白石一文のレビュー一覧
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主人公はとある場面で見かけた男性と合コンで再開する。小学校教師である彼と交際1年ほどで結婚するが、彼は教師を辞めてしまう。そして彼は自らの体験をもとに、発達障害や何らかの理由で学習能力に問題がある子供たちに向けた体操と学習塾を開く。一方、主人公は大阪転勤を命じられ単身赴任をすることに。新婚間も無くで別居に不安を感じるが、夫の塾は評判が評判を呼び経営は順調に。すれ違いが不安になった主人公は子作りを提案するが夫はやんわり拒否。それは彼が持つ特殊な能力によるものだった。
夫が教育にかける情熱はすばらしく、こういう教育者がもっともっと増えてほしいと本気で思わせてくれる。主人公のキャラがいまいちなせい -
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「誰かをどうしようもなく愛したことがある者。大事な存在を喪失したことのある者。そして、子供を持たない者。この3つのどれかに当てはまる人間なら、この小説が顕す人生観とその哲学的メッセージに共鳴しないはずがない」
これは巻末の解説を担当している、編集者の中瀬ゆかりさんによる文章。
中瀬さんは内縁関係にあった作家の白川道氏を突然失くした。そしてこの小説は、著者の白石一文さんが中瀬さんのために執筆したものらしい。
一言で感想を表すのはとても難しい小説だった。面白いとは言えないし、泣けるとか感動系とも違う。人間関係にスポットを当てると、つっこみどころも無いわけではない。
結果的に自分を陥れることとなっ -
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口汚く謗るそしる 大仰で無意味な 永遠に答えのでない問いに立ち向かう蛮勇を 骨箱 感慨はない もう兄とは忌憚なく話し合えるような間柄ではなくなっていたのだ 名古屋風味噌おでん 八丁味噌 赤茶漬け ねんごろ懇ろに合掌するよう規定で定められているのだろう マニュアルを最初から軽んずる人間に本当の意味で独創的な者は一人もいなかった気がする 電話機を耳朶じだに押し当てる ひさこ寿子 懐旧談かいきゅうだん 深謀遠慮を巡らした 要らぬ穿鑿せんさくめいたことをせずに有難く押し頂いて即刻掲載という成り行きになったのだろう 粟粒結核ぞくりゅうけっかく 仔細に読み解いていくと 自らの誤謬を悟ったことになる 彼はざ
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結婚式を控えて、従兄の賢治とひさしぶりに再会した直子。しかし彼は、かつて快楽のすべてを教わった、直子の初めての男でもあった。
挙式までの5日間、理性と身体に刻まれた記憶の狭間で、ふたたび過去へと戻っていくふたり。出口の見えない、いとこ同士の行く着く先は?
ラストどうなるんだろう、という怖いもの見たさだけで読み切ったようなものだったんですが、想像だにしてなかった展開でポカーン。えっ、富士山って、えーっ!?
賢治と直子の関係がバレて修羅場、からの純文学!みたいな感じを期待してたのにな。
過去のことも先のことも忘れてしまいたくて直子とのセックスに溺れる、という賢治の考えには共感。
「今だけ」とい -
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珠美との出会い(正確には再会)をきっかけに、芹澤の中でそれまで何十年間も閉じ込められていたものが開放されて、思わぬ方向に人生が流れていった。
そして『これでよかったのだ』と芹澤は感じているのではないかと思う。
一度きりで、思い通りにならず、この先何が起こるか分からないもの。その人生をどうやって生きていくのか。
その問いは『何を大切にして生きていくか』でもあり、そこから裏をとれば『大切にしたいものを大切にして生きること』こそが、おそらくは生きていく指針なのだろう。
人との出会い、本との出会い、景色との出会い。
出会いは『大切なものが何か』を気づかせてくれる。
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大手企業の出世頭として嘱望されていた橋田浩介は、派閥抗争に破れた。それはトップに君臨して会社を牽引していた人物の裏切りだった。彼の手腕を認めた反対派の誘いがあったが、彼はそれまでの闘志も意欲も失ってしまっていた。
面接官として出会いバーで二度目の出会いをした香折が、男に絡まれているたのを助けたことでかかわりが出来る。
辞表を出した後も、複雑な生い立ちをした香折が気にかかり、何かと面倒を見る羽目になる。
浩介には上司の縁続きの女として完璧な彼女、瑠衣がいた。人が振り返る美しさと聡明さを持ち絶品の料理まで作る。ひたすら愛し続けてくれる彼女はいたが、孤独で人生を投げたような香折が常に気になっていた。 -
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ネタバレ初めて白石さんの本を読んだのだけれど、読みやすくてサクサク読めた。
愛とか死とかについて書かれているところがどことなくノルウェイの森を彷彿とさせた。
でも、なんでだろう、なんか岳志の行動が意味不明すぎる。そこまでしたくなっちゃうのか、とか思ってしまう。結局彼は周りのことを考えていない人なだけで、周りはそんな彼に巻き添えをくらっているだけではないのか、と。
こうゆう、愛について書いてあるようなのって結局男か女かどっちかが死ぬ結末になっていて、「あー、また死んだ。」とか思ってしまう自分もいた。確かにお互いに惹かれあっていた2人のうちの片方が死んでしまうと読んでいる側からすれば共感してしまい、 -
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久々に「白石一文の世界」にどっぷり浸る。のっけから主人公が繰り出す思索開陳のビッグウェーブ。良い意味で相も変わらず濃厚な展開で、ページを繰る途中に何度も本を閉じ、深呼吸するほど。まぁ、これが白石一文ワールドというか真骨頂。ファンとしては、しばしその世界に浸れる安堵と喜びを抱きつつも、脳髄は痺れるというアンビバレンツな読書タイムを味わえる稀有な作家。まぁ、とにかく圧倒的な情報量を包含した骨太の小説を編まれます。
さて、本書。主人公は東大法学部出身、大手出版社勤務、高収入の30代独身男性。境遇のまったく異なる三人の女性と関わりを持ちながら、いずれも一定の距離を置いた関係を続けている。彼女らに向け -
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あるみ在実 ありのり存実 そもそもが軽妙洒脱なその筆力に私は魅せられた ネクロフィリア 各々の人品骨柄を判定していた 人と人との間に生まれる愛情という貴重な財産は、一度小さなひび割れが生ずると、価値を失ったり減じたりするのではなく、そこから次第に腐敗が進行し、最後には猛毒に変じて、私達を蝕み、苛み、破滅させる。僅か三歳でこの世を去った妹は、その冷厳なる真実を私にしっかりと教え込んでくれたのだと思う。 年中顔を突き合わせていれば、どんなに特別な相手であっても、好きなだけでいられるはずがない。誰かと過ごした時の心豊かな記憶は虹のように儚く、その人物との諍いの記憶は刺青のように決して消える事がない。