白石一文のレビュー一覧

  • 火口のふたり

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    ネタバレ

    言いたいことは分かる。地震や津波、それを上回るような大災害が起こるかもしれない現代において、過去の努力が未来に繋がることなく、一瞬にして無になってしまうことも、往々にしてあるのだ。で、「今」だけを生きるためにすることは?と問われているのでしょう。
    しがらみのないセックスシーンが延々と続いた先にそれらを帳消しにしてしまうものは・・・。都合よすぎた感はぬぐえないな。

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    2020年03月07日
  • 彼が通る不思議なコースを私も

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    主人公はとある場面で見かけた男性と合コンで再開する。小学校教師である彼と交際1年ほどで結婚するが、彼は教師を辞めてしまう。そして彼は自らの体験をもとに、発達障害や何らかの理由で学習能力に問題がある子供たちに向けた体操と学習塾を開く。一方、主人公は大阪転勤を命じられ単身赴任をすることに。新婚間も無くで別居に不安を感じるが、夫の塾は評判が評判を呼び経営は順調に。すれ違いが不安になった主人公は子作りを提案するが夫はやんわり拒否。それは彼が持つ特殊な能力によるものだった。

    夫が教育にかける情熱はすばらしく、こういう教育者がもっともっと増えてほしいと本気で思わせてくれる。主人公のキャラがいまいちなせい

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    2020年02月24日
  • 火口のふたり

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    ざっとした流れは、あらすじ通り。
    結婚前の火遊びの話ねーとタカ括ってたら、
    もちろんそれだけではなく。
    2人の関係収拾つかないんじゃないか??からの怒涛のラストにびっくりした。リアルな出来事の中で話を紡いでたのに、急に創作が入り込んでついていききれず。出演者気になるので映画観るかも。

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    2020年02月20日
  • 一瞬の光

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    主人公がなんだか人間味がなく、感情移入できないため、あまりのめり込んで読むことができない小説です。

    でも同じ社畜として共感できる部分は多かったです。

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    2020年02月20日
  • プラスチックの祈り

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     読後感が不気味、面白い、興味深い、消化不良...なんとも言葉で表現できない、様々な感情が混ざり合って、気持ち悪い作品だと思ってしまいました。
    ストーリーもSFのような、推理小説のような...
    ところどころ、主人公に語らせる認識論的な話や、存在そのものについての見方が、自分のアイデンティティを揺るがされるようで恐ろしい、気味悪いと感じてしまうのかもしれません。
     ラストも、えっこんな終わり方なの!?と驚くようなエンドです。もやもやが残ります。
     また読みたいかと言われると疑問ですが、印象的な作品であることは間違いないです。

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    2020年01月25日
  • どれくらいの愛情

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    いろんな形の恋愛があって、そのどれもが平穏なものではなく。
    傷つけて傷つけられて、それでも大切なものがあって。
    愛ゆえの嘘がたくさん出てきた気がします。
    嘘をつくってよくないことではあるけど、相手のためを思った優しい嘘は、きっと二人には必要なものだったんだろうなと。
    私は『20年後の私へ』が好きでした。

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    2020年01月23日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    「誰かをどうしようもなく愛したことがある者。大事な存在を喪失したことのある者。そして、子供を持たない者。この3つのどれかに当てはまる人間なら、この小説が顕す人生観とその哲学的メッセージに共鳴しないはずがない」
    これは巻末の解説を担当している、編集者の中瀬ゆかりさんによる文章。
    中瀬さんは内縁関係にあった作家の白川道氏を突然失くした。そしてこの小説は、著者の白石一文さんが中瀬さんのために執筆したものらしい。

    一言で感想を表すのはとても難しい小説だった。面白いとは言えないし、泣けるとか感動系とも違う。人間関係にスポットを当てると、つっこみどころも無いわけではない。
    結果的に自分を陥れることとなっ

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    2020年01月21日
  • 記憶の渚にて

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    口汚く謗るそしる 大仰で無意味な 永遠に答えのでない問いに立ち向かう蛮勇を 骨箱 感慨はない もう兄とは忌憚なく話し合えるような間柄ではなくなっていたのだ 名古屋風味噌おでん 八丁味噌 赤茶漬け ねんごろ懇ろに合掌するよう規定で定められているのだろう マニュアルを最初から軽んずる人間に本当の意味で独創的な者は一人もいなかった気がする 電話機を耳朶じだに押し当てる ひさこ寿子 懐旧談かいきゅうだん 深謀遠慮を巡らした 要らぬ穿鑿せんさくめいたことをせずに有難く押し頂いて即刻掲載という成り行きになったのだろう 粟粒結核ぞくりゅうけっかく 仔細に読み解いていくと 自らの誤謬を悟ったことになる 彼はざ

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    2020年01月11日
  • 火口のふたり

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    結婚式を控えて、従兄の賢治とひさしぶりに再会した直子。しかし彼は、かつて快楽のすべてを教わった、直子の初めての男でもあった。
    挙式までの5日間、理性と身体に刻まれた記憶の狭間で、ふたたび過去へと戻っていくふたり。出口の見えない、いとこ同士の行く着く先は?

    ラストどうなるんだろう、という怖いもの見たさだけで読み切ったようなものだったんですが、想像だにしてなかった展開でポカーン。えっ、富士山って、えーっ!?
    賢治と直子の関係がバレて修羅場、からの純文学!みたいな感じを期待してたのにな。

    過去のことも先のことも忘れてしまいたくて直子とのセックスに溺れる、という賢治の考えには共感。
    「今だけ」とい

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    2020年01月06日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    珠美との出会い(正確には再会)をきっかけに、芹澤の中でそれまで何十年間も閉じ込められていたものが開放されて、思わぬ方向に人生が流れていった。
    そして『これでよかったのだ』と芹澤は感じているのではないかと思う。

    一度きりで、思い通りにならず、この先何が起こるか分からないもの。その人生をどうやって生きていくのか。
    その問いは『何を大切にして生きていくか』でもあり、そこから裏をとれば『大切にしたいものを大切にして生きること』こそが、おそらくは生きていく指針なのだろう。

    人との出会い、本との出会い、景色との出会い。
    出会いは『大切なものが何か』を気づかせてくれる。

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    2020年01月02日
  • 一瞬の光

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    大手企業の出世頭として嘱望されていた橋田浩介は、派閥抗争に破れた。それはトップに君臨して会社を牽引していた人物の裏切りだった。彼の手腕を認めた反対派の誘いがあったが、彼はそれまでの闘志も意欲も失ってしまっていた。
    面接官として出会いバーで二度目の出会いをした香折が、男に絡まれているたのを助けたことでかかわりが出来る。
    辞表を出した後も、複雑な生い立ちをした香折が気にかかり、何かと面倒を見る羽目になる。
    浩介には上司の縁続きの女として完璧な彼女、瑠衣がいた。人が振り返る美しさと聡明さを持ち絶品の料理まで作る。ひたすら愛し続けてくれる彼女はいたが、孤独で人生を投げたような香折が常に気になっていた。

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    2019年12月30日
  • 翼

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    ネタバレ

    初めて白石さんの本を読んだのだけれど、読みやすくてサクサク読めた。

    愛とか死とかについて書かれているところがどことなくノルウェイの森を彷彿とさせた。

    でも、なんでだろう、なんか岳志の行動が意味不明すぎる。そこまでしたくなっちゃうのか、とか思ってしまう。結局彼は周りのことを考えていない人なだけで、周りはそんな彼に巻き添えをくらっているだけではないのか、と。

    こうゆう、愛について書いてあるようなのって結局男か女かどっちかが死ぬ結末になっていて、「あー、また死んだ。」とか思ってしまう自分もいた。確かにお互いに惹かれあっていた2人のうちの片方が死んでしまうと読んでいる側からすれば共感してしまい、

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    2019年12月23日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    人が死ぬということ。誰もが経験したことはないから、死ぬ時どんな感じとか、死んだらどうなるとか、わかるよしもない。ただ、死を身近に感じることはある。私も最近父を亡くしたが、死んだというより、いなくなったという感覚が近い。ただ不在なだけ。でも、時折もう二度と会えないと気づく瞬間があって、その時は奈落の底に落ちるような悲しみがおそってくるのだが。

    この小説は、身近に死を体験した人に、その死に対してどう向き合うかを、淡々とした中でやさしく、時に強く導いてくれる物語だった。

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    2019年12月10日
  • 僕のなかの壊れていない部分

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    久々に「白石一文の世界」にどっぷり浸る。のっけから主人公が繰り出す思索開陳のビッグウェーブ。良い意味で相も変わらず濃厚な展開で、ページを繰る途中に何度も本を閉じ、深呼吸するほど。まぁ、これが白石一文ワールドというか真骨頂。ファンとしては、しばしその世界に浸れる安堵と喜びを抱きつつも、脳髄は痺れるというアンビバレンツな読書タイムを味わえる稀有な作家。まぁ、とにかく圧倒的な情報量を包含した骨太の小説を編まれます。

    さて、本書。主人公は東大法学部出身、大手出版社勤務、高収入の30代独身男性。境遇のまったく異なる三人の女性と関わりを持ちながら、いずれも一定の距離を置いた関係を続けている。彼女らに向け

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    2019年12月08日
  • 僕のなかの壊れていない部分

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    なんてつまらない人生なのだろう、と思う。
    自ら楽しもうともせず、
    理屈ばかり捏ねて、
    差し伸べられる手を拒絶してばかりで。
    けれど、何故か彼の生き方を完全に否定することはできないし、
    他人事には思えないでもいる。

    ただ一つの自分の居場所、
    たった一人の運命の人、
    ただ一度きりの自分の人生。

    それらを探し続ける白石一文の冒険は、
    きっとここから始まったのだろう。

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    2019年11月24日
  • 火口のふたり

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    いまやりたいことをやっていると、人間は未来を失い、過去に何も残せない。明日の為に必死の思いで今日を犠牲にしたとき、初めて立派な昨日が生まれる。

    ひたすらセックスしてるふたりのはなし。

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    2019年10月30日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    あるみ在実 ありのり存実 そもそもが軽妙洒脱なその筆力に私は魅せられた ネクロフィリア 各々の人品骨柄を判定していた 人と人との間に生まれる愛情という貴重な財産は、一度小さなひび割れが生ずると、価値を失ったり減じたりするのではなく、そこから次第に腐敗が進行し、最後には猛毒に変じて、私達を蝕み、苛み、破滅させる。僅か三歳でこの世を去った妹は、その冷厳なる真実を私にしっかりと教え込んでくれたのだと思う。 年中顔を突き合わせていれば、どんなに特別な相手であっても、好きなだけでいられるはずがない。誰かと過ごした時の心豊かな記憶は虹のように儚く、その人物との諍いの記憶は刺青のように決して消える事がない。

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    2019年10月13日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    ふんわり緩やかな空気に包まれた本編と、その背景を綴った解説。もはや共作と言っていいくらいの作品。ストーリーにはちゃんと起伏があったはずなのに読後感は心地よい凪。

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    2019年10月07日
  • 心に龍をちりばめて(新潮文庫)

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    幼少のころから一緒だった同郷の美帆と優司、その先まったく違う歩みをするが、出生において悲しい共通点をもつ。それぞれ道を歩みながら、徐々に近いしい関係に。最初からこうなる運命だったんだと感じる事ができる作品。

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    2019年09月19日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    いわば「変わり者」の思想と日常であるが自己投影ができてしまう内容。哲学的な文言も現実離れしておらず感慨深かった。解説で特定の人のために書いた物語とわかり、伝えたい想いを散りばめ小説にしたのであればこの本の意味はより深いものに感じた。

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    2019年09月17日