもの。しかし、遠藤は「これで、いいのではなかろうか」と肯定感を見出した。隠れキリシタン信仰の神秘性と隠匿性をもって地域が結束していたをの確認したから。そこから、遠藤は自身の母親との関係にも思いを馳せる。
    目に見える成果や舌先三寸の刹那的芸当ばかり持て囃され、そうでなければバッサリ切り捨てられる昨今。遠藤周作のような、人間の弱さを学識と宗教観で試行錯誤して書きたてる作家はもっと再評価されても良...続きを読む

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  • パタリロ! 27巻

    父親達の悲喜こもごも

    三人の父親、バンコラン、ミハイル、タマネギ9号(マライヒは性別こそ男性だが性格的には母親である)。どの父親たちも父親ゆえに葛藤し、身分や立場を越えて協力しあっている。そんな彼らには窮地でも救いの手が何処からともなく差しのべられている。
    それにしても、憔悴したバンコランはレアである。

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  • パタリロ! 50巻

    タマネギの菱口が巨大化した理由

    作者の告白「老眼のせいで耽美系の絵を書くのが難しい」でピンときた。初期と比べて画風がアルファアート化したのも、バンコランやマライヒがフェードアウトしたのも、そしてタマネギの菱口が大きくなった理由も。「崖道を行くようだ」とも作者が告白しているように、長期連載は難儀な道程なのだ。
    それにしても、「マリネラの吸血鬼」を長らく封印作品にした原因である大学ミス研は無粋なことをした。創作世界の警察気取りではないか。彼らは今どこで何をしているのだろう。

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  • パタリロ! 3巻

    バンコランの霧が晴れる時

    バンコランの過去篇特集という意味合いも強い本編。BLや暴力表現が殊更強いので読む人をかなり選びそうだ。
    パタリロの巻き添えになって恐竜時代に取り残されたパイロットが可哀想。

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  • パタリロ! 4巻

    病める時も健やかな時もタマネギ

    グローブナー将軍があつさり“退場”したのは意外。バンコランへ上から接することができる良識人なんてこの人だけ。もっと物語に関わるかと思っていた。
    タマネギ21号とパタリロとの関係にジーンと来た。言動ハチャメチャでもパタリロは国王なのである。

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  • 狐狸庵閑話

    古今百馬鹿、現代の快人物がお勧

    「古今百馬鹿」「現代の快人物」で筆者は一気に肩の力が抜けたのだろう。読んでいる方も登場人物のバカバカしくも愛嬌のあるキャラに笑わざるを得ない。
    「現代の快人物」は平成の世における「オタク」の原型たる人物が多数登場する。遠藤周作が愛した「決して世間的に成功しないが、愛嬌がある」人物たちは形を変えて生き延びていくのだろう。

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  • 浦安鉄筋家族(1)

    構成を学びたい人にもお勧め

    主人公の小鉄君始め、いろんな人間や動物が結構無茶する漫画だけど、ストーリーが割と順序良く組み立てられているので、構成を学びたい人にもお勧め。巻末のライナーノートを見るのも良い。
    それにしても小鉄君、何気に人間関係に恵まれていますね。専業主婦や子供四人養える稼ぎがある(推測ですが)父としっかりものの母など。家族も友人も個性強いけど仲が良い。

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  • 魁!!クロマティ高校(1)

    死ぬほど笑った

    心理のすれ違いで、ここまで笑わされるとは。参りました。

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