名無しさんのレビュー一覧
レビュアー
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ネタバレ
他人の権利から自分を守る
小説最終盤で書かれる主人公の独白が、作者の一番言いたいことではないかと思った。この小説がコロナ禍の中で書かれたことも注目ポイントである。
コロナ禍では、「マスクをしない権利」と「感染されたくない権利」がぶつかった。
本作でも、主人公夫の「人生の最期は好きな人と過ごしたい権利」が、主人公の存在意義を揺るがす。
さて、最後まで主人公は「決断」していない。それを快く思わぬ読者の声も多数見受けられる。自分もまた、主人公をグズグズした女と見る向きもある。
しかしそれもまた、作者の狙いなのではないかとも思う。コロナ禍では多くの人が「コロナに感染したくないのでマスクをする」ことを守り抜いたように。主人公が様々な模索を辿ったのは、単なる優柔不断ではなく、夫の身勝手さから自分を守った側面もある。離婚届に判を押さなければ、関係は破綻しても法律上は「妻」である。
主人公はどのような選択をしたのか。それは読者の判断に委ねられる。個人的には、最後まで敢えて「決断」せず、夫の死後は淡々と遺産整理をしたのではなかろうかとも思う。 -
ネタバレ
泥臭く美しい荒尾
「奇」談じゃなくて「鬼」談なワケ。
一通り読めば自ずと分かってくる。
それは作者が後書きで述べてる通り。
炭鉱運営時代は凄惨な逸話も多々生まれた。
郷土資料漁らないと、なかなか発見できないものばかり。
作中では炭鉱が閉山して久しいという設定だけど、鬼は存在し続けている。
なんなら、生者側にも「鬼」はいる。
良い面も悪い面も「荒尾市あるある」が丁寧に描写されている。
「続・四ツ山鬼談」が書かれるとしたら、本作の生者側の何人かは「鬼側」として登場しそうな感じすらある。
極端なバッドエンドはないけど、絵に書いたような救いもない。
それでも、ちょっと光が見えてくるような話もある。
「この世に業のない場所などありませんよ」という台詞があり、まさにその通りである。
それでも、知恵や縁を使い、そして気力で鬼の誘いを回避した人物もいる。
後書きに記された「炭鉱に纏わる怪談は殆ど見受けられなかった」のも本当である。
自ら調べようとしない限りは負の側面を知る機会がないのも一因ではあるが。
炭鉱の存在はまだまだ地元民には根強く残ってきて、弔いと敬意と郷愁が怪談を防いでいるのではないかと思う。
最も、あと一世紀も経てば三池炭鉱の存在は完全に神話同然となり、本作のような話が怪談として語り継がれるのかもしれない。
それでも、忘れ去られるよりはマシなのかもしれない。
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犯人達への拍手と挽歌と苦笑い
まず、「犯人達の事件簿」は読者が原作を既読であることが前提である。
原作特有の幻惑さと不気味さを10代で体験した身であるが、それから20年余り。「犯人達の事件簿」のユーモアが40代になった今の自分にじわりじわり来る。
全ての犯人に言えるのが「その努力を健全な方向へ使え」。やり方によっては手を汚すこともなく復讐を完遂できたはず。特に「MR.レッドラム」は。
本作品のラスボスである金田一少年に目をつけられる環境を自ら作成し、トリックの完成まで汗と涙にまみれて努力し、トリックをやりきったことに陶酔し、金田一にトリックを公衆の中で暴かれるという辱しめを受ける。
この作品はそんな犯人達への拍手と挽歌である。
作者もあとがきで述べているように、原作者へのリスペクトが感じられる。あくまで犯人が弄られているのはトリック成立までの過程であり、動機そのものには触れていない。作画の再現度も高い。原作初期のポッチャリ感から、case期の「スクリーントーンを多用した影の付け具合」まできっちり再現。犯人へのインタビューで締めくくるエピローグまでテンポも良い。この外伝そのものの完成度も楽しめる。
第一巻に登場する「ファントム」「MR.レッドラム」は愛する者の敵討ちが動機。「放課後の魔術師」も「元の所属先から押し付けられた貧乏籤に長年苦しめられた」という、些か同情の余地はあった。しかし、トリック成立までのドタバタぶりや巻末の「夜空に浮かぶ犯人達のドヤ顔」を見ると同情心も砕け散る。
冥土または刑務所で金田一少年の驚異に悶え続けるのが彼等に下された永遠の罰であり、読者にとって一番の笑い所である。 -
ネタバレ
中年になるとかえってキツい
構成はテンポ良い。主人公も努力家で困難に立ち向かう。性格も社交的。登場人物(妖怪)も多彩。小説として申し分無いはず…。
でも、私には合わなかった。
主人公とアパート仲間と親友には救いがあるけど、それ以外の人間はバッサリ切り捨てられてる感がある。
作者が市井の人物を睨めつけているような、そんな薄ら寒いおぞましさを感じてしまう。
この世界では妖怪に親和性のある人間はスポットライトが当たるが、そうでない人間は「単なる嫌みな奴」で背景同然に埋もれていく。
そうやって埋没していく人間を主人公は考察という名のレクイエムを綴る。
「ライトノベルのモブにいちいち感情移入してはキリが無い」と反論されそうだが。
しかし世の中の大半は、主人公に因縁つけて自滅した不良のような弱さ、主人公を家から追い出した主人公従姉のような意地悪さ、主人公親友にやり込められた新米教師のような未熟さを内包している。
そして妖怪アパートなぞ現実には存在しない。
ある程度歳を取った者にとっては小説の風景へ埋もれたモブに感情移入してしまうのである。
護送船団の如く主人公を守る妖怪は現実にいない。
「両親亡くしてバイトと学業両立しないといけない生活でも、なんだかんだで恵まれているやん」と、此方こそ主人公に突っ込んでしまう。
生活に疲れた中年には、かえって堪える作品だった。
私も、風景へ埋もれる側。
妖怪アパートの世界の人間でなくて良かった。
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待望の電子書籍化
紙媒体出版から2年と3か月、ようやくbookliveで読めるようになった。
連載時点が2012年の角界を反映しているためか、辛辣な内容も。
角界を一歩離れた目線で見ることになった元力士の肉森さんの意見がなかなか重い。
ただし、肉森さんの助言が効いたのか(?)Twitter利用などの内部改革が進み、また遠藤などの人気力士が登場して現在の隆盛に至るのは言うまでもない。
単に重い内容だけでなく、風刺だったりコミカルな内容も盛りだくさん。新弟子、和田サンの経歴は際どい内角攻め。
ねこ関もとんとん拍子で出世とはいかなかったし、土俵に悲喜こもごもが凝縮されているんだなあ・・・と。
評価を満点にしなかったのは、カットされた回も少なくなかったので。
わんぱく山が授かり婚成就に至るまでの奮闘っぷりが無い。仮に続刊が刊行された際、わんぱく山がいきなり関取になって妻子もいるということになってしまうのでは。
2018年5月28日 追記
2018年5月27日を以て「すもうねこ」web連載は8年の歴史に結び。寂しい結末であるが、本業との兼ね合いが難しくなってきたこと、作者がかつて飼っていた猫とのある思い出を昇華したかったとのこと。以上のことを踏まえてまた一巻から読み直すと味わい深い。ホームページやTwitterアカウントも当分継続するとのことです。 -
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買い直し
作品自体は星5ですが、リブレ版が突如削除されたので、クロフネ版を買い直ししました。手間とお金がかかったので、星マイナス1。
次回作はクロフネ社のみの出版なので、リブレ版の突然の消去は次回作リリースの前触れでしょうか。数ある電子書籍の一冊なので、予告無しの差し止めは仕方ないのかもしれません。電子書籍ユーザーは「電子書籍を読む権利」を購入しているに過ぎないので。
肝心の内容は、星5です。相撲界の慣習や決して甘くない現実をユーモア交えて表現されています。ユーモア漫画、猫漫画、相撲漫画、各要素が調和した名作です。
追記:2017年6月23日
リブレ版は再ダウンロード可能でした(クロフネ版リリース以前に購入した人対象です) -
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そして少年国王が誕生した
パタリロを始め、彼を取り巻く(?)バンコラン、マライヒ、エトランジュなどのレギュラーキャラが位置付けされた作品集。
パタリロが主人公だから当然かもしれないが父王ヒギンズ三世の描写があっさりとはしている。詳しい肖像も僅か二度しかないそうだ。それと比例して、パタリロとヒギンズの関係も淡泊である。
パタリロが父王を「女好き」と評したり、ヒギンズ自身が晩婚だったことから、ヒギンズ三世も息子に劣らないトラブルメーカーだったのではなかろうか。されば、一作目のような展開になるのも頷ける。
だが、パタリロは父王の振る舞いに内心辟易していた一方で、どこかで慕っているのでもなかろうか。国主という特殊な立場が絡むと親子関係も一筋縄ではいかないようだ。
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再評価されるべき逸材、遠藤周作
遠藤周作は自身の信仰に疑問を持っていた。作家活動は自己肯定感を得るための試行錯誤である。その活動の一里塚たる作品が「母なるもの」ではなかろうか。隠れキリシタンの信仰は、本家バチカンから見たらはるかに程遠いもの。しかし、遠藤は「これで、いいのではなかろうか」と肯定感を見出した。隠れキリシタン信仰の神秘性と隠匿性をもって地域が結束していたをの確認したから。そこから、遠藤は自身の母親との関係にも思いを馳せる。
目に見える成果や舌先三寸の刹那的芸当ばかり持て囃され、そうでなければバッサリ切り捨てられる昨今。遠藤周作のような、人間の弱さを学識と宗教観で試行錯誤して書きたてる作家はもっと再評価されても良い。
その実、彼の代表作「沈黙」が映画化され、封切間近である。洋画のためか、遠藤の関係者との見識に違いもあり、埋まることはなかったそうだ。それでも、遠藤周作の再評価の前途が明るくなったことに相違ない。