白石一文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
任侠マニアの僕としては、この作品をどのような位置づけでどう評価していいものかとても迷う。
そもそも「任侠」というジャンルで捉えること自体間違っているのは重々承知の上なのだが、主人公のひとりである人物がヤクザなのだし、ヤクザ的シーンが多いのも確かなのでそういう目で見てしまうのも致し方ないところである。
このように書くとソッチ系の作品か、と思われるかもしれないが、実は主題はそうではなく、「恋より底深いつながりの核心に迫り、運命の相手の存在を確信させる」恋愛小説であってヤクザがドンパチする小説ではない。
恋愛小説といっても好いた惚れたの青春系ではなく、ヤクザが出てくるくらいだからそこはきっちり大人の恋愛小説となっている。それもちょっとディープな方のやつ。政治家とかヤクザとかクラブのママとか・・・。
それなりに面白い作品なんだけど、ヤクザをここまで全面に出すなら物語がスマートすぎる感じは否めない。あくまで任侠マニアとしての意見ですが・・・。そりゃヤクザだって人間だしひとりの男だからロマンチックな恋愛をするだろうけど、やはり極道なら、仁義なき戦いの菅原文太みたいに「あとがないんじゃ、あとが・・・」と荒々しく女を抱いて欲しいし、千葉真一みたいに「わしらうまいもん喰ってよ、マブいスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの」とか身も蓋もない台詞を言って欲しいのである。
とはいうものの、そこは直木賞作家の作品ですからそこいらの三流暴力映画や三流恋愛小説とはわけが違います。大人たちが抱える心の闇、人を愛するとはなにか、人を守るとはなにか、しっかり考えさせられます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのほんは何故パワープッシュされているのかよくわからなかった。タイトルには厨二心を惹きつけるなにかがあるのは感じるが(というか実際ひきつけられた。)
実際、中身を厨二病をこじらせたまま大人になった「資本主義って」「政治家なんて」「オトナとかって」という作家自身が伝えたいメッセージであふれていて、少しこっぱずかしい感じがした。
お話としては、登場人物を延々に混乱し続ける分かり辛さにはなんとも言えないことに加え、結末もなかなか唐突だった。
しかしながら、説教くさく、ストーリーとして大きな展開があるわけでもないのに、きちんと最後まで導く表現力と文章力は秀逸。また読みたい作家かと言われれば、少し距離を置きたい感じがするが、それでも売り出すだけの理由がある作品。なのだろうな。 -
Posted by ブクログ
人気作家がやりたい放題?!一般受けはキビシイかと・・・。
親子揃っての直木賞作家である白石一文氏が、講談社の創業百周年記念書き下ろし作品として刊行した本作。第22回山本周五郎賞を受賞してはいるが、同年度の他候補作の評価が押し並べて低かったということも言い添えておくべきかもしれない。
数々のスクープを物にしてきた有名週刊誌編集長・カワバタは、僅か生後3ヶ月で我が子を失ったことを妻の身勝手さによるものだと思い込み、同時に自らも胃癌を患いながら再発の恐れを抱えている。上下巻とも終始、カワバタ主体で作品は展開されていて、その他の登場人物は実際のところあくまで付録といった印象。肝心の作品内容も、大物政治家Nのスキャンダルをスクープすることから始まり、内閣総理大臣、出版社社長と幹部、芸能事務所、暴力団までもを絡ませながら物語を展開させることで、前面で描かれる全くといって脈絡のない主人公を通した白石氏本人の主義?主張?コメント?を、なんとか繋ぎ合わせて超大作を作り上げたというもの。
巧みな表現力は疑いようも無く、古めかしい小説表現も悪くない。また、読み易さや心地良さ、いたずらな健全さや押し付けがましい感動の共有といった現代の小説に溢れかえっているものに背を向け、真っ向から挑みかけてくる確信的な居心地の悪さや不健康で毒のあるもの言いは、読み手の忘れかけた懐かしい感覚を呼び覚ましてくれる。
ただ、問題なのは作品の半分近くを占める「引用」だ。なにより引用している項目、そして引用文自体のレベルが低すぎる。すべてがワイドショー番組で取り上げられそうな項目と内容で、主人公自身も月並みな評論家程度の見解しか持ち合わせていない。つまり、読み込んでいるうちに「先が容易に見えてしまう」のだ。しかも出てくる評論項目に関連性が薄く、物語の流れが度々寸断されてしまうがため、展開が不自然になり、主人公が最後まで拘り続ける「必然」というものがウソ臭く感じられてしまう。
用意周到に張り巡らされた伏線を上手に繋ぎ合わせて行くような作品が目立つ昨今、このような乱暴でノイジィーな作品は逆に新鮮ではあるのだが、好き勝手にやっているとしか思われない作品では、一般読者にはなかなか受け入れられ難いと思われる。